景況調査

第85号-2015年2月
3期連続の改善も手放しでは喜べず ~問題山積みで先行きへの懸念増大

【概況】

【業況判断】 今月の状況、小幅ながら3期連続の改善

【売上高】【経常利益】 売上高・経常利益ともに、サービス業で大きく改善

【在庫】 「過剰」超過幅が縮小

【取引条件】 サービス業が次期見通しで「好転」超過に

【資金繰り】 今月の状況、大きな変化なし

【設備過不足】・【施設稼働率】 設備過不足、今月の状況・次期見通しともに「不足」超過幅拡大
  施設稼働率、今月の状況で2013年8月調査以来の「低下」超過

【雇用】 今月の状況で過去最高の不足感

【価格変動】 仕入価格、「上昇」超過幅縮小傾向続く
  販売価格、流通業・サービス業が牽引して「上昇」超過幅拡大

【借入金利】 短期・長期ともに大きな変化なし

【経営上の力点など】 経営上の問題点、「従業員の不足」が41%で第1位に

<会員の声>

DI値推移一覧表(PDF:547KB)

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景況調査報告(2015年2月)第85号(PDF:1.32MB)


【概況】

 業況が「よい」と回答した企業から「悪い」と回答した企業を差し引いた業況判断DIは前回の23から25となりました。2ポイントと小幅ながら、これで3期連続の改善です。前年同月比は前回調査の3から4と横ばいですが、3ヶ月後の次期見通しは12ポイントの大幅な悪化となった前回調査から一転して、19から26と7ポイントの改善となりました。

ヒアリング調査では業種による明暗が際立ちました。建設業は官民需ともに堅調なようで、民需では一般住宅の建築は停滞しているものの、それを活発な投資物件が補う状況になっているとのことでした。そして一部からは仕入価格の上昇を販売価格に転嫁できつつあるという明るい声が聞かれました。今しばらくはこの状態が続くであろうと予想されていますが、これまで幾度となく指摘されてきた人手不足については、最近では募集をしても人手が集まらないどころか社員の引き抜きが生じており、経営へのさらなる影響が懸念されています。

製造業でも輸出の増大を背景に自動車やロボット、医療機器部品、半導体関連企業と幅広い分野から好調さを指摘する声が上がりました。とはいえ自動車関連企業についてみれば、それは堅調な北米向けの部品を生産する企業など一部に限定されているようです。そして好調な企業からも短期的な仕事量は確保できているものの、円安の進展にもかかわらず海外生産の進展に歯止めがかかっていないことから、先行きに対する不安感は決して小さくないとの意見が出されました。加えて、ここでも人手不足やそれに伴う労務費の上昇、電気料金・原材料費の上昇が深刻な問題となっており、繁忙な割には利益につながっていないことを憂慮する声が聞かれました。今回の調査でも個人消費関連企業にまで回復が波及しているという声は聞かれませんでした。

DI値においては改善が続く愛知経済ですが、その動きは小さく消費税率引き上げ前の水準にまで回復していません。現在は仕事量があり、短期的な先行きは明るいことがDI値の改善をもたらしていますが、自助努力だけでは解決が難しい問題が発生していることや長期的な展望については回復が持続しうる要素が見いだせないため、手放しで喜べる状態ではないのが現状のようです。しかし今回の調査では、特に厳しい状況が長く続く個人消費関連企業から、積極的に他社との差別化に取り組んで業績を改善させたとの報告もありました。山積する諸問題への対処に追われるなかでも、自社の新たな強みを見つけ実践していくことが求められます。

[調査要項]
 1.調査時   2015年2月16日~2月27日
 2.対象企業  愛知中小企業家同友会会員企業
 3.調査方法  会員専用サイト「あいどる」(一部FAX)にて配信、自計記入、回収
 4.回答企業  会員企業より1,271社の回答を得た。業種内訳は以下。
   (建設業213社、製造業291社、流通業393社、サービス業374社)
 5.平均従業員 31.1名(中央値 8名)

