調査・研究・提言

2003年度 愛知県の中小企業政策に関する私たちの提案

昨年に引き続き、愛知県産業労働部との第2回懇談会を開催~政策提案を中心に

愛知県産業労働部との懇談会

愛知同友会では「中小企業政策に関する提案」を中心に、十二月十六日、愛知県産業労働部との懇談会が行われました。「99同友会ビジョン」の第2の旗印に「地域社会とともに」を掲げ、本年八月から地方自治体への中小企業の総合政策・提案づくりに取り組み、10月の理事会で確認、「金融」「まちづくり」「モノづくり」の大きな三つの柱立てで提案をまとめました。当日は愛知県産業労働部から産業労働総務課、中小企業金融課、商業流通課、新産業振興課、産業技術課、繊維生活産業室から11名が出席され、同友会からは佐々木会長、鋤柄代表理事など11名の役員・事務局が参加し、意見交換が行われました。同友会からの提案の内容(全文)は以下です。


 愛知中小企業家同友会 2002年11月

2003年度愛知県の中小企業政策に関する私たちの提案

第1章 はじめに

 私たち愛知中小企業家同友会は1962年7月に47名の経営者で創立され、現在、愛知県下41の地区(基礎組織)で2318名の中小企業経営者が参加する異業種の経営者団体です。「経営体質の強化」「経営者の能力向上」「経営環境の改善」をめざすという「3つの目的」に基づき活動し、本年7月創立40年を迎えました。

 また全国45都道府県に同友会が組織され、約3万7千万名の中小企業の経営者が参加しており、全国協議会として「中小企業家同友会全国協議会」(略称:中同協)を組織しています。

 さて当会の8月末景況調査によると「期待強まるも、底這い続く-米国景気腰折れが最大の不安定要因」と特徴づけています。日本の株価もバブル後最安値の水準にまで下落してきている中、株安が銀行の貸し渋り・貸し剥がしを誘発することで、中小企業が金融面からのデフレ圧力にさらされる可能性も否定できません。

 このような中、史上第2番目の倒産件数や金融不安の高まりなど危機的様相を呈し、景気後退の中で中小企業経営はこれまで以上に厳しい局面を迎えています。政府が進める「構造改革」政策、不良債権早期処理は、結果として中小企業の整理淘汰を進行させています。

 私達同友会では、地域経済にやさしい望ましい金融システムである「金融アセスメント法」の制定をめざし、全国で署名が約80万名(内愛知13万)を集める一方、「金融アセスメント法」の早期制定の意見書が全国415議会(愛知県下21議会)であげられています。

 「産業の新しい担い手」(OECD1998年「産業政策の新たな指針」)、「21世紀のアメリカ経済の根本的存在・エンジンである」(アメリカ中小企業法・1997年改定)、「小企業は欧州経済の主柱である」(EU「小企業憲章」2000年)など、欧米の先進諸国は経済社会における中小企業の果たす役割を積極的に評価して中小企業重視へと経済政策の政策転換を行っています。一方、わが国では1999年に中小企業基本法が改正され、「多様で活力ある中小企業の成長発展」を政策理念の掲げられるようになりました。

 当会でも1994年4月に発表した「99同友会ビジョン」において、独自の技術力・商品力や開発力を持ち、販売力やサービス力でも独自の得意技が発揮でき、そのための人材育成力が確実に蓄積されている企業である「自立型企業」、そして地域の生活の安定と繁栄を確保することは私達中小企業家に課せられた課題であるという「地域社会と共に歩む中小企業」という2つの目標を掲げ、努力しています。

 昨今、中小企業の廃業率が開業率を大きく上回っています。日本の事業所数の99%以上、従業者数の8割弱を占めている中小企業の活力が再生されない限り、日本経済、そして地域経済の再生はありえないと考えており、中小企業振興における行政の皆様のご支援と共同の行動を心から切望するものです。

