ポストコロナは企業変革のチャンス
加藤 昌之 副代表理事
(株)加藤設計代表取締役
大転換期を迎えて
創業35年、何度か大きな経済の転換点に遭遇してきました。起業まもなくの不動産バブル、そして崩壊。次にリーマンショック。その間にも様々な「ショック」を体験しました。共通するのは、二度と前の状態には戻らない「新常態」になることです。つまり、経営のやり方を変えないと、間違いなく企業の存続に関わる事態になります。
特に2020年代は社会の大変革の時期です。デジタル化5G、IoTなどの技術革新。SDGs、ESG投資などの経済社会システムの転換。そしてコロナ禍はこれらを一気に推し進める勢いです。
自立型企業像を描き直す
時代の転換点では指針書の見直しを即座に実行します。その3要点の1つは、経営の本質である「労使見解」の確認です。2つ目は、自社の付加価値増大を図り「自立型経営」(21世紀型企業)を維持・拡大できるか。3つ目は「全社一丸」で成し遂げられるかです。これらをチェックし、21世紀型企業像を描き直します。
入会前の30年前は、不動産バブルの不吉な予感がしましたが、まんまと崩壊の罠に引っ掛かり、その苦しみから逃れるのに15~6年を要しました。次のリーマンショックは同友会の学びのおかげで、大きな不況を経験し売上げが落ち赤字が続く中でも、描き直した指針書で明るい希望を抱き、悲観した記憶は全くありません。
企業変革を早める
さて、コロナ禍はどうでしょう。昨年の景況調査会議では、景気は後退しているので余裕資金を積み増すようにアドバイスをしていました。当社も運転資金の借り増しをしました。
建築業界はだらだらと景気後退しそうな気配ですが、新指針書に基づく新戦略に早期に着手すべく、投資資金に振り変える準備をしています。自己資本比率を意識しながら投資をして付加価値を上げ、経営体質の強化を目指します。その要諦はもちろん、同友会で学んでいる「エネルギーシフト」戦略と「働き方改革」の推進です。
新しい時代をつくる企業へ
城所 真男 副代表理事
重機商工(株)代表取締役
感染拡大で考えたこと
政治や経済の主要機能が東京に集中しているが、本当に日本はリスクヘッジできているのか? 地方分散が急務ではないか? 地方自治体の首長と今の政府、どちらが一人ひとりの国民の生活や安全を見ようとしているか? 需要はたくさんあるが命を懸けて通勤、勤務する都会で働かなければ生きていけないか? 世の経営者は社員を守り、次の一手を計画していく実力があるのか? 本当に必要な会議を集合してやっているか?自分らしく生きていく場所はどこにあるのか?…。今回の新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、私が考えたことです。
これらについて、同友会では地域と共に歩む中小企業であるためにどうしていくか、どうやって雇用を守り続け、地域の期待に高いレベルで応え、企業を維持・発展させていくかなどの切り口で経営指針を考え、成文化し、正しい生き方をしていくことを社員と共に目指して実践してきました。今回の出来事は、こうした同友会の考え方、経営実践の方向の正しさを明らかにしたように私には思えます。
未来への希望を示そう
当社は建設機械販売・修理・レンタルを柱に、空調機器、ソーラー発電システム販売・施工などを手掛けています。幸いにも土木業界への新型コロナによる影響はまだ出ていませんが、度重なる経済対策で大規模な財政出動が行われていますので、少なくとも近い将来は土木関連の官公需要の減少は免れません。したがって現在の経営課題を5年かけて達成していこうという目標は、今すぐ対策しないと間に合わないという考えに変えさせられました。この急変を社員に伝え、ギアをどう入れ替えていけるかが今後の勝負どころです。
連日暗いニュースばかりで、世界中どうなってしまうのかという心配の渦が溢れています。私個人もそうですし、世の中の企業も同じだと思います。先が見えないと、人間は不安になります。逆に、先に明るさが見えれば前向きになることができます。
自社の仕事を通じて、顧客、地域、そして何よりも社員に未来への希望を提示することが、いま私たち経営者に求められています。同友会で共に学ぶ者同士、知恵と情報を持ち寄り、励まし合い、新しい時代をつくる企業へ飛躍していきましょう。
社員との信頼関係で乗り越える
吉田 幸隆 副代表理事
エバー(株)代表取締役
リーマン時に得た学び
リーマンショックの時は、毎月お金が無くなっていく、いつまで持ち堪えられるのかと恐怖に押しつぶされそうでした。そして、会社が一番きついときに出たのが「不協和音」です。出血を止めるための経費節減と、売上を伸ばさなければならない状況を社員と共有できないことでした。経営数字を理解できない、もっと言えば「それは社長の仕事だから」と距離を置かれてしまったのです。
運転資金の再調達が必要になるため、銀行に月次予実管理表を持って説明に行きました。銀行からは「毎月のように計画を下回る実績しか出せない。反対に苦しい中でも結果を出している企業はありますよ。なぜエバーさんはできないのか」と言われ、忸怩たる思いでした。
しかし、何度も銀行に通い続ける中、計画の見せ方・作り方を学んでいきました。数字に対し責任を持つことが私(経営者)の仕事、現場の知恵を活かし数字を生み出すことができるのは社員だということです。
信頼できる社員と共に
追い打ちをかけるように、東日本大震災・円高・尖閣問題・タイの洪水と、次から次へと経営環境の激変が続きました。将来を展望した時に、今のままの事業領域でいいのかと考えるようになり、付加価値の高い金型の内製化を目指しました。その担い手が新卒の若手社員たちでした。
付加価値・生産性の向上と人材育成を柱に2015年経営革新計画の認証を受け、同時に2020ビジョンを発表するに至りました。そして、2018年からは2030ビジョンを描くために準備をしてきました。自分たちでできることを増やしていく、ものづくりを支援できる会社を目指す、となりました。
その矢先にコロナ禍で経済活動がストップし、5・6月の対前年売上比は大幅に減少。休業を余儀なくされました。つま先立って膝がカクカクしながらどちらに倒れるかわからない不安がありつつも、以前より信頼できる経営計画があり、信頼できる社員がいるので、不安も少しばかり和らいでいます。何より、真摯に己を磨き続ける自助努力のエネルギーを拡散してくれている同友会の仲間がいるおかげです。共に、この難局を乗り越えましょう。