- 【概況】
- 【業況判断】 製造業が足踏み。次期見通しは改善
- 【売上高】・【経常利益】 製造業は売上高が水面下へ。「今月の状況」経常利益は増加傾向
- 【在庫感】 「過剰」超過幅が縮小
- 【取引条件】 サービス業が水面下に
- 【資金繰り】 今月の「窮屈」超過幅はやや拡大
- 【設備過不足】・【施設稼働率】 設備過不足、建設業で「不足」超過幅が拡大。施設稼働率、次期見通しは「上昇」傾向
- 【雇用】 深刻な人手不足が深まる
- 【価格変動】 高止まりの仕入価格。販売価格はやや上昇
- 【借入金利】 短期金利、ほぼ横ばい。長期金利、やや上昇
- 【経営上の力点など】 経営上の問題点、「従業員の不足」・「人件費の増加」が引き続き上位に
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景況調査報告(2018年8月)第99号(PDF:1.44MB)
【概況】
「よい」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を差し引いた「今月の状況DI」は前回の26から27とほぼ横ばいだった。業種によって「改善」「悪化」が区々で、それが今回の調査結果を特徴づけている。建設業は31から40へ9ポイント、流通業は19から25へ6ポイント改善したのに対し、製造業は23から17へ6ポイントの悪化、サービス業も32から29へ3ポイント悪化した。なお、先行き改善期待は依然として根強く、「次期見通しDI」は前回の32から37へ上昇した。
昨年から好調な景気をリードしてきた製造業に変調が見られた点は、今後の景気動向を見通す上で注目に値する。今回の製造業の「前年同期比DI」は△4。5月調査の8から12ポイントの大幅悪化である。17年11月調査の12をピークに3期連続の悪化となったが、「悪化が改善を上回る」マイナスのDI値となったのは6期(1年半)ぶりである。製造業については「売上高DI」も今回は△3と6期ぶりのマイナスとなった。景況感の悪化が売上げの減少を背景としたものであることを示している。
こうした製造業の落ち込みが「一時的」なものなのか、それとも「景気の転換」を暗示するものなのかはまだ判定できない。ただ昨年より半導体製造装置を中心とした工作機械への高い需要が製造業の好調をけん引してきたが、今回の調査では「半導体装置産業に関しては夏になって一服感がある。また、蓄電池などのこれから拡大が見込める産業も設備投資が先送りされており、一時ほどの活況感はなくなってきている。工作機械業界の関係者から中国で大きなキャンセルが出たとの情報もあり、景気の転換点にある感じがします」という「文書回答」も寄せられており、予断を許さない。
今回改善を示した建設業では、「現状は忙しいが、人手不足の深刻化、人件費などの高騰によって利益が圧迫されている」とする声が多数聞かれた。また、「投資物件の引き合いが減ってきている」、「すでに消費増税の駆け込み需要がみられる」など、現状の好調とは裏腹に先行きを懸念する声も聞かれた。
7月末に日銀が発表した「政策修正」の明確な影響は確認できないものの、「短期金利DI」、「長期金利DI」ともに今回は△1となり、「上昇した」という回答数と「下降した」とする回答数がほぼ拮抗する事態となった。DI値がこれほどゼロに近づいたのは13年5月以来である。実体経済、金融ともに「警戒」が必要な状況になりつつあるといえる。
[調査要項]
調査日 | 2018年8月20日~8月30日 |
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対象企業 | 愛知中小企業家同友会 |
調査方法 | 会員専用サイト「あいどる」 |
回答企業 | 会員企業より1485社の回答を得た。業種内訳は以下 (建設業257社、製造業318社、流通業407社、サービス業503社) |