なお、本報告は愛知中小企業家同友会・経営環境調査委員会(委員長、太田厚・(株)太田電工社社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議(座長、山口義行立教大学教授)での検討を経てなされたものである。

【業況判断】
今月の状況、小幅ながら3期連続の改善

「今月の状況」DIは前回の23から25と2ポイント改善した。2ポイントと小幅ながらこれで3期連続の改善である。業種別でみると、建設業が43から46と3ポイント、流通業が12から14と2ポイント、サービス業が24から28と4ポイントの改善となった。製造業だけは23から22と横ばいで推移している。前年同月比は前回の3から4とほとんど変化が見られなかった。業種別では建設業が8から11と3ポイント、サービス業が11から13と2ポイント改善したが、流通業は△1から△3と2ポイント悪化した。製造業は△3から△2とここでも横ばいでの推移となっている。3ヶ月後の次期見通しは前回の19から7ポイント改善して26となった。業種別では製造業が10から24と14ポイント、流通業が14から18と4ポイント、サービス業が22から34と12ポイントの見通し改善となったが、建設業だけは38から33と5ポイント見通しが悪化した。

業況推移DIグラフ (クリックすると大きく表示します)

業況推移DIグラフ
(クリックすると大きく表示します)

【売上高】・【経常利益】
売上高・経常利益ともに、サービス業で大きく改善

売上高DI(前年同月比)は前回の6から7と横ばいでの推移となった。業種別でみると、サービス業では12から20と大きく改善したが、建設業は11から9、製造業は1から0、流通業は2から0とほぼ横ばいであった。次期見通しは前回の3から8ポイント改善して11となった。業種別では、製造業が△3から3、流通業が△3から4と「増加」見通し超過に転じ、サービス業は7から22と15ポイント改善した。建設業は16から14と横ばいで推移した。

経常利益DI(今月の状況)は前回調査の20から変化がなかった。しかし業種得別でみると、建設業が27から31と4ポイント、サービス業が20から29と9ポイント改善したのに対し、製造業が26から20、流通業が12から6と6ポイント悪化しており、それぞれ動きがあった。前年同月比は前回の1から2と横ばいでの推移となっている。業種別では、建設業が6から0と6ポイント悪化したが、製造業が△3から0と3ポイント、サービス業が5から10と5ポイント改善した。流通業は△2から△3と横ばいであった。次期見通しは前回の13から9ポイント改善して22となった。業種別では製造業が10から17と7ポイント、流通業が9から15と6ポイント、サービス業が16から33と17ポイントの見通し改善となった。建設業だけは22から23と横ばいでの推移となっている。

売上高推移DIグラフ (クリックすると大きく表示します)

売上高推移DIグラフ
(クリックすると大きく表示します)

経常利益推移DIグラフ (クリックすると大きく表示します)

経常利益推移DIグラフ
(クリックすると大きく表示します)

【在庫】
「過剰」超過幅が縮小

今月の状況DIは、前回調査の13から8と5ポイント「過剰」超過幅が縮小した。業種別で見ると、製造業が11から10と横ばいで推移しているが、流通業は16から6と10ポイントの「過剰」超過幅縮小となった。前年同月比も前回の11から2と9ポイントの「増加」超過幅縮小となった。業種別でみても、製造業(10→5)、流通業(13→△1)と「増加」超過幅が縮小した。流通業は「減少」超過に転じたが、これは2011年5月調査以来のことである。次期見通しも前回の12から4と8ポイントの「過剰」超過幅縮小となった。業種別でも、製造業(12→9)・流通業(13→0)と両業種で「過剰」見通しの超過幅縮小となっている。

【取引条件】
サービス業が次期見通しで「好転」超過に

前年同月比DIは前回の△1から変化がなかった。2014年2月調査から大きな変化は見られない。業種別では、建設業(8→5)では「好転」超過幅が3ポイント縮小し、流通業(△9→△5)では「悪化」超過幅が縮小した。製造業(1→2)・サービス業(△1→△2)は横ばいで推移した。次期見通しも前回の0から1と大きな変化はなかった。業種別では、建設業(8→7)・製造業(2→0)は横ばいでの推移となったが、流通業(△5→△1)「悪化」見通しの超過幅が縮小した。サービス業は△2から2と「好転」見通し超過に転じた。

