共同求人活動で自社を「社会からあてにされる会社」に磨き上げる
~一緒に共同求人に参加しませんか
パネリスト
安藤 健一郎氏 (株)サンキ(熱田第2地区)
水野 清香氏 水野工業(株)(小牧地区)
芝田 康太氏 昭和鋼機(株)(中川地区)
コーディネーター
村田 直喜氏 (株)MRT(中川地区)

共同求人委員会は、採用に関する会員の悩みごとの解決の糸口となるべくオープン委員会を開催し、共同求人実践者によるパネル報告を行いました。コーディネーターの村田直喜氏が投げかける質問に答える形で行われた安藤健一郎氏、水野清香氏、芝田康太氏の報告概要を紹介します。
共同求人を始めた動機、続けている理由
定着を課題に活動再開
【安藤】
当社はインフラ整備のための測量設計に携わっています。2010年に同友会へ入会、12年に採用数がゼロになったことに危機感を覚え、共同求人に参加。セミナーを通じ、新卒を受け入れる準備ができていないことを痛感しました。また、ブースを出しても、学生に対する発信が不十分であると気付きました。共同求人は一旦休止し、セミナーでの学びを社内で実践しました。その後、独自に採用力をつけてきましたが、採用できても定着しないことに課題を感じ、18年より共同求人を再開しています。
社内の若返り目指して
【水野】
当社は、上下水道工事・改修、設備工事などを行っています。入会のきっかけが、共同求人にどっぷりつかっているサン樹脂(株)の磯村太郎さんからの紹介でした。会社を継いだ時から社員の高齢化が進んでおり、採用活動に取り掛かりましたが、まったく上手くいかない状況でした。2016年入会と同時に共同求人に参加。初年度の結果は散々でしたが、他社と比較することで自社の足りないところと、見えていなかった自社の良いところも発見できたのは大きな収穫でした。
採用と共育を学べる共同求人
【芝田】
当社はコンクリートプラント事業を主軸に製造、運搬、設備分野のサポートをしています。社長が2010年の入会時から経営指針に取り組んでいます。採用と共育を学べる共同求人には21年から参加。社長は、「指針・採用・共育を実践しなければ同友会に所属している意味がない」と言うほど三位一体経営を意識しています。新卒採用に関しては、同友会の共同求人だけで、過去3年間で7名の採用につながりました。もちろん、皆さんと同じで初年度は採用できず、そこからどうしたら学生に選ばれる会社になるかを追求しています。
新卒採用を始めてからの自身や会社の変化

採用チームによって社風改善
【安藤】
社内で採用チームをつくるようになって、理念採用が浸透してきました。チームは3年でメンバーを替え、採用に関わったことがある社員を増やしています。採用に関わる社員は、学生との出会いの段階だけでなく、その後の教育が重要であることにも気付いてきます。社員が主体性を持つことで社風改善が進み、社員の定着率が上がってきました。中途採用に関しても、業界的に未経験者が多いので「1から育てる」という意味では大きな違いはないですが、どうしても前職と比べる傾向にあるため定着率で言えば新卒の方が高いです。
採用難の建設業界で若手が活躍
【水野】
最初は自分1人で活動している状態でしたから、活動2年目に初めて採用できた時は社員に驚かれました。残念ながら受入体制が不十分で早期離職となりましたが、その後、経営指針を作成し、会社全体に教育の重要性を呼びかけました。共同求人を始めて4年目から社員が定着し始め、今では2021年入社の社員が採用担当として頑張ってくれています。新卒社員はこれまで高卒を含めて10名採用し、5名が定着しています。採用難の建設業界で「どうしてこんなに若手がいるんだ? すごいね」とお客さんに言われるようになり、そこから徐々に会社組織もできてきたように思います。
毎年の新卒入社を歓迎
【芝田】
最初は、社員を単なる即戦力と捉えていました。しかし、入社した社員が独り立ちし、客先に感謝された話を聞くと、我が子の成長のように感じ、「社員を絶対に幸せにしたい」という気持ちに変わりました。また、「誰が面倒を見るんだ」と新卒採用に反対していた人ほど熱心に面倒を見てくれて、会社にとって仲間が増えることは良いことだと実感できます。今では、「来年は何人入るの?」「うちの部署にも新卒入れてよ」という声が増えました。社風として、毎年新卒が入社してくるのが当たり前、という雰囲気になりつつあります。
選ばれる企業になるための取り組み
未経験であっても1から教育
【安藤】
建設業は若者から選ばれづらい業種であり、そのイメージを払拭するために、働く環境の改善を継続的に行っています。初任給、昇給や年間休日数を毎年増やしています。業種的には理系職ですが、文系出身や未経験であっても1から教育して、技術職のプロとして活躍できるように育てる仕組みがあります。知識・技術・国家資格試験の各種勉強会を先輩社員が講師として行っており、サポートする体制があります。

