活動報告

広報部会(8月25日)

障害者問題を考察する
~愛知モデルの浸透に向けて今できることは

笠原 尚志氏  (株)中西

障害者問題を語る笠原氏

障害者の力を仕事で活かす

広報部会では毎年、「障害者問題」について取り上げています。今回は中西取締役会長の笠原尚志氏より報告いただきました。

同社は1964年創業のリサイクル業で、回収された瓶を色別に分別したり、ペットボトルなどのキャップを外したりする作業を36名の障害者(現在、従業員81名のうち)で行っています。

同友会入会時には経営理念を策定。当時は障害者雇用が一般的ではなかった中、「障害者の力を仕事で活かす」ことを意識し、障害者雇用にも力を入れてきました。

同社には現在、重度判定を受けている知的障害者25名が働いていますが、例えばキャップを1分間に10個しか取れなかった人が、1カ月後に15個取れるようになると、前社長は「少し作業ができるようになった」と大きな喜びを表現しました。これは、健常者の成長を見守る喜びと全く同じで、ペースが遅いだけのこと。こうして、障害者雇用を支え続けてきたといいます。

障害者問題は人間尊重経営の必然的課題

とことん向き合う

障害者ととことん向き合い「気づかれない才能」を見つけ、根気強く教え続けると、しっかりやり遂げるようになると笠原氏は話します。他方で、家庭環境や障害者個人の問題、事故やトラブルなどさまざまな問題もあり、その対処に関しては経営者としてどこまで介入すべきか常に悩むといいます。

障害者も年を取れば体力が落ち、それに応じてできる仕事を確保していく責任もあります。さらに、親の高齢化もあり、本人の自立に向けてグループホームへの入居を提案することもあるそうです。

中小企業の障害者雇用について、笠原氏は「法定雇用率が上がり、大手企業が多く採用することで、中小企業には人材が回ってこなくなっており、希望しても応募者がいない場合もある」と話します。さらに、単純作業の仕事も新技術の導入によって効率化されると、障害者が担っていた仕事が減ってしまう可能性があるとの懸念を示しました。これは今後の課題として考えなければなりません。

1社1人関わる・愛知モデル

障害者自立応援委員会では「1社1人関わる・愛知モデル」を提唱しています。直接雇用の有無にかかわらず、まずは1人でも、1つの仕事でも、障害者と関わることが重要と訴えるものです。

また、「見えない生産性」という概念は、障害者を雇用すると周囲の健常者も少しずつ変わり、どうすれば効率よく働けるか工夫するようになります。結果として「見えない生産性」が「見える生産性」につながるのです。障害者との関わりは、本人や周囲の成長、組織全体の生産性向上にも寄与するということを笠原氏は強調しました。

今例会で、同友会での「障害者支援・雇用」は障害者、健常者の分け隔てなく「人間尊重経営」の必然的な課題であると再認識できました。まずは知ることから始め、関心を持ち、理解する、そして、できる範囲で関わる。さらに経営者、社員に意識を広げ、少しずつでも実践し継続していくことが重要と考えます。