第2章 中小企業や地域に優しい金融システムの構築を

 2002年に入り、不良債権の最終処理や金融機関の再編・淘汰が一層進行し、4月からは定期性預金に対するペイオフが解禁されるなど、中小企業をめぐる金融環境はめまぐるしく変化しています。日本の株価もバブル後最安値の水準にまで下落してきており、株安が銀行の貸し渋り・貸し剥がしを誘発することで、中小企業が金融面からのデフレ圧力にさらされる可能性も否定できません。

 このことは当会の最新の金融調査でも裏付けられており、中小企業をめぐる金融情勢は一層の厳しさをましているなか、皆様の一層の支援をお願いする次第です。

●調査結果(2002年8月初旬調査-回答235社)はこちら(「金融問題」実態調査アンケート結果 2002年8月)をご覧下さい。

●政府に下記の件を要望してください

(1)当面の課題として

  1. 本年6月、「金融検査マニュアル」の「中小企業融資編」が作成されたとは言え、まだまだこの金融検査マニュアルは人為的に金融システムを不安定化させています。中小企業向け融資の場合には、金融庁は中小企業の実情に沿った別の基準の「マニュアル」を速やかに作成するように働きかけてください。
  2. 政府の不良債権最終処理策に際して、大手金融機関の不良債権処理に地域金融機関を巻き込ませない措置をとるよう働きかけてください。
  3. ペイオフ解禁が2年間実行猶予されましたが、それから先においても、ペイオフ全面解禁について実行猶予措置をとるよう働きかけてください。
  4. 合併先あるいは破綻によって譲渡された先の金融機関と中小企業との間で、従来通りの取引の継続、新規融資等が実現するような公正なルールを早急に確立するよう働きかけてください。

(2)新しい金融システムの創造について

  1. 日本の金融システムを(A)金融機関の公共性を維持させ、(B)金融機関と借り手の取引慣行の歪みを是正し、(C)現行の裁量型金融行政を利用者参加型金融行政に転換させる。そのために、「円滑な資金需給」「利用者利便」「経営の健全性」の3つの視点から必要な情報を収集して金融機関の活動を評価することを監督官庁に義務づけ、さらにその評価と判断理由をインターネット等利用者が入手しやすい形で公開することを義務づける「金融アセスメント法」制定を関係諸機関に働きかけてください。
  2. 自治体での金融施策を充実してください
    (A)財政を地域活性化に有効に活用するためにも、制度融資、とくに今日の景況の中では、ベンチャー企業育成への融資に偏在するのではなく、つなぎ運転資金への制度融資を充実してください。また必要に応じて新設してください。
    (B)地域の金融機関がその営業地域と中小企業にどのような影響を与えているかの視点(「地域への円滑な資金供給」「利用者利便」等)から公的機関が評価・情報公開する金融アセスメント条例を制定してください。地域産業振興とそのための豊かな地域資金循環を生み出すことは、憲法の「地方自治の本旨」と改正地方自治法からみても自治体の責務となっており、その主旨から金融アセスメント条例の制定も可能であると考えます。
    (C)また当面、現行システムの中で上記のような考え方にしたがって、県の指定金融機関を判断し、情報公開するような行政システムをつくってください。

(3)信用保証について

 金融不安の高まりの中で、政府も中小企業に対する信用保証制度の充実が言われるようになっています。民間金融機関が中小企業への「信用補完」の役割を担う信用保証協会の役割は一段と重要性を増しています。利用にあたって、以下をお願いする次第です。

  1. 信用保証協会や信用保険に対する財政補助を大幅に増額し、財政的基盤の充実を図ってください。
  2. 審査において物的担保優先主義に偏りがちな傾向を改めて、経営指針の確立、経営者の経営能力、企業の技術力、開発力、市場性、社風等を総合的に評価するシステムへの転換を率先して図ってください。
  3. 保証に際しては原則として第三者保証を求めないようにしてください。

