景況調査

第76号-2012年11月
景気後退期に突入~「弱含み」から「悪化」へ

【概況】

【業況判断】 今月の状況、大震災の影響を除けば2009年2月調査以来の悪化

【売上高】【経常利益】 売上高、前年同月比1年ぶりに「減少」超過。 経常利益、今月の状況は横ばいも見通し大幅悪化

【在庫】 大きな変化は見られず

【取引条件】 前年同月比、次期見通しともに「悪化」超過幅拡大

【資金繰り】 次期見通し、1年ぶりの「窮屈」見通し幅拡大

【設備過不足】【施設稼働率】 設備過不足、業種間で異なる動き。 施設稼働率、製造業で著しい「低下」超過幅拡大

【雇用動向】 製造業で約2年ぶりの「過剰」超過

【価格変動】 仕入価格変動、今月の状況・前年同月比で流通業「上昇」超過幅拡大。 販売価格変動、建設業・製造業で「低下」超過幅拡大の動き

【借入金利】 短期・長期ともに大きな変化なし

【経営上の力点など】 経営上の問題点・力点ともに上位は大きく変わらず

<会員の声>

DI値推移一覧表(PDF 337KB)

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景況調査報告(2012年11月)第76号(PDF:1.31MB)


【概況】

業況が「よい」と回答した企業から「悪い」と回答した企業を差し引いた業況判断DI(今月の状況)は前回の9から8ポイント悪化して1となりまし た。東日本大震災の影響で落ち込んだ2011年5月調査を除けば、2009年2月調査以来、約4年ぶりの悪化となりました。前年同月比は3から△12と 15ポイントの悪化、3ヶ月後の次期見通しも13から13ポイント悪化して0となりました。前回の「弱含み」からさらに悪化したことから、愛知経済はいよ いよ景気後退期に突入したようです。

ヒアリング調査では、今回も業種間での明暗がはっきり分かれました。建設業からは依然として、忙しさが続いているとの声が多く聞かれました。官需で は前回同様、太陽光発電システムの設置など補助金がつく設備関係や福祉施設の建設が好調なようです。民需からは賃貸マンションの空室率上昇や戸建て住宅の 需要はあるものの住宅ローンの審査が通らないことを懸念する声が上がった一方で、名古屋駅前において複数の高層ビル建設が予定されていることから、しばら くは繁忙状態が続くと予想する声も聞かれました。しかし、官民需ともに職人不足が著しいため、仕事があるのに受注できないという状況にあり、また受注価格 が低いために利益につながらないとの意見も多く出されました。製造業は今回最も数値が悪化しました。自動車関連企業からはこれまでも指摘されてきた海外生 産の進展に加え、中国との尖閣問題の影響を受けて中国向けの生産が落ち込んだことがその要因としてあげられました。流通業・サービス業からも明るい話はほ とんど聞かれませんでした。

このように愛知県経済は、建設業の動きは依然として活発であるとはいえ、全体としてみると悪化傾向にあるようです。年明け以降、米中経済の回復に牽 引されて日本経済も回復するとの見解もありますが、米中経済の現状をみれば、決して楽観視できるものではありません。また、回復したとしても以前の生産水 準にまで戻る保証はありません。新政権の経済施策も注視しながら、今後の経済動向を見据えつつ経営戦略を改めて策定する必要も出てきそうです。

[調査要項]
 1.調査時   2012年11月20日~11月30日
 2.対象企業 愛知中小企業家同友会会員企業
 3.調査方法 会員専用サイト(一部FAX)にて配信、自計記入、回収
 4.回答企業 3,207社より、812社の回答をえた(回収率25.3%)
   (建設業142社、製造業230社、流通223社、サービス業217社)
 5.平均従業員 34.6人(中央値 10.0人)

なお、本報告は愛知中小企業家同友会・経営環境調査委員会(委員長、藤田彰男・赤津機械(株)社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議(座長、山口義行立教大学教授)での検討を経てなされたものである。

