景況調査

第100号-2018年11月
足下改善も、先行き不安払しょくできず

<会員の声>

DI値推移一覧表(PDF:605KB)

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景況調査報告(2018年11月)第100号(PDF:1.45MB)


【概況】

「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を差し引いた「業況判断」の「今月の状況DI」は、前回の27から37へ10ポイントの大幅な改善を示し、調査開始以来最高となりました。全業種で改善がみられ(建設業:40→56、製造業:17→35、流通業:25→32、サービス業:29→32)、特に建設業が前回の40から56へ16ポイント、製造業は前回17から35へ18ポイントと、それぞれ二桁の大幅改善となりました。

「前年同月比DI」でも前回の7から11へ4ポイントの「好転」超過幅の拡大が見られました。業種別でも、流通業で前回の6から5へわずかながら低下した以外は、改善幅に違いはあるものの「好転」超過幅が拡大しています。

他方、「次期見通しDI」は先月の37から33へと「良い」超過幅が減少しました。総じていえば、足下の業況は大きく改善したものの、なおも先行き不安は払しょくできていないというのが現状のようです。

分析会議での発言ならびに「文書回答」からも、景気の先行きを楽観視する声は聞かれませんでした。製造業からは中国経済減速の影響が指摘され、中国での自動車販売の落ち込みと自動車生産の内示割れがこの間続いている状況から、中国国内の完成車在庫の状況次第では生産に急ブレーキがかかる可能性もあるとする声が聞かれました。また文書回答にも、「中国の工作機械、ロボット、半導体製造装置の生産にブレーキがかかったため、そこへ輸出している客先の生産が落ちている。来年の春節以降は持ち直すという声もあるが、先行きは非常に不透明」と、先行きを不安視する記述が見られました。「昨年が良すぎた。今は正常に戻りつつあるだけだ」という指摘もありましたが、昨年の受注水準に合わせて多くの企業で設備投資が計画されていたとすれば、今後下方修正が相次ぐ可能性があることは留意しておく必要があるようです。

建設業では、大規模建設の鉄骨に使用されるハイテンションボルトの生産遅延による品薄問題はあるものの工場建設などの影響で足下は「絶好調」だとする一方で、住宅建設の先行きについては懸念する声が聞かれました。需給ギャップの拡大が潜行しており、いずれ長い調整局面がやってくるのではないかという不安は、依然として払しょくされていません。

製造業が1年半ぶりのマイナス値に転じたように前回調査ではDI値の落ち込みが見られましたが、それが自然災害の影響によるものだとすれば、今回の大幅改善はその反動とみることもできます。その意味では、今回の大幅改善の延長線上に今後の景気動向を見ることには慎重でなければなりません。今後の動向をしっかりウォッチしていきましょう。

[調査要項]

調査日 2018年11月19日~11月27日
対象企業 愛知中小企業家同友会
調査方法 会員専用サイト「あいどる」
回答企業 会員企業より1336社の回答を得た。業種内訳は以下
(建設業245社、製造業285社、流通業346社、サービス業460社)
平均従業員 21.9名(中央値7名)

なお、本報告は愛知中小企業家同友会・経営環境調査委員会(委員長、太田厚・(株)太田電工社社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議での検討を経てなされたものです。

【業況判断】 建設・製造で二桁の改善。次期見通しは横ばい

「今月の状況」DIは前回の27から二桁の10ポイント改善し37となった。この数値は1994年に調査が始まって以来最高の数値である。業種別でみると、建設業が40から56と16ポイント、前回調査で大きく悪化した製造業は17から35と18ポイントといずれも二桁の改善が見られた。流通業は25から32と7ポイント、サービス業も29から33と4ポイントと全業種で改善傾向を示した。

前年同月比は、前回の7から11と4ポイント改善傾向を示した。業種別でみると、建設業が12から25と13ポイント、製造業が△4から7と水面上を回復し11ポイント、二桁の改善を示した。一方、流通業は、6から5とほぼ横ばい、サービス業も11から12とやや横ばいで推移した。3ヶ月後の次期見通しは前回の37から33と4ポイント後退した。建設業が46から47とほぼ横ばい、製造業が34から27と7ポイント、流通業が37から32と5ポイント、サービス業が34から31と3ポイント、いずれも後退した。