(4)税制に関して

 私たちは、中小企業の負担能力を適切に反映した応能負担を実現し、市場創造と日本経済の再活性化をバックアップする税制を実現すべきだと考えます。今、長引く不況の中で、「外形標準課税」等でさらに税負担を強いることは中小企業の死活問題ともなりますので、以下のことをお願いする次第です。

  1. 外形標準課税は人件費比率が比較的高い中小企業ほど負担が大きく、さらに不況下で赤字経営を余儀なくされている企業にも課税されることになります。税負担能力がないところへの課税は、倒産や滞納の拡大につながるなど、社会的歪みが生じるばかりでなく、日本経済の活力削減につながります。外形標準課税の導入は中止するよう関係諸機関に働きかけてください。
  2. 消費が低迷している中、何らかの形で消費税の減税を求める声は根強くあります。消費税3%から5%に引き上げによって景況に大きなダメージを与えたように、今後とも行わないよう関係諸機関に働きかけてください。また、県税分1%のアップを求めないでください。
  3. 私たちは国税の一部を地方税に回す財源委譲措置が適切であると考えています。地方分権によって地域経済の活力を地域の中から築いていくことができるように、権限委譲に比べて遅れている財源委譲を速やかに実施するよう関係諸機関に働きかけてください。

第3章「生きる、働く、暮らす」が一体となった誇りのもてるまちづくり

 近年、産業構造の転換により、製造業を中心とした生産拠点の海外移転が進行し、製造業の空洞化が顕著になっています。しかし、これは単に製造業の問題に関わらず、流通、小売りなど、あらゆる分野での空洞化が進行し、まちづくりへも大きな影響を及ぼしています。

 大店法改正後の90年代には、極端な郊外への出店により、都心部の空洞化が進みました。このことで、これまで地域経済の発展、地域コミュニティづくりに大きな役割をはたしてきた商店街の多くが存亡の危機にさらされ、地域の衰退が危惧されています。さらに、若い世代は郊外へ、かつての中心市街地に住む人々はどんどん高齢化するなど、いわゆる「都市の空洞化」はますます深刻化しています。

 こうした中、大規模小売店立地法、中心市街地活性化法、改正都市計画法の改正をあわせた、いわゆる「まちづくり三法」が登場し、まちづくりの権限は地方自治体に委譲されました。しかし、各地で展開されるTMOは全てが順調ではなく、破綻するまちづくり会社もあります。

 真に豊なコミュニティづくりを進める上で、地域住民や我々中小企業家の積極的な参加はもちろんですが、改めて、地方自治体の果たす役割は重要になっているのではないでしょうか。若い人も、高齢者も、中小企業家として働く私たちも、幼い子供達も一緒に生活し、その中から生み出し伝えていく豊かな文化ある「まち」。住まいと工場や商店街が有機的な関わりをもって、共に「生きる、働く、暮らす」厚みのある「まち」。こうしたまちづくりをすすめるため、全ての人々が常にまちの主人公であり続ける、いわば「自分たちのまちに誇りのもてるまち」。そんなまちこそ私たち中小企業家は求めています。

 私たちは自分たちの経営だけでなく、コミュニティづくりの追及を求めます。そして、豊かなコミュニティの中で我々中小企業経営者は、自信に満ちて地域経済の活性化のために、一層邁進できると確信しています。そのために以下の点を要望します。

(1)TMO成功により多くの住民の主体的参加を

  1. まちづくりの主体者は、その地域住民や地域の商工業者です。現在、TMOとなりうる主体は、商工会、商工会議所、第三セクター特定会社第三セクター公益法人の4種類に定められていますが、具体的な政策立案には、地域住民や中小企業など、地域の当事者から広く意見、要望を聞き入れる「まちづくり政策の公募システム」を確立してください。
  2. 上記のシステムにそって出された様々な意見を、具体的な政策立案へ導く「まちづくりのスペシャリスト」を、随時派遣ではなく、各地方自治体で育成し、専門機関として常設してください。