【業況判断】
今月の状況、大震災の影響を除けば2009年2月調査以来の悪化

「今月の状況」DIは前回の9から1と8ポイントもの悪化となった。東日本大震災の影響を受けた2011年5月調査を除けば、2009月2月調査以 来の悪化である。業種別で見ると、建設業が21から18と3ポイントのわずかな悪化、サービス業が11から10と横ばいでの推移となったが、製造業では5 から△17と22ポイント、流通業が5から△1と6ポイント悪化し、ともに「悪化」超過に転じた。なかでも製造業の悪化幅は著しく、4割の企業が「悪い」 と回答している。前年同月比も前回の3から△12と15ポイント悪化し、1年ぶりに「悪化」超過に転じている。業種別で見ると、サービス業は△4から△2 とほぼ横ばいで推移したものの、建設業では22から4と18ポイント、製造業が5から△26と31ポイント、流通業が△2から△17と15ポイントもの悪 化となっている。3ヶ月後の次期見通しも前回の13から13ポイント悪化して0となった。これで2期連続の悪化である。業種別では、建設業が25から15 と10ポイント、製造業が7から△13と20ポイント、流通業が14から△7と21ポイント見通しを悪化させた。サービス業だけは13から11と見通しに 大きな変化はなかった。

業況推移DIグラフ

業況推移DIグラフ
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【売上高】【経常利益】
売上高、前年同月比1年ぶりに「減少」超過
経常利益、今月の状況は横ばいも見通し大幅悪化

売上高DI(前年同月比)は前回の6から14ポイント悪化して△8となった。これで2期連続の悪化である。業種別で見ると、建設業が23から6と 17ポイント、製造業が4から△23と27ポイント、流通業が0から△12と12ポイントの著しい悪化となった。サービス業は5で前回調査から変化がな かった。次期見通しも前回の4から△12となり、16ポイントもの大幅な悪化となった。業種別では、建設業が22から△1と23ポイント、製造業が△3か ら△22と19ポイント、流通業が2から△21と23ポイントのそれぞれ著しい見通し悪化となったが、サービス業は2から0とほぼ横ばいで推移した。

経常利益DI(今月の状況)は前回調査の6から8とほぼ横ばいでの推移となった。業種別でみても、建設業(5→7)・製造業(6→6)・流通業 (1→2)、サービス業(14→18)と全業種で大きな変化は見られなかった。前年同期比は前回調査の3から△11と14ポイントの悪化となった。これで 2期連続の悪化である。業種別で見ると、建設業が17から△1と18ポイント、製造業が9から△21と30ポイント、流通業が△5から△18と13ポイン トの悪化となった。しかし、サービス業だけは△3から2に改善した。次期見通しも前回の14から△1と15ポイントの悪化となった。業種別でも、建設業が 14から△4と18ポイント、製造業が12から△13と25ポイント、流通業が13から△2と15ポイントの悪化となった。サービス業は18から16と横 ばいでの推移となった。

売上高推移DIグラフ

売上高推移DIグラフ
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経常利益推移DIグラフ

経常利益推移DIグラフ
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【在庫】
大きな変化は見られず

今月の状況DIは、前回の16から18と横ばいでの推移となった。業種別では、製造業が18から21と3ポイント「過剰」超過幅が拡大したが、流通 業は前回調査と変わらず13であった。前年同月比は前回調査の5から変化がなかった。業種別でも、製造業(6→5)・流通業(4→5)ともに横ばいでの推 移となった。次期見通しも前回の10から8と大きな変化は見られなかった。業種別では、製造業(14→12)はほぼ横ばいで推移したが、流通業(7→3) は「過剰」見通しの超過幅が縮小した。