業況推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

【売上高】・【経常利益】
製造、売上高が増加
製造・流通が経常利益を牽引

売上高DI(前年同月比)は前回の10から15と5ポイント改善した。この傾向は全業種で見られ、建設業が17から22、製造業が△3から11、流通業が10から13と改善傾向を示した。サービス業は16から17とほぼ横ばいだった。一方、3ヶ月後の次期見通しは、前回の20から16と4ポイント悪化した。業種別でみると、建設業は25から29と改善するものの、製造業が14から4と二桁、サービス業が19から12と悪化傾向を示した。流通業は22から21と大きな変化がなかった。

売上高推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

経常利益DI(今月の状況)は前回調査の26から29と3ポイント改善した。業種別でみると、建設業が38から45と7ポイント改善し、製造業が12から二桁の13ポイント改善し25となった。流通業とサービス業では27から26とほぼ横ばいで推移した。

前年同月比は前回の6から10と4ポイント改善した。建設業では9から22と二桁の13ポイント改善した。製造業が△4から5と水面下を脱し9ポイント改善傾向を示した。流通業は6から8と僅かながら改善し、サービス業のみ10から9とほぼ横ばいながらも悪化した。

経常利益推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

【在庫感】 製造は「過剰」超過幅が拡大

今月の状況DIは、前回調査の8から9と大きな変化がなかった。業種別でみると、製造業(6→12)は「過剰」超過幅が6ポイント拡大した。一方流通業(11→7)では「過剰」超過幅が4ポイント縮小した。前年同月比は前回の8から5と3ポイント「過剰」超過幅が縮小した。業種別でみると、製造業(8→5)は「過剰」超過幅が縮小し、流通業(7→5)でも「過剰」超過幅が縮小した。次期見通しは6から6と横ばいで推移した。業種別では、製造業(5→9)は「過剰」超過幅が4ポイント拡大したが、流通業(6→3)は逆に「過剰」超過幅が縮小した。

【取引条件】 流通が水面下に

前年同月比DIは2から4と僅かながら取引条件が好転した。業種別でみると、建設業(8→13)が「好転」超過幅が拡大し、製造業(△2→4)、サービス業(△1→4)は「悪化」超過幅が縮小した。流通業(5→△2)では逆に「悪化」超過幅が拡大した。次期見通しは、前回の3から変化がなかった。業種別でみると建設業(5→6)・製造業(0→1)・流通業(4→2)がほぼ横ばいで推移した。サービス業(3→3)は変化がなかった。

【資金繰り】 建設・流通の「窮屈」超過幅が縮小

今月の状況DIは、前回の△21から△19と「窮屈」超過幅が縮小した。業種別でみると、建設業(△19→△11)・製造業(△21→△15)が大幅に「窮屈」超過幅を縮小させた。その他は、流通業(△20→△21)ではほぼ横ばいで推移し、サービス業(△22→△25)が「窮屈」超過幅を拡大させた。次期見通しは前回の△16からほぼ横ばいで推移し△17となった。業種別では、建設業(△17→△12)・製造業(△22→△16)が「窮屈」超過幅を縮小させた。一方、流通業(△9→△16)は、「窮屈」超過幅が拡大し、サービス業(△18→△21)でも同じ傾向が見られた。

【設備過不足】・【施設稼働率】
設備過不足、建設で「不足」超過幅が拡大
施設稼働率、次期見通しは「上昇」傾向

設備過不足DI(今月の状況)は△18から△17とほぼ横ばいで推移した。業種別でみると、サービス業(△19→△15)で「不足」超過幅が縮小した。建設業(△24→△23)がほぼ横ばいで推移した。製造業(△17→△20)・流通業(△12→△14)は「不足」超過幅が拡大した。

次期見通しは前回△17から△16とほぼ横ばいで推移した。サービス業(△18→△14)では「不足」超過幅が縮小した。建設業(△25→△25)・製造業(△18→△18)・流通業(△10→△10)では変化がなかった。

施設稼働率DI(前年同月比)は前回調査の0から8と大きく「上昇」超過幅が拡大した。業種別でみると、製造業(0→13)が二桁の「上昇」超過幅の拡大を示した。流通業(0→2)は大きな変化がなかった。次期見通しは前回調査の5から6と大きな変化がなかった。業種別にみると、製造業(9→8)は横ばいで推移し、流通業(1→4)では小幅ながら「上昇」超過幅を拡大させた。