平均従業員 | 22.7名(中央値7名) |
なお、本報告は愛知中小企業家同友会・経営環境調査委員会(委員長、太田厚・(株)太田電工社社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議での検討を経てなされたものです。
【業況判断】 製造業が足踏み。次期見通しは改善
「今月の状況」DIは前回の26から27とほぼ横ばいだった。業種別でみると、製造業が23から17と6ポイント悪化したほか、サービス業も32から29と3ポイント悪化した。一方、建設業は31から40と9ポイント、流通業は19から25と6ポイント改善傾向を示した。
前年同月比は、2016年5月期調査以降緩やかに改善してきたが、13→11→7と悪化傾向を示した。業種別でみると、サービス業が17から11と6ポイント悪化した。さらに製造業では8から△4と12ポイント悪化した。水面下に落ち込んだのは、2017年2月期調査以来である。その他、建設業が12から12と変化がなかった。流通業のみ4から6とやや改善した。3ヶ月後の次期見通しは前回の32から37と5ポイント改善した。建設業が35から46と11ポイント、流通業が25から37と12ポイント、二ケタの改善傾向を示したのを始め、製造業が29から34と5ポイント改善した。サービス業は37から34と業種別で唯一後退した。
【売上高】・【経常利益】
製造業は売上高が水面下へ
「今月の状況」経常利益は増加傾向
売上高DI(前年同月比)は前回の14から10と4ポイント悪化した。この傾向は全業種で見られ、建設業が21から17、製造業が6から△3と悪化傾向を示した。製造業DIが水面下になったのは、2017年2月期以来の事である。その他、流通業が11から10、サービス業が18から16と悪化傾向のほぼ横ばいだった。3ヶ月後の次期見通しは、前回の17から20と3ポイント改善した。業種別でみると、建設業が21から25、製造業が9から14、流通業が13から22と改善した。サービス業は23から19と4ポイント悪化傾向を示した。
経常利益DI(今月の状況)は前回調査の23から26と改善した。業種別でみると、建設業が29から38と9ポイント改善した。流通業でも22から27と5ポイント改善した。製造業は10から12、サービス業でも28から27とほぼ横ばいで推移した。前年同月比は前回の8から6と僅かながら悪化した。建設業では17から9と8ポイント悪化した。業種別では一番の落ち込みである。その他は製造業が2から△4と6ポイント悪化した。水面下は2017年5月期の5期ぶりである。サービス業は12から10とほぼ横ばいで推移した。流通業は1から6と5ポイント業種別では唯一改善した。次期見通しは、前回の27から30と3ポイント改善した。建設業が32から37、製造業が19から28、流通業が22から33と改善した。サービス業のみ32から25と悪化傾向を示した。
【在庫感】 「過剰」超過幅が縮小
今月の状況DIは、前回調査の11から8と「過剰」超過幅が3ポイント縮小した。業種別でみると、製造業(12→6)は「過剰」超過幅が6ポイント縮小した。また流通業(10→11)ではほぼ横ばいで推移した。前年同月比は前回の11から8と3ポイント「過剰」超過幅が縮小した。業種別でみると、製造業(12→8)は「過剰」超過幅が縮小し、流通業(9→7)でも「過剰」超過幅が縮小した。次期見通しは7から6とほぼ横ばいで推移した。業種別では、製造業(12→5)も「過剰」超過幅が7ポイント縮小したが、流通業(2→6)は逆に「過剰」超過幅が拡大した。
【取引条件】 サービス業が水面下に
