景況調査

第91号-2016年8月
3期ぶりに持ち直しの動き ~持続性については疑問の声も~

【概況】
【業況判断】 今月の状況・前年同月比は3期ぶり、次期見通しは4期ぶりの改善
【売上高】・【経常利益】 次期見通し、全業種で「増加」見通し超過に。経常利益、今月の状況はわずかながら3期連続の悪化
【在庫感】 製造業・流通業ともに「過剰」超過幅縮小
【取引条件】 1年間大きな変化なし
【資金繰り】 次期見通し、2期連続の「窮屈」超過幅縮小
【設備過不足】・【施設稼働率】 設備過不足、建設業・製造業で「不足」超過幅拡大。施設稼働率、前年同月比・次期見通しともに大きな変化なし
【雇用】 再び「不足」超過幅拡大
【価格変動】 仕入価格、「上昇」超過幅の縮小傾向続く。販売価格、建設業・流通業で「上昇」超過幅縮小
【借入金利】 短期・長期ともにわずかながら「低下」超過幅縮小
【経営上の力点など】 経営上の問題点、「従業員の不足」が第1位

<会員の声>

DI値推移一覧表(PDF:536KB)

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景況調査報告(2016年8月)第91号(PDF:1.34MB)


【概況】

「よい」と回答した企業から「悪い」と回答した企業を差し引いた今月の業況判断DIは、前回の15から18と3期ぶりに改善しました。また、前年同月比も△2から2と3期ぶり、3カ月後の次期見通しも22から28と4期ぶりの改善となりました。数値上では持ち直しの動きとなった愛知県経済ですが、これが最近続いてきた景気後退の底打ちを示すものか、それとも一時的な持ち直しにすぎないかは見極めが難しいのが現状です。

ヒアリング調査では、現状についてアンケート結果を裏付ける明るい話が多く聞かれましたが、先行きに対しては楽観視できないという声も少なからずあり、明暗入り混じるものとなりました。建設業からは官需に大きな動きはないものの、民需は大型マンションの建設が活発であるとの報告がありました。金利や建設費の低下がこの動きを後押ししているようです。先行きについては現在も引き合いが出てきていることから、しばらくは忙しさが続くだろうという予想がある一方で、マンションの販売不振が生じていることから、この状況がいずれ反動を生むのではないかと慎重な判断の必要を指摘する声もありました。

製造業では、補助金の影響や熊本地震による操業停止の「巻き返し」もあって持ち直しの動きがある一方、この動きが継続するかどうかについては見極めが難しい状況です。また自動車関連では二極化の進行が著しく、関連車種によって下請け企業の業況にはっきりとした明暗が見られるようです。汎用性のある自動車部品の分野では他業種の参入により競争が激しくなっていることや、これから加速すると考えられる業界再編によって今後の競争激化が懸念されるという指摘もありました。中国向け輸出は低迷が続いているものの、ロボット関連については好調だとの意見もありました。個人消費関連からは、スーパーなど小売業でデフレに逆戻りしつつあるといった声が強く、消費にはいまだ回復傾向を見出せないようです。

今後の景気動向については、日米の金融政策次第で金利や為替に大きな変化が生じる可能性があることに注意が必要です。中小企業は引き続き警戒感をもって、状況の変化を注視していかなければなりません。

[調査要項]

調査日 2016年8月22日~8月31日
対象企業 愛知中小企業家同友会
調査方法 会員専用サイト「あいどる」
回答企業 会員企業より1781社の回答を得た。業種内訳は以下。
(建設業300社、製造業394社、流通業501社、サービス業586社)
平均従業員 24.6名(中央値7名)

なお、本報告は愛知中小企業家同友会・経営環境調査委員会(委員長、太田厚・(株)太田電工社社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議での検討を経てなされたものです。