【雇用】 建設では過去最悪の人手不足感

今月の状況DIは△47から△47と変化がなかったものの、深刻な人手不足感を示した。業種別でみると、建設業(△68→△69)では不足感が高止まりで推移した。この数値は1994年調査始まって以来、最も深刻なものである。その他の業種も依然として人手不足が続き、流通業(△41→△45)は更に「不足」超過幅が拡大した。製造業(△44→△41)・サービス業(△43→△40)は深刻な状態でほぼ横ばいで推移した。

次期見通しは△44と変化がなかったが、こちらも調査始まって以来、最も深刻な数値である。業種別にみると、サービス業(△42→△38)は「不足」超過幅が縮小傾向にあった。製造業(△37→△39)・流通業(△39→△41)は更に「不足」見通しの超過幅が拡大した。建設業(△66→△66)も最も深刻な数値で変化がなかった。

【価格変動】
仕入価格、建設で高騰
販売価格はやや上昇

仕入価格変動DI(今月の状況)は前回の35から37と小幅ながら「上昇」超過幅が拡大した。業種別でみると、建設業(36→56)は20ポイントと急激な「上昇」超過幅の拡大が見られた。製造業(52→58)も6ポイント「上昇」超過幅が拡大した。流通業(34→30)・サービス業(23→19)はいずれも4ポイント「上昇」超過幅が縮小した。

前年同月比では36から37から大きな変化がなかったものの、9期連続の拡大傾向継続となった。業種別でみると、建設業(39→56)が17ポイント二桁の「上昇」超過幅の拡大を示した。製造業(57→60)も大きな変化がないものの高い水準を維持した。流通業(35→31)・サービス業(21→17)はいずれも4ポイント「上昇」超過幅が縮小した。

次期見通しは前回の27から29と大きな変化がなかった。業種別でみると、建設業(27→41)が14ポイント「上昇」超過幅が拡大し、製造業(38→41)でも「上昇」超過幅が拡大した。流通業(31→24)は7ポイント「上昇」超過幅が縮小し、サービス業(17→17)は4期連続で変化がなかった。

販売価格変動DI(今月の状況)は前回の11から「上昇」超過幅が3ポイント拡大傾向を示し14だった。業種別でみると、建設業(15→22)は「上昇」超過幅が拡大した。流通業(14→16)・サービス業(5→8)でも「上昇」超過幅が拡大した。製造業(13→14)は大きな変化がなかった。

前年同月比は前回15から大きな変化がなく16だった。業種別でみると、建設業(18→26)が8ポイント「上昇」超過幅が拡大した。サービス業(9→11)も小幅ながら「上昇」超過幅が拡大した。一方、製造業(17→15)・流通業(20→17)はいずれも「上昇」超過幅が縮小した。次期見通しは前回の12から10と小幅ながら「上昇」超過幅が縮小した。業種別でみると、建設業(12→18)は6ポイント「上昇」超過幅が拡大した。一方、製造業(13→4)・流通業(17→12)は「上昇」超過幅が縮小した。サービス業(7→6)は大きな変化が見られなかった。

【借入金利】 短・長期金利、建設で「上昇」超過

短期借入金利DIは前回調査の△1から変化がなかった。業種別でみると、建設業(△2→2)が「上昇」超過に転じた。流通業(1→△2)は「上昇」超過幅が縮小し、製造業(1→0)、サービス業(△3→△4)はほぼ横ばいで推移した。

長期借入金利DIも前回の△1から変化がなかった。業種別でみると、建設業(△3→0)・製造業(△2→0)では「上昇」超過に転じた。流通業(2→0)は小幅ながら「上昇」超過幅が縮小し、サービス業(△3→△3)では変化がなかった。

【経営上の力点など】 経営上の問題点、「従業員の不足」・「人件費の増加」が引き続き上位に

全業種でみた経営上の問題点は、「従業員の不足」(49%)、「人件費の増加」(30%)「仕入単価の上昇」(21%)という前回同様の順位となった。人手不足は長期トレンドであり、魅力ある企業づくりは喫緊の課題といえる。また社員の高齢化による人件費の増大への対応も急務である。

業種別でみて特徴があったのは、建設業で「下請業者の確保難」(55%)が、製造業・サービス業で「人件費の増加」(37%・32%)」「民間需要の停滞」が流通業(26%)で多く回答された。文書回答では「残業規制と有給義務化でより人手不足と人件費増(製造業)」「顧客業界のIT化が顕著(流通業)」「ビジネスモデルの転換も含めた新規市場の創出が急務(サービス業)」があった。

