真の経営者になるべく同友会で学ぶ
鋤柄 修氏 (株)エステム

同友会では経営理念に「科学性」「社会性」「人間性」の3要素を掲げています。同友会の中でも、特に人間性を深く学んでいる場が障害者自立応援委員会です。同委員会では、障害者の枠にとらわれず人間性を深めることにスポットを当て、2021年から「人間性を語る夕べ」を開催しています。今回は、同友会運動で培われた人生観を鋤柄修氏(エステム名誉会長)に報告いただきました。
価値ある出会い
私は、大学の同級生と2人で、エステムの前身である総合施設サービスを起ち上げました。創業して10年目、社員は30名を超え、売り上げは4億円が目前という、中小企業としてはまずまずの成長を遂げた頃のことです。突然、労働組合ができ、経営者として目が覚めました。もっと経営の勉強をしなければと思っていた時に、愛知同友会の経営指針についての新聞記事が目に留まり、同友会に飛び込みました。これは私にとって、非常に価値ある出会いとなりました。
中同協主催の「第1回中小企業労使問題全国交流会」に参加した時、故・赤石義博さんの講演を聞きました。内容は難しくてわかりませんでしたが、「経営理念は大切だが、経営理念で飯は食えん。だから会社で社員たちがいつも議論している」という話が記憶に残りました。じわじわと赤石さんの人間的な奥深さに惹かれ、講演を聞きに全国どこにでも出かけました。これがきっかけで愛知同友会の労務労働委員長となりました。
委員長として中同協の会議へ行くと、赤石さんに「労務労働委員会で勉強すれば、本物の経営者になれる」と励まされ、各地の同友会委員長のすばらしい経営実践からも多くの学びを得ました。
「人間性」と「人間力」
「人間性」には、思いやりの心、知と情のバランス、度量の大きさが大切だと考えています。それは、その人の行動ににじみ出てきます。同じくらい能力がある野球選手でも、プレーやマナーなどそのふるまいから感じる「人間性」は大いに違いがあります。
孟子の教え「惻隠の情」も大切にしています。社員が会社のルールに反した時は、経営指針書や就業規則、経営戦略をもとに判断しますが、事案によっては、人間性を大切にするか、経営戦略の問題として対応するか、トップが責任を持たねばなりません。
かつて、我が社を学習型企業にしようとした時、創業時から一緒に働いてきた社員の猛反対にあいました。これは経営戦略に関わる事案です。同友会の仲間にも相談して考えた末、反対する社員たちを1人親方として仕事と生活を保障し、エステムの会社組織とは一線を画す対策を講じ、戦略を前に進めました。
「人間性」は、性格や雰囲気がよい方向にあるという印象です。私は、人間性もあり能力も身に着けているという意味で「人間力」を重視しています。「力」を育てるためには訓練が必要ですので、会社は学習型企業でなくてはなりません。
社員を雇用すれば、何かしら事が起こります。そうした時に、何があっても社員が一生困らないようにと経営姿勢を貫くことができたのは、「労使見解」の実践に徹してきたからです。同友会は実践の会です。共に本物の経営者として成長していきましょう。