【資金繰り】
今月の状況、大きな変化なし

今月の状況DIは前回の△25から変化がなかった。業種別でみると、建設業(△20→△22)・流通業(△28→△29)は横ばいでの推移となったが、製造業(△18→△22)は「窮屈」超過幅が拡大した。反対にサービス業(△30→△24)では縮小した。次期見通しは前回の△28から6ポイント「窮屈」超過幅が縮小して△22となった。業種別では流通業(△32→△27)・サービス業(△31→△16)では「窮屈」見通しの超過幅が縮小したが、建設業(△24→△23)・製造業(△22→△24)はほとんど動きがなかった。

【設備過不足】・【施設稼働率】
設備過不足、今月の状況・次期見通しともに「不足」超過幅拡大
施設稼働率、今月の状況で2013年8月調査以来の「低下」超過

設備過不足DI(今月の状況)は前回調査の△17から△20と3ポイントの「不足」超過幅拡大となった。業種別でみると、建設業(△27→△23)だけは「不足」超過幅が縮小したが、製造業(△15→△22)・サービス業(△19→△22)では拡大した。流通業(△11→△13)は横ばいであった。次期見通しも前回の△16から△19と3ポイント「不足」超過幅が拡大した。業種別でみると、建設業(△23→△20)は「不足」見通しの超過幅が縮小したが、製造業(△14→△24)・サービス業(△19→△23)は拡大した。流通業(△12)は前回から変化がなかった。

施設稼働率DI(前年同月比)は前回調査の0から△3と「低下」超過に転じた。これは2013年8月調査以来のことである。業種別でみると、製造業は前回の1から変化がなかったが、流通業は△3から△7と「低下」超過幅が拡大した。次期見通しは前回の△1から変化がなかった。業種別では、製造業が△2から4と「上昇」見通しの超過に転じたが、流通業は△1から△6と「低下」見通しの超過幅が拡大した。

【雇用】
今月の状況で過去最高の不足感

今月の状況DIは前回の△43から△46と「不足」超過幅が3ポイント拡大した。回答した企業の53%が「不足」していると感じており、調査開始以来最高の不足感となった。業種別でみると、建設業(△57→△59)・製造業(△37→△39)は大きな変化がなかった。流通業(△43→△40)は「不足」超過幅が縮小したが、サービス業(△40→△49)では反対に拡大した。次期見通しは前回調査の△41から△39とわずかな動きにとどまった。業種別では、建設業(△57→△54)・製造業(△34→△31)・流通業(△40→△35)で「不足」見通しの超過幅が縮小したが、サービス業(△39→△42)だけは拡大した。

【価格変動】
仕入価格、「上昇」超過幅縮小傾向続く
販売価格、流通業・サービス業が牽引して「上昇」超過幅拡大

仕入価格変動DI(今月の状況)は前回の41から37と4ポイントの「上昇」超過幅縮小となった。これで縮小傾向は3期連続である。業種別にみても、製造業(49→41)・流通業(40→37)では「上昇」超過幅が縮小したが、建設業(46→44)・サービス業(30→29)では大きな変化はなかった。前年同月比も前回の45から39と6ポイントの「上昇」超過幅縮小となった。ここでも3期連続の縮小である。業種別でみると、サービス業(31→30)はわずかな動きとなったが、建設業(55→47)・製造業(55→49)・流通業(42→36)では「上昇」超過幅が縮小した。次期見通しも前回の35から30と5ポイントの「上昇」超過幅縮小となった。業種別でみると、建設業(43→35)・製造業(40→33)・流通業(36→31)では「上昇」見通しの超過幅が縮小したが、サービス業(21→22)は横ばいでの推移となった。

