事業承継を考える
鋤柄 修氏 (株)エステム
坂野 豊和氏 (株)まるは
「理念の浸透」がカギ
1月度広報部会は「事業承継を考える」と題し、報告者にエステム名誉会長の鋤柄修氏、まるは代表取締役の坂野豊和氏を迎え開催しました。
今後10年間で全国380万社のうち245万社が世代交代の時期を迎えます。そして245万社の半数以上において、後継者未定のため倒産や廃業の可能性が高まると言われています。
国では、雇用や技術の消滅、地域経済への影響などから様々な施策をとっています。これらをうまく活用すれば、株式譲渡にかかる相続税・贈与税の税金を大幅に軽減できるようになりました。
このようにハード面では、整備が進んできています。しかし、事業承継でよく言われる理念の承継は、私たち経営者が負うところです。両報告者からは共通して、理念の浸透に関する話がありました。
鋤柄氏が先代から継いだとき、会社には理念が浸透していないと感じたそうです。そこで、「A4、1枚にぎっしりと書かれていて」非常に長かったという理念を整理し、伝わりやすくしました。坂野氏も、創業者の思いはあったものの統一的ではなかったため、理念を整理しています。
そして、鋤柄氏は「環境フォーラム」という社内イベントを通じて、坂野氏は「パートナーカード」を活用して、それぞれ浸透を図っています。鋤柄氏は、「理念が正しく伝わることが大事」と強調しました。
社員の自主性を尊重
社員の登用にも共通点がありました。坂野氏は出店要請に応じるか迷ったとき、社員が店長に立候補したので出店を決意。その店長は現在、坂野氏が「5人の片腕」と称するうちの1人に成長しています。鋤柄氏も他社から要請があり、立候補した社員が出向。結果として、その社員が3代目の社長になったといいます。どちらの会社にも「自主」を重んじる社風が確立されていたことを裏付けるエピソードです。
事業承継にあたっては、もう1つ、株式の問題があります。鋤柄氏は専門家と相談し、持ち株会社を設立。坂野氏は、やはり専門家と相談し、税法上有利な制度を活用し株式の取得を行っています。
鋤柄氏からは他に、金融機関からのアドバイスで会社が不動産などを保有し担保を持てるようにしたり、個人保証を外したこと。坂野氏からは、将来は息子に会社を継いでもらいたいこと、それを支えてくれる幹部を10人育てていることも話されました。
安藤不動産 安藤 寿