ホワイト企業を目指して
【水野】
働く条件面でも働き方に関しても、ホワイト企業を目指しています。私自身、過去に健康を阻害する働き方をしてきた経緯があります。社員には、自分を犠牲にする働き方はしてほしくありません。そこで、「健康で長く働いてほしい」という想いから、健康経営の認証を毎年取得し、社内外に健康の大切さを伝えています。若手が増えていくと、新しい人が入ってもなじみやすいように、情報共有、活動のための仕組みづくりをしていますが、こちらは取り組み中です。
オーダーメイド教育
【芝田】
社員は、オーダーメイドで育てています。例えば当社では入社して2カ月は全ての部署を体験してもらい、その後、本人のやりたい仕事と会社側が向いていると思う仕事をすり合わせ、10月に本配属となります。最初は設計志望で入社し、その後事務職に変更し、最終的には営業となった社員もいます。社員の能力を生かして新たな部署が創設されたケースもあります。説明会の場で、学生にこういった教育方法を話すことで、「入社した後、もし自分に合わなかったら」という不安な気持ちを払拭する材料となり、安心して働くことにつながっています。
採用活動を続けることでの良い影響
「人が人を磨く」組織
【安藤】
若手社員が教育に関わることで、自身の仕事の仕方を振り返ることができ、教える側のさらなる成長が見込めます。仕事面で後輩に追い越されないように自己研鑽に努めるようになるのも、良い効果です。また、新卒採用を進めてきて分かったことは、新しいことへの挑戦に抵抗が少なく、会社が新事業に取り組むときに受け入れやすいことがあります。計画的に採用ができることで、技術の伝承が見込めるようにもなりました。「人が人を磨く」という言葉がありますが、普段から多くの人とコミュニケーションをとることによって、さまざまな価値観や考え方に触れ、人間的な成長につながっていくと思います。
普段の仕事も見え方が変わる
【水野】
採用できるかできないかの結果だけで一喜一憂すると、ただ疲弊する組織になります。誰しも慣れた居心地の良い所に居たくなります。変化を嫌い、新しい物事に挑戦しにくくなります。現状維持を望むと、必要最低限の情報しか見えなくなってしまいます。「将来こうなりたい」というビジョンを持ち、そのためにどんな人を仲間に迎えたいかを明確にすることで、普段の仕事の見え方も変化しています。また、新しい人が入ると仕事の棚卸しができ、情報が見える化され、仕事の属人化や非効率を防ぐことにもつながるようになりました。

教え合うサイクルの確立
【芝田】
先輩が教える→後輩が育つ→育った後輩が先輩となり、また後輩に教える、といったサイクルができることだと思います。教える側になるには事前に勉強し直し、相手に伝える努力が必要です。また、教えることで仕事に対する理解度が上がっていきます。それが毎年ブラッシュアップされ、繰り返されていくことが成果だと思います。また、弊社では若手社員がベテランに教えるという場面も増えてきました。新しい風が入ってくると、今までの「当たり前」がガラッと変わることも良い影響です。そのためには若い人材の力は必要不可欠だと考えています。
共同求人に取り組む意義
同じ立場で学び合う
【安藤】
採用活動は、採用できたら終わりではなく、新たな始まりです。採用活動を進めると社内環境改善につながっていくことが、共同求人の大きな特徴です。また、時代によって学生の考え方、就活のスタイル、スピード感にも変化があり、そこを知らずに各社の経験則だけで採用活動をしていくには限界があります。求人参加企業は、「自社を磨いて採用できる会社にしていく」という同じ目的で活動しており、同じ立場で学び合うからこそ、足りないものに気付くことができるというのが最大の学びだと思います。
学生主体の採用活動
【水野】
初年度、学校訪問に伺った際、ベテラン会員から会社での採用・共育の取り組みを聞くことができました。また、どの企業も自社の取り組みを惜しみなく教えてくれました。また、採用につながらなかったとしても、学生と直接話をすることで、若い世代の価値観に触れ、会社が活性化する機会をもらえています。同友会の共同求人は、学生に合った就職活動を重要視しています。どんな仕事をしたいのかを聞き出しながら、学生に合った企業を互いに紹介し合うのも特徴の1つです。これらは、互いが1人の学生を取り合うライバルの立場では成立せず、他の媒体での採用活動では得られないものです。
共に会社の変革を
【芝田】
他の媒体の企業説明会では、会社の変革にまではつながらないと思います。また、尋常でないスピードで高齢化と人手不足が進んでおり、“今”魅力のある会社になろうと努力しなければ、会社の存続さえ危なくなります。私は採用活動を通して、今いる仲間ともっと魅力ある会社にしていきたいし、社員1人1人が「会社に来るのが楽しい」と思えるような会社を目指したいと思っています。きっと同友会の企業であれば、同じように考えていると思います。そのためには、自社の不足に気付き、まずは一歩踏み出さないと、明るい未来は見えてきません。皆さんも、一緒にやりましょう!
【文責:事務局 下脇】