全業種における経営上の力点は、第1位「付加価値の増大」(54%)、第2位「新規受注(顧客)の確保」(49%)、第3位「人材確保」(42%)で前回から変化がなかった。


<会員の声(業種別)>

(1)建設業

●建設業の業況判断DIは再び上昇に転じ、一見「絶好調」の気配と見受けられましたが、その内実は供給過剰の進行が止まらない末期的とも言える極めて奇妙で異常な状態が続いている現実認識を冷徹に保持しながら行動することの重要性が分析会議で明らかにされました。人口減少局面で毎年一千万戸超の空家が増加しているにも関わらず百万戸超が新築着工され、低金利政策のため価格を下げず、調整未販売の潜在在庫が相当数あり、賃貸仲介は完全にオーバーフローにも関わらず今後もかなりの量が市場に供給、ホテル建築も同様とのことです。オリンピックや展示場や万博など大型プロジェクトも続きますが、人口減少曲線に伴った長期停滞期がどのようになって続くのか、大手建材メーカーは新たなスキームづくりを研究中との情報も紹介されました。人材不足、協力会社の縮減、コストアップ、工程計画難、働き方改革の下請へのしわ寄せなど、中小建設業の現場では多くの課題を抱えています。足元の忙しさに埋没せず、再編の嵐や大きな構造転換など広い視野で生きた情報を収集咀嚼し、足元を固めつつ地域と暮らしの将来を見据えた独自の長期展望を描いていきたいものです。(事務局 加藤)

1.総合工事

  • 総合建設業界は絶好調ながら東京・関西圏からの参入激化と大手及びローコスト・フランチャイズ等の主導権が強まり二極化も見受けられる。深刻な人手不足、熟練不足、コスト高、資材入荷難などによる工程延長、働き方改革への対応と下請へのしわ寄せなど、非常に難しい課題を抱えているのが実情。
  • 国策、業界が将来の事業計画を考えられているか疑問を感じる外国人労働者の採用。

2.基礎、鉄筋、土木

  • 人手不足が一層深刻になっている。去年・一昨年から比べると受注施工案件・施工量が急増して、人手・設備ともに不足し、加工工場は10月中旬から11月中旬まではほぼ毎日残業をしている。現場も残業せざるを得ない状況があった。鋼材単価が上昇している。
  • 夏の酷暑による稼働率低下と同時に全体的な受注も増加傾向になった。現時点で来春の見通しも明るい兆しが見えてきた。それに伴い人手不足の解消に心血を注いでいる。材料入荷の予定がオーダー後約1か月待ちという状況が続いており、ある程度先を見越したオーダーを計画的に進める必要がある。
  • 不況時の単価が下がったまま、現在は仕事が溢れ人材不足の中でも単価がなかなか上がってこない。

3.左官、外構、屋根外壁

  • 消費税の駆け込み受注の影響もあるのか10月まで多忙だが来年の不安も感じている。
  • 台風以降、材料不足が激しい。人材不足も相まってお客様に待ってもらっている状況が続く。これから年度末に向かって加速する気配あり、早めの職人や材料の確保が必要になってくる。
  • 台風の影響や消費税の前倒しもあり忙しいが消費税上がってからが心配。
  • 災害と少子化の影響で忙しい。我々下請け業者の人手不足は決定的。技能実習生制度も検討したが赤字があるとできないと判明。条件、制度的にもすべて大手が有利な中、人材は大手に流れ下請けの人手不足は恒常的に続くのではないかと予想される。

4.給排水管工事、電気工事、設備工事

  • とにかく人手不足。休日を増やしながら給料を上げなければ人材はこない。効率を上げるのももう限界だ。
  • 物件が増えているが会社での処理能力が追い付かない。協力業者も仕事が増え仕事がオーバーフロー。
  • 上下水道の維持管理費が受益者負担では不足して自治体が赤字を補てんすることが限界にきている。そこで自治体は民間活用PFI、PPPなどの手法で乗り切ろうとしている。水のライフラインを守るのに多くの課題が潜んでいる。
  • 元請け企業のマナー人間レベルの低下が目につく。連絡不備・嘘の報告など自社にも影響しかねない状況にある。電話対応や受け答えの仕方、礼儀・礼節を忘れ自社の利益のみ追求する企業・事務所が多くなったと感じる。自社では作業効率化を推進することで社員の休日を増やし全体での人件費を圧縮。
  • 来年4月から始まる働き方改革にどのように対応するか思案中。