【業況判断】 今月の状況・前年同月比は3期ぶり、次期見通しは4期ぶりの改善

「今月の状況」DIは前回の15から3ポイント改善して18となった。3期ぶりの改善である。業種別で見ても、建設業が32から34と2ポイント、製造業が1から4と3ポイント、流通業が7から8と1ポイント、サービス業が24から29と5ポイント改善した。前年同月比は前回の△2から2となり「好転」超過に転じた。前年同月比も3期ぶりの改善である。業種別で見ると、製造業が△19から△15と4ポイント、流通業が△9から△5と4ポイント、サービス業が12から18と6ポイント改善したが、建設業だけは5から2と3ポイントの悪化となった。建設業の悪化はこれで4期連続である。3ヶ月後の次期見通しは前回の22から28と6ポイント改善した。次期見通しの改善は1年ぶりである。業種別では、建設業が37から43と6ポイント、製造業が6から21と15ポイント、流通業が12から19と7ポイントそれぞれ見通しを改善させたが、サービス業だけは36から33と3ポイント見通しを悪化させた。

業況推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

業況推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

【売上高】・【経常利益】
次期見通し、全業種で「増加」見通し超過に
経常利益、今月の状況はわずかながら3期連続の悪化

売上高DI(前年同月比)は前回の0から2と2ポイントながら3期ぶりの改善となった。業種別では、製造業が△17から△13、サービス業が17から21とそれぞれ4ポイント改善した。建設業は3から2と横ばいで推移し、流通業は△6で前回から変化がなかった。次期見通しも前回の7から13と6ポイントの改善となった。業種別で見ると、建設業が13から18と5ポイント、製造業が△8から5と13ポイント、流通業が△2から6と8ポイントそれぞれ見通しを改善させた。サービス業だけは23から22と小幅な動きにとどまった。

経常利益DI(今月の状況)は前回調査の20から19となった。わずかな変化幅であるが、これで3期連続の悪化である。業種別で見ると、建設業は31から34と3ポイント改善したが、流通業は13から7と6ポイント悪化した。製造業は10から9、サービス業は28から30と横ばいで推移した。前年同月比は前回の0から変化がなかった。業種別で見ても、建設業(5)・サービス業(13)は前回から変化がなかったが、製造業は△17から△11と6ポイントの改善、流通業は△3から△9から6ポイントの悪化と正反対の動きとなった。次期見通しは前回の19から24と5ポイントの改善となった。3期ぶりの見通し改善である。業種別で見ると、製造業が5から19と14ポイントもの大幅改善となったが、建設業は30から29、流通業が13から15と横ばいで推移した。サービス業は前回の31から変化がなかった。

売上高推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

売上高推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

経常利益推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

経常利益推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

【在庫感】 製造業・流通業ともに「過剰」超過幅縮小

今月の状況DIは、前回調査の12から9と3ポイント「過剰」超過幅が縮小した。3期ぶりの縮小である。業種別で見ても、製造業(11→9)・流通業(13→8)と両業種で「過剰」超過幅が縮小している。前年同月比も前回の9から7ポイント「増加」超過幅が縮小して2となった。ここでも製造業(10→0)・流通業(8→3)ともに「増加」超過幅が縮小している。次期見通しも前回の6から3と3ポイント「過剰」超過幅が縮小した。業種別では、製造業(7→3)・流通業(6→3)ともに「過剰」見通しの超過幅が縮小した。

【取引条件】 1年間大きな変化なし

前年同月比DIは前回の1から0と大きな変化はなかった。これで5期連続動きが見られない。業種別では、建設業(4→1)が3ポイント「好転」超過幅が縮小し、流通業(0→△3)は「悪化」超過幅が拡大した。製造業(△3→△4)・サービス業(5→5)は横ばいで推移した。次期見通しも前回の2から1と横ばいでの推移となった。業種別では、建設業(6→3)は「好転」見通しの超過幅が縮小したが、製造業(△2→△2)・流通業(0→△2)・サービス業(4→3)は大きな変化がなかった。

