会長 加藤 明彦
愛知中小企業家同友会の皆さま、明けましておめでとうございます。ご家族の皆さまと共に、新年を迎えられたことと拝察いたします。
昨年は、進展の一途をたどってきたグローバル化の潮流に変化の兆しが見えてきました。また、長引く低成長による格差問題の深刻化のなか、内向き志向の政策展開による自国優先主義が広がりつつあります。さまざまな局面に表れている構造的問題を克服し、人間らしく豊かに暮らせる社会へ向けて、中小企業の果たす役割はますます高まっています。そのなかで、自主的・平和的な日本経済を展望する同友会は、重要な立ち位置を占めると感じています。
新年にあたり、同友会運動を切り拓いた赤石義博さんから学んだ、人類に共通する根源的な願いである、人間尊重の経営について考えたいと思います。
生命の尊厳性 ~生きる
人間尊重の第1の側面とは、「生命の尊厳性の尊重」ということにあります。1つひとつの命を大切にし、1つの命を守ることがすべての基本です。すなわち「命の重さ」に差はなく「生きる」ことそのものに価値があるのです。命を大切にする心は、「他人の心の痛みを感ずる心」につながり、「他人を思いやる心」にもつながっていきます。他人の心の痛みがわかる心とは、自己中心的な身勝手とは何であるかを自覚させ、公正なあり方とは何かをみずから考える姿勢を育みます。実践的な課題としては、地域での雇用を維持し、社会的平均レベルで暮らしを維持できる賃金を確保することです。次には、健康を継続的に維持できる職場環境や、労働条件の改善があげられます。
人間の社会性 ~暮らしを守る
人間尊重の2つ目は、「人間の社会性の尊重」ということにあります。個人と社会の関わり方、個人と他の人間との関わり方、社会関係や人間関係のことです。集団の仲間の役に立ち、賞賛されるのは生きがい・働きがいの原点ともいえる要素で、「あてにしあてにされる関係」がキーワードになります。1人では生きられない「あてにする」感謝の念を持ち、「あてにされる」ことの喜び、誇り、更に磨き上げていく充実感〔自分自身で感じる存在価値〕を味わいましょう。そして豊かな地域づくりを社会的努力で進め、同友会が中心となり、連携し、力を合わせて運動を展開していく必要があります。
個人の尊厳性 ~人間らしく生きる
人間としての「個人の尊厳性の尊重」が、人間尊重の3つ目の側面です。人間が誕生する確率は50兆分の1だといわれ、1人の人間は極めて希少性の高い存在です。同時に死は土に還ることであり、時は不可逆ですから、1人の人間の人生とは再現できないものです。誕生から死に至る人間の人生とは、生きている今の一瞬一瞬を含めて、まさに「かけがえのない人生」なのです。この自覚が、人間が誰からも不当な制約や干渉を受けるべきでなく、1人の個人として尊重されるべきものとなり、人間の持つ無限の可能性を自己の人生の生きがいとして受け取る存在であることに気づきます。その人の持つすべての資質を最高の状態で開花させるために、「やらされ感」をなくし、無限の可能性を秘めている潜在能力を引き出す風土づくりに邁進しましょう。「人間らしく生きる」ために私たちに何ができるのか、同友会として何をすべきかを改めて問い直す必要があるといえます。