前年同月比DIは2と変化がなかった。業種別でみると、建設業(7→8)がほぼ横ばいであるのを始め、製造業(△2→△2)は変化がなかった。流通業(△1→5)では「悪化」超過幅が縮小し、サービス業(4→△1)では逆に「悪化」超過幅が拡大した。サービス業が水面下になるのは2015年2月期調査以来の事である。次期見通しは、前回の2からほぼ横ばいで推移して3となった。業種別でみると建設業(4→5)・製造業(1→0)、流通業(3→4)とほぼ横ばいだった。サービス業(1→3)でも大きな変化はなかった。
【資金繰り】 今月の「窮屈」超過幅はやや拡大
今月の状況DIは、前回の△18から△21と「窮屈」超過幅が拡大した。業種別でみると、製造業(△14→△21)が大幅に「窮屈」超過幅を拡大させた。その他は、サービス業(△20→△22)がやや「窮屈」超過幅を拡大させ、建設業(△18→△19)、流通業(△19→△20)ではほぼ横ばいで推移した。次期見通しは前回の△18からやや「窮屈」超過幅が縮小し△16となった。業種別では、製造業(△17→△22)が「窮屈」超過幅を拡大させた。建設業(△21→△17)では「窮屈」超過幅が縮小した。特に流通業(△19→△9)は水面下ながら「窮屈」超過幅が二ケタ縮小する結果となった。サービス業(△17→△18)では横ばいで推移した。
【設備過不足】・【施設稼働率】
設備過不足、建設業で「不足」超過幅が拡大
施設稼働率、次期見通しは「上昇」傾向
設備過不足DI(今月の状況)は△16から△18とほぼ横ばいで推移した。業種別でみると、サービス業(△15→△19)で「不足」超過幅が拡大した。特に建設業(△14→△24)では10ポイントと二ケタの「不足」超過幅の拡大が見られた。製造業(△22→△17)は「不足」超過幅が縮小し、流通業(△13→△12)はほぼ横ばいで推移した。
次期見通しは前回△15から△17と小幅ながら「不足」超過幅が拡大した。建設業(△18→△25)・サービス業(△13→△18)でも「不足」超過幅が拡大した。製造業(△21→△18)は「不足」見通しの超過幅を縮小させた。流通業(△11→△10)では大きな変化がなかった。
施設稼働率DI(前年同月比)は前回調査の2から0と小幅ながら「上昇」超過幅が縮小した。業種別でみると、製造業(4→0)も「上昇」超過幅が縮小した。流通業(△1→0)は大きな変化がなかった。次期見通しは前回調査の2から5と「上昇」超過幅が拡大した。業種別にみると、製造業(7→9)は小幅ながら「上昇」超過幅が拡大した。流通業(△4→1)でも「上昇」超過幅を拡大させた。
【雇用】 深刻な人手不足が深まる
今月の状況DIは前回の△44から△47と「不足」超過幅は再び拡大に転じた。業種別でみると、建設業(△55→△68)で二ケタの「不足」超過幅の拡大傾向が見られた。この数値は1994年調査始まって以来、最も深刻なものであった。その他も依然として人手不足が続くなか製造業(△45→△44)、サービス業(△42→△43)がほぼ横ばい。流通業(△41→△41)は変化がなかった。
次期見通しは前回調査の△43から△44とほぼ横ばいながら、こちらも調査始まって以来、最も深刻な数値だった。業種別にみると、建設業(△58→△66)・サービス業(△39→△42)は「不足」超過幅が拡大傾向にあった。製造業(△41→△37)は4ポイント「不足」見通しの超過幅が縮小した。流通業(△38→△39)は大きな変化がなかった。
【価格変動】
高止まりの仕入価格
販売価格はやや上昇
仕入価格変動DI(今月の状況)は前回の36から35と大きな変化がなかった。業種別でみると、仕入価格が高い水準ながら建設業(40→36)は4ポイント、製造業(58→52)は6ポイント「上昇」超過幅が縮小した。流通業(36→34)はほぼ横ばいだった。サービス業(20→23)だけは「上昇」超過幅が拡大した。
前年同月比では36から変化がなかったものの、8期連続の拡大傾向継続となった。業種別でみると、建設業(44→39)が5ポイント「上昇」超過幅が縮小した。製造業(58→57)がほぼ横ばいながら高い水準を維持し、流通業(36→35)も横ばいで推移した。サービス業(19→21)は「上昇」超過幅が拡大傾向のなか大きな変化がなかった。