【資金繰り】 次期見通し、2期連続の「窮屈」超過幅縮小

今月の状況DIは前回の△22から△23と横ばいでの推移となった。業種別で見ると、建設業(△21→△24)では「窮屈」超過幅が拡大したが、製造業(△28→△25)では縮小した。流通業(△23→△25)・サービス業(△19→△19)では大きな変化はなかった。次期見通しは前回の△22から3ポイント「窮屈」見通しの超過幅が縮小して△19となった。これで2期連続の縮小である。業種別で見ると、製造業(△30→△23)で「窮屈」見通しの超過幅が縮小したが、建設業(△22→△20)・流通業(△22→△21)・サービス業(△17→△16)は横ばいで推移した。

【設備過不足】・【施設稼働率】
設備過不足、建設業・製造業で「不足」超過幅拡大
施設稼働率、前年同月比・次期見通しともに大きな変化なし

設備過不足DI(今月の状況)は前回調査の△13から△15と横ばいで推移した。業種別で見ると、建設業(△15→△19)・製造業(△12→△15)で「不足」超過幅が拡大した。流通業(△11→△10)・サービス業(△17→△18)はわずかな動きにとどまった。次期見通しも前回の△14から△15となり動きはなかった。業種別で見ても、建設業(△19→△17)・製造業(△13→△11)・流通業(△10→△11)・サービス業(△17→△19)と全業種で大きな変化はみられなかった。

施設稼働率DI(前年同月比)は前回調査の△10から△8となった。業種別で見ても、製造業(△13→△12)・流通業(△6→△5)ともに横ばいで推移した。次期見通しも前回の△6から△4と大きな動きはなかった。業種別で見ると、製造業(△7→△2)で「低下」見通しの超過幅が縮小し、流通業(△4→△5)は横ばいであった。

【雇用】 再び「不足」超過幅拡大

今月の状況DIは前回の△40から3ポイント「不足」超過幅が拡大して△43となった。前回調査では1年ぶりの「不足」超過幅縮小となったが、今回は再び拡大に転じた。業種別で見ると、建設業(△51→△55)・製造業(△30→△38)・サービス業(△42→△45)で「不足」超過幅が拡大したが、流通業(△38)は前回から変化がなかった。次期見通しも前回調査の△37から3ポイント「不足」超過幅が拡大して△40となった。業種別で見ると、建設業(△55→△57)・製造業(△29→△32)・サービス業(△37→△41)で「不足」見通しの超過幅が拡大したが、流通業(△33→△33)は変化がなかった。

【価格変動】
仕入価格、「上昇」超過幅の縮小傾向続く
販売価格、建設業・流通業で「上昇」超過幅縮小

仕入価格変動DI(今月の状況)は前回の14から2ポイント「上昇」超過幅が縮小して12となった。業種別で見ても、建設業(21→19)・製造業(7→5)・流通業(15→11)・サービス業(15→14)と全業種で小幅ながら「上昇」超過幅の縮小となった。前年同月比は前回の14から10と4ポイント「上昇」超過幅が縮小した。2014年5月調査(53)をピークに「上昇」超過幅の縮小が2年以上続いている。業種別で見ると、建設業(23→15)・流通業(14→9)・サービス業(15→12)で「上昇」超過幅が縮小したが、製造業(5)は前回から変化がなかった。次期見通しは前回の10から9となった。わずかな変化ではあるが、2014年5月調査以降、「上昇」見通しの超過幅が縮小している。業種別で見ても、建設業(12→11)・製造業(5→5)・流通業(10→10)は横ばいで推移したが、サービス業(14→11)は「上昇」見通しの超過幅が3ポイント縮小した。