(2)住民主体となるTMOを成功させるために

  1. まちづくりは様々な人が関わることで、より具体的で積極的な取り組みになると考えます。まちづくり会社を、はじめTMOの実行組織を設立する際には、様々な経営者団体、市民団体の代表を積極的に参画させるシステムを確立して下さい。
  2. 地域住民が自らまちづくりに積極的に関われる仕組みとして、例えば、まちづくり会社の株主構成を拡大して下さい。「地域住民によるまちづくり会社の株主公募制度」を確立してください。
  3. さらに、住民のまちづくりへの関心を喚起する「まちづくりの情報公開システム」を確立してください。
  4. TMO実行組織をより実行力のあるものとするため、その経営内容を指導する監査機能を確立してください。
  5. まちづくりの理解を広め支援する市民講座を開設してください。
  6. まちづくりのエネルギーとなる、地域住民主体のNPO活動、ボランティア活動の組織化支援策を充実してください。
  7. また、これらの組織の情報交換、ネットワーク化を促進し、より活動が活発になる支援機能を確立してください。

(3)地域コミュニティの主体となる商店街活性

 まちの治安、自治など、地域コミュニティの核として、商店街の果たす役割は大変重要であり、いわば商店街問題はまちそのものの問題であるといえます。そこで商店街がより活性化するための政策の充実を要望します。

●各個店の魅力強化を行う政策を
  1. 各店舗の事業継承を支援する「後継者育成塾」を開催してください。
  2. 後継者育成の一環として、地域の小、中学校、高校、大学などと連携し、商店街、各商店の企業見学、実習、職業訓練などを行い「働くことの大切さ」「身近な商店街の魅力」が実感できる制度を確立してください。
  3. 商店街は様々な店舗があってこそ魅力を増します。こうした、いわば不足業種を補う「商店主公募」「店舗の家賃補助」などの支援策を充実してください。
  4. あわせて各個店の魅力を引き上げるため、複数の同一業種を意識的に配置し切磋琢磨する関係をつくりだすシステムを構築してください。いずれもこれらの政策立案には、商店主以外の住民参加で立案してください。
  5. 商店街の各個店の商品、サービスは商店街内だけに留まらず、周辺地域の住民の細かなニーズにも対応できる要素をもっています。それぞれの地域が抱える課題(ニーズ)を商店街に問題提起いただき、各個店と結びつけ、新たな市場開拓となるようなコーディネータ機能を要望します。
●助成金運用は実態に即した弾力的運用をお願いします
  1. 商店街周辺の施設整備(例えば駅前商店街での駐輪場など)を行う際には、あらかじめその地域住民や関係する商店街といっしょに考える組織をつくり、その結論にそって実施してください。
  2. 商業団体事業費補助、競争力強化支援事業費補助、商店街活性化施設整備費補助など、様々な助成金が用意されています。これらの助成要項は実態に合った簡素なものにしてください。また、新たな助成制度を立案する際には、その要項を作る時点で現場の声が反映されるようにしてください。

(4)地場産業振興として

 陶磁器産業や繊維産業など地場産業は、その地域を構成する重要な産業です。しかし、近年の空洞化問題は地場産業そのものの存立危機の問題であり、すなわち地域の衰退とも無縁ではありません。そこで、こうした地域特有の産業集積を活かした産業育成、地域づくりを進めるための政策の充実が必要です。「有松絞り」を例にとれば、地場産業の保存育成と、古い町並みの保存を同時にとらえ「観光産業まちづくり」の視点で総合的なまちづくり政策を展開することが求められていると考えます。

  1. 各地の保存地区で建て替え要望の出ている家屋、空家などは自治体が買い上げ改修して「出展希望」として賃貸する仕組みを行ってください。
  2. 後継者育成として、伝統工芸などその地域特有の産業の技術教育機関、新たな出店支援など、「地場産業の後継、育成」政策を充実してください。