次期見通しは前回の28から27と大きな変化がなかった。業種別でみると、建設業(31→27)・製造業(42→38)がいずれも4ポイント「上昇」超過幅が縮小した。その他、流通業(30→31)はほぼ横ばいで、サービス業(17→17)は変化がなかった。
販売価格変動DI(今月の状況)は前回の10から大きな変化がなく11となった。業種別でみると、製造業(5→13)は「上昇」超過幅が拡大した。一方、サービス業(8→5)は「上昇」超過幅が縮小した。建設業(13→15)はほぼ横ばいで推移し、流通業(14→14)は変化がなかった。
前年同月比は前回12から「上昇」超過幅が3ポイント拡大傾向を示し15だった。業種別でみると、建設業(14→18)・製造業(9→17)・流通業(17→20)は「上昇」超過幅が拡大した。サービス業(8→9)は大きな変化が見られなかった。次期見通しも同じ傾向で、前回の8から12と4ポイント「上昇」超過幅が拡大した。業種別でみると、製造業(5→13)は8ポイント、サービス業(4→7)でも3ポイント「上昇」超過幅が拡大した。建設業(10→12)・流通業(15→17)は大きな変化が見られなかった。
【借入金利】
短期金利、ほぼ横ばい
長期金利、やや上昇
短期借入金利DIは前回調査の△3からほぼ横ばいで△1だった。業種別でみると、製造業(△5→1)と流通業(△1→1)はわずかながら「上昇」超過に転じ、サービス業(△4→△3)はほぼ横ばいで推移した。建設業(△2→△2)は変化がなかった。
長期借入金利DIは前回の△6から△1と「下降」超過幅が大きく縮小した。業種別でみると、製造業(△8→△2)では6ポイント、流通業(△6→2)は8ポイント、サービス業(△7→△3)では4ポイント長期金利が上昇した。建設業(△3→△3)は変化がなかった。
【経営上の力点など】
経営上の問題点、「従業員の不足」・「人件費の増加」が引き続き上位に
全業種でみた経営上の問題点は、「従業員の不足」(49%)、「人件費の増加」(29%)「仕入単価の上昇」(20%)という前回同様の順位となった。人手不足は長期トレンドであり、魅力ある企業づくりは喫緊の課題といえる。また社員の高齢化による人件費の増大への対応も急務である。
業種別でみて特徴があったのは、前回と同様で、建設業で「下請業者の確保難」(45%)が、サービス業で「新規参入者の増加」(26%)、「仕入単価の上昇」が流通業(24%)と製造業(32%)で多く回答された。文書回答では「建設業界では、職人・管理者不足の改善の兆しが見えない」「米中貿易戦争激化による企業の業績悪化からの仕事量の低下が懸念される」「IOT、AI、クラウドなど中小企業では開発技術者が不足しており、導入も大手企業ばかりで格差が広がる」があった。
全業種における経営上の力点は、第1位「付加価値の増大」(57%)、第2位「新規受注(顧客)の確保」(49%)、第3位「人材確保」(40%)でこちらも前回から変化がなかった。
<会員の声(業種別)>
(1)建設業
●建設業の業況判断DIは季節要因も加わり31→40へ改善しています。名古屋駅前開発は一段落しつつもリニアや空港、栄や伏見の大型再開発などオリンピック後も大型計画が続く名古屋圏域に全国ディベロッパーの参入が激化しています。人手不足の深刻化が増し、人件費と資材価格が上がる一方で、不動産価格は一段落し一部低下、投資引き合いも落ち見送り物件も出ている等の変調も聞かれ、売価と仕入値で時間差ミスマッチの声も上がりました。米中貿易戦争に終息の見通しが依然立たず、中国の工作機械や半導体製造装置の爆買い失速による設備投資の後送りなど、製造業の設備投資や工場投資関連建設需要の変化にも注視が必要といえます。足元の忙しさに埋没せず、経済全体の動向や変化の背景を分析することに普段の努力を払いたいものです。