販売価格変動DI(今月の状況)は前回の5から5ポイント「上昇」超過幅が拡大して10となった。業種別でみると、建設業(17→15)・製造業(2→3)は大きな動きはなかったが、流通業(4→15)・サービス業(△1→7)では「上昇」超過幅が拡大した。前年同月比も前回の6から12と6ポイント「上昇」超過幅が拡大した。業種別でみると、建設業(15→18)・流通業(3→16)・サービス業(3→8)で「上昇」超過幅が拡大した。製造業(6)は前回から動きがなかった。次期見通しは前回の5から6と横ばいで推移した。業種別でみると、サービス業(△2→3)で「上昇」見通し超過に転じた。建設業(12→12)・製造業(4→2)・流通業(8→9)は大きな変化がなかった。

【借入金利】
短期・長期ともに大きな変化なし

短期借入金利DIは前回調査の△3から△5とわずかな動きにとどまった。業種別でみると、建設業(△3→△9)・製造業(△2→△7)で「低下」超過幅が拡大した。流通業(△5)は前回から変化がなく、サービス業(△1→△3)は横ばいで推移した。

長期借入金利DIも前回の△7から△8と横ばいでの推移となった。業種別でみると、建設業(△3→△6)・製造業(△7→△12)は「低下」超過幅が拡大したが、流通業(△11→△9)は横ばい、サービス業(△3→△3)は変化がなかった。

【経営上の力点など】
経営上の問題点、「従業員の不足」が41%で第1位に

全業種で見た経営上の問題点は、第1位が「従業員の不足」(41%)であった。それに「民間需要の停滞」(26%)、「人件費の増加」(24%)が続いた。業種別で特徴があったのは、建設業の第2位に「下請業者の確保難」(40%)、製造業の第2位に「仕入単価の上昇」(27%)、サービス業の第2位に「新規参入者の増加」(29%)があったことである。

全業種における経営上の力点は「付加価値の増大」(56%)が第1位となった。次いで第2位が「新規受注(顧客)の確保」(55%)、第3位が「人材確保」(35%)となっている。


<会員の声(業種別)>

(1)建設業

●「今月の状況」として、業況判断DI(43→46)、経常利益DI(27→31)共に好調さを示しました。その反面、資金繰りDIは、△20→△22と悪化傾向が続き、雇用動向DIは△57→△59と、1994年に調査を開始して以来、最悪の人手不足状態に陥っています。仕入価格DIは46→44と材料費の高騰傾向は続き、それに対して販売価格DIは17→15と改善しておらず企業の利益を圧迫しています。

期待される名古屋駅前の建築ラッシュは、「地元の業者はほとんどやっていない。大手ゼネコンが業者を県外から連れてくる」ようです。また、深刻な人手不足について、「仕事量から推測すると今の労働人口でも賄える」という声も聞かれます。人手不足のひとつの原因は、人材の引き抜きにあるようです。現場監督など有資格者がいなければ仕事も受注できないといいます。

社員が転職できる環境に対応するため、経営指針で将来不安を払拭し、経営者の姿勢から信頼を深め、生き甲斐を持って働くことができる職場づくりが望まれます。(事務局 八田)

1.一般建築

  • 昨年の消費増税の影響で、増税前の駆け込み需要が増大し、人手不足の状況に陥ったが、増税後は、急激に消費の縮小のため、仕事量が激減した。ただでさえ少ない仕事を業者間で取り合うため、販売先からさらなる工事価格の値下げ要請をうけ、経営としては苦しい状態になった。年が明け、仕事量自体は緩やかに回復傾向にあるが、下がった価格は急には戻らない。加えて、業界全体として、作業員の高齢化と不足が深刻である。

2.土木建築

  • 建設物価上昇に伴う価格転嫁がしにくく、客先が抑えにかかってきている。物件の先行きは見えない。少し停滞気味な感じがして、仕事が増える様子は感じられない。いろいろな所で受注欲しさのダンピングが散見される。業者をこれ以上泣かせられないので、そのような物件は断るしかない。

3.鉄筋・鉄骨

  • 近年の印象は、大手企業は大型・長期案件を既に握っており、手間単価も上昇感が伺える。中堅以下ゼネコンは複数業者による入札により、僅差で失注・叩き合いが始まっている。鋼材費(単価)は横這いの値下げ傾向なので、手間単価に影響することはないが、今後の反発値上げ(手間単価値下げ影響)を懸念している。鉄筋同業他社をみると、仕事量の偏りがあるようにも感じる。

