活動報告

報道記者との情報交換会「経営者の弛まぬ努力」(4月8日)

賃金・労働動向調査から

各調査の結果を踏まえ、中小企業のリアルを報告

不透明感のなかでの賃上げ

新型コロナウイルスの日本での感染拡大から1年が経過し、現在も「第4波」が懸念されています。今回の賃金・労働動向調査でも刻一刻と状況が変化し、先行き不透明感は増しています。

そのなかで、賃上げすると回答した企業は昨年に比べて増加傾向ではありましたが、コロナ前の水準には戻っていません。しかし、社員の士気向上や人材確保のため、少しでも賃上げしようと努力する経営者の弛まない努力が垣間見えました。一方で、今回は賃上げの原資が「十分ある」「ある程度ある」と回答した企業の増加が特徴的です。コロナ禍で先行き不透明ななかで、キャッシュの確保を最優先に呼び掛けたこともあり、多くの企業が様々な金融機関から借り入れを行った結果といえるかもしれません。(グラフ1参照)

(グラフ1)賃上げの可否

しかし、毎年上昇する最低賃金が経営をひっ迫しているという声が、多くの経営者から上がっています。休日の増加は賃金の実質的な上昇ともいえ、利益の確保、社員の生活の保障をどう両立していくのか、社会全体で考える必要があります。

働き方改革が進み経営者の悩みのタネとは

コロナ禍で大きな変化に企業として対応するなかでも、経営者は社員の労働環境整備を進める必要があります。働き方改革関連法が施行されて2年が経ち、中小企業への適用も徐々に始まっています。

有給休暇取得率が「80%以上」と回答した企業が、労働調査を開始した2018年以降で初めて2割を超え、中小企業でも確実に社員が働きやすい環境整備を行っていることが推察されます。

また、月平均の時間外労働も「0~9時間」が4割強を占める水準に達したことは、各社で生産性を上げる取り組みが加速していることの表れでしょう。一方で、新型コロナウイルスで大きな影響を受けたサービス業では、37.9%から45.9%へとその割合が増加しており、飲食業への時短要請やそれに伴う労働時間の減少が、この結果につながっていると推察できます。(グラフ2参照)

(グラフ2)正社員の時間外労働(月平均)

記述回答では、「できる限り残業や休日出勤をなくしたいが、限界。以前と比べて残業は減ったが、それを埋めるための社員を雇用できる利益が上がらないのが実情」(流通・商業)、「最低賃金の上昇でパート社員の労働時間を必然的に減らすことになる」(製造業)との声や、「労働者の権利をしっかり守るのは大切だが、義務を履行させることが大変になった」(流通・商業)という経営者の苦悩が寄せられました。

また、今年4月から中小企業にも適用された「同一労働同一賃金」の準備については、全体で2割弱が「準備した」と回答しましたが、正社員数別で見ると、雇用する社員が多い企業ほどその割合が高いことが特徴といえます。(グラフ3参照)

(グラフ3)「同一労働同一賃金」の準備

中小企業経営の実態を伝える

この結果を受けて4月8日に報道記者との情報交換会を行い、2月末景況調査と賃金・労働調査を報告しました。愛知同友会からは林康雄報道部長をはじめ10名、報道記者は3社3名の方にお越しいただき、調査の結果を踏まえた情報交換を行いました。

とりわけ、賃金・労働調査の結果で賃上げの理由として「人材確保」が高い割合を占めることについて、今いる社員が辞めないようにするために賃上げを行っていること。また、有給休暇取得率の向上や時間外労働の減少に関して、「給与を保障するために雇用調整助成金を利用して休業扱いとしたために、有給取得率は低下している」、「残業を減らす取り組みを全社で行うかわりに、給与のベースアップを行った」という声も出されました。

コロナ禍で様々な施策が出されている一方で、コンテナや半導体の不足により原材料費が高騰しても、価格に転嫁することは依然として難しいという意見も出され、社員の確保や給与を保障するための利益の確保と経営者の葛藤は続いています。

期間 2021年3月15日~24日
回答数 603社(建設業95社、製造業178社、流通・商業121社、サービス業209社)
平均正社員数 20名(中央値7名)