活動報告

第56回定時総会特集(4月25日) 基調講演、全体会

第56回定時総会 基調講演

「人を生かす経営」の実践で、日本一のコールセンターをめざす

中山 英敬氏  (株)ヒューマンライフ
(福岡同友会・代表理事、中同協・経営労働委員長)

中山氏の報告から「実践」することの大切さを学ぶ参加者

福岡同友会代表理事で、中同協の経営労働委員長も務める、ヒューマンライフ代表取締役の中山英敬氏による基調講演の概要を紹介します。

事業撤退からの創業

弊社は主に健康食品の注文受付に対応する、100席の小規模コールセンターです。

私は地元福岡で、一度就職しました。当時、顧客第一主義の後押しもあって、コールセンター専門の子会社を新規設立することとなり、そこの責任者を任されました。ところが、2年半余りで事業撤退が決まります。今思えば目先の損益数値しか見えず、ビジョンが伝わっていなかったのだと思います。

「会社がやらないなら俺がやる」と決意した私は、3カ月で会社の整理をしながら、創業の準備も進めました。前職での経験から、お金は当然借りられると思っていたのですが、金融機関から断られ続け、茫然としました。それでもあの手この手を使って何とか資金を用意し、やっとの思いでヒューマンライフを設立します。見かねた先輩がお金を貸してくれ、同時に同友会にも入会しました。

悩んだ時こそ同友会

入会後、すぐに経営指針作成セミナーに参加しました。そして出来上がった指針書を手に、当時口座があった銀行の支店長を経営指針発表会に招待しましたが、あっさり断られました。

悔しさから隣にあった銀行に飛び込むと、支店長は約束もしていない私の話を聞いてくれ、発表会への参加も快諾してくれたのです。発表会では「日本一のコールセンターをめざす。日本一とは規模ではなく、電話して良かったと言われるような応対をめざします」と伝え、その銀行から融資を受けることができました。

ようやく経営に臨めると思いきや、売上を急激に伸ばしていったためクレームも多く、めざす「日本一のコールセンター」とは程遠い現実に直面します。

そこで、中小企業問題全国研究集会に参加した私は、「経営指針」の分科会で「指針を作って発表したが、会社は全く良くならない」と話すと、「その指針は誰に向けて発表したのか」と問われ、我に返りました。弊社の業務上、幹部社員しか呼んでいなかったのです。その後、全社員に思いを伝えますが、雰囲気はさらに悪くなっているように感じました。

今度は中同協全国総会で「労使見解」の分科会に参加し、「指針を作り、社員に思いを伝えたが、会社は良くならない」と言うと、「自分の思いばかりを言っていないか。社員の気持ちに耳を傾けているか」と問われ、経営者の役割について改めて考えました。

「変わられましたね」

「まず経営者である自分が変わる必要がある」と語る中山氏

ある日、例会の帰りに会社の前を通ると、電気がまだ点いていました。翌日、社員に聞くと、「23時、24時までの残業は毎日」だと言うのです。私は驚いて、すぐに現場を見に行きました。

そこでは1日約4000件の注文を受け、その後に伝票を仕分けしているといいます。そこで電話対応と伝票整理を分担してみると、残業は次第になくなり、社内の雰囲気も良くなりました。その上、お客様からお褒めの言葉も頂くようになったのです。

そんな時、社員に「社長、変わられましたね」と言われました。会社を良くするため社員を変えようと思っていましたが、まず経営者が変わらなければならないのだと気付いたのも、この時です。

社員と一丸でやっていけると見込んだ私は、念願であった新規事業に乗り出し、掛かりきりとなりました。ところが2年後、クライアントからの連絡で異変を感じ、現場に戻ると多くの退職者が出ていました。しかし、現場は危機意識を全く持っていないのです。私自身も、新規事業に乗り出すことで気持ちが浮かれていたのかもしれません。