4.内装・リフォーム

  • 建築業界は5次受け業者が普通にある。間に入る業者が多すぎるのか、責任逃れなのか分からないが、現場にすら顔も出さない業者も多い。職人不足や後継者の問題など問題があるが、建築現場が高齢化している。資格だけでペーパーマージンを集める会社がもっと減ると職人の活気も上がり市場価格の適正化など業界全体のモチベーションも上がると思う。

5.住宅設備

  • 元請けへの新築の需要が減り、売上・仕事量が減少している。これは消費税増税前に先食いが原因である。大企業優遇の法人税減税はしないで10%への増税を取りやめて欲しい。これ以上消費者が財布の紐を締められたら、今の雇用を維持するのも難しくなる。

6.電気・通信

  • 通信業界では、単価が年々減少しているのに、作業工程が増加している。これにより社員の向上意識と作業効率も低下してしまい、売上も減少してしまう。年度末に向けて、人手不足が深刻化している。またスマートフォンの登場で、電話・新聞・パソコン・デジカメ・FAXが必要でなくなると予測している。つまり、これまでの仕事がなくなる構造不況への突入である。通信料の固定価格で携帯業界は瀕死状態になり、設備投資がストップするなど、外部環境分析は生き残りに直結する。

7.空調設備

  • 業界の成熟、顧客創造の遅れ、お客様へ提供する付加価値不足など、社内の課題改善が必要である。外部環境の悪化はあるが経営戦略を実践すれば十分成長できると感じる。マクロ経済も意識して、業界への影響を考え、行動計画を達成していきたい。

8.建築設計

  • 年末より忙しくなったが、年が明けて緩くなり、4月からの仕事は減る見込み。投資物件は底堅いが、一般住宅は厳しい状況で、貧富の差が広がっている。消費税増税で庶民は収入が減り、株価倍増のアベノミクス効果で富裕層は潤っている。また大企業の再編で人事異動や駅前プロジェクトがあり、大手には仕事がたくさんある。反面、そういった関係が築けない地元のゼネコンは慌て始めている。
(2)製造業

●「今月の状況」DI値はやや低下(業況判断23→22、経常利益26→20)、次期見通しは上昇(業況判断10→24、売上高△3→3、経常利益10→17)と判断が難しい局面です。(グラフ参照)

製造業 業況推移DIグラフ (クリックすると大きく表示します)

製造業 業況推移DIグラフ
(クリックすると大きく表示します)

客先や取扱品目および車種などにより仕事の繁閑二極化が激しく、仕事はあっても短納期や難しい仕事や人材難および賃上げ圧力などの要因が中小企業を大きく圧迫し複雑で困難な問題が増加しています。また、自動車関連は円安でも車種など生産体制は計画通りで海外生産化の流れは変わらないといわれます。

景況分析会議では、中国スマートフォン製造業向けのロボットや工作機械などが非常な活況であること、半導体や精密機械や自動車部品などの外需も堅調であること、しかし業界内再編が強力に進められ二極化の拡大や先行き懸念を含む後継者難などで廃業や統合M&Aが水面下で進行していること、大手の強引な引き抜きや人材難と賃上げや資材高などへの対策や苦慮が増していること、などが報告されました。 (事務局 加藤)

1.金属、樹脂などの量産加工

  • 海外生産化の流れは円安政策でも変えられない。大型補助金による設備投資もそろそろ一段落し、年度後半は内示割れが続きピークは過ぎたと思う。電気代が粗利の5%近く増収減益のためコスト削減を努力。
  • 円高の時に原価低減要請で製造単価を下げたが円安になっても元には戻らない。大手メーカーや大手銀行が法人税を納めなくてもいい状況が理解できない。
  • 大企業の賃上げ記事が取り上げられることが多いが、中小企業では賃上げできるだけの余力がない。しかし物価が上昇していることや社員のモチベーションを考えると何とか捻出せざるを得ず非常に苦しい。
  • 輸出頼りが大きいのが不安要素。決して国内景気が良くなっているわけではないのが今後の課題。
  • 自動車関係取引先の動きが悪く、材料屋からも暇だという声。先行き不安感は拭い去れない。
  • 忙しいが利益が出ず苦しんでいる。後継者不足や不採算による町工場の減少、価格競争の鈍化