販売価格変動DI(今月の状況)は前回の2から1と大きな変化はなかった。業種別でみると、建設業(7→4)・流通業(3→0)は3ポイント「上昇」超過幅が縮小した。製造業(△7)は前回から変化がなく、サービス業(6→4)は横ばいで推移した。前年同月比も前回の3から1と横ばいでの推移となった。業種別で見ると、建設業(6→1)・流通業(6→0)で「上昇」超過幅が縮小した。製造業(△7)は前回から変化がなく、サービス業(7→6)は横ばいで推移した。次期見通しは前回調査(1)から変化がなかった。これで2期連続の変化なしである。業種別で見ると、建設業(3→1)・流通業(4→2)はわずかながら「上昇」見通しの超過幅が縮小したが、製造業(△5→△4)・サービス業(3→4)に大きな動きはなかった。

【借入金利】 短期・長期ともにわずかながら「低下」超過幅縮小

短期借入金利DIは前回調査の△8から△7となった。業種別で見ると、建設業(△11→△7)・流通業(△10→△7)で「低下」超過幅が縮小し、製造業(△9→△11)は小幅ながら拡大した。サービス業(△5)は前回から変化がなかった。

長期借入金利DIは前回調査の△11から△9となった。業種別で見ると、建設業(△10→△8)・製造業(△14→△13)・流通業(△14→△12)・サービス業(△6→△6)で大きな動きは見られなかった。

【経営上の力点など】 経営上の問題点、「従業員の不足」が第1位

全業種で見た経営上の問題点は、前回から変化なく第1位「従業員の不足」(43%)、第2位「民間需要の停滞(28%)、第3位「人件費の増加」(25%)となっている。業種別で見て特徴があったのは、建設業で「下請業者の確保難」(38%)が第2位に、サービス業で「新規参入者の増加」(29%)が、流通業で「取引先の減少」(25%)が第3位に入ったことである。文書回答では「社会保障費の増加」や「事業継承」などがあった。

全業種における経営上の力点も、前回同様、第1位が「付加価値の増大」(56%)、第2位が「新規受注(顧客)の確保」(52%)、第3位が「人材確保」(35%)であった。業種別で特徴があったのは、製造業で第3位に「社員教育」(35%)が入ったことである。

<会員の声(業種別)>

(1)建設業

●業況判断DIは、「今月の状況」(32→34)、「次期見通し」(37→43)ともに全業種で最高で、業況感を建設業が大きく引き上げています。経常利益DIも(31→34)と改善傾向を示す反面、前年同月比の売上高DIは2と売上増と売上減の企業が拮抗し、資金繰りDIでは△21→△24と悪化、雇用動向DIも△51→△55と人手不足感がさらに高まっている状態です。仕入価格DIは21→19に対して、販売価格DIは7→4となっており、引き続き企業利益を圧迫しています。

消費税10%を見越した物件の着工が夏場に集中し、名古屋市内の大型物件と相まって仕事量は増加しているようです。一方、建築関係の提出書類は増加傾向にあり、膨大な書類作成のため本業が圧迫されています。先行きが不透明なため若年層が集まらず、人手不足は継続的に深刻な状態が続いています。

空室率が上がる中でも建設が進むマンション群など、需給バランスの乖離に懸念を示す声も聞かれます。持続可能な地域社会づくりへのインフラ整備や、地道ながらもライフラインを支え安心な暮らしを支える公共投資など、地元の中小企業が活躍できる循環型の経済活性化政策が期待されます。 (事務局 八田)

1.総合工事

  • 住宅業界に大手IT企業が需要を包囲しようと便利なネットを駆使し簡素化し一次請けに上り出ており、顧客獲得に動いている。本業で営んできた私達はネットを駆使し囲い込む事では弱く苦戦。並行し全国的にネットで価格が破壊され、適正価格が無くなり、儲からなくなった職人さんは激減しており、不足している。まさに負のスパイラルである。差別化するしかなく、大手ではできない細かな提案、本当に良いものを営業するしかない会社が増えている。合い見積もりも激化し、大変な時代である。
  • 昨年と比べると仕事の出方が遅くなっている。夏頃から通常であれば受注が増えてくるが、今年は10月頃からになりそうである。4月から夏場にかけて民需が停滞していた。また、業種柄中々若手の人材確保が出来ていない。大卒も高卒も営業・現場管理者の応募者さえ現状いない状況。高卒に関しては沖縄県にも募集をかけているが、今のところ反応はない。