5.不動産

  • 消費増税発表で住宅購入が増え、付随して不動産、測量業務も多くなったが増税後の冷え込みが心配。
  • 消費増税が決まり、自宅用地や建売住宅を購入しようとする人は増えている。しかし頭金を十分用意できない方が目立つ。

6.建築設計

  • 不動産関係は依然として堅調。土地の価格は上げ止まっている状況。建築関係も賃貸物件など投資用の物件が好調で、受注のスピードは鈍くなったが来春に期待している。一方で、労働力不足で仕事を受けても期待通りの日程で仕事ができない状況。これは設計も施工部門も同じ。工期が伸びれば、年間売り上げに影響が出そうだ。
  • 鉄骨工事、ハブ不足、HIB不足、発注通りの計画工期にならず資金繰りの悪化が懸念される。
(2)製造業

●業況判断DIでは、今月の状況が17→35と大幅に回復。特に「よい」と回答した割合が50%を超えるのは14年2月期調査以来です。前回調査では、前年同月比において製造業だけがマイナス値を記録していますが、これは自然災害による一時的なものではないか、との見方が強まりました。しかし、それを除いても、前年同月比では17年11月期調査を、次期見通しでは18年2月期調査をピークに微減(それぞれ12→7、30→27)の傾向が続いており、先行きは楽観視できないとする見方もあります。また、前回調査で短期金利DIが10年5月期調査以来のプラス値(1)に転じたことに加え、今回調査では長期金利DIも±0を示すなど、従来から指摘されている人手不足、熟練技術者不足、仕入れ単価の上昇、などに加え、金利の上昇も懸念材料になる可能性を含んでいます。(事務局 井上一)

1.金属加工・樹脂加工

  • 同業者の廃業やラインの廃止が相次ぎ仕事が溢れかえってしまっている。
  • 人材・資材共に不足している状態が慢性化していると感じる。建築用のボルトの生産が全く追いついておらず、大手でないメーカーに問い合わせても来年4月以降になると回答があった。
  • 人件費上昇に伴う粗利が出ない。
  • 台風21号の影響で、入荷の遅れが出た。
  • 自動車業界が、鉄の使用比率を下げることによる部品点数の減少。
  • 好調だった工作機械にやや陰りが見えてきた。輸出頼みなのは明らかなので、海外の動向に引き続き注視が必要。
  • 国内自動車種別販売台数のバラつきが大きくなっている。売れない車種を受注している場合は在庫保有が多くなってしまい利益損失につながる懸念がある。
  • 原油高騰に伴い原材料の値上げが今年の春ごろから上がり、在受注している製品単価の交渉は厳しく、さらに今後の利益確保が困難と予想される。
  • 秋頃から受注が落ち着きつつあったものが、ここへきて少し引き合いが増えている。業況によるものか弊社によるものかまだ判断が難しい。
  • 自動車の自動運転、EV、HV化が急速に進む中、新規部品に対応するための技術力向上を大きな課題として取り組んでいる。

2.機械部品・機械製造

  • 発注元が高齢化や人材不足で立ち行かなくなってきたため、そこを飛び超えユーザーから弊社に直接依頼が入ってくるようになった。今後もこのような状況は増えて行くことが予想されるが、我々中小企業にも受け皿としての限界がある。
  • 技術者不足はこれからも続くであろう。機械化の促進を図り、新卒が即戦力となるための期間を短くするよう教育する必要がある。外国人社員の採用も考える必要があるだろうと最近感じるようになった。
  • 思わぬところから新規事業の要請有り。やり方次第で一つの柱になる可能性有り。
  • 目先は多忙ですが、顧客によりこの先の展望に若干ニュアンスの違いがあるようで、全体像をつかみ辛い。

3.印刷・包装関連

  • アミューズメント関連がとにかく悪い。今期は自動車関連も下がってしまったので来期に巻き返しを図る。
  • 歳末商戦に向けての印刷需要が今一つ盛り上がりに欠けている。
  • 新規案件の見積依頼はあるが、価格面で合わないため受注できないことが続く。
  • 印刷関連の会社の廃業やM&Aが目立ってきた。信頼できる協力会社がなくなるのはとても痛い。今後も続くと言われており、新しく会社を探すことや既存の協力会社に過剰な負担がいかないか、非常に心配になる。