【取引条件】
前年同月比、次期見通しともに「悪化」超過幅拡大

前年同月比DIは前回調査の△8から4ポイントの「悪化」超過幅が拡大して△12となった。業種別では、建設業(2→△13)・製造業 (△7→△15)では「悪化」超過幅が拡大したが、流通業(△11→△12)は横ばいで推移した。一方、サービス業(△14→△10)は「悪化」超過幅が 縮小した。次期見通しも前回の△6から6ポイント「悪化」見通しの超過幅が拡大して、△12となった。業種別で見ると、建設業(3→△11)・製造業 (△3→△12)・サービス業(△9→△13)で「悪化」見通しの超過幅が拡大した。流通業(△11→△10)は横ばいでの推移となった。

【資金繰り】
次期見通し、1年ぶりの「窮屈」見通し幅拡大

今月の状況DIは前回と変わらず△30であり、2期連続で大きな動きは見られない。業種別で見ると、建設業(△32→△34)・製造業 (△29→△29)・流通業(△31→△29)・サービス業(△28→△30)と全業種で横ばいの推移となっている。次期見通しは前回の△27から8ポイ ント「窮屈」見通しの超過幅が拡大して△35となった。1年ぶりの「窮屈」見通しの超過幅拡大である。業種別で見ると、建設業(△27→△43)・製造業 (△28→△38)・流通業(△29→△32)・サービス業(△25→△29)とすべての業種で「窮屈」見通しの超過幅が拡大した。

【設備過不足】【施設稼働率】
設備過不足、業種間で異なる動き
施設稼働率、製造業で著しい「低下」超過幅拡大

設備過不足DI(今月の状況)は前回調査の△5から大きな変化なく△6となった。業種別では、それぞれ異なる動きを見せ、建設業(△4→△16)・ 流通業(△6→△12)で「不足」超過幅が拡大したが、製造業(0→10)では大幅に「過剰」超過幅が拡大した。サービス業(△11→△12)は横ばいで 推移した。次期見通しも前回の△5から△6と大きな変化は見られなかった。震災の影響を受けた2010年5月期を除けば、2年間大きな動きはない。しか し、業種別でみると、建設業(△10→△20)・流通業(△7→△11)で「不足」見通し超過幅が拡大したが、製造業(6→13)では「過剰」見通し超過 幅が拡大しており、業種間で大きな違いがあることがわかる。サービス業(△13→△12)は横ばいで推移した。

施設稼働率DI(前年同月比)は前回調査の△1から18ポイントも「低下」超過幅が拡大して△19となった。業種別で見ると、製造業(2→△27) は29ポイントものの著しい「低下」超過幅の拡大となった。流通業(△5→△7)はほぼ横ばいでの推移となった。次期見通しも前回の△5から△15と10 ポイントの「低下」超過幅拡大となった。業種別で見ると、製造業(△6→△22)では「低下」見通しの超過幅が拡大したが、流通業(△2→△4)は大きな 変化はなかった。

【雇用動向】
製造業で約2年ぶりの「過剰」超過

今月の状況DIは前回調査の△21から変化がなかった。業種別では、建設業(△35→△40)・流通業(△21→△26)で「不足」超過幅が拡大し たが、製造業(△9→1)では2011年5月調査を除くと、2010年8月調査以来の「過剰」超過となった。サービス業(△27→△28)は横ばいで推移 した。次期見通しも前回の△20から△18とほぼ横ばいでの推移となった。業種別で見ると、建設業(△35→△37)・流通業(△22→△22)・サービ ス業(△29→△28)は横ばいでの推移となったが、製造業(△3→6)は「過剰」見通し超過に転じた。

【価格変動】
仕入価格変動、今月の状況・前年同月比で流通業「上昇」超過幅拡大
販売価格変動、建設業・製造業で「低下」超過幅拡大の動き

仕入価格変動DI(今月の状況)は前回調査の11から大きな変化はなく12であった。業種別では製造業(8→9)・サービス業(8→9)が横ばいで の推移となった。建設業(16→12)では「上昇」超過幅が縮小したが、流通業(10→18)では拡大した。前年同月比も前回調査(12)から変化がな かった。業種別では、建設業(14→10)・製造業(11→8)で「上昇」超過幅が縮小したが、流通業(13→20)は拡大した。サービス業(7→9)は 横ばいでの推移となった。次期見通しも前回の11から9と横ばいでの推移となった。業種別で見ると、動きはさまざまで建設業(18→6)・サービス業 (12→8)で「上昇」見通しの超過幅が縮小したが、製造業(4→9)では拡大した。流通業(13→11)は横ばいで推移した。

