調査・研究・提言

【外形標準課税に反対する活動】
私たちは法人事業税の外形標準化に反対します(2002年11月13日理事会)

2002年11月13日
愛知中小企業家同友会第7回理事会

 政府税制調査会では平成15年度税制改正の検討が行われていますが、その中でも私達中小企業にとって見過ごすことのできないのが、法人事業税への外形標準課税の導入です。中同協(中小企業家同友会全国協議会、全国3万7千社の中小企業家で組織)「2003年度の政策要望」では外形標準課税の導入を中止することを求め、今年7月11・12日地元愛知で開催された第34回全国総会においても、「不況下にあえぐ中小企業の担税能力を超える外形標準課税の導入には絶対反対します」との総会宣言を採択しました。また7月18日には、法制中小企業関係4団体が法人事業税の外形標準課税化に反対する決議を挙げ、導入反対に向け署名運動等に取り組んでいます。
 私たち愛知中小企業家同友会では第7回理事会(11月13日)で「法人事業税の外形標準化に対して反対」を決定、これを受けて会員の皆さんへの決議文を作成しました。今後、反対運動を積極的に展開していきますので、ご協力ください。

法人事業税の外形標準化に対しての反対理由

(1)行政サービスの応益課税とは言い難いこと

行政サービスの応益課税にしては欠陥があり、憲法が要請する応能負担の原則を崩すものともなります。総務省は行政サービスの受益に応じての課税と言いますが、その対応関係は計測できません。新たな不公平をも生む恐れがあります。特に不況期や業績不振期、創業期に負担がより重いものとなり、真の公平である応能負担の理念を崩すものになります。

(2)赤字会社に「所得なき課税」が生まれること

赤字法人があたかも地方税を何も負担していないかの如くの論調があります。総務省案では赤字法人にも負担させ税の公平を図ると言っていますが、法人企業は法人住民税の均等割・固定資産税・都市計画税・事業所税など6.3兆円の地方税を負担しており、このうち赤字法人は実に4.5兆円も負担(東京商工会議所調査)しており、担税力のない赤字法人に課税することは深刻な問題を生みだします。

(3)給与に税金をかければ雇用問題に悪い影響を及ぼすこと

給与に直接税金がかかるとなれば、回避するため給与額や雇用そのものを抑制する可能性があり、雇用形態にまでゆがみを生じる恐れがあります。現在の雇用情勢の悪化だけでなく、長期的にも問題が出ることになります。すでに諸外国ではこの反省の上に、給与基準に課税することは失業者の増大につながるとして、廃止されているのが歴史的な流れです。

(4)税負担の変動と逆進性の問題が生まれること

税負担において現行と比べて規模別、業種別、所得階層別など変動が発生し、逆進的な傾向となります。総じて規模の小さい会社、所得の低い会社、労働集約的な会社が増税となり、その対極にある大企業が減税を受けるという税負担の逆進的変動は大きな問題です。

(5)付加価値への二重課税であり、一旦導入されれば大増税が簡単に可能になること

総務省案の「付加価値割」の課税は、既に「消費税」が付加価値税であることから、付加価値に対して二重に課税することになります。また消費税の例のように一度新税の枠をつくれば、導入のため設けていた特典をなくし、課税対象・税率などを変更し、大増税が簡単に可能になります。

(6)地方財政の自主権と財政の安定は支出を含めた構造問題であること

総務省は地方分権を支える基幹税にすると言っていますが、地方財政の自主権、財政安定は地方交付税のあり方などの構造問題であり、支出の検討など行政改革の問題でもあります。欠陥を持った新税を基幹税にすれば、これらの問題をより難しくします。

(7)経済の活性化に逆行すること

総務省はこの新税により、経済の活性化と経済構造改革の促進を図ると言っていますが、大多数の中小企業の増税と少数の大企業の減税では経済の活性化に逆行し、また不況の長期化を招きます。税の転嫁など税までも含めた強者による淘汰の経済構造改革では、大多数の国民が豊かで希望のある経済社会が得られるでしょうか。中小企業にとって大きな問題を含むものとなっています。

過去2回日本で、海外でも否定される

湖東氏

11月11日、政策委員会の主催で税法学者である湖東京至氏(関東学院大学法学部教授)を招いて「外形標準課税とは何か?どうする日本の税制」をテーマに学習会が開催され、65名が参加しました。11月13日の第7回理事会ではこの学習会を受け、「外形標準課税反対」決議が行われ、今後反対運動を展開していくことが確認されました。
講師の湖東氏はまず「事業税(地方税)」が損金に算入できるのは「外形標準課税」だからとし、明治時代の「外形標準課税」はたいへん不評で30年後には撤廃、課税標準が所得となり、今の事業税に至っていると述べられました。また諸外国の場合でもフランス・ドイツ・米国・イタリアなどではいずれも失業者の増大につながるとし、給与への課税はしていないとも語られました。


『応能負担』の原則で

学習会

現在の総務省案では、「所得割+付加価値割(当期損益+給与総額+支払利子+支払賃料)+資本割」であり、これを当てはめると、ある大企業では223億円の減税、中小企業(資本金1000万・社員数150名を想定)では342万円の増税となるということを具体的数字を挙げて解説されました。また「外形標準課税」は「消費税」と同様に一旦法制化されると、税率をあげるだけで一気に税収を増やすことができる危険な税制であること、このように今日本の税制はたいへん重要な時期を迎えているとし、最後に税金は「応益負担」ではなく、能力のある人が支払う『応能負担』があるべき姿だとまとめられました。