活動報告

10年後の社会・働き方を見据えた企業づくり(1)

コロナ危機の今だからこそ見えてくるものとは

五十畑 浩平  名城大学准教授

協働共生委員会では、各社の10年ビジョンを考えるために、今後の社会や働き方がどのように変わっていくのかをしっかり学ぼうと、名城大学の五十畑浩平氏から問題提起していただき、参加者で議論を深めています。

今号より、五十畑氏の問題提起を連載いたします。

協働共生委員会のオープン学習会の様子(1月6日)

「最低限やるべきこと」が問われる時代

今回のコロナ危機では、物事の「本質」を捉えることの重要性を我々は再認識させられました。

「目的」と「手段」をあらためて考える必要性や、ものの「本質」を捉える重要性、そこからビジョンを描いていくことは常に求められることではありますが、今回のコロナ危機の中では「最低限やるべきこと」を考えることが本質と考えます。各社においては自社の存在の社会的意義を見つめ直す、問われている時期にあると思われます。

例えば、時間外労働の削減や働き方改革にしても、手段ばかりにとらわれ、そもそも「この仕事は必要なのか」を考えることがなかったのではないでしょうか。移動や接触が極めて制限された今回、最低限何をすべきか、何ができるのか、奇しくも考え実践する機会となりました。

学校においては、小中高校の部活動は、教員の業務の中で大きなウエイトを占めていますが、そもそも部活動は本来、学校ではなく地域で行うべきことです。逆に学校が担うべき学習については、塾などへの外部委託にウエイトが置かれるという逆転現象が続いてきました。

こうした「当たり前のように行われていること」を問い直す時期が訪れました。一人ひとりが自分の行動について考え直すことが求められる時代といえます。

「人を雇う」ことの本質

そこで今回考えたい本質として、「人を雇う」ことを取り上げてみたいと思います。

ロボット、AI、オートメーション化等が進んできた中で、コロナ危機により仕事の在り方そのものを大きく変えざるを得ない事態となりました。なぜ「人」を雇わなければならないのか、そもそも雇う必要性がどこまであるのかが突き付けられ、考えさせられる時代が到来したのではないでしょうか。

私が学生によく言うことですが、自分の親世代と同じような働き方やキャリアの積み方を、自分の世代もやればよいとは限りません。例えば、駅の改札について、昔は人が行うしかありませんでしたが、現在は人が行う必要はまったくなくなっています。電車の運転や銀行等も、今後「無人化」されていく可能性が高いです。

そこで雇用について考えますと、今後、極端なことを言えば人を「雇う」必要がなくなり、代わって「フリーランス」に仕事を業務委託するような時代になっていくことも考えられます。

会社で「人」を「雇う」とは何か、なぜ会社で人材育成し、キャリアを積ませていくのかについて、これまで以上に真剣に考えなければなりません。「人を雇う」について「why=なぜ」を突き詰めて考えることで、目的・意義・本質・理念が見えてくるといえます。