活動報告

第55回定時総会特集(4月27日) 基調講演、全体会

第55回定時総会 基調講演

同友会らしい黒字企業づくり
~同友会運動と企業経営は、不離一体

想いを伝える加藤氏

想いを伝える加藤氏

加藤 明彦氏  エイベックス(株)

「同友会会員としてやるべきこと」「同友会とはどんな集団か」「学ぶ姿勢は」。5年間代表理事を務めた加藤明彦氏がこれまでを振り返った集大成の報告を紹介します。

経営姿勢の確立を

同友会で様々な役を受けさせていただいたなかで、やはり労使見解の「経営者の姿勢の確立」が企業経営における一番のベースであり、これをすべての会員が学ぶことが重要だと実感しています。人間尊重経営の基本的な考え方である同友会理念「自主・民主・連帯の精神」は労使見解に結実していますが、この理解は意外と正しく会内に広がっていないのが現状です。

私の経験から、例えば企業の利益を最優先にし、それが実現した結果として社員の幸せが実現されるという考え方では、社員は「やらされ感」という不満を抱え、我慢をして仕事をするので能力が十分に発揮されません。経営者は社員の人生を預かっているのですから、一人ひとりの社員が入社してからどう成長するかを考え、人間として対等に付き合っていくことが必要です。社員の成長を通じて、企業は発展します。

同友会の本質的な正しい考え方から企業を見つめ、実践し、うまくいかなければ自問自答し、他の会員経営者とも経験を交流するなかで課題解決のヒントを模索し、また企業で実践する。このサイクルを回すことで、強い企業体質づくりができるのです。

「主体者」として

本気で企業を発展させたいのであれば、同友会が発行する書籍をすべて読み切ることが必要です。会員相互の経験交流に止まらず、同友会の本質・歴史を書籍から正しく学ぶことです。それらを学ぶ公開講座もたくさんあります。地区での学びのみに満足せず、委員会や全国行事など会の多くの学びの場に積極的に参加してください。

同友会はこれらの積み重ねです。私はこのようにして同友会理念とその歴史を学び・深め、企業経営に活かしてきました。自ら「主体者」として深く関わることによって、はじめて同友会理念は自らのものになるのです。

「社会の主役である」

現在の愛知同友会では、地域に中小企業のことをもっとよく知ってもらおうという運動を展開しています。過去には人をどうやって採用し、どんな風に成長してもらいたいか等、雇用の課題など個々の企業視点で議論がなされていました。近年では、「中小企業憲章」(2010年6月閣議決定)前文で「中小企業は、経済を牽引する力であり、社会の主役である」と述べられているように、社会的な視点で地域活性化のための議論に深化しています。

行政の方は、私たちが経営努力を重ねるなかで、1社1社が企業経営において何に悩み、何をしたら改善されたのか、その具体的な経験を聞きたいと言われます。業界全体の現状においては他団体からも話を聞けますが、1社1社の顔が見えるのは同友会だけだと言います。

社会を変えていくには、個々の企業努力だけでは限界があります。他組織とも連携して、面として取り組むことが大切なのです。

熱心に基調講演を聞く参加者

熱心に基調講演を聞く参加者

自問自答を繰り返す

私は入会前、社員50名体制を目指して試行錯誤を繰り返していました。しかし、社員数は20~30名を行き来する不安定な状態が続き、資金繰りでは苦労をし、最終的には子どもの貯金箱まで割って資金を調達することもあるほどでした。企業の課題は経営者である自分自身にあるとの自覚はあり、2代目として後ろ指をさされないよう、早朝から夜中まで休日もなく仕事に取り組みましたが、課題は解決しませんでした。

そこで、ようやく自分の考え方が間違っていると気づくことができたのです。まずは企業のあり方そのものを変えようと思い、企業名を社員全員の投票で「エイベックス」に変更しました。この時に、それまでの経営者主導型の経営から、社員全員で企業を引っ張っていくという経営に切り替えたのです。

経営者から学ぶ

私たちは企業経営に悩み、課題解決のために他の経営者の実践から何かヒントをもらいたいと思って同友会で活動していると思います。同友会活動のベースとなるのは企業づくりです。

最近、よく質問されることは、「女性社員の採用と活躍」についてです。製造業においては女性社員の採用と活躍が進んでおらず、途中であきらめてしまう企業も少なくありません。「なぜエイベックスでは女性社員を毎年継続して採用し、女性が活躍できるのか」と行政や取引先から聞かれます。「長期的な目線で、誰もが活躍できる企業づくりをすることです。それを私は同友会で学んでいます」と回答しています。