(事務局 加藤)
1.総合工事
- 米中貿易戦争激化による、中小企業の業績悪化からの仕事量低下が懸念される。大企業は戦略変更で凌ぐことが可能だが、弊社の場合は特に自動車業界が低迷すると戸建住宅業界の新築、リフォームに影響が及ぶ可能性が高い。
- 来年の消費増税の影響がどう出るか、人材不足に深刻さが増す中で気を揉みながらいろいろ思案中。
- 職人不足、高齢化、熟練工の確保がますます問題。意欲や熟練はあっても作業量低下による間接的な人件費上昇、中堅クラス層の薄さに加え若年層が増えない。さらに働き方改革も加わるが、極一部を除き庶民の圧倒的なデフレ生活感や低価格住宅増加の中で高付加価値化をはかるのは非常に難しい課題。
2.基礎、土木
- 深刻な人手不足。八方手を尽くしているが従業員の確保が難しい。
- 特に職別工事業では管理者・作業者と現場で働く人材の確保が難しく、目の前に仕事があっても受注できない状況。
- 今年の1~6月までの上半期は長い閑散期だったが、7月から一気に仕事が始まり人手不足が激化している現状。閑散期と繁忙期の格差が大きすぎる。
- 毎年だが、この夏は人手不足が加速している。弊社は今年春に経験者2人雇用し、現場・加工場とも割と安定している。来春も高卒新卒者2名雇用予定。工事案件は順調で増税後やオリンピック後も順調基調との噂がある。鋼材単価は高止まりでオリンピックへ向けた動向から目が離せない。施工単価も無理に減額交渉にのることなく安定しているが、大手が絡む同業他社は価格競争に未だ苛まれている。業界の末端職や今後の業界の雇用安定を考えると、安易に減額交渉にのれないのが現状。
3.左官、外構、屋根外壁
- 消費税の駆け込み受注も関係しているのか来年9月まで受注がある状態。
- 消費税の駆け込み需要の影響が出ている。非常に問い合わせが多く設計担当者がオーバーワーク気味だが、その後の冷え込みを考えると何とか乗り切っていきたい。受注をとっても施工業者の確保が難しく工程が組めない。最終的にクレームになってしまうケースが懸念される。
- 仕入材料は運送費の関係で値上げ要請が続いており、直接の人件費も上がってきている。大企業と労働者の中間にいる中小企業にとって厳しい展開になってきている。
4.給排水管工事、電気工事、設備工事
- 上下水道の設備や管路の耐用年数で老朽化が激しくなっている。公共投資が悪のような時代が続いているがライフラインを守っていくという国の公共政策のあり方が変わらないといけない。ここに切り込む政治家が出てくることを期待したい。
- 建設業界に対する若年層の興味の減退、また昨今の人手不足から従業員も足元を見てくる感がある。
- 古い設備への更改について若干だが前向きになっているかと思う。
- 名古屋は全国的に見て異常に加熱している。上位層の競争激化と下請の人件費高騰でミスマッチが発生。オリンピックまでは名古屋でも多くの建設計画が実行されるが、人件費、下請価格高騰は今後も続くので選択受注が必要だと考えている。
5.不動産
- 消費税増税が織り込まれた話が出てくるようになったがあまり焦っている感はない。日銀金利上昇も関心は高くない。事業用賃貸は比較的好調。
- 需要の喚起。事業転換中。
6.建築設計
- 建設費は高値安定、建設業者も一時期より落ち着き値交渉ができるようになってきた。新物件の計画も堅調に推移し今後も大きく落ち込むことはしばらくないだろう。土地取引は一時期より落ち着き価格も上げどまり感で物件によっては安くなっている。
(2)製造業