2.土木、鉄筋・鉄骨、基礎工事関連

  • 建設業法により社会保険加入などが義務付けられている。これは企業側の問題だけでない為、このまま予定通り規制されると人材不足は避けられず、大半の現場作業員が職を失う事になる。安定する仕事というイメージを作り若い世代の確保をする為だと思うが、デメリットが目立ち厳しい状況である。
  • 当初、今年は消費税が10%になることを見越して、早々と契約した物件の着工が夏場にかけて集中している。建設業全体としては、今後、秋から冬にかけて非常に厳しい受注難になると予測する。

3.電気・通信工事、設備・管工事

  • 同業者で廃業する業者が増えてきている。元請けからの要望が多くなってくるが、単位時間あたりの金額の低下が止まらない。将来への不安感などで事故など発生しないか心配している。
  • 昔に比べてそれぞれの工事に際し提出する書類が膨大な量になっている。工事に費やす時間より書類を作成している時間のほうが多いぐらいだ。官公需、民需共に国の指導ということで私達末端はまさに国に潰される感じがする。
  • ここ数年元請けの建築会社、設計事務所が照明器具などを仕入れ、私達のような下請けに支給し、下請けは取り付けるだけの人工仕事のみになっている。儲けを吸い取られている状況がずっと続いていて、利益が増えていかない。

4.内装、リフォーム

  • まだ消費税8%UPした影響が続いていて、景気が悪くなっている。名古屋地域の工事量が増えない理由は、設備投資をしない点にある。政府の景気対策は理解できるが、財務省や日銀の目指していることは理解できない。厚労省においても、育成事業等に予算を使いたいばかりで、それに群がる団体が多すぎる。団体を通じて参加強制など企業を巻き込まないで欲しい。
  • 建築業界(特に店舗内装業)の家具は以前より中国製品が増える事が多くなった。例えば総工事金額が普通だと1500万程の現場なら、そのうち500~600万は什器(家具)が占める。しかし最近は什器(家具)だけ別途にされ、中国から送られてくるパターンが多い。一番美味しい所を持って行かれるのは痛いが、以前は粗悪な中国製品が多く、日本で作り直す事が多かった。しかし今では、中国の技術が上がり、日本で出来ない方法などで家具やガラス・金物等で製作してきている。しかも空輸しても日本より安い。日本のオーダー家具屋や金物・ガラス屋はかなり減少する。

5.建築設計

  • 5月頃まで売上が落ち込み不安定だったが、仕事量は回復している。大きなプロジェクトを扱う会社は伸びている。名古屋市内で大型マンションが建ち、売れいきは芳しくなくても次の物件の建築に取り組んでいる。超低金利のため物件が売れなくても資金を借り、次の物件を作れば済むようである。
(2)製造業

●業況判断DIは、「今月の状況」「前年同月比」「次期見通し」ともに、全業種で回復が見られます。特に製造業では、前年同月比で売上DIが△17→△13、経常利益DIも△17→△11と、依然として減少超過ではありますが、改善傾向を示しています。次期見通しでも売上高DIで△8→5、経常利益で5→19と、他業種で悪化または横這いも見られる中、確実に改善傾向が見られます。前回調査時と比較して回答数が大きく増加しているため単純には比較できませんが、6月末にものづくり補助金が下りたことで、期待感が高まっていると見られる一方、「影響は設備投資など特定の企業・分野に限られるのではないか」との見方もあります。また、自動車関連産業を中心に利益が出ていますが、これは為替差益による側面が大きく、実際の生産数自体は伸びていないこと、また、人手不足感は労働力人口の減少に起因するものであるとの指摘もあり、利益が出ていることと人手不足感が強いことを好景気に結びつけることの危険性も指摘されています。 (井上一)

