活動報告

なんとしても生き残る(5)

問われる経営者の資質

宇佐見 孝 理事
宇佐見合板(株)代表取締役

宇佐見 孝氏

4回目の不況に直面

私は、同友会に入会して今年で36年が経ちます。その間に大きな不況が4回もありました。

1回目は1990年代のバブルの崩壊です。土地や株が大暴落して多くの企業が倒産しました。2回目は、94年のガット・ウルグアイラウンド交渉による林産物の関税撤廃です。安い輸入合板が国内マーケットに入り、国内メーカーが次々に廃業、倒産に追い込まれました。3回目はリーマンショック、そして4回目が現在のコロナ禍です。

今回の不況も含め、中小企業は淘汰されていきます。いつも思うのですが、不況の時こそ経営者の資質が問われます。景気の良い時は誰が経営しても、ある程度やっていけるものなのです。

情報をいかに活かすか

では、経営者の資質とは何なのか。それはブレない経営理念と会社の方向性を示すことで、社員が不安がらないようにすることです。私は、不況の時こそチャンスだと思っています。

バブル崩壊後は合板製造から加工工場に変えて業態転換を図り、リーマンショックの時は新会社をつくり、今回のコロナ禍では4月に会社を買いました。不況時に投資をしろと、同友会の先輩に教えてもらったからです。

同友会は情報の宝庫です。いろいろな情報が同友会にはあります。会員同士の会話の中で経営に役立つ情報があったり、事務局からの発信情報や、異業種ならではの情報の中に新たな気づきがあったりします。会社経営に役立つ情報をいかに的確に掴み取り、自社に活かしていくかが大切だと感じています。

「チャンスはピンチの顔をしてやってくる」。私はピンチの時に行動することを同友会で教えてもらいました。

コロナに負けない

出原 直朗 名古屋第二支部長
日研工業(株)代表取締役

出原 直朗氏

情勢の激変に備える

新型コロナウイルス感染者情報のニュースを聞かない日はありません。こんなことを誰が想像したでしょうか。感染者の数に左右されながらこの出口の見えない暗くて長いトンネルは、いつまで続くのでしょうか。

しかし、『労使見解』には、経営者である以上、「いかに環境が厳しくとも、時代の変化に対応して、経営を維持し発展させる責任が」あると書かれています。思い返せば私の会社はもうすぐ50周年を迎えます。これまでたくさんの困難を乗り越えてきました。製造業でスタートし、少しずつ成長してきたのです。

記憶の中では、20年前の東海豪雨では、自宅、会社が胸まで水に浸かるような被害を受けました。10年前にはリーマンショックの影響で、雇用調整など支援を受けながら経営してきました。それまで、「納期を守り、技術を磨き、信頼を築けば仕事はなくならない」と思ってやってきたことが、「社会情勢が一変すれば、なんともならない」ということを経験し、これではいけないと事業を見直し、新規事業を立ち上げました。

保育と飲食の新事業にも挑戦

多様な人材を生かして

この10年は新しい事業に挑戦し続け、「地域と共に」を特に考えて、2016年から保育事業、19年から飲食事業を事業部に加え、雇用にこだわって経営しています。会社の所在地をグーグルマップで俯瞰して、働く人がどこから通っているかをプロットして半径5キロから通う人が多いことを確認し、加藤明彦会長のいうダイバーシティ経営を目指しています。

今では社員やパートに外国人、シルバー、障害者、学生アルバイトまで、様々な人たちを雇用することができました。特に保育園は、保育士、調理士、管理栄養士などの資格を持つ若い世代の雇用ができ、会社に関わる人の平均年齢はぐっと下がりました。

コロナ禍という社会の変化は、人の考えにも大きく影響を及ぼしています。これまでのように仕事中心の生活ではなく、仕事を早く終えることで家にいる時間が長くなり、趣味や家族に向ける時間が増えるなど、働き方は大きく変化したように思います。

「働く=人生」をより意識することで、社会から必要とされる企業となれる気がします。同友会を深く学ぶことがどんな困難にも負けない企業に至る道だと考えます。

仲間がいたからこそ乗り越えられる

大竹 裕治 西三河支部長
(株)オアシス代表取締役会長

大竹 裕治氏

認識の甘さを反省

当社は今年で23年目を迎えるIT(システム開発、サポート、Web)会社です。同友会に入会したのが2007年ですので、早いもので会歴13年目を迎えています。

入会間もない08年~09年にリーマンショック、トヨタショックに見舞われ、2年連続で業績が悪化してしまいました。当時の私は情勢を展望することなく危機感のない経営者だったように思います。先輩会員の方々がリーマンショックの影響と対応情報を教えてくれているのに、「自社にはあまり関係がない」程度にしか受け止めていませんでした。

そんな認識の甘い経営者ゆえ業績は一気に悪化したのでしょう。業績が悪化してからの資金調達ですので、随分苦労して高い金利手数料で運転資金を調達したものです。

10年ビジョン実現へ

そして、今年度のコロナショック。業績は前年比、計画比とも大幅ダウンの状況ですが、危機対応に関するアンテナが以前とは断然違います。同友会で得た情報(自身と社員の命を守る対応、資金調達や各種助成金・補助金)で先手先手を打っての経営で舵取りができていると思います。直近(短期)での業績不振は免れませんが、中長期の見通し、すなわち社員のみんなと共有できている10年ビジョンは期待が持てる内容です。

同友会入会後まもなく苦しい思いをしても今日があるのは、厳しくも温かい同友会の仲間のおかげです。経営指針書による会社経営(理念経営)を10年以上続け、経営理念実現に向けての10年ビジョンがコロナ禍という現状与件を反映させてもまさに夢があり、実現可能なものになってきたこと。多くの幹部社員が参画しての経営方針作り、全社員による行為計画作りと反省が、徐々に形となってきています。

最後に、以前は直接会っての情報交換が主でしたが、コロナの影響でオンライン会議での情報交換が常識になりつつあります。人間の適応力はたいしたもので、不自由さを便利さに変えることができつつあります。どんな環境でも生き残る経営者になっていきましょう。