●業況判断DIでは、今月の状況(23→17)、前年同月比(8→▲4)、のいずれも17年11月期調査をピークに3期連続で悪化。特に前年同月比は製造業だけが水面下を示す結果となりました。前年同月比がマイナス値となるのは、17年2月以来6期ぶりです。売上高DIも前年同月比で6期ぶりのマイナス(▲3)を示し、経常利益も17年5月以来5期ぶりに水面化(▲4)となりました。業況判断(29→34)、売上高(9→14)とも次期は回復するとの見通しですが、従来から指摘されている人手不足、熟練技術者不足、仕入れ単価の上昇などに加え、相次ぐ自然災害による受注減や、これまで製造業を支えてきた半導体分野での設備投資の先送りや、中国でも大きなキャンセルが出たとの情報もあり、製造業は大きな転換期を迎えているとの見方もあります。
(井上一)
1.金属加工・樹脂加工
- 受注増による注残の積み上がりの影響もあるが、同業各社とも仕入品(素材)の納期遅れが、客先への納期遅れの大きな要因になっている。
- 7月に発生した関西の大雨豪雨被害の影響で、一部客先の受注減が8月前半まで続いた。
- 短納期対応に追われ、新たな取り組みがまるで出来ない状態が続いている。納期を守れない程に仕事はあるが、景気が良いと言える実感はない。
- 半導体装置産業に関しては夏になって一服感がある。また蓄電池などのこれから拡大が見込める産業も設備投資が先送りされていて、一時ほどの活況感はなくなってきている。
- 材料は値上げ交渉があちこちから入ってきているが、販売価格へ転嫁するのは難しい状況である。
- ビル施設建設業界が2020年以降に大きく景況後退が予測される中、メーカーの海外物件受注と国内生産を促進してほしい。
- 今後は難易度の高いものが出来る技術力を確保することを進める。
2.機械部品・機械製造
- 働き方改革の一環で時間外労働の抑制に向けての取り組みはしているが、お客様からの品質、納期、コスト要求の足枷になっている。
- 設備業界は、一次、二次下請になるにつれて零細化していくが、これまで業界を支えてきた裾野が瓦解してきている。
- 工作機械業界は活況により、部品を作る加工会社の納期が非常にかかる状況が続いているので、製作納期のスケジュール管理が難しくなっている。
- 人員不足のため、受注したくてもできない状況がある。
- 安定した受注が中々見込めない。新規参入もただ価格競争に入っていっているような傾向である。
3.印刷・包装関連
- 大きな仕事が終わるとぽっかり穴があいてしまい、それを埋めるのに時間を要す。その他一般の仕事量も落ちているので景況感としては悪くなっているように感じる。
- 過去最低の状況がこの数か月続いている。リピート注文もホームページからの新規の問い合わせもない。こんな時だからこそ、軸は同じでも思いきって過去の実績から離れて、180度いままでとは違う考えや行動を実践する時なのかもしれない。
- 商業印刷では10000部までの印刷物はネット印刷に移行し、それより多いロットは仕事の減少と、相見積もりによる価格低下が激しい状況である。
4.食品・繊維製品・雑貨・身の回り品製造業
- 鶏卵業界は生産過剰による相場下落を招いた。しかし、今夏の酷暑により鶏が斃死し生産量が減少、今後の相場高騰が懸念される。
- 8月は業界的にも良い月では無いが、ここのところはピークアウト感が増している気がする。
- 鉄板の金額が更に上がる見通しで、来年からの値上げを進めているものの追いつかない感じである。
- 大手中心の政策ばかりで、中小企業にとっては、自力での経営・回復にゆだねられている。最先端技術の優先ばかりでなく、日本古来の仕事にも目を向ける事が大切だ。
- 仕入れ単価上昇、経費増大、販売単価かわらずという状態が続いています。新たな付加価値を見つけ提案を急がないといけない。
- 職人不足が深刻な状況である。
(3)流通業
●前回の5月景況調査の結果と比較して「今月の状況」を見ると、業況判断DIは19→25と6ポイント増加、仕入価格変動DIは36→34と2ポイント減少、販売価格変動DIは14→14と横ばい、経常利益DIは22→27と5ポイント増加、資金繰りDIは△19→△20と低水準のなかで悪化、雇用動向DIは△41→△41と横ばい、在庫感DIは10→11と1ポイント増加という結果になりました。また「前年同月比」を見ると、販売価格変動DIは17→20と3ポイント増加、経常利益DIは1→6と5ポイント増加、取引条件DIは△1→5と6ポイント増加、在庫感DIは9→7と2ポイント減少という結果となりました。数字上では経常利益と取引条件は若干改善されましたが、資金繰りと人手不足が依然深刻で、実態経済の動向に注意が必要です。