販売価格変動DI(今月の状況)は今回も△16から△17と大きな動きはなかった。業種別では、建設業(△13→△17)・製造業 (△18→△21)で「低下」超過幅が拡大した。流通業(△15→△14)・サービス業(△17→△17)は横ばいで推移した。前年同月比も前回の△16 から△18と大きな変化がなった。しかし、業種別で見ると、建設業(△10→△22)・製造業(△18→△27)において「低下」超過幅が拡大した一方 で、流通業(△15→△12)・サービス業(△17→△12)は「低下」超過幅縮小となった。次期見通しは前回の△10から△15と5ポイントの「低下」 超過幅拡大となった。業種別でみると、建設業(△9→△13)・製造業(△10→△19)・流通業(△7→△14)で「低下」見通しの超過幅が拡大した が、サービス業(△13→△14)は横ばいで推移した。

【借入金利】
短期・長期ともに大きな変化なし

短期借入金利DIは前回調査の△5から△4とほぼ横ばいでの推移となった。業種別で見ると、建設業(△11→△4)・製造業(△7→△4)で「低下」超過幅が縮小したが、サービス業(△1→△4)では反対に拡大した。流通業(△3)は前回の調査から変化がなかった。

長期借入金利DIも前回の△5から△7と大きな変化はなかった。業種別でみると、建設業(△5→△4)・製造業(△8→△9)では横ばいでの推移となったが、流通業(△5→△8)・サービス業(△1→△7)では「低下」見通しの超過幅が拡大した。

【経営上の力点など】
経営上の問題点・力点ともに上位は大きく変わらず

全業種で見た経営上の問題点は前回と同様、第1位が「民間需要の停滞」(45%)、第2位が「取引先の減少」(28%)であったが、「従業員の不 足」(23%)がわずかに「販売先からの値下要請」(22%)を上回り第3位となった。業種別にみて特徴的なのは、建設業で「下請業者の確保難」 (27%)、製造業で「熟練技術者の確保難」(26%)がそれぞれ第2位にあることである。文書回答では、「生産拠点の海外へのシフト」や「労働者派遣法 の改正」などがあった。

全業種における経営上の力点は前回から変化なく、「新規受注(顧客)の確保」(62%)、「付加価値の増大」(57%)、「社員教育」(30%)が上位を占めた。

<会員の声(業種別)>

(1)建設業

●業況判断DIの「今月の状況」は21から18と横ばい、「次期見通し」は25から15へ、「前年同月比」でも22から4と大幅に悪化しています。一方、 経常利益DI「今月の状況」は横ばいですが、「前年同月比」は17から△1と水面下に転落しています。資金繰りDI「今月の状況」では、△34と厳しい状 況を示しています。仕入価格DIは12と値上がり傾向があり、販売価格DIは△17と販売価格が抑えられています。その他、特徴的なのは、設備過不足DI が△4から△16になり、設備の不足感が高まっていること。雇用動向DIは、△40と激しい人手不足の数値を示していることです。

住宅分野では大手ハウスメーカーに注文が集中しているため、その納品価格の低価格競争に拍車がかかっています。また住宅ローンが下りない事例が多 く、金融機関の貸出姿勢が更に厳しくなっている傾向が伺えます。建築需要は旺盛ですが、採算性が悪い物件が多く手が出せなかったり、深刻な職人不足のため 工期が守れず、受注ができない状態が続いています。また「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」の施行に伴い、社会保険に加入しないと下請仕事が できなくなります。(事務局 八田)

