活動報告

第61回定時総会 基調報告(4月26日)

同友会の未来(ビジョン)、私たちの未来(ビジョン)

佐藤 祐一氏
(株)羽根田商会・代表取締役
愛知同友会理事(22ビジョン推進)

99ビジョンから22ビジョンへの流れを説明する佐藤氏

4月26日に行われた第61回定時総会。その時に行われた佐藤祐一理事(ビジョン推進担当)による基調報告の概要をご紹介します。

愛知同友会「2022年ビジョン(22ビジョン)」については、十分に議論を尽くしていきたいと思います。

本日素案を提示し、7月14日の愛知同友会「創立60周年の集い」までに、全県学習会の開催、地区や支部、部門での丁寧な議論を通じ、深めていきます。それを踏まえ、創立60周年の集いで22ビジョン(案)と推進プロジェクト体制を発表、来年の定時総会で具体的スケジュールを示し、その後に実践に入ります。本日はそのスタートといえます。

99ビジョンを継承

22ビジョンは、愛知同友会が1999年に発表した99ビジョンの旗印「自立型企業」と「地域と共に」を受け継いでいます。この99ビジョンを発表した時から会員数がぐんと増えています。明確な旗印があることの重要性と、99ビジョンがその時代において非常に画期的なものであったことがわかります。会員は「自立型企業を目指そう」と一気に動き始めました。一方で「地域と共に」は、ゆるやかに歩を進めてきたといえます。

99ビジョンから20年余が経ち、その間に私たちはバブル崩壊、リーマンショック、コロナ危機等を経験し、大変な時期を乗り越えて今日に至っています。世の中はグローバル経済が深まり、GAFAに代表される超巨大IT企業の登場など、様変わりしています。その中で格差は拡大し、暮らしづらさは増し、地域は疲弊している、これが現状といえます。企業を見る目も価値観も変わったと感じています。

「自主・民主・連帯の精神」を基本に

こうした環境下における22ビジョンのポイントは、「自立型企業」と「地域未来創造」です。「自立型企業」を基本に据え、自社を取り巻く環境にもしっかり目を向け、これまでの環境適応業から環境創造業に転換する意味で「地域未来創造企業」を掲げました。これは、99ビジョンにある「自立型企業」と「地域と共に」の統合を意味します。

第61回定時総会議案書の「情勢と展望」では、「中小企業がリードして、よい世の中をつくるフロントランナー型になろう」と壮大な提起がなされています。地域の未来を創り上げる先頭に立ち牽引する、気概と意欲を持った自立型企業、また経営者団体になることが求められます。

同友会は、「自主・民主・連帯の精神」が基本です。何かを与えてもらう団体ではありません。自分の経営課題を皆の議論の中に放り込み、討論からヒントを掴んで実践し会社をよくする、これが私たちの学びの姿勢です。ビジョンの「目指す会員経営者像」には、「経営者は、何のために経営するのかを問い、自社のことを懸命に考える。中小企業家は、この経営者の条件を満たした上で、自社を取り巻く環境にも目を向けていく一歩進んだ存在」と定義しています。中小企業家として、積極的に主体性を持ち、学び、会社を変えていく姿勢が22ビジョンの大前提です。

(図1)22ビジョンと5つの項目

新たな視点 (図1参照)

22ビジョンの図中央の「自立型企業・地域未来創造・環境創造業・フロントランナー型」の下に、愛知同友会の3本柱「企業づくり」「地域づくり」「同友会づくり」があります。赤く反転した箇所が新たな視点です。

「企業づくり」は自立型企業のアップデート、経営指針の成文化、地域との関わりです。「地域づくり」は地域循環・再投資、地域ビジョンの作成です。「同友会づくり」は適正所属、組織的経営、会員数5000名です。将来は県内企業数の10%、1万社を見据え、ステップを踏みながら地域の議論を進めていきます。

加えて、「よい経営環境づくり」「よい地域社会づくり」にも目を向けていきます。「よい経営環境づくり」で重視したのは、適正取引。いわば公正な競争環境の実現です。私たち自身が自社の仕事の価値を正しく社会へ発信し、理解を広げていくこと。価値に相応しい価格が受け入れられることが当たり前の世の中にしていかなければなりません。これは、同友会の言う社会教育運動の1つです。