4.食品・繊維製品・雑貨・身の回り品製造業

  • 天候による仕入れ価格の変動が今までにないぐらいに激しくなっている。
  • 食品表示法の改正に伴い、検査機関への依頼準備や設備準備の負担が大きくなっている。
  • 衣料製造現場では、中国での原材料の高騰・工場労働者確保難が深刻で、1週間でできるものが10日以上かかってもできず、予定納期に間に合わなくなっている。
  • 国内は高齢化が進み、人口も減少、マーケットがなくなりつつある。視野を海外に持っていかざるを得ず、海外での投資を余儀なくされる。このあたりは企業にとっての分岐点になる。
  • 官公庁案件のデフレが止まらない状況。無駄に競争をあおっている。資金確保のため採算割れで受注している企業も。
(3)流通業

●前回の8月景況調査の結果と比較して「今月の状況」を見ると、業況判断DIは25→32と7ポイント増加、仕入価格変動DIは34→30と4ポイント減少、販売価格変動DIは14→16と2ポイント増加、経常利益DIは27→26と1ポイント減少、資金繰りDIは△20→△21と1ポイント減少、雇用動向DIは△41→△45と4ポイント減少、在庫感DIは11→7と4ポイント減少という結果になり、ほとんどの科目で厳しい状態が続いています。流通業においても人手不足と資金繰りが依然として深刻で、取引条件も悪化しています。(事務局 墨)

1.機械器具(自動車、事務機器、電設資材等)

  • 中国の工作機械、ロボット、半導体製造装置の生産にブレーキがかかったため、そこへ輸出している客先の生産が落ちている。来年の春節以降は持ち直すという声もあるが、先行きは非常に不透明。自動車は秋に一旦生産が落ちたが、12月からは日当たり生産台数も昨年並みを回復する計画になっている。ただ、対米貿易交渉次第では日本での生産量が減る可能性が高いと思われる。現時点ではどの業界も高い生産水準で推移しているが、先行きはよくわからない。
  • 2極化という側面はあるものの平均的には仕事量、売上に陰りが出てきた。スポットの部品加工を請けてくれるところが減少したので残っている所は込み合っていて納期が長くなってきた。

2.建築資材

  • 景気がいいところと悪いところの格差。大手会社の設備投資が増えている。消費税増税まではあるイメージ。自動車製造は従業員規模が50人規模以上の会社は受注していそうだが従業員10人未満の家族企業は廃業の噂が目立っている。

3.繊維、衣服、雑貨

  • 同業者が、今年に入って6社程倒産しており、ギフト業界の景況が下がっている。
  • ここ1年半ほど仕入価格の値上げの動きは止まっていたが、昨今の原油価格上昇を受けてすべての原材料費の高騰が考えられる。業界的には値上げの動きは来年でなく再来年になりそうだが、ちょうど来年の消費税増税と合わせどのような動きになるか注目。ただ、エンドユーザー的には値上げは難しそう。
  • 宝飾業界はとても冷え切っている状態。
  • ガソリンスタンド業界全体の流れとして燃料油における粗利の利益額を増やす流れが感じられるが、地域ごとに安値量販店による局地的な価格競争が起きている。時期的にこれからガソリンの在庫が増えてくることと年末商戦を過剰に意識する安値量販店の競争が業界全体に蔓延していかないか心配。

4.飲食料品

  • 12月にニホンウナギの国家取引に何らかの規制がかかるようになるかどうかCITES(絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の審議が始まる。仮にニホンウナギがCITESの議題に上ってしまうと、2020年から輸入活鰻の輸入量が制限されるか、もしくは輸入禁止となり、鰻業界に関係する会社やお店は従来の流通ルートの変更と業態の変革が求められる。
  • 飲食業界がかなり疲弊している為、受注量もかなり減少。廃業の決断・業態をかえる会社が増えてきた。物量・品質は安定しているが、物量に対して受注が少なく在庫が増加気味。相変わらずの人手不足はかわらず、求人を出しても、時給をあげても応募が全く無い。
  • 原材料費や燃料費等と最低賃金の上昇により、利益確保が厳しい。消費税増税やそれに伴う景気後退の不安がある。

