活動報告

協働共生委員会(6月4日)

西欧(フランス)と日本の労働観
~ワークライフバランスの違い

五十畑 浩平氏  名城大学経営学部 経営学科・准教授

身の丈に合った生活

このたび協働共生委員会から主にワークライフバランス(以下、WLB)に関するアドバイザーをお願いした五十畑浩平氏より、「日本と西欧(以下、仏国)の労働観の違い」をお話しいただきました。大きな特徴点は3つあります。

まず1つ目は、所属に関する考え方の違いです。仏国では「学校」はあくまで勉強だけで、部活などは地域のクラブや教会などが行い、1つの時代に複数の世界に所属する感覚が当たり前にあります。一方で、学校が授業以外に部活や課外活動等で終日子供の面倒を見る日本は、小・中・高校とずっと1つの時代に1つの所属という感覚で、社会人になっても「学校」が「会社」に変わるだけです。

WLBで働き方を変えて豊かに生活時間を増やそうと、「会社以外で、地域で、複数の所属を」といきなり言われても、私たち日本人は戸惑ってしまうと思います。

2つ目は生活環境の違いです。夜8時で店は閉まり、宅配便は一般的に数日かかり、古いものを長く大切に使う一方で、長期休暇を取り家族で楽しく過ごす仏国。24時間・365日、コンビニやショッピングモールが長時間営業し、荷物は翌日には届き、新作・新品・新商品が次々に売り出される日本。身の丈に合った水準で、地に足がついた暮らしをしているフランス人に対して、日本人は地から足が浮いている状態といいます。

消費者としては利便性を求めますが、それではWLBは崩れるばかりで、その分、休みを削って働かざるを得ません。日本では「働き方改革」でワークの見直しが強調されていますが、ライフという生活の側面をどう考えるかも必要といえます。

柔軟さと法整備の両立

最後に、フレキシビリティ(柔軟性・自由な選択)とセキュリティ(法整備・社会保障)の2つを合わせた「フレキシキュリティ」という言葉で、これは欧州でのWLBのキーワードになっています。仏国ではパートタイムでも働いている人の9割が正規社員で、女性に限らず男性もパートタイムで働く人が一定割合います。1日8時間ではなく6時間や5時間でもいい、そういう働き方が認められているのです。

働き方で柔軟な対応・自由な選択ができるのは、しっかりした社会保障と法整備があるからだといいます。日本の働き方改革では、後者のセキュリティがきちんと整備されているのかと五十畑氏は疑問を投げかけました。

参加者からは、日本のワーク中心と仏国のライフ中心という考え方の違いに「目から鱗」という言葉や、今後の委員会の中で、例えば中小企業憲章をつくるきっかけとなった「EU小企業憲章」についても触れてもらいたいという意見が出されました。