2.熱処理、表面処理、鍛造、鋳造関係

  • 技術者不足、人材不足により技能伝承が進まない。電気代の高騰、海外への拠点移動が経営問題。
  • 株価は上がっていても日銀や年金機構の買い上げが主要因だと思う。仕事量は悪くはないがさほど多くもない。欧州ギリシャ、アメリカの自動車サブプライムローン、中国後退等の外的要因が心配。一番困るのは仕事量の急増、急減だ。

3.試作、治工具、設備・機械部品、機械

  • 新聞紙上の情報と当社の現状があまりに違いすぎる。
  • 短納期特急品の依頼が多く生産予定を頻繁に見直すことにより生産効率が低下。受注量の増加に対し人材の確保と社員教育が追いつかず稼働率が低下し収益率が伸びるどころか悪化してしまっている。客先要請による設備投資も予定遅れで動かない設備が発生し固定費負担のみ増加。
  • 人材確保が非常に難しく仕事を断らざるを得ない。負荷のバランスが非常に悪く利益に繋がりにくい。新しいやり方、新しいものを生み出し続ける努力をしないと残っていけない。
  • 大企業の値下げ要求は新規売り込みを装ったり多数者購買による改善提案と称して値下げをしてくる。
  • 短納期で高い技術力を要求される案件であっても受注価格は低く押さえられるため忙殺されている感。

4.特殊印刷・印刷、建材

  • 大手メーカー国内生産の動きがあるが要求単価が安く利益の上がる仕事ではないため景気上昇感はない。
  • 昨年9月頃から非常に厳しい状況が続いている。定期受注周期が遅くなり客先の仕事や金が動いていない感じ。昨年から倒産ではなく廃業が目立ってきた。仕事の引き継ぎと新規受注の確保に細心の注力。
  • 官公庁の競争見積もりは価格デフレを進行させており参加業者は体力消耗の一方。高年齢者から若手へのシフトが課題。雇用延長は政府の年金事業失策のつけを企業負担にしているに過ぎないと思う。
  • 住設部品の動きが悪く先の見通しも良くない上にコストダウン要請。人材不足で動きが悪いのはわかるが下請けへのコストダウン要請は厳しい。

5.食品、繊維、雑貨など

  • 後継者不足と建設費の価格上昇および需要頭打ちなどの理由から、大手が農場新設から買収に戦略をシフトし商品価格の低下が抑えられる可能性あり。
  • 大企業有利の経済政策を見直し、地方地域の商店の活性化と市民の生活環境の改革改善政策が早急に必要。大型店出店やあり方も今一度見直しが必要であり、世直しと市民の活力ある生活が始まることを望む。
  • 設備老朽化が深刻だが資金が厳しくものづくり補助金を獲得したい。
  • 円安、中国製品の高騰による国産への回帰があったが国内工場の生産機能低下により陶磁器製マグカップ商品の納期が間に合わず機会損失増加。部材生地輸入を手控えていたが高くなっても圧倒的な生産量を誇る中国製品の活用を再度検討する必要に迫られている。
  • 原油価格が大幅に下落してもPP原料の下がりが非常に遅く業界全体で裏がある話しが伝わってくる。
(3)流通業

●今月の業況判断DIは、12→14と若干好転しているものの、その内訳は「良い」と「悪い」が減少し、「さほど良くない」が増加しています。今月の経常利益DIは12→6、売上高DIは前年同月比2→0といずれも低下し、前回調査で予想されたように、好転の兆しは見られませんでした。仕入価格DIは40→37、販売価格DIが4→15と、仕入と販売の差は前回調査から14ポイント縮小しましたが、「ある程度販売価格に転嫁できるが、今の景気状況で消費者が耐えられるだろうか」という声もありました。そのほか特徴として、円安による仕入価格の急上昇が利益を圧迫している状況が複数の業界に見られました。