(5)すべての人にやさしい街づくりの推進を

  1. 「高齢者・障害者移動円滑化法(交通バリアフリー法)」が可決・成立し、高齢者や身体障害者が交通機関を利用しやすくするため、関連設備の整備を促すことが義務付けられました。この法律の実行主体は、各地方自治体に委ねられています。これからますます進行する高齢化社会への対応、さらに障害者もふくめたすべての人にやさしいまちづくりの推進において、この法律が実行力のあるものとなるよう、各事業者への教育、指導の充実をお願いします。

第4章 あいちの「ものづくり」を元気にし、地域経済を活性化するために

 大企業が海外に工場移転し、地元でも大工場の閉鎖や撤退が進行、同時に、外国企業の格安部品の輸入増加で、国内産業の空洞化が進行しています。愛知県下に広がる膨大な下請中小企業は海外進出に付いて行けるものと、行けないものに分けられて生死が問われています。今後さらに自動車産業の国際展開が進めば愛知県下に広がる下請中小企業は打撃的な状況になると考えられます。

 その影響をできるだけ和らげ、新しいものづくりや産業を興し、地域経済を活性化させることが重要だと考えます。中小企業をこれら取り組みの核と位置付けて、私たち中小企業が、地域の雇用を支え、地域経済の活性化を推進する役割を果たせるよう、中小企業重視の政策スタンスをとってくださるようお願いします。

(1)やる気の中小企業を支援する施策の充実

  1. 東京都大田区や墨田区、東大阪市などの自治体がすでに取組んでいるように、当地の「工業集積の特徴」や、企業の「得意技」を他の地域や世界に「PR・情報発信」のシステムをつくってください。
  2. 産業空洞化対策としては新規事業開発が決定的に重要です。中小企業が単独で新規事業開発に取り組むことには種々の困難が伴います。従って中小企業の「共同開発」を推進し、開発グループを育成、支援してください。これには、ベンチャー以外の中小企業もネットワークを形成して共同受注できるように、行政の職員がコーディネータ(支援策として設置)として活躍してください。グループの育成に当たっては、中小企業の自主的・自覚的取り組みをを重視してください。

(2)助成金制度について

  1. 複数年度にわたる助成金のシステムの創設をお願いします。また金額も現状より一回り充実した額に引き上げてください。
  2. 提出書類の簡素化をお願いします。また助成事業の一部として、県から委託されたアドバイザー制度を設け、これら専門家が対象企業を定期的に訪問し、技術的な支援とあわせて適切な対象経費の処理をしているか観察・助言を行うなどの方法をとってください。
  3. 補助金交付書を提出後、進行と同時に経費予算、資金使途に変更が生じることも多いので、計画変更に柔軟な対応をとってください。
  4. 製品は生み出されて以降、消費者ニーズ等によって改良・工夫が付け加えられていきます。この分野でも助成金の対象に入れてください。
  5. 助成金を有効かつ的確に活用する為に審査機関を設けてください。技術や新規性のみならず市場性も判断できるよう、学者や有識者以外に中小企業の代表をこの機関のメンバーとしてください。
  6. 中小企業経営革新支援法に関して、この革新法の認定を受けたら、各助成制度が受けやすく、実効性がよりあるものにしてください。

(3)技術の相談や蓄積に対応を

  1. 公的試験研究機関は地域に密着して、その地域での中小企業の現場の研究課題に対応できる窓口を開いてください。特に個別の中小企業にとっては使用頻度の少ない試験機械などの設備は、公的に整備し、「早い結果、安く、簡単な手続」で使い易い状態を作ってください。また、近年活発に展開され始めている「産学連携」や「産官学連携」などのあり方について、大学研究機関が中小企業の現場の声に応えられるように、必要な指導援助を行ってください。各種の公的試験研究機関は大学研究機関とも連携して、中小企業の現場の要望に応えられるようにシステム化してください。
  2. 図面の見方セミナー、営業力強化セミナー、企画開発セミナー、市場開発支援など、一般的に下請中小企業が弱点としているテーマについて特別の強化・継承策を講じてください。