1.金属加工・樹脂加工

  • けっして景況感はよくない。海外へ出ることが本当に私達の務めなのか。
  • 自動車業界は、爆発事故・地震等の影響で生産が落ちていたが、弊社の部品出荷状況から見ると、ようやく昨年並みに戻った程度で先が不透明な状態である。
  • ここ数ヶ月で、材料メーカー、部品メーカーの、飛び込み営業がすごく増えた。特に一般材料はほとんど値段がどの企業も変わらず、苦しそうな感じがする。
  • 6月以降民間顧客の注文が減ってきている。一時的なものなのか、ある程度続くものなのか見極めが難しい。

2.機械部品・機械製造

  • 東南アジアでの自動車生産の低迷さは底を打った感が少し感じられるようになった。
  • 近年、補助金乱発による設備投資で作文力が設備投資に関係している。製造業の本業の力量とは別の力での補助金受け取りに違和感がある。また、補助金が通るから設備を入れる企業が見受けられ、機械を入れたから仕事が欲しいと逆の順番。結果、価格が下がる傾向が出そうで不安。通る所は何回も通り、通せないところは指をくわえて見ている。ここ数年で、今まで培ってきた所とは別の力で企業差が出て、五年後位に廃業に追いやられるところが出るのではないか。
  • 仕事の動きが鈍い上に、上場企業の利益確保のためだけの値下げ要請。さらに秋には材料値上げのうわさもちらほら出ている。工場経営も非常に厳しい感じになっている。
  • 最近、生コンの出荷量が減少してきており、生コン工場の稼働率が低下することによるメンテナンス業務の減少が進んでいる。原因は、生コンを使用する需要家である、ゼネコンの現場における専門業者の人手不足を補うための、工法の変更が大きな要因。去年から徐々にそういった変化が見え始め、一過性の事象ではなくなってきた。

3.印刷・包装関連

  • 同業者の廃業、事業縮小により、商権は増加傾向にある。ところが、人材に関しては、地域の大手自動車産業の高待遇求人もあり、確保に大変苦戦している。30代中堅社員の離職により、残った社員の負担が増え、今後も更なる離職を引き止められない可能性が高く、深刻な事態である。
  • 紙離れ、印刷離れの傾向がずっと続いている。業界は全体的に低調だが、その中で企業間格差が以前よりまして鮮明になってきているような気がする。
  • 東日本、熊本の震災の影響から不況になっているのは明白と言える。内需の拡大は消費人口の減少により見込みは薄い。この先、2020年の東京オリンピックによる特需の恩恵を受けられる企業とそうでない企業で大きな差が出るのではないかと予測する。

4.食品・繊維製品・雑貨・身の回り品製造業

  • 自社では以前から付加価値の高い製品を販売してきたが、大手企業も価格ではなく、付加価値の高い製品に目をつけだしたので、今後の不安要素になってくると感じる。
  • 為替が円高傾向にあり、輸入品の販売価格の値下げを要求されてきている。100円を切るような円高になれば値下げ競争の再燃となる。
  • 大型物件の情報はあるが、いつも噂が先走り、先を見るのが難しい業界だと思う。8月は忙しいと言っていたが、後ろにずれ込んでいる。
  • 同業者の減少に歯止めが利かず、国内生産力の減少が著しい。量産品は更に輸入に頼らざるえない現状に。技術力そのものが資源であるはずの日本。この国のものづくりはどうなってしまうのか未来が不安である。
  • 物作り補助金など、木工業界にとって取りづらくなって、車や機械業界のように、補助金をいただけない。最先端技術でなくても、指針を作り雇用をしている企業に、国の補助が欲しい。
(3)流通業