(事務局 墨)
1.機械器具(自動車、事務機器、電設資材等)
- 自動車関連は引き続き底堅く動いている。自動車メーカーも活況だが、それ以上に部品メーカーが好調。減速機は相変わらず供給が追い付かず、長納期化が常態化している。そのため、新たに大手企業がこのマーケットに参入したり、既存競合が増産をかけてきている。なお、半導体製造装置向けの需要は少し落ち着きつつある。
- トヨタの日当たり生産の10~12月は12,000台を下回る内示が出ており、受注量の確保が重要。
2.建築資材
- 仕入価格の転嫁ができない。仕入先取引先を含め特徴のない企業の淘汰が始まったと感じる。
- 中国の諸々の輸入制限でかなり影響を受けている。
- 住宅関連業種は、大手小手問わず「海外進出」の機運が相当高まっている。海外現地日系メーカーも日本への輸出が多いので、先々の需要が見込めないケースが多い。
3.繊維、衣服、雑貨
- 仏事市場が縮小している。家族葬の増加により、香典返しがなくなっている。
- 消費動向も良くなっている感じはなく、日本国内の工場閉鎖や中国の生産キャパの縮小といったマイナス材料の方が増えてきている。
- ガソリンスタンド業界は、酷暑のおかげで販売数量が例年に比べ伸びている。また、石油元売の経営統合のおかげで仕入れ格差が減っているが、新たに異業種参入(コストコ)のため、価格競争が激化。
4.飲食料品
- 鰻業界では経営者と従業員の高齢化により、事業継続が難しくなっている同業他社が目立っている。
- 台風、猛暑の影響により、生育不足、腐敗、高温障害などによる病気発生に伴い仕入れ単価の増大、色々な商品で入手困難な状況が続いている。単価も今までにない様な単価のものもあって厳しい。
- 最低賃金が毎年上がっているが、販売価格が上がらない為、利益が減少。同業者の廃業が多い。
- 売上は上がるが、税負担も同時に上がり、最低賃金も上がるため、資金繰りが常に窮屈。金融緩和政策も終焉を迎え、利息の上昇や借入難の不安が常にあり、簡単に設備投資や人材雇用ができない。
5.運輸、情報通信
- IoT、AI、クラウドシステムなどの技術は騒がれているが、中小企業では開発する技術者も不足しているのが現状。実際導入する企業も大手がほとんどで、中小企業のソフト会社が直接開発を請け負うこともない。業界に限らずIT化においては更に大手企業と中小企業の差が広がりそう。
- この夏の異常高温でビール・飲料大手メーカー5社は、増産するものの物流がネックとなり、初めて全国的に受注配送の一時停止・繰延を実施。従来なら取引停止などの大問題となるが、運べる運送会社がどこにもない状況で、ついに販売制限をかけるという事態となった。品薄感をもった小売業界が実需以上の過剰な発注をした事が主な要因でもあった。
- 販売価格(運賃収受)は、車両不足、人材不足、燃料の高騰を受けて多少なりとも見直しがされてきているが、依然として人材不足感が強い為、協力業者への依頼件数が増えている。協力業者への料金も高騰しているので売り上げは増加しているが、利益に結びついていない。
6.保険、不動産
- お客様からも、消費税増税が織り込まれた話が出てくるようになった。日銀が金利を少し上げたと言っても0.1→0.2に変わっただけでお客様の関心は高くない。なお、事業用賃貸は比較的好調。
- 保険マーケットは中長期でみると、「①人口減、自動車減(+自動運転)、住宅減による国内マーケット縮小」と「②メーカーの収益悪化に伴う手数料率の引き下げ」が予想既定路線。