(4)地域経済をさらに強化するために

  1. いま中小企業が直面している経営危機に対応するために、中小企業基本法改訂で位置付けられた「愛知県中小企業支援センター」がより充実した中小企業支援を実施されることを要望します。全国有数の生産基地である愛知県にとって、名古屋駅前の中小企業支援センターは、「ものづくり愛知」の象徴とも言える存在です。愛知県中小企業支援センターと県下7ヶ所のセンターが連携しあって「ものづくり愛知」の中小企業支援を強化してください。センター機能の充実に当たっては、この地域の中小企業の要望を重視し、地域産業の育成発展や、中小企業の経営問題についての総合的な支援センターとして、技術開発、人材育成、ネットワーク化推進などあらゆる経営問題の相談に応えられる「内容の充実」に努力してください。施策の充実に当たっては、県内の中小企業経営者が参加して「センター機能の充実」の構想や計画を検討する「中小企業支援センター審議会(仮称)」等を立ち上げて、市民参加型のセンター充実に取り組んでください。
  2. これからの構造転換にどういう業種・企業が生き残れるか、中小企業は必死の研究・努力を重ねています。そのような中小企業を支援する観点で次のような施策を講じてください。愛知県の持つ地域特性、産業集積の状況等について調査・分析・研究を行ってください。調査・研究は長期にわたって継続して行ってください。また調査に当たっては、地方自治体の関係する全職員が参加する全企業調査を実施してください。調査結果を踏まえ、産業・労働部門はどういう産業や技術・人材が集積しているかを研究し、中小企業が活躍して地域経済の再生・活性化を実現できる産業政策を構築してください。これらの調査活動で大切な点は、行政が調査を下請機関に委託して、出てきたデータ―を数字的に活用するというやり方ではなく、行政の職員が積極的に、能動的に、中小企業問題に関わることです。従って行政の職員が中小企業の実態を自分たちの足と、目と耳を使って状況把握することを最も大切な点として要望します。

第5章 就職と障害者雇用に関して

(1)就職にかんして

  1. 「就職活動の開始は最低4年生になってから」というような大企業にも強制力を持った就職協定を復活・強化してください。
  2. 高校生向けの合同企業説明会を開催し、応募前の企業見学・企業訪問の制度化をしてください。また複数企業受験を解禁し、生徒にとっても企業にとっても選択の機会を広げてください。

(2)障害者雇用に関して

●地方自治体として
  1. 企業縮小時に雇用した障害者が戻るところがあるという前提があれば、安心して採用を促進する大きな要素となります。受け皿となる制度と運用をおこなってください。
  2. 家族と同居する就労中の障害者が、家族の病気・死亡等で生活の介助が受けられず仕事が続けられない事態について、支援システムの整備を行ってください。
  3. 定年を迎えた一人暮らしの障害者が、地域社会で生きていけるようサポート制度を整備してください。
●国にたいして以下を要望してください
  1. 初めて障害者を雇用しようとする経営者が、採用を承諾し、ハローワークへ届けても、手続き上の問題で支援を受けられないのは主旨に反すると思われます。初めてのケースに限りなどの条件で枠を広げてください。
  2. 同じく、採用者が確定していなくても、工場や事務所の設置、増改築に際し、障害者雇用を前程に設備の設置を行った場合には助成をしてください。
  3. 仕事の減少で、障害者が自宅待機を余儀なくされる場合の補助金を、中小企業でも使いやすいものにしてください。
  4. 最低賃金除外申請の手続きを簡便にしてください。
  5. 雇用助成金の一年半は、あまりに短すぎます。障害者の実態に合った教育期間の設定やシステムづくり、更には、雇用期間中は継続する企業努力に配慮してください。
  6. 法定雇用率未達成企業からの納付金の使途を、公表してください。
  7. 調整金(301名以上企業・罰金あり/一人25000円)と報奨金(300名以下企業・罰金無し/一人17000円)の金額は、本来の目的から言えば逆ではないかと考えます。せめて、報奨金を調整金と同額まで引き上げてください。