「よい地域社会づくり」では、多様性、包摂性を入れました。女性、男性、高齢者、若者、健常者、障害者、子育てや介護をしている人など、人間は千差万別です。その多様性を認め一緒に働く、これは中小企業が強みとするところです。

地域とは何なのか

「地域」ということばから受けるイメージは、人によって様々です。しかし、人間の暮らしや営みの視点から見れば、まず基礎とすべき「地域」の考え方は日常を過ごす学区や町内といった小さな範囲です。「地域」を「事業運営」「経営環境」「行政対応」の3つの視点で整理しました。

「事業運営」では、生活者としての視点を加えました。生活者の視点で自社の事業を見た時に、新たなものが見えてくるのではないでしょうか。「経営環境」は、事業のやりやすさ、適正取引、下請け構造の価値観に変化を促していきたいという意味です。「行政対応」は、中小企業の存在価値向上を目指そう、としました。これらを素材に、私たちにとって「地域」とは何なのか、大いに議論していただきたいと思います。

2021年に定まった流れ

22ビジョンの背景

人口減少、20年間のデフレ、成長しないGDP、格差拡大、物価上昇、財政赤字、平和問題、悪い円安、電力ひっ迫など、中小企業の経営には困難が山積しています。さらに2050年には、人口は1億2500万人から1億人以下へ、高齢者人口は27.5%から38.4%へ、生産年齢人口は7400万人が5000万人へと変化していきます(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」平成24年1月推計)。

2021年は、後から振り返れば多くのものが変化した年になるでしょう。カーボンニュートラル、自動車のEV化など、需要よりも政府の規制が優先し、資本主義とは違う論理で動いています。コロナ禍でサプライチェーンの寸断のみならず、自由に国境を越えて動いていた「ヒト、モノ」が急停止した中で、グローバル経済を見直す必要が指摘され始めています。

価値観は、株主資本主義から公益資本主義に変わりつつあります。株主が一番大事だという価値観が、社員、取引先、世の中など会社を取り巻くすべてのステークホルダーのために、よい会社をつくらないと駄目だという価値観に変わってきました。ESG経営(環境・社会・企業統治の要素を考慮した経営)の重視のみならず、東京オリンピックやパラリンピックは人権、多様性を尊重する時代を象徴していました。こうした価値観の変化はもう元には戻りません。

自動車産業なしで生き抜く愛知へ

愛知県のGDPは40%が自動車産業です。これが今、大きな転換点に来ています。EV化で部品点数が減り、自動車メーカーをトップとした大きなピラミッドの3分の1が不要になる可能性すらあります。日本では、火力発電の電気で自動車を製造するため、ライフサイクルアセスメントにより、ヨーロッパでは税金がかかり、売れにくい状況にあります。そうなると、現地生産を加速させる可能性もあります。国内では、20年前には700万台だった販売台数が、昨年は440万台に留まりました。もはや、自動車産業なしで生き抜く愛知を考えていかねば、豊かな生活は享受できなくなります。

そこで、「地域循環・再投資」というキーワードが出てきました。地域の中で経済を回し、稼いだお金を地域で使う、ここを考えていかないと愛知県経済は維持できないと考えます。大企業のビジネスモデルは「安い所で作り高い所で売る」移動式です。地域に根差す中小企業が頑張るしか、愛知を支えることはできなくなります。

事業所の99.7%は中小企業、そこで働く人は7割。すでに中小企業が地域を支えていることは明白ですが、私たちが「地域内循環・再投資」を積極的に創り出し、支えていくことが決定的に重要です。

地域の経済・社会を守るためには、何よりも私たち中小企業家自身が、地域に存在し続けることが重要です。22ビジョンに関する今後の議論も、その永続性をどう担保するのかという視点で進めていきます。会組織の見直しやスリム化も必要となります。また、地域という視点で尾張・三河・名古屋の三極体制を構想する場合、役員の育成も重要な課題となり、同時に事務局機能の強化も必要です。

ピーター・ドラッカーは「未来を予測する最良の方法は、未来を創ることだ」と述べました。私たち中小企業家がここ愛知という地域の未来をつくりあげていきたい、その願いと気概を持ってまとめたビジョンです。ぜひ、議論を重ねていただくようお願いいたします。

【文責:事務局 岩附】