●業況判断DIをみると、「今月の状況」「前年同月比」「次期見通し」のすべてが、前回よりもわずかに改善された結果となりました。しかし経常利益DIにおいて、先月5月期結果と今回8月の調査結果を比較すると、今月の状況(13→7)、前年同月比(△3→△9)とそれぞれ6ポイント下降しており、業界全体の閉そく感が続いています。さらに雇用動向DIの今月の状況が前回5月度調査結果と同様で△38と悪く、人手不足感が2014年以降この水準で推移し、業界全体の人材確保も著しく困難な状況が続いています。さらにBtoC分野で、独自の物流拠点を抱える米国企業(Amazon.com)一社の影響を大きく受け、一般消費者はスマートフォン等の携帯端末を用いたネットショッピングを一層加速するなかで、国内に大きな商流変化をもたらしています。さらに法改正、他業界の再編成の影響も大きく受けています。 (事務局 墨)

1.機械器具(自動車、事務機器、電設資材等)

  • トヨタ自動車の生産は堅調で、来年度も今年度と同程度の生産見通しがあるが、下請け企業への波及は限定的であると予想。一方で、工作機械部品加工業の仕事量は減少。小ロット、もしくは高精度・高品質が要求される仕事はあるが、利益確保が難しいのでそれに着手できる企業は少ない。
  • ロボット産業は好調を維持しており、依然高水準の生産が続く。タイ、インドネシアは低迷していたが、タイはここへ来て、販売量が増加。ただし、この状況が続くかどうかは不明。
  • 太陽光発電について、買い取り価格(FIT:固定価格買い取り制度)の下落により、全量買い取り制度を利用する中規模以上の物件が激減。ゼロエネルギー住宅制度に向けた住宅需要と災害時に備えた蓄電池の増設などへの着手が必要。
  • 車輌価格の税込み表示や総額表示化が進んでおり、車輌価格そのものを上げなければ利益が出せない状況が益々進んでいる。消費税増税の大きな諸影響も不安視されている。

2.建築資材

  • 経営者の高齢化による廃業が続いている。
  • 建築資材費は従来通りの低単価が続いており、施工も込みで請け負うと粗利の確保は可能。しかし、下請け企業の利益確保は難しい状況が続いており、トリクルダウンは元請(一次請)で止まっている。

3.繊維、衣服、雑貨

  • BtoC分野において、顧客は完全に商流がネット通販という媒体へと流れが変わっている。
  • 業界全体が業務縮小傾向にあり、全国各地で雇用問題に直面している。法人は、後継者問題や世帯数減少による売上減の状況にあり、個人事業主は、高齢化が進み廃業者が後を絶たない。

4.飲食料品

  • インバウンド需要がやや低迷し、外食産業も外国人客の減少が顕著となっている。
  • 全国各地の天候不良によって農作物の不作が続き、市場価格が上昇。また、高温による商品劣化の速度が速く、ロスが多い。

5.運輸、情報通信

  • 今年に入ってから、長年取引のある客先や仕入れ先の廃業、倒産、減資依頼の要請が届くなど信用不安が増えて来ており、与信管理の必要性が増加。
  • 大手商社による流通再編で、地元ユニーグループまでもが吸収合併される。東京、あるいは外国の一握りの企業が決定権を持っている状況にある。
  • 人員不足が大きな課題となっている。労働環境も改善したいと考えているが、自社だけではなかなか改善することが困難。上半期は、荷動きも悪く、伸び悩んでいたが後半の荷主からの情報では上方修正される予定。

6.保険、不動産

  • 保険会社による手数料率の引き下げの影響を大きく受けている。
  • 5月の保険業法の改正以降、体制整備項目が増え、コンプライアンスも厳しくなっている。
  • 量産される建売住宅の値下げ合戦で商談が動いており、デフレ傾向が続いている。
  • 消費税増税延期の影響で、住宅購入希望者が明らかに減少。特に低予算の住宅・建売で顕著。
(4)サービス業

