活動報告

中小企業憲章・条例推進本部

愛知県の中小企業政策に関する中小企業家からの重点要望と提言(2019年度)

グループ討論を初めて実施した愛知県産業労働部との意見交換(2017年度)

地域づくりを見すえた総合的政策提言

愛知同友会の愛知県に対する政策提言活動は、「99ビジョン」において「地域社会とともに歩む中小企業」を掲げたことをきっかけに、2001年よりその取り組みがスタートしました。以後20年近く継続して取り組まれ、現在では県下でも数少ない中小企業と地域を巡る諸問題を総合的に扱ったものとなっています。

今年度の政策提言は、比較的短期的かつ、個別具体的課題を扱った「重点要望項目」と、同友会運動全体における中長期的課題を扱った「重点提言項目」から成り、全体で254項目で構成されています。

吉澤産業労働部長(当時)に挨拶をいただく(2016年度)

今年度の特徴

今年度の政策提言の特徴は、「中小企業の採用・人材育成、若者雇用の問題」、「公正な市場ルールの確立」、「中小企業の働き方改革における課題」、「中小企業の事業承継支援の強化」、「育児・介護における課題」について、例年よりも大きく取り扱っている点にあります。

とりわけ、中小企業の深刻な採用難については、正しい中小企業観の醸成に改めて言及しつつ、インターンシップと就職を直結させる動きに対する同友会運動としての考え方の提起や、近年社会問題となっている学生の奨学金負担についての提案、若者無業者対策、外国人留学生の就職可能業種の制約への対応等を取り扱っています。

また「公正な市場ルール」に関しては、下請代金の原則現金払い化の実効性を高める視点や、ビジネスと人権あるいは、次々に締結される経済連携協定に関して、今後の国際的ルールメイキングのあり方に関して提起しています。

「働き方改革」に関するものについては、取引上の力関係に由来する残業のアウトソーシング化など、中小企業の労働環境改善の障害となるような不公正な取引環境の是正など、中小企業のリアルな声を反映しつつ取り組みを進めることなどを要請しています。

さらに、昨年度提言した中小企業の事業承継支援については、平成30年度税制改正において大幅に提言内容が取り入れられ、大きな変化を生みましたが、今一歩の支援強化を提示しています。

中小企業における育児や介護等に関する問題では、一人ひとりの労働者が、人生を歩む上で直面する様々な課題について、近年負担が重くなり続けている社会保険料の観点から、その負担を軽減することで、誰もが働き続けることのできる社会づくりを提起しています。

 

最近の実現事項(全国的課題も含む)

  • 信用保証制度での第三者連帯保障の原則禁止
  • 金融検査評定制度導入、中小企業金融モニタリング実施
  • あいちブランドの創設
  • 中小企業再生支援協議会の全国設置
  • まちづくり三法の見直し、各種支援策改善強化
  • 特定同族会社役員給与損金不算入措置の制限緩和、特定同族会社留保金課税の撤廃
  • 事業承継円滑化のための税制措置、後継者人材マッチング促進事業
  • 資本金1億円以下の企業における交際費損金算入特例の拡充と2年間延長
  • 創業5年以内の中小企業における欠損金繰戻し還付措置を2年間に延長
  • 中小企業投資促進税制の拡充と特別償却期間の延長
  • モノづくり人材育成事業実施および関連支援施策実施、愛知版マイスター制度の創設
  • 「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」制定と各種支援施策創設
  • 販路開拓コーディネート事業の実施
  • 資金、技術、経営の一体化支援
  • 研究開発型中小企業に対する特許料等の軽減措置
  • 若者就業安定対策事業の実施
  • 労働対策についての中小企業への助成制度
  • 下請代金支払遅延等防止法の規制強化
  • 小規模等経営改善資金融資制度別枠拡充の期間延長
  • 中小企業金融円滑化法
  • 条件変更対応保証制度の創設
  • 景気対応緊急保証の創設
  • セーフティネット貸付の延長・拡充等(東日本大震災後の全業種対象への拡充)
  • 金融検査マニュアルの改訂
  • 中小企業倒産防止共済制度の拡充
  • 特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入措置の廃止
  • 中小企業憲章の閣議決定
  • 経営者保証に関するガイドラインの策定と実施
  • 愛知県中小企業振興基本条例の制定
  • ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金の創設
  • ものづくり・商業・サービス革新事業の創設
  • あいち産業振興機構情報・国際ビジネス部において、海外展開に係る諸課題(貿易実務など)の相談業務等がワンストップで実施
  • 外形標準課税の適用範囲の現状維持
  • ひと育ナビあいちの開設
  • ミラサポの開設
  • 外国人技能実習機構の設置
  • OB人材バンクの復活
  • 小口零細企業保証制度の上限額引き上げ
  • リレーションシップバンキングの全面的推進
  • 下請代金の原則現金払い化の動き
  • 障害者雇用企業サポートデスクの開設
  • 産業人材育成連携会議の設置
  • 町工場技能者コンクールの開催
  • 愛知県公契約条例の施行
  • あいちキャリア教育地域連携事業の実施
  • 平成30年度事業承継税制の大幅改正

 

愛知県中小企業振興基本条例制定5周年記念の集い(2017年)

同友会の政策活動の価値観

同友会の政策活動は、要求・要望・反対に留まらず、徹底した自助努力を前提にしながら、常に対案を示すことを重要視して取り組まれています。言い換えれば、(1)「人を生かす経営」を実践している中小企業の健全な努力が報われ、「人が生きる地域」につながること、(2)「中小企業は弱い存在」だから助けてくれ、ではなく、「自らは経営責任を果たす」が、その遂行のために「こうした制度、政策、環境を変えてほしい」「こうした制度や政策を新たにつくってほしい」という、「自主・自立」と「提起・提案」の姿勢といえます。

こうした価値観の上に立ち、経営の発展を阻害している要因、社員や中小企業経営者自身の生活を脅かしかねない問題、さらには地球上に生きる生命の安全を保障していく課題について、中小企業家の見地から検討して取りまとめたものが政策提言です。

同友会運動をより豊かに、かつ中小企業家の力としていけるよう、次年度に向けて皆様からのご意見をお待ちしています。