1.総合建築

  • 銀行の貸し渋りにより景気は低迷状態にある。貸し渋りの理由の一つに審査基準が古く、現在のデフレの環境下では審査基準を満たす事は困難である。また少子高齢化に伴い、消費者が減少傾向にあり建設業では色濃くその影響が出ており、体力を奪われていく。

2.土木工事

  • 昨年の震災以降、震災関連の予算執行により、過剰なくらいの工事量が不均等に出ている。来年にかけてもその恩恵は続く。心配なのは、政治判断で大きく影響をうけるTPPや消費税の増税の問題。できればやめて欲しい。

3.鉄筋工事

  • 問題は人材確保が難しいこと。元請からの請負単価を上げてもらわないと、この問題は解消されないし、次世代の職人も育たない。これを反映し、大手ゼネコ ンも地元業者を口説き、丸投げが目に付く。仕事は溢れて職人は不足するので受注を絞りたいが、消費税率が上がった時の冷え込みを考えると、むやみに仕事を 断れない。

4.溶接工事

  • 10月までは、業界全体が仕事不足で厳しい状況だった。11月になり建設業全体が、「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」の施行に伴い元請 (各ゼネコン等)への提出書類の関係上、今まで使っていた下請業者が使用できなくなり、さらに、作業員の確保が厳しくなってきた。

5.外構工事

  • コストや時間は削減される一方で、ハイレベルな技術・納期短縮・万全の管理体制が求められる。 同業者同士が安価で受注競争をした結果、資金繰りがうま くいかず撤退する事態が起こっても、安価な金額で受注した実績だけは残ってしまい悪循環である。工事は完了したものの二次下請より工事代金が支払われない 話を聞く。事前の与信調査も大切だが、中には巧妙に工事を請負わせ、工事代金を自分たちの負債に回し、下請に支払をしない業者が増えているという。そう いった悪影響や負の連鎖が更に増える予感がする。

6.設備工事

  • 再生可能エネルギ―の固定価格買取制度により太陽光発電工事の引き合いが多い。ただし材料・機器の確保難が今後深刻になると思われる。また携帯電話会社にプラチナバンドを開放したことにより、携帯アンテナ工事が市場に溢れている。

7.電気工事

  • 大手ハウスメ―カ―のみが増税前の駆け込み需要に沸いているだけで、中小零細はその下請けで泣いている。国の法律が大手メ―カ―だけを助け、中小零細は 無視されている。中小零細はなくなっても良いと思っているとしか思えない。事実、同業者の倒産の声をよく聞くようになってきた。

8.設計・施工管理

  • 自動車部品関連の落ち込みが激しく、顧客の会社でも週5日稼働している会社が少なくなってきた。消費増税前の駆け込み需要で潤ってきているという話は聞くが当社では全く実感がない。

(2)製造業

●中小製造業の業況は急激に悪化、いずれの指標も水面下2ケタに落ち込み一段と厳しさが増しました(今月の経常利益を除く)。海外生産現地調達の加速や欧 州債務危機の影響など世界経済の大きな流れの渦中に投げ込まれています。相次ぐ諸困難で積極策を打って出るための財務体力喪失も懸念されます。
技術力や競争力の源泉には裾野の厚い多くの中小製造業の集積があります。一部の優良企業だけを救出支援する施策では地域経済の活性化は望めない でしょう。金融円滑化法終了にあたり、金融機関側の視点による個別最適ではなく地域全体を視野としたリレーションシップバンキングの強化や出口支援策の実 質性が一層に求められるところです。コスト削減計画(守り)だけでは企業は立ち行きません。

企業側の努力としては、社会の転換期にあることを見据えて新たな社会ニーズをしっかりとキャッチし、自社ができること、そして取り組むべきこ と、すぐに着手すべきこと、そのための社内体制構築など、同友会における学び合いと連携を深め、しっかりと歩を進めていきたいものです。(事務局 加藤)