●「今月の状況」の業況判断DIは24→29、経常利益DIは28→30、「前年同月比」売上高DIは17→21といずれも好転しました。カテゴリー別では、「今月の状況」業況判断DIが専門サービス業31→36、対個人サービス業9→17、対事業所サービス業23→29。今月の経常利益DIは専門31→36、対個人22→18、対事業所28→33。対個人の悪化は民間需要の停滞が影響していると考えられます。「前年同月比」売上高DIは専門27→28、対個人2→9、対事業所12→18。経営上の問題では、「従業員の不足」45%、「人件費の増加」30%、「新規参入者の増加」29%、「民間需要の停滞」20%と前回に引き続き人材確保・維持が大きな課題の一つになっています。また、競争の激化と民間需要の停滞も懸念されます。これらの経営上の課題に対応するための「経営上の力点」では、「付加価値の増大」57%、「新規受注(顧客)の確保」53%となっています。「次期見通し」は、売上高DIが23→22、経常利益DIは31→31と横ばい、業況判断DIは36→33と若干の悪化を見込んでいます。 (事務局 伊藤)

1.飲食業

  • 人手不足が深刻。求人募集を出しても応募がなく、広告費の投資が割に合わない状況が続いている。
  • 毎年の人件費の増加に見合う利益確保が難しくなっている。このままの状況が続くと不採算店舗を閉鎖せざるを得ない状況に陥る。

2.自動車整備業

  • サービスに対して、目新しさや付加価値を見出さなければ、顧客離れや大手の顧客抱え込みの勢力に押されて中小企業の存続が危ぶまれる。自社の得意分野を明確にし、特色を出して顧客確保をしていく。

3.物品賃貸業

  • 需要は例年以上に活発で、競合の動きもあまり感じられない。ここ2年の我慢と積極的な攻めの投資効果で顧客確保も例年になく好調。しかし、今後業界を取り巻く変化が激しくなる見込みなので、素早い判断と対応が必要。

4.産廃・環境

  • 消費低迷も顕著であり、景気の鈍化を感じる。自社の中長期ビジョンを明確にし、社員との共有を行い目標に向けた具体的な計画を構築して、外部要因に左右されない企業体質にしていく必要がある。

5.洗濯・理容・美容

  • 需要の停滞が深刻な状況。上半期は昨年対比平均7%減でアベノミクスどころではなく、「消費マインドの冷え込みによる売り上げ減」という不安ばかりが募っている。
  • エステ・リラクゼーション業界では、安売りの傾向はひと段落した感がある。今後は、付加価値の増大を重視していく。

6.広告、印刷業

  • 広告関連は東京集中の様相を感じている。中部地域が活況に転ずる気配がなく、東京にも拠点を持ち営業活動をしている。人材確保難というより、人材の流出による停滞感が大きい。

7.設計

  • 4月以降不調であったが、ようやく仕事が回りだした。不調の原因は建設費高騰による、プロジェクトの遅延にある。ようやく少しずつめどが立ってきた。また、投資用物件も土地費高騰と物件情報が、大企業中心に流れ中小に良い情報が流れない状況があり、中小と仕事をする自社に取って不利となっている。

8.専門サービス業

  • 特許業界は有資格の増加にも関わらず、特許出願件数の減少により、構造不況業種に転じている。
  • 同業者は廃業、または常設ジムを占めて実店舗を持たない経営に変わっている。
  • 今後は、パートナー型・提案型・成功報酬型に舵を取り直し、専門士業の社会的地位を高めていく必要がある。
  • 士業分野だが、競争原理導入の掛け声のもとに、無資格者の参入が目立つ。逮捕者まで出る状況。無資格者の参入は、大企業の定年退職者によって行われている。