尾嶋 敬久 氏 「先人の知恵に学ぶ」

11_ojima尾嶋 敬久(おじま ゆきひさ)氏
(株)オジマ (会相談役・刈谷地区)

1933年生まれ、1974年入会、1975年~西三河地区会長、1985年~三河北地区会長、1987年~三河支部長、1988年~副代表理事、1999年~副会長、2003年~相談役を務め現在に至る。

経営の原点を学ぶ

私が同友会に入会したきっかけは取引関係にあった津鉄工業の津田豊造氏に紹介してもらったのが始まりでした。また鎌田勝先生の創造経営研究会が良かったのも覚えています。この会合の経営の原点を学べる百枚以上のフロチャートは、今でも活用しています。今思えばその後の経営指針の成文化運動の起源になった勉強会だと思います。

昔を思い出すと、「全研に行くと経営の本質が学べる」と言われて参加したり、様々な場面で出会う経営者達との議論の中で、その言葉の奥の根底になるものを追究しようとしてきました。

歩み、考え、歩む

三河地域は理念型といえます。学ぼうという意欲が強く、地域に新たに地区を作ったり、お互いに高めあう場として小グループに分ける試みを進めました。その意味では、愛知県は三河地域からグループ活動を学んだと思います。独自の研究会を先駆的に創造したりもしました。

とにかく、こつこつやる三河人気質が綿綿と活動を広げていった気がします。やりたいことを実現に向け堅実にやっていく。そんな緩やかな伝統が息づいているといえます。今でも健在の方と一緒に自分達で考えてやってきた結果には愛着があります。

みずから考える素養

私の近況としては、中小企業研究財団の理事長をおおせつかっています。この財団は九三年に同友会の外郭団体として発足したものです。当時は愛知同友会創立三〇周年の時で、自前で事業活動をしていこうと呼びかけ設立されました。

活動内容は、毎年一回記念行事を開催したり研究会を行っています。それは、大学の教授や有識者をお呼びし、広い視野でその時々の時局の話や外部環境の勉強をして、十年後、二十年後の世の中を展望・研究するものです。

また東京の大田区やイタリア・スイス、オランダ・ベルギーなど研究視察を行ったりもしています。二〇〇二年のEU視察が、今日の中小企業憲章制定のきっかけとなったことは、記憶に新しい事と思います。

事務局は多能工へ

経営者団体は人生の達人の集まりです。同友会の事務局には多くの会員企業が働いている現場を知って欲しいと思います。社会や人間には光と影の部分があり、影の部分はわからないものです。このような、見えないものを見えるようにする。そんな能力を研ぎ澄ませて頂きたいと思います。

事務局は、情報や経験が集積されるセンターでもありますから、時間の余裕も必要です。よい環境にすると考え方も変わりアイデアが出ていきます。そして、私達会員との話の中で出てくる言葉の根拠は何か、どんな所から滲み出てきたのかを感じ取って欲しいと思います。

また、憲章や条例を本当に広めていくのであれば、それを専門に行う担当事務局が必要となります。行政との付き合い方に精通し、さまざまな知識を持ち、人や団体を組織化していく多能工です。そんな事務局を期待します。

共生経済を始める

私達は戦後、アメリカをモデルにした格差社会を生き抜いています。これまで発展してきた経済は、大企業のやる事に乗って便乗的に利益追求をしていく。いたって自主性・自立性のない小企業やサラリーマンの考え方が根底にあります。

そこで、これから大切になってくるのは、弱肉強食の市場原理主義を超えた共生社会の精神だと思います。同友会で言う“共育”に通じるものがあります。新しい企業のあり方、真の豊かさを追求する努力をすることが重要です。私達同友会の会員は、自らの使命を自覚して進めること、こんな心構えを覚悟する時なのです。

数値化できない人間の凄さ

当社は金型部品の製造をやっていますが、技術士の先生によると、物づくりのうち一〇%はどうしても人間の力がいるといいます。国内七〇%のシェアを占める当社のカムスライドという商品。これは社員とそれまでの経験と勘で開発しました。作ってから理論形成が追いついてきた形になります。職人の勘で合理性が嗅ぎ取れる。そこに数値化できない人間の凄さを感じます。

同友会では「先人の知恵に学ぶ」と言われますが、同友会の持つ「自主・民主・連帯」の精神は、国内のみならず世界に示す最も大切なことになると思います。この精神は憲章の国際化に大きく役立ち、同友会の存在が大きくなります。普段の経営に憲章の精神を活用しながら「国民と共に歩む中小企業」の実践が深まっていく契機となることを期待します。

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