多様な働き方の実現 ~仕事と生活のバランスを取る
磯村 太郎氏 (有)サン樹脂加工
自らの姿勢を問い直す
ワークライフバランスの推進が難しいと言われる製造業ですが、その取り組みを模索するサン樹脂加工の磯村太郎氏の報告を聞き、各社で「人を生かす経営」をどう実践するかを考えました。
磯村氏は当初、受注する各部署の仕事に会社の全力で応えられるよう、社員の多能工化を目指します。しかし、社員には「きっちり仕事をしてくれればプライベートは無関心」とドライな姿勢でいたため、なかなか人が定着せず、ジョブローテーションも組めなかったといいます。同友会で経営指針作成に取り組む中で自らの経営姿勢を問い直し、社員の気持ちを全く考えていなかったことに気づき、経営理念を作り直します。
ちょうどリーマンショックで大変な時期でしたが、逆に時間ができ、それまでは忙しくてできなかった社内改善に取り組み、労使は対等な立場での雇用契約だと学びます。社員と一緒に1年半かけて新たな就業規則も作り、面談やランチミーティングの機会を増やして社内のコミュニケーションを深める努力を行います。
「ささやかな幸せ」
2012年に企業ビジョンをつくる際に全社員アンケートを行い、「家で家族と一緒にご飯を食べている時が一番幸せ」という社員が多いことがわかりました。ささやかな幸せだからこそ、ワークライフバランスの推進は重要だと気づき、改めて社内で改善に取り組みます。
同じ年の6月から始めた毎週金曜日の「ノー残業デー」は今も続いています。「産休・育休」は女性2名、男性5名が取得し、「子供の出生後1カ月はノー残業」に関しても9名の男性が実行しています。介護に関しては、現在2名の男性が毎月1~2日の介護休暇を取得しているそうです。
しかし一方で、有給休暇や業務遂行に対する価値観の違いが出始め、社内の雰囲気が悪くなった面もあるといいます。社内の改善には一生懸命でも、そもそもそれを可能にする仕事づくりに社員の目が向かないという課題に、「本当に人を生かしているのか」と改めて問い直していると磯村氏は語ります。
社員が互いの価値観を尊重し合い、お客様へ新しい価値提供ができるよう外に目を向けられる、安心して仕事ができるような会社づくりに取り組んでいると結びました。