1.金属加工などの量産分野

  • 中国問題による減産。その影響で東南アジアの増産が続いているが現調化がどこまで進むか不安。
  • メーカー、車種でバラツキはあるが8月以降の円高と9月以降の中国問題による減産が大きく影響を及ぼし25~30%減。11~12月を底に持ち直しの動きは見られるが前年比80%に留まるだろう。
  • リベット、ボルト製品の現調化加速。韓国同業者は日本価格半値以下でメーカーへ売り込んでいる。
  • 海外現地調達が加速し国内空洞化が現実に。海外進出(タイ・マレーシア)が課題。

2.樹脂加工などの量産分野

  • 製品の短納期が顕著になり在庫負担が重荷に。客先にも在庫を持つように依頼していく予定。
  • 11月新規立ち上り製品の値段が予想以上に低く採算割れで苦しんでいる。今後は現行品から2~3割コストダウンしてほしいとの要望。できないと言えばそこで終わる。よほど発想を変えないと難しい。

3.鍍金、熱処理、鍛造、鋳造など

  • 日中関係悪化による自動車関連部品減産の影響大。年明けからもあまり良い話が聞こえてこない。人件費以外の無駄なコストを削減していく必要がある。
  • 自動車産業の国外生産化、円高が大きな問題。仕事量が極端に減少することが多すぎる。
  • 10月から業界全体の売上が落ちている。上向く兆しがない。
  • 生産の海外移転が加速、コスト競争が更に激しくなっている。従って海外拠点の更なる充実が必要。

4.治工具、設備関連、機械部品(金属・樹脂)、制御装置など

  • 8~10月まで残業してもこなせない程の仕事が11月にピタッと止まり、得意先から先の計画や見通しなど情報が全く入ってこなくなった。聞こえてくるの は厳しくなる予想の話ばかり。おそらくメーカーもわからないのだろう。一喜一憂せず平常心で仕事づくりの仕組み(連携)を模索していきたい。
  • 中国での日本車離れは今後も生産計画に影響するだろう。タイに新会社設立、現地受注確保に注力。
  • 4月以降受注は増えているものの価格競争は収まることを知らない。数年前に比べると会社が非常に強くなったが社員の努力に見合う給料が支払われていない。そのことも社員が強くなっているひとつ。社員教育の前に経営者教育が必要ではないかと痛感する昨今である。
  • 中国を中心としたアジアを主力マーケットにしている顧客の受注が減少している。11、12月は殆どの協力業者への部品発注が見送られる模様。ただでさえ厳しい設備関連業界での受注減少は死活問題。
  • 業界の二極化が激しくなっている。仕事を確保していても付帯業務や手間がかかるものが増え価格に転嫁できず社員に苦労をかけている。新しい仕事づくりが急務である。
  • 守りだけでは先細りしてしまう。足元をしっかりやるのは当然として、新しい領域、付加価値を高めることに注力しないといけない。

5.印刷関連

  • 一段と厳しさが増している。構造変化のスピードがますます速まっている。小口化、価格競争も厳しい。
  • 業界出荷額減少が続いている。「業態変革」をいわれて久しいが先進的に取り組んでいた企業が倒産した。経営基盤を確立しながら新しい事業を転換する必要性を痛感。消費税増税の影響も大変心配。

6.食品、繊維、建材関係など

  • 全国的に仕入高騰、販売不振で業界は大変な状態。廃業が加速すると思われる。
  • 人民元が対ドルに対して上がっているため仕入単価が上昇してきている。生産の一部を昨年より国内生産に切り替えているものの生産工場の確保が困難。小さな市場のため何とか対応できている状況。
  • 二年後の消費税増税を睨んだ事業統廃合の動きが大手に出てきている。
  • 消費税、改修、耐震補強の関係で一見業界は活発なように感じるが来年以降の景気対策に不安がある。