(4)サービス業
●今月の業況判断DIは32→29、経常利益DIは28→27と前回よりも下がりましたが、昨年の2月より高値安定の状態が続いています。3業種に分けると、業況判断DIが、専門サービス業38→32、対個人サービス業18→27、対事業所サービス業39→25。経常利益DIは、専門31→29、対個人19→28、対事業所35→23と、対個人の継続的な伸びと、前回大きく回復した対事業所の再びの落ち込みが、顕著になっています。
また業況判断の次期3ヶ月先見通しでは、37→34と前回と同じ幅で下がり続け、現在の調子が徐々に落ち込みつつあることを、実感しているデータも出ています。経営課題として「人手不足」、経営上の力点として「付加価値の増大」「新規顧客の確保」が、業種の差こそあれ約半数を占めていますが、中でも専門サービス業では仕事はあるものの、低価格化に苦しむコメントも目立ちました。実際に、専門の販売価格DIが△1と数字にも表れており、経営課題として「新規参入者の増加」を3割以上の方が上げています。内に向けての「人材確保」はもとより、外へ向けての「差別化やその発信」が、企業の継続に欠かせない両輪として、今求められています。
(事務局 橋田)
1.飲食
- 仕入価格の上昇、最低賃金のアップに伴い、販売価格を上げる予定だが、実際にお客様が価格に対してどう思うかが心配。飲食店だと日常的に価格を意識する。そのために付加価値を付け、高いと感じないようにしないといけない。
- 近隣にライバル店が増加し、競争がますます激化している状況で、いかに独自の付加価値を提供できるか悩ましい状況である。
- 人手不足による、身売りや廃業をよく聞くようになった。
2.介護
- 介護サービスに外国人の就労を積極的に促す政策が導入されたことで、ますます利益の出にくい事業となっていくのではないかと危惧している。
3.産廃・環境
- 異常な暑さに対しクーリング対策が出来ておらず、作業環境の悪化。
- 年内いっぱいで中国向けスクラップの輸出が完全ストップする。国内でどう処理してゆくかが早急な課題。金属リサイクル業の20年間のボーナスステージは終わった感がある。業界はさらなる淘汰選別がなされるだろう。
4.自動車整備・販売
- エネオス+エクソンモービル・出光+昭和シェルの元売り2強時代で、今後仕入れの価格競争が出来なくなる。元売子会社には恩恵が多くなる一方で、中小企業は厳しい経営を覚悟しなければならない。
- 業界の将来的な見通しが暗く、従業員の将来に対する不安が解消できないため、雇用の安定が図りにくいと感じている。
- 5年以内に既存の修理工場の3割が無くなる可能性が出てきた。弊社はエンドユーザーをメインに集客しているため、問題が出てからも波は小さいが、下請け会社は総じて深刻な状況。
- 自動車販売関連の業界は良くない。売れている車はコンパクトカーが中心で、オプションなどの費用もあまりかけないユーザーが多い。
5.専門サービス
- 顧客から、サービスとして無料でやらされる仕事が増えている。
- 好況感に伴ってか、既卒の経験不足の技術者の希望する給与が異常に高くなっている。未熟な技術者に、中小企業はそこまで給料を払うことができない。求人環境は、バブル時代と同じ様相を呈している。早く求人倍率が落ち着き、正常な評価で給料を支払えるような状態に戻ってくれることを期待している。
- 業界でいうと、仕事量が増えている。自社は売上増・利益は微増。人材不足が課題だが、教育や待遇改善は置き去りのまま、日々の仕事に追われて更なる一手を考える時間を作れないでいる。
- 我々行政書士は代行業がメイン。景気の良い時はみな本業が忙しく、慣れない申請業務などを我々に依頼してくれるが、景気が悪くなり経費削減となってくると、申請代行も削減対象となる可能性は十分ある話。普段から顧客との関係を密にして、申請代行+αのサービスを心がけていかないと生き残っていけない。