次期見通しは、業況判断DIが14→18、売上高DIが△3→4、経常利益が9→15と好転しています。「付加価値の高い企業が業績を伸ばしている(食料品)」「まだ売上に直結しないが、客先の景気は上がってきていると感じる(物流サービス)」という一方で、「自動車関連は短期的には仕事はあるが、数か月先の仕事は全く見えない(機械器具)」など楽観視できない状況にあります。(事務局 岩附)

1.機械器具(自動車、事務機器、電設資材等)

  • 必要な人材の確保に四苦八苦している。自動車関係は取引先の選別、部品メーカーの集約の動きが進みつつある。技術的なものだけでなく、CSR、BCPを理由に選別に入っている感じがある。
  • 同業者の後継者不足や他業界、他業種からの参入で、業界図が変わりつつある。その中で生き残っていくために今からいろいろな選択肢を検討し、決断していかなければならない。
  • 大手企業は下請企業の後継者の有無を調査し、仕事を出す先の見直しをしながら、単価的に厳しく無理強いしているところがある。

2.建築資材

  • 資源の価格急落に伴い、薄利多売の卸売業では利益確保が非常に困難。これ以上仕事量が減ると厳しい現状。
  • 円安による仕入れ価格の急上昇で利益圧迫。比例して関税も高くなる。しかし、市場は建材に対してそこまで値上げ容認ムードは無い。なんだかんだでどこのメーカーも安値で取ろうとする。

3.繊維、衣服、雑貨

  • 昨年の消費税増税前の駆け込み需要で、例年よりも昨年2月の売上は大きかった。しかし、その後の動きが非常に悪く、弊社だけでなく業界として、春夏物の素材が余り、なかなか売りにくい状況にある。
  • 円安で輸入業者が苦労している。倒産する会社もある。

4.飲食料品

  • 民間の需要の停滞(寒い気候・財布のひもが固い・客単価の下げ)、天候に左右される野菜・果実の生育不足、発育不足、燃油の高騰、配送大の高騰、アメリカの港湾ストの影響により今までに経験した事の無い価格高騰。仕入れ単価高騰、納品価格の値下げ要請と、かなり厳しい状況。
  • 円安による仕入れ価格の上昇がとまらない。ガソリンが下がっても、その差益を上回る仕入価格上昇。最低賃金法が毎年上昇しているので、販売価格は上がらないのに人件費が増大している。

5.家具、什器

  • クライアントの業界である飲食業、介護業、医業において4月に近くなって、人の動きが出てきている。特に新卒の求人に動きがある。人材難だった会社が、少しずつ好転し始めている。

6.運輸、情報通信

  • 原油価格の下落により、燃料費が低下しつつあるが、今まで値上げ要請機運だったものが、逆にそれが値下げ要請要因となりそう。今までもこれからも人材不足に如何に対応するかが最大の経営課題。
  • 製品開発の期間が短期化して、コストや納期がより厳しくなっている。現状の客先だけではますます窮屈になって行くだろう。

7.不動産、保険

  • 大企業の好景況報道で、勘違いする従業員も多い。中小企業にとっては課題も多いが、横連携を強化するには良いタイミングと言える。
  • 顧客(情報を含む)の保護や体制整備にかかる時間とコストが増大しているが、営業的には緊急経済対策の効果で若干上向くのではないかと考える。
(4)サービス業

●「今月の状況」は業況判断DI(24→28)、経常利益DI(20→29)で、「次期見通し」も業況判断DI(22→34)、経常利益DI(16→33)と、それぞれ12~17ポイントの大幅な改善を予測しています。資金繰りDIの「今月の状況」は△30→△24で横ばいですが、「次期見通し」DI(△31→△16)で窮屈幅の縮小を予測しています。しかし対法人向けと対個人向けの様相は異なっており、対法人向けでは業況判断DI(26→32)、経常利益DI(18→32)に対して、対個人向けは業況判断DI(22→16)、経常利益DI(19→19)は改善がなく、サービス業全体の改善は対法人向けの数値が牽引した結果となっています。経営上の問題点は(1)従業員の不足47%、(2)新規参入者の増加29%、(3)人件費の増加28%、対個人向けの経営上の問題点では、(1)従業員の不足(2)人件費の増加の次に税負担の増大が3番目に挙げられました。サービス業全体の経営上の力点は(1)新規受注の確保59%、(2)付加価値の増大58%、(3)人材確保35%でした。(事務局 浅井)