(3)流通業

●今月の業況判断DIは、5から△1で6ポイント悪化し、前回調査より「よい」「さほど」が減少し、「悪い」が3割を占めました。経常利益DIは、「トントン」の増加で1から2となりましたが、次期見通しは後退しています。

消費税増税の駆け込み需要は、「業者による土地の仕入れは激化しているが、期待したほど需要は盛り上がらない(不動産)」「駆け込み需要は多少 見込めるが、増税導入後は動きが読めない(家具)」など、消費マインドの冷え込みから来る押し下げが続いています。また、前回調査で特徴的だった「自動車 関連の海外移転への本格的対応」は、今回調査で「日中関係悪化や欧州不安で、当面は減産継続。部品発注、新規案件も弱含み」「中国の製造業も日本同様に悪 化。不況対策を打っても消費は伸びず、輸出も不振」と、不安定な情勢の中、各客先の動向をこれまで以上に注視、独創性のある進化が必須との声も寄せられま した。

次期見通しは、売上高DIが2から△21、経常利益DIが13から△2、業況判断DIは14から△7と主要景気指標が水面下に入りました。背景 には、価格競争による値崩れ、大手メーカーの販路拡販、自動車業界の低迷、国内需要の停滞、東アジアの需要の減退、円高による輸出不振などがあがっていま す。(事務局 岩附)

1.繊維・衣服等

  • 大手メーカーが、販売店を差し置いて自社の拡販をしだした。地域のバランスというものを崩していくため今後混沌としそうである。
  • メーカーいわく、中国からの輸出が遅れ、納期の遅れにつながっている模様。
  • 業界に若い人が少ない、そんな言葉を最近よく聞く。10年後がとても心配。一刻も早くデフレ脱却をめざし経済回復を実現させる政治に期待したい。

2.機械器具(自動車、事務機器、電設資材等)

  • 自動車関係の海外移転と中国への輸出減により、受注が2割ほど減少。一方、海外では昨年比4倍程度の受注を抱えている。国内の事業が成り立たたないと、海外進出もできなくなる。国内の確立と海外展開のセットでしか海外展開はできない。
  • 自動車生産は、国内はエコカー補助金が終了し、海外は日中関係悪化や欧州が不安である。当面は減産継続につき部品メーカーも 生産調整しており、部品発 注、新規案件も弱含み。年が明ければ増産する憶測もあるが、増産される車種の仕事をしているかどうかで 回復度合いに差が出る。
  • ネット情報を通じてエンドユーザーが最安値をつかんでおり、中間にあるわれわれは粗利益率の低下を余儀なくされている。
  • 増税後の動きが読めないが、前回のデフレ時で5%になった時は2~3年で30%売り上げが減った。建築系は、金額が高額なため特に売上が落ち込むだろうが、生き残りをかけて今から増税後の体制を整える。社員教育に時間とお金をかけている。

3.資材、家具、什器

  • 住宅着工数が、厳しい状況になってきた。新築工事は以前から単価が低く、やっても利益が生まれない事業だったが、 数も減りますます厳しい状況になって来ると、メ-カ-が直接受注してしまう。
  • 住宅業界は、消費税導入決定により駆け込みを少しは予想しているが、住宅のハイレベル化により、大手のハウスメーカー、パワービルダーに仕事が偏り中小企業の業績が良くなるとは考えにくい。
  • 今年の6月より取引先の設備投資が悪くなり、売上が伸びない。

4.運輸、情報通信

  • 自動車関連の動きが悪くなると途端に影響が出ている。年明けも、情報的には好転の兆し無し。 大手企業のコンプライアンス遵守のシワ寄せが、中小零細企業に集まっている気がする。
  • いよいよ海外市場に対して、本格的に計画するべきだと実感している。
  • 捨て身のような安い見積りを提示し、完成ができずに迷惑をかけるソフト会社が増加している。質の低いソフト会社が増加したことは、業界にとって大きな課題だ。