もう一度「『ありがとう』が飛び交うコールセンターにしたい」と再構築に向けて計画づくりに入った時、現場のリーダーたちが協力させてほしいと申し出てくれました。この時、本当の意味での社員の自主性を目の当たりにし、ここから会社が変わっていきました。

社員と信頼関係を築く

創業から10年目、リーダーたちが「経営指針は自分たちで作り、発表もしたい」と言ってくれました。それから方針骨子は私が立て、部門方針や計画は現場が創り上げるという流れができました。

また、「パートさんに研修をしたいので、私たちに理念研修をしてほしい」という申し出もありました。「マニュアルのない応対をめざすために、根っことなるものが大事」と言うのです。この「根っこ」とは、弊社の歴史や理念であり、社員の自社に対する思いが伝わり、本当に嬉しかったことを覚えています。今も現場で課題を出し合い、手作りで研修を行っています。

社員数が100名を超えた今でも、年に2回、パートも含め全社員と面談をしています。時間はかかりますが、社員一人ひとりとの信頼関係を築くためには必要です。私自身、社員との関係づくりに悩んだ時期もありましたが、関われば関わる程、社員それぞれの背景を打ち明けてくれるようになりました。

一人ひとりとの信頼関係が根底にないと、経営指針を作ってもうまくいきません。信頼関係を築くことに時間はかかりますが、社員は必ず経営者を見ています。常日頃の経営姿勢を正し、共に「人を生かす経営」を志していきましょう。

【文責 事務局・橘】

全体会

総会議案を深める ~会活動を広く紹介

総会議事終了後、昨年度を総括し、会運動を広く紹介する場として全体会が設けられ、「同友会づくり」「地域づくり」「企業づくり」の3つの観点から、各部門の代表者に報告いただきました。

昨年度を振り返り2017年度の活動方針を深める

同友会づくり

「同友会づくり」は同友会と経営の不離一体の活動と高瀬氏

同友会づくりでは、伊藤信夫前会員増強推進本部長より感謝と激励の言葉が述べられ、今期より同本部長を務める小川康則氏は会員数5000名を目指すための協力を呼びかけました。

高瀬喜照副代表理事は、組織部門が学びを実践する場として大切であることを語り、各支部長をはじめ青同連協代表、女性経営者の会代表らが今年度の意気込みを述べました。

林康雄広報部長からは、例会報告のあいどる掲載率が非常に高かったことへの感謝の意が示され、最優秀賞の表彰を行いました。

第17期役員研修大学修了生の佐野和子同窓会長からは、地区や社員の支えに対する感謝とともに、研修大学での学びを地区や会社へ持ち帰り実践したいとの決意が語られました。

地域づくり

「地域づくり」では、同友会運動の本質である自主的な行動が要だと伝える豊田氏

地域づくりでは、豊田弘副代表理事より、経営者は社員や家族の幸せのために経営をしており、誰かに助けてもらうのではなく自主的に行動することが同友会政策運動の本質であることが伝えられました。

木全哲也名古屋市条例推進協議会代表は、行政と交流を重ねて親や教師に中小企業を知ってもらうこと、経営者が地域の子供たちや若者の現状などを知ることの重要性を述べました。

企業づくり

企業づくりでは、人を生かす経営推進部門の吉田幸隆新副代表理事が、経営者としての覚悟は一朝一夕に身に付くものではなく、悩んだ際には同友会で相談してほしいと話しました。

その後、各組織の代表者から1年間の成果と課題が報告されました。

「入社した社員が幸せに働けるように10年ビジョンを持つこと」(共同求人委員会)、「人を変えるのではなく、自分が変わる」(共育委員会)、「学びを地区や支部に広めるために、学ぶ場を提供する」(経営指針推進本部)など、それぞれの想いが語られ、最後は様々な課題に協力して取り組むことが呼びかけられました。

「企業づくり」として、人を生かす経営の実践を語る吉田氏

外部からの期待の高まりと、情報創造の必要性を紹介する宇佐見氏


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