企業規模や職種に関係なく、経営者が広く経験を交流できるのが同友会です。自分の業界、特に取引関係のあるお客さんからの情報だけでは、視野の狭い戦略しか立てられません。経営者として幅広く他の経営者から学ぶことが、他団体にない同友会の特長のひとつです。

「現実は甘くない」

同友会活動のなかで、私たちの学ぶ姿勢は確立されているでしょうか。例会やグループ会に出席し、他の経営者の実践報告を聞いただけで、「良い経営者」になったつもりになってしまうことがあります。報告者は良い経営者かもしれませんが、ただ報告を聞くだけでは、本物の学びをしたことにはなりません。報告から学んだことを企業で具体的に実践することで、経営者は成長することができるのです。

中同協の記事には、「現実はそんなに甘くありません。労使見解、経営理念など、自分の心と向き合い、どうしたらいいのかと模索し、そして会社で実行し、それでもなかなか上手くいかないから挫折し、なんでうちの会社では上手くいかないのかと他の経営者の経験を聞いて、また立ち上がる。その繰り返しをしていくなかで、少しずつ『自分』が確立されていくのではないか。そして、この繰り返しをしていくことで、同友会で『本物の学び』をしている人になれます」とあります。

このサイクルを頭に入れながら、日々、同友会で素直に学ぶことで、労使見解にある「経営者の姿勢の確立」につながっていきます。

自主・自立の精神で

同友会運動においても、対外関係づくりは企業経営と不離一体です。皆さんも、社長交代があった時には必ずその挨拶状を事前にお届けし、その上で直接ご挨拶に伺うと思います。代表理事の任期である5年間、年に3回以上必ずご挨拶に伺い続けたことで、行政側から招いていただけるようになりました。

同友会は、他のいかなるところからも干渉や支配を受けない団体であり、また会員自身の自発性を尊重する自主・自立の団体です。会費のみで運営されており、他の組織とは一切利害関係がないため、経営者の本音が聞けるということ。そして、中小企業と地域をともに発展させるため、真剣に経営者が努力している会であるとの理解が広まっています。

私たち会員は、常に中小企業のあるべき姿を描きながら、当たり前のことを当たり前に行動し、社会との信頼関係づくりを重ねていくことが必要です。同友会理念と労使見解に基づく企業づくりを、さらに会の内外に広めていきましょう。

【文責 事務局・橘】

全体会

総会議案を深める ~会活動を広く紹介

各代表者14名が登壇

各代表者14名が登壇

総会議事終了後、昨年度を総括し、会活動を広く紹介する場として全体会が設けられ、「同友会づくり」「地域づくり」「企業づくり」の3つの観点から、各部門の代表者に報告いただきました。

同友会づくり

同友会づくり

同友会づくりでは、高瀬喜照副代表理事より、同友会への対外的な期待の高まりから三位一体経営のさらなる実践が求められること、伊藤信夫会員増強推進本部長より、増強の意義が伝えられました。

大野正博広報部長からは、例会報告のあいどる掲載率が2015年度は93%に達し感謝の意が示され、最優秀賞・優秀賞の例会報告を発表。佐藤祐一新代表理事が触れた先見性も交えて、広報の役割を説明しました。

第16期役員研修大学の山田英之同窓会長からは、経営に悩んだ実体験と併せて研修大学の学びと魅力が報告されました。

地域づくり

地域づくり

地域づくりでは、豊田弘副代表理事より、自社の利益追求だけでなく中小企業が連帯して発展しなければならないことや、議論を尽くして自らの考えをまとめる必要性が伝えられました。

和田勝政策委員長は、経営環境を認識し、変化させていくという委員会の役割を説明し、政策や中小企業憲章の定義、同友会と平和の関わりについて話しました。

また平沼辰雄地球環境部会長は、エネルギーシフトに代表される「環境」を経営上どう実践するか、それを憲章・条例に盛り込んでいく運動が欠かせないと訴えました。

企業づくり

企業づくり

企業づくり

最後の企業づくりでは、人を生かす経営推進部門の北川誠治新副代表理事より、「幸せ」とは何かを考え始めた社会の変化に触れ、既存の枠に囚われない学びの視点の必要性が伝えられました。

その後、各部門の代表者から1年間の成果と課題が報告されました。

「どんな経営環境でも採用できる企業づくり」(共同求人)、「同友会会員は障害者問題運動の一員」(障害者自立応援)など、それぞれの学びの深さが示され、最後は共に学び合おうと委員会への参加が呼びかけられました。