1.飲食関連

  • 大曽根の商圏内に同業他社や大手企業の参入が続いており、弊社もその中で存在感を出せるように試行錯誤している。1月~2月は売上が落ち込む時期なので、今後3月からの消費動向に注視している。
  • 若年層の顧客が減少し高齢者の顧客は増加している。名古屋駅への一極集中が著しい。

2.生活・健康・美容関連

  • 業界的に閑散期なので売上資金繰りに苦慮している。赤字の状況だが、春以降繁忙期に突入するので利益持ち直しに期待している。大手は円安好況でベアアップなどと言っているが、中小零細はそんな余裕もなく、仕事はあるが求人では基本給など完全に見劣りし、採用どころか面接の連絡すらない。人件費アップに備えるため販売単価の上昇等を考えるが、消費者の目線が気になる。アベノミクスとは何なのか、恩恵すらまだまだ感じられないサービス業の現実を感じている。

3.印刷・広告関連

  • 差別化を図っているが、価値と価格が比例して上がってこない。実体経済の本質的な回復にはまだ時間がかかる気がする。
  • 人手不足が深刻になりすぎ危機感を感じている。市場の縮小傾向は続き、不定期の仕事が増えている。

4.自動車関連サービス

  • 自動車修理業は今後衰退の一歩をたどるだろう。自動車の自動制御技術によって事故修理が激減、車検も整備機器の無いところでは整備もできない状況になり、民間企業は半分以下になると思う。
  • 2月3月は車検台数が多い月で受注増を予定しているが、他社では廃業するところも耳に入ってくる。

5.ビジネス支援サービス

  • 同業者が増え競争が激化、依頼者が不景気で財布のひもが固く報酬金の未回収が目立ちだした。
  • 競争が激しいので事務所固有の付加価値を早期に作り上げ新たな顧客層を開拓していく必要がある。
  • 4月以降、関っている仕事の分野で法改正や新制度開始が多い。情報を集め精査する必要がある。
  • 人手不足の状況はさらに深刻になり、弊社にとって良いチャンスといえる。より安心できる外国労働者を提供するのが、課題になる。
  • 業績が良い自動車関連企業に行くのか、パート求人の応募が極端に減り、過去10年で1番人が集まりにくく感じる。時給の引き上げを検討中であるが、ユーザーへの値上げ交渉はできる状態ではない。

6.産廃・環境関連

  • 仕事量は増えているが、廃棄物などの受け入れ先が値上げする一方、お客様からの引き取り価格は変わらず利益率が悪化している。
  • GDPがようやくプラスに振れたとはいえ、冷え切った内需のために業界は閑散としている。海外に眼を向けてみても金属相場を暴落させる要因はたくさんありすぎる。在庫を圧縮したいが、赤字では放出できない。産業の国内回帰という明るいニュースもあるが、まだまだ先は暗い。
  • 価格下落で業界全体が元気がない。中国のダンピング的な販売攻勢で日本を含むアジア全体のマーケットが冷え込んできている。景況感はまさに不景気。大企業とその系列の一部以外には、好況感はないと思う。一つの基準にはめ込むのではなく、それぞれの形にあった多様性のある施策を打たないと、日本の分厚い中間層である中小企業群の崩壊につながっていくのではないかと思う。

7.保険・医療・福祉関連

  • 人員不足と今後の収入減による先が不透明。賃金を上げて人で解消をはかりたいが難しい。
  • 4月からの介護保険法改定で報酬価格に大幅低下が見込まれ、収益にどのように影響があるかシミュレーションしている。