「増加」から「減少」傾向に
~いまこそ社員の給与水準を守る
愛知同友会では、2016年より賞与調査を再開し、中小企業の動向の経年変化を分析しています。今回の調査では、賞与を支給する(支給した)会社は昨年から減少しましたが、業況は厳しくとも、社員の生活を守るために懸命に努力する姿勢が見受けられます。コロナ・ショック以前の業況に回復するには、長期戦の覚悟が必要であり、変化を見極め的確につかみ取り、経営方針・戦略を練り直すことが求められます。
減少傾向が鮮明に
今回の調査からは、夏の賞与を「支給する(支給した)」会社は71.4%と、昨年から6.5%減少しました。業種別の支給割合では、建設業(78.8→73.3%)、製造業(88.2→76.3%)、流通・商業(77.9→66.5%)、サービス業(70.0→68.9%)と、全業種通じて減少傾向が鮮明に観察されました。特に製造業が▲11.9%、流通・商業が▲11.4%と支給減少幅を2桁拡大させています(グラフ1参照)。
賞与支給額も、「増加」から「減少」傾向に転じました。前年対比では「増加」(32.2→18.1)が縮小し、「減少」(12.9→38.3)が大幅に拡大しています。製造業では半数以上が「減少」と回答(19.0→56.1%)し、業種別では最も支給割合を減少させました。その他、建設業とサービス業では「昨年並み」との回答が前年対比で多く、割合が上昇していますが、「減少」との回答は、建設業が19.9%、サービス業が11.5%とそれぞれ増加しています。全産業を通じて賞与支払い力は押し下げられているといえます(グラフ2参照)。
厳しくとも懸命に努力
支給平均金額は、全体で前年対比▲10,931円の311,657円でした。流通・商業の下げ幅がもっとも大きい結果となり、すべての業種で昨年夏の平均支給額を下回りました。支給額のボリュームゾーンは「30~40万円未満」で、サービス業以外はすべてこの範囲にあてはまります(グラフ3参照)。また賞与支給月数は、「1~2カ月未満」が引き続き6割を占めました。業種別で特徴的なのは、建設業では「1カ月未満」(31.7→23.5%)から「1~2カ月未満」(52.4→60.0%)への上方移行、逆に流通・商業では「1~2カ月未満」(58.0→56.0%)から「1カ月未満」(20.5→28.0%)への下方移行が観察されました。
記述回答からは、「生活給の要素が大きいので、『支給しない』はできない。賞与引当をしている」(建設業)、「コロナ禍に見舞われた今、会社にとって賞与は苦しいが、働く人からしたら安心になると思う」(製造業)、「コロナ・ショックで賞与が落ちると考えている社員が多い。こういった時こそ経営者が身を切って社員の給与水準を維持」(流通・商業)、「苦しい経営だが賞与は支払う」(サービス業)など、業況は極めて厳しくとも、社員の生活を守るために懸命に努力する声が寄せられました。
経営戦略を練り直す
6月に緊急事態宣言が解除され、徐々に日常が戻りつつあります。しかし、海外経済の著しい落ち込み、外出自粛、休業等による需要「蒸発」の影響は、中小企業経営に極めて甚大な影響を及ぼしています。他方で、感染症というものの性格上、人々のマインドに与えた負のインパクトも大きなものです。コロナ・ショック以前の業況に回復するには、相当の長期戦を覚悟する必要があります。
そうしたなかで、従来の仕事の再現だけでは経営を見通すことは困難です。今回の出来事を契機に、人々の価値観や生活様式は変わり、またそれに対応する上で顧客からの要求も変化します。そうした状況を見極め、的確につかみ取り、今の状況を正しく分析するとともに、経営指針、なかでも経営方針・戦略を早急に練り直し、先の経営を考えることが求められます。
【平均賞与】
◎全 体 311,657円(前年比▲10,931円)
◎建設業 326,979円(前年比▲2,361円)
◎製造業 298,870円(前年比▲12,578円)
◎流通・商業 313,510円(前年比▲21,340円)
◎サービス業 316,156円(前年比▲6,235円)
【調査要項】
(1)調査日 6月15~23日
(2)回答企業 842社(建設139社、製造240社、流通・商業184社、サービス279社)
(3)平均従業員 18.2名