5.運輸、情報通信

  • 燃料価格が昨年比で20%以上高騰しており厳しい。労働時間=残業時間は短縮しているが、退職を防ぐ為にも賃上げをして時間当り賃金単価は維持している。2019年度労働時間の更なる規制強化と有給休暇5日取得義務化への対応が目下の課題。
  • 販売価格(運賃)は値上げ等も成功しているが、燃料費等の流動費も大きく増加している為、利益には繋げられていない。応募があるものの採用まで届かない為、人材確保が進まない。
  • 人材不足によるトラック不足だが、車部品でもプラスチック製品の増産による受注が増加による増車。
  • 顧客業界のIT化が顕著であり、自社の開発リソースに見合った商品選定が今後の明暗を分ける。

6.保険、不動産

  • 消費税増税が決まり、自宅用地を購入しようとする人や建売住宅を購入しようとしている人が増えているが、頭金を十分用意されていない方が目立つ。
(4)サービス業

●今月の業況判断DIは29→33、経常利益DIは27→26と、高い値を記録した5月とほぼ同じ状況を表しています。3業種毎に分けると、専門サービス業が前回とほぼ変わらず、対個人サービス業に減速が見られますが、対事業所サービス業の業況判断DIが25→45、経常利益DIが23→35と、こちらも5月の調査と同じく大きく回復しました。

経営課題として「人件費の増加」が31%、「人手不足」が45%。経営上の力点として「人材確保」が35%、「社員教育」が28%と、以前より高いままですが、業種毎に大きな差が見られます。対個人だけで見ると、前から42%、55%、47%、38%、力点として「財務体質の強化」を上げる方が27%と他業種より如実に多く、課題は共通しているものの、対個人がより切迫して直近の問題に追われていることは明白です。

また、時勢を反映してか、外国人労働者の受入れへの不安を筆頭に、来年の消費税増税・軽減税率適用への憂慮、自社は充足していても取引先の人材不足による悪影響を訴える声が目立ちました。「今は良い」だけで、先行きは決して明るくないことは、次期(3ヶ月先)見通しについて、業況判断及び経常利益DIの値が、今年2月より右肩下がりであることから、回答先も実感されていることが伺えます。(事務局 橋田)

1.福祉(介護)

  • 国の施策として介護保険が徐々に引き締められている中、今後の福祉サービスとしては、保険に頼らない生産性のある事業展開を、自社内で考える必要がある。その為にも、自立した施設と外部の事業所間の連携をより強化しなければいけない。
  • 単価は変わらない中、最低賃金の上昇が少しずつ苦しくなってきた。人材不足の中仕事を増やすしかなく、働き方とのバランスをとることがかなり難しい。

2.産廃・環境

  • 10月より最低賃金が上昇した為、行政へ委託単価の値上げを依頼したが、据え置きのまま。これまで行政から無理を受け入れ続けているので、財源が厳しいとは思うが、最低賃金上昇に伴う委託単価上昇に関しては、こちらの要望も聴いて頂きたい。
  • 中国への輸出が2019年から完全にストップするからか、品物が国内に溢れている。不法投棄が起きないか心配。

3.自動車整備・販売

  • 新規顧客獲得に伴う仕入増加で、売上の回収以上に初期の投資金額が必要となり、結果借入金が増えてきている。
  • 業界では廃業が増えてきた。理由として、後継者不足、人材不足、将来の見通しが良くないことと、分析している。今、人材を確保し生き残れれば数年間は安定した利益を確保出来そうだが、その後の展開が読めない為、人材確保についても動きにくいのが現状。

4.業務請負

  • 警備の人手不足がずっと続き、会員企業からの依頼もお断りしている。単価は上がっても、人は減っていて、売り上げは決して伸びていない。取引先の廃業や縮小で、事業も安易に広げられない。

5.専門サービス

  • 商工会議所などが、中小企業を対象に士業分野へ進出してきた為に、中小企業をメインの顧客にしている士業でも、顧客の激しい奪い合いが始まった。このままいくと、士業も大企業の「完全下請け」になりかねない。
  • 従来の法律問題は、他士業との取り合いになってしまい、価格競争で負けてしまう。基本となる相談がこない状況では、いかに質の高いサービスを掲げても意味が無い。他士業との提携は、既に行われていることであり、今後は葬儀会社、不動産会社、保険会社という、他業種との連携も必要となってくる。
  • 不動産関係は依然として堅調で、土地の価格が上げ止まっている。建築関係も、賃貸物件など投資用の物件が好調。一方で、人材不足により、仕事を受けても期待通りの日程で仕事が出来ない。これにより、工期が伸びてしまうと、年間売り上げに影響が出てくる。