活動報告

同友エコ2024ー2025・幹事長賞

全社一丸で豊かな社会を未来につなぐ

富士凸版印刷(株)代表取締役  山本 登美恵氏

山本 登美恵氏

中同協で毎年実施している同友エコは、脱炭素・エネルギーシフトとともに持続可能な事業を行う環境経営の先進的な実践を調査する取り組みです。今回の同友エコ2024ー2025では、愛知同友会の富士凸版印刷(株)(守山地区・山本登美恵氏)が「幹事長賞」を受賞しました。その具体的な事例をご紹介します。

富士凸版印刷は「想(おも)いをカタチに」する会社です。この企業理念をもとに、お客さまの企業価値の向上に貢献することをめざし、お客さまである経営者の価値観、悩み、ビジョンなどの思いを徹底的に聞き出し、それをどういう形で表現して伝えていくかを考えます。

本業である印刷市場は2分の1に縮小する過渡期を迎えています。企業は社会に必要とされなければ存続できません。山本氏は、2017年から2020年まで専務と苦しみながら、会社の存在意義について問い直し、社会的使命について考えました。印刷という枠を超えて、人間は何のために仕事をしているのかと考える中で、「豊かな社会を未来につなぐ」ことに至ったと言います。

紙でつなぐ資源循環のパートナーシップ

社員と共に環境経営へ

一般的な印刷では有機溶剤の使用、製造過程の騒音、電力使用など、環境に負荷をかけている状態だと気づき、環境への負荷を減らそうと考えました。しかし、環境印刷への移行に伴い、それを少人数の中で誰がやるのかという人の問題と、機械の購入や認証制度の取得にかかるコストの問題がありました。コロナ禍で経営状態に余裕があったわけではなく、簡単には決断できなかった山本氏ですが、共に会社の存在意義を問い詰めてきた専務に社会的使命の実現への思いを問われ、覚悟ができたのです。

環境印刷への移行の過程として、全社でのSDGs勉強会から始まり、自分たちの住みたい環境について共に考えた上で、グリーンプリンティング認定の取得、森林保全された森の木から生まれた紙を扱うためのFSC認証取得への取り組みなど、常に社員と共に進めてきました。その結果、前期は8%の経常利益を出しながら、環境への負荷をゼロに近づけるとともに、職場としても社員への負荷を極力減らすことができました。現在では再生可能エネルギーの電力を100%使用しているほか、SBT認証やエコアクション21認定も取得しています。

また、資源循環と地域共生の取り組みとして「紙の環プロジェクト」も行っています。お客さまから古紙を回収してリサイクル業者に渡し、その業者から受け取る資源の買い取り金額は全額、森林保全のために寄付をするという活動です。この取り組みに関わることで、地域にいる環境保全の思いを共にする人や企業とのつながりをつくることにもつながっています。

KJ法を用いて2030年の自社を展望
会議の風景

「想いをカタチに」する新事業

そして、次の一手として社会的使命「豊かな社会を未来につなぐ」ための新事業について何百回と話し合う中で、「地球」と「人」の健康を軸とした循環型事業として「シルク村」の構想が生まれました。この構想はこれまで山本氏が社員と共に行ってきた議論の中で出てきた未来に残したい地球や環境、自分たちが住み続けたいと思える環境、そして関わる人の思いを乗せた未来の具現化、まさに企業理念の「想いをカタチに」するための事業です。

富士凸版印刷はただの印刷屋ではなく、社会的使命「豊かな社会を未来につなぐ」ために「想いをカタチに」する集団として全社一丸で挑戦を続けていきます。

(本稿は中同協発行「中小企業家しんぶん」7月5日号にも掲載されました。)

〈会社概要〉

設立1964年
社員数正社員/10名、パート/4名
事業内容ブランディング事業・コンテンツ制作・印刷事業・シルクウェルネス事業
URLhttp://www.fujitoppan.co.jp/