活動報告

なんとしても生き残る(4)

存在価値を確認し、企業変革に挑戦

石塚 智子 副代表理事
(有)ソフィア企画代表取締役

石塚 智子氏

ピンチをチャンスに変える同友会での学び

同友会に入会したのは1991年。経営者として未熟な私にとって、先輩経営者の体験報告は何よりの知恵袋であり、毎月の例会には心弾ませて参加していました。

しかし、2年後にグループ会社から突然仕事を切られてしまったのです。当時、同友会では「自立型企業づくり」という言葉をよく聞きました。下請けから自立型企業になるには、まず自社の強みと弱みを明確にすることが大切だといいます。

そこで強みでは、生活者の視点を生かした内容でガス業界に特化した販促企画を商品にすること。弱みは、家事育児との両立のため1日8時間働くことができない人の集団であることなので、それを克服するために、事前受注かつリピート型の商品にしました。

この危機がきっかけで、社員と共に経営指針書を作ることができるようになり、どのようなビジネスモデルにしたらいいのか考えました。

また当時の私は、子育てをする大阪から一宮に出勤するという生活を10年ほど続けていました。これが功を奏し、短時間勤務やテレワークなど、誰もが働きやすい会社づくりをするきっかけとなったのです。会社を経営するために、何をしていくのか社員と共に考え実践してきたことが、今日につながっています。

新たな世界を見据え企業変革の覚悟を

コロナ禍が、情報社会から新たなデジタル社会への変化を加速させています。私は、困難に直面した時には「なんのために起業したのか」と、自社の社会的役割や存在意義を自分自身に問いただしています。

起業して31年、ガス会社に特化した販売促進支援をする広告制作をする会社として全国展開できるようになりました。当初より女性の力を社会に生かすという方針のもと、社員は女性のみで事業運営してきました。

エネルギー改革により、LPガス、都市ガス、電力、エネルギー小売業界は業者間の垣根がとれ、新たなサービスが創出され、競争は激化し、ガスや電力は「お客様に選ばれる市場」となりました。最終ユーザーは「エネルギー供給業」から「総合生活インフラ産業」への進化・発展を求めています。そのような市場で、知(ソフィア)の創造企業として既存ビジネスの深耕を進めながら新しいビジネスモデルを構築していく矢先のコロナショックでした。

今後、終息しても世界規模で経済の長期的低迷が想定されます。サプライチェーンの枠組みや商取引の流れ、働き方や学校教育の在り方など、「新しい生活様式」として暮らしは大きく様変わりします。

私は今期、現状への対応は重視しつつも、「視野を広げること」「本質的に見ること」を念頭に、まず経営改善に向けて「会社は絶対につぶさない、社員は1人も辞めさせない」という覚悟を決めました。そして、現状認識を社内で一致させ、必要な情報の収集と素早い行動を心がけます。全社一丸となり、団結して知恵を絞り、自社の存在意義を確認しながら企業変革に挑戦し、この困難な状況を乗り切りたいと思います。

変化への対応力

鳥越 豊 副代表理事
(株)鳥越樹脂工業代表取締役

鳥越 豊氏

最も重要なのは会社をつぶさないこと

当社は今年で創業36年を迎えました。1998年、自動車試作部品製造の1業種に依存していたため、外部環境の変化で大きく売り上げが減少し、異業種へのシフトを決断。自動車・健康美容機器・航空機・工業製品の製造業へと変化してきました。

リーマンショック時に自動車部門は大きく落ち込みましたが、他部門でなんとか乗り越えることができました。この学びを活かし、3年前から新たな領域に挑戦するも、学びを活かしきれず、断念せざるを得なくなりました。

生き残りをかけた次の一手として、投資設備の再利用に舵を切り、今年1月から取り組んでいる最中に新型コロナウイルスとの戦いが始まりました。健康美容関連は中国の感染拡大により2月頃から部品等の輸入が遅れ、納入できなくなり、4月からは自動車、航空機とも落ち込み、5月と6月は前年対比大幅減、休業を余儀なくされました。

元には戻らないと覚悟

こんな中でも開発部門の業務は休むことなく将来のために進めています。輸入部材も滞りなく入るようになった4月頃からは、在宅需要で健康美容関連商品の需要が高まり好調に推移していますが、全体をカバーできるほどではありません。

開発などに関わる社員と休業の社員とのベクトルを、どう合わせていくか。同友会で学んだ「人を生かす経営」を今一度見直し、コロナ禍をどう乗り越えていくのか、どの方向へ進むのかを明確にして、社員の顔を見ながら繰り返し語ることが重要だと思います。

元へ戻らないことを覚悟し、いかに付加価値を高め、原価低減の目標を明確にして全社一丸体制をとるかが課題のひとつです。企業変革のひとつとして、新たにコロナ関連グッズの商品開発に取り組んでいます。

私も含め経営者は不安の連続です。こういう時こそ同友会で共に学ぶ仲間同士、情報を持ち寄り、変化への対応力で自立型企業を目指し、難局を乗り越えていきましょう。

鳥越樹脂工業で製造した飛沫防止パネルをソフィア企画に設置

新次元の時代の中で

高瀬 喜照 理事
(株)高瀬金型代表取締役

高瀬 喜照氏

激変する経営環境

4~6月のGDPが27.8%減、戦後最大の下降といった、これまでの常識では考えられない数字が報道されています。今年の初めに中国の一部の都市で新型コロナウイルスが発生したという小さなニュースが、瞬く間に世界中に広がり終息の見通しがつかない状態になってしまっています。

近年、特にリーマンショック以降、世界情勢の変化や災害が原因で、経済に深刻なダメージを及ぼすことが多くなりました。さらに、こうしたことが常態化しつつあり、経営の舵取りが難しい時代になってきていると感じます。

弊社は若い社員を中心に、金型とプラスチック部品を作っています。今回のコロナで客先の中国工場の停止や住宅関連需要の落ち込みなどの大きな影響がありますが、同友会で先輩の皆さんから学んできた考え方や、ものの見方が役立っていると感じます。

経営者の役割と責任

以前は自分自身が経営者としての役割を分かっておらず、景気が悪くなるたびに自らの焦りで社員との関係が悪化し、社員が会社を辞めてしまうケースがありました。しかし、役員研修大学で聞いた赤石義博さんの労使見解の話、戦後間もない頃の中小企業経営者の苦難の中から同友会が生まれた話などから、おぼろげながら自分の役割や、経営者の責任を意識するようになりました。また、若い会員の方の斬新な経営感覚や情報も、方向性を決める上で役立っています。あらためて同友会運動の先進性、普遍性を確認することができます。

今、弊社では新次元の時代を乗り切るため、自主・民主・連帯の精神に立ち、人間性・社会性・科学性の視点から見た経営指針書を、社員と共に作り始めています。変化の激しい、先の見えない時代です。自分だけの考えではなかなか視界が開けてきませんが、同友会の仲間との交流や同友会の原点を学ぶ中でヒントがつかめると思います。

経営者には吸収力が大事です。お互いに切磋琢磨して、今の時代を乗り越えていきましょう。道は必ず開けると信じています。