5.不動産、保険

  • 来店や問い合わせが減少している。消費税が上がる事による顧客の動向がはっきりつかめない。
  • 大きな変化はないが、着実に契約高は増えている。 情報のアンテナを広げ、現況の変化に即応できる態勢を強化したい。

(4)サービス業

●全業種の数値が大きく落ち込みを見せる中で、サービス業の今月の状況は、業況判断DIが11から10、経常利益DIは14から18で、横ばい・改 善という結果となりました。しかし資金繰りDIは今月の状況が△28から△30、次期見通しも△25から△29と他業種と同様に窮屈さが増大しており、小 規模経営が多いサービス業では円滑な資金調達が重要です。経営の力点は、新規受注の確保66%、付加価値の増大53%ですが、対個人サービスでは一番に社 員教育50%が挙げられ、「勝組みと負け組がはっきり分かれ、仕事が多く忙しい会社と仕事が無い会社との差が激しい」二極化に、各社の戦略と努力が活かさ れる「人づくり」に力点が置かれています。(事務局 浅井)

1.飲食関連

  • 飲食業全体でみれば低迷している。特に居酒屋業態は冷え込んでいて、一番の稼ぎ時である年末前にも関わらず居抜き物件などが出回っている。上場している 大手飲食業も、軒並み減収減益や出店計画の縮小見直しなどが進んでいる。またコンビニエンスストアなどの影響により、外食産業からの客離れが顕著に表れて いるのも見逃せない。しかし、消費者のニーズを上手に取り組んでいる会社や店では、前年比売上アップしている情報も入ってくるので、一概に全部が悪いとは 言い切れない。

2.生活・健康・美容関連

  • 価格競争による持久戦に耐えられなかった所が廃業していく一方、安売り店による新規参入もある。弊社では人員の確保が非常に困難となっている。
  • 婚礼業界では、昨年の婚姻組数66万組と年々減少傾向の中、挙式は60%前後、デフレの影響もあり業界自体も変革の時を迎えている。ホテル・式場等に対 して値下げ要求がきており、司会、挙式等、人に関する価格競争が激化している。弊社は7~8年前からオリジナルアイテムやオリジナル企画・演出に力を入れ てきた結果、投資はかかったものの、業界に於いてオリジナルウエディングの企業として現在注目をあびている。これからも自立型企業を目指していく。

3.印刷・広告関連

  • 広告代理業での生き残りには付加価値と新規商品の開発が必要だと感じている。どうすれば当社を選んで頂けるようになるか、他者との差別化を検証していく必要がある。
  • 既存の商品サービスは供給過多。新規需要、新しい付加価値の創造が不可欠であると感じている。

4.自動車関連サービス

  • 同業の廃業が増えていく傾向にあると思う。
  • 会社の将来を託せる幹部社員の育成に取り組めず、日々の業務に追われている。

5.ビジネス支援サービス

  • 価値を上げることに重点をおいているが、それよりも安価な方を選択するクライアントが多くなり、バランスが難しい。
  • 当社は人材派遣業の会社であるが、正規雇用を増やそうという意図の法改正が現実には何の効果もなく、逆に今まで働けていた人の労働機会を奪い、労働者と派遣会社及び派遣先企業を苦しめている。景気回復という観点からも全くの逆風である。
  • 企業モラルの格差が拡大している。経営改善の取り組みが出来ていない企業は信用の低下、資金繰りの悪化による負のスパイラルに陥る傾向にある。

6.産廃・環境関連

  • 建設需要停滞に伴う価格競争が激化し、到底受注できない不適正価格での自転車操業業者が多く、このままでは廃業者が増えると危惧している。現に産業廃棄物処分業の廃業、不適正処分で許認可取り消しが増えている。

7.保険・医療・福祉関連

  • 介護業界は施設立上げラッシュのため、設備備品の受注と営膳工事の受注が多く順調。介護保険法の変動に対して対処出来るように、今後は一般に施設向け営膳工事と設備備品の納品の営業に力を入れるとともに、会社の体力強化を重視したい。