調査・研究・提言

中小企業を育てる特許制度の整備を!
私たちは特許審査請求料の値上げに反対します

2003年3月4日 第11回理事会にて決議

中同協(中小企業家同友会全国協議会、全国3万7千社の中小企業家で組織)「2004年度の政策要望(重点要望)」の第2章「新しい内需を喚起し、中小企業を活性化させる景気回復策を」の(5)で、「産業構造審議会特許制度小委員会で特許審査料の2~3倍の値上げが検討されているが、デフレ時代に突出した料金値上げであり、国がめざす『知的財産立国』の流れに逆行するものであるので見直し計画を中止すること。また、特許審査料の減免制度の要件を大幅に緩和し、中小企業の負担軽減をはかること。さらに、特許出願を取り下げた場合、審査に着手していなければ特許審査料を返還すること」と要望しています。

私たち愛知中小企業家同友会では第11回理事会(2003年3月4日)で以下の「特許審査請求料値上げ反対」の決議を行いましたので、紹介させていただきます。

「特許審査請求料の2~3倍の値上げは中小企業の負担が大きい」

第11回理事会

3月4日の理事会で主旨を説明する技術開発委員長

一部で報道されていますように、特許庁は、特許審査請求料を2~3倍に値上げする予定をしております。審査請求料というのは特許出願した後に、特許庁に審査をしてもらう手続の費用です。現在の審査請求料は平均で約12万円ですが、これが24~30万円もの多額となります。

今回、特許料(特許維持料)の値下げと特許審査請求料の値上げを相殺すると、実は、値上げは実質的に「0」となります。しかし、中小企業にとっては、一度に出ていくお金が大きくなると、負担が大きくなります。これでは中小企業に特許制度利用の機会を減少させ、ひいては開発意欲を奪うことにもなりかねません。支払いは広く浅く均してもらう方が中小企業には良いかと思われます。よって、審査請求料の値上げには反対します。

一方特許制度には、中小企業のために次の6条件の全て満たせば、審査請求料が半額に減額される規定があります。

  1. 法人の業務範囲に属する職務発明であること。
  2. 従業員がなした職務発明を法人が譲り受けていること。
  3. 資本金が3億円以下であること。
  4. 法人設立から5年を経過していないこと。
  5. 法人税が課税されていないこと。
  6. 他の法人に支配されていないこと。

特に、(4)の法人設立から5年を経過していないことと、及び(5)法人税が課税されていないことという条件は、たいへん厳しすぎます。また、登記簿謄本や法人税確定申告書等の書類の提出も必要です。したがって、この制度の利用度は大変低くなっています。仮に上記(4)の条件だけを愛知中小企業家同友会2300余名会員に当てはめてみると、この条件に該当するのは7%台に過ぎません。

他方、アメリカ合衆国でも似た減額制度がありますが、条件はもっと緩やかで、関連会社を含めて総従業員数が500名以下であり、しかも弁理士などの代理人の証明サインだけがあれば、特許手数料全般にわたって半額への減額が認められております。広範な中小企業の新しい商品・サービス・技術への開発意欲を育てる意味でも、このような制度の整備こそが望まれるところです。