活動報告

なんとしても生き残る(6)

社員と共に乗り越える

倉地 一秋  東尾張支部長
(株)愛北リサイクル代表取締役

倉地 一秋氏

鳥・虫・魚の目で

今年はオリンピックイヤーで華々しい1年を予想していましたが、新型コロナウイルスの影響で世界中に感染者が広がり、人の移動規制が最終的に経済の危機的な状況をつくり出すことになってしまいました。「当面は元に戻らないな」と社員に話したら、「いつか戻るわけではない」と切り返されました。これは社員なりに現状分析と中期的な流れを見通していたからこその意見でした。状況の見方として鳥の目(俯瞰の目)、虫の目(現場の目)、魚の目(流れを読む目)とありますが、社員の目(虫の目・魚の目)は貴重な意見だと思います。

愛知同友会でも2月末から、感染予防の観点で対面会合が中止や延期となりました。地区や支部の総会も行われることはなく、例会や情報交換もままならない状況でした。私は、同業だけでなく異業種からも情報を収集し、自社ビジョン見直しの参考とさせていただきました。情報が足りない分は自身の感性と社員からの情報で補い、指針の再考と弊社の課題を真摯に社員と考え、中長期の視点から今後を展望しました。

また「人材を確保し育てるチャンス」と判断し、社員を募集し雇用しました。結果的に、人材が増えたことで事業の汎用性が増し、社員の有給休暇取得率も向上しました。

コロナ禍では強いものが生き残るわけではなく、変化に対応するだけの能力がないと生き残れないと実感しております。

リーマン時の失敗から自立型社員の育成へ

弊社には外部環境に影響される事業もあり、その事業は元に戻らないという考えでまとまっていますが、戻らない事業をどう転換するのかが課題です。自社だけでなく、他社との技術連携による新たな展開を昨年から模索していたところ、責任者から講習の受講と他社へ出向して技術を習得したいとの申し出があり、自立型の社員が育ってきたと実感しております。自社の指針が工場責任者へ徐々に浸透できてきたことが、自立型企業への成長に繋がったと考えています。

2008年のリーマンショックの時は焦りから現場に出て陣頭指揮を執りましたが、今になって考えれば「危機的な状況は社長が解決してくれる」と、依存型の社員をつくる結果になったと反省しています。今回のコロナ禍で私が経営に専念できるのは、自立した社員たちのお陰です。

弊社は10月に株主総会があるため、現在はその準備に忙殺されておりますが、事業所ごとの数値を明確にし、コストの見直しと今後の事業展開に関しても共有していきます。責任者は売上げの理解はしていますが、利益については感覚的な状況です。私も会社トータルの月次決算で判断しておりますので、各工場が情報共有できる体制をとり、経理の理解を深めるため、管理会計の学びを責任者と共有しています。

既成概念にとらわれず

同友会でも現在まで対面活動に関しては規制がありますので、元のスタイルに戻ることは当面難しいと思います。しかし、ニューノーマルの時代が来たと考え、支部内でもウェブで会合を行うことで活動を続けることができました。ただし、ウェブ上では深い意思疎通が難しいとも痛感しております。

自社もニューノーマルの時代に備え、変化に柔軟に対応できるように準備し、挑戦したいと考えています。取り組んだ結果は、コロナが収束したら語り部として報告させていただきたいと思います。皆様も生き残るために共に前を向いて進みましょう。

苦難を経て強い会社に

古田 伸祐  名古屋第四支部長
(有)城西代表取締役

古田 伸祐氏

指針をもとに金融機関と対話

当社は各種自動車用タイヤ販売・修理専業店として創業し、来年には設立60周年を迎えます。創業当時の日本は急速に車社会へ移行する最中で、当社も徐々に業績を上げてきました。

バブルが崩壊し、販売価格の低下、異業種からの小売市場への参入などで業績が停滞しました。そこで事業方針を変更し、営業所の新規出店・既存営業所の拡張・人員増強・機器の導入など、サービス体制の強化を進めました。この積極的な投資の費用は銀行借り入れが大半でしたので、当時の資金繰りは非常に厳しかったのを覚えています。

この頃同友会に入会し、金融委員会で「リレーションシップ・バンキング」の大切さを学んだことが銀行取引に大きく役立ちました。赤字決算の中でも、今後の見通しと投資目的が明確だったことや、数字を絡めた銀行員とのコミュニケーションを続けたことが、メイン銀行の協力が得られた理由ではないかと思います。「貸し渋り・貸し剥がし」が騒がれていた時期ですが、当時の支店長の理解があったことも大きかったです。

情報を活かして苦境を乗り越える

業績が安定した頃、リーマンショックが起こりました。同友会では、数カ月前から景況不安と資金調達の情報が発信されていました。それを活かして早めの資金調達を行ったことで、赤字にはなったものの余裕のある資金確保ができ、慌てずに業績の回復を待つことができました。

バブル崩壊、リーマンショック、そして今回の新型コロナウイルス禍と、事業を続けていれば様々な困難が降りかかります。しかし、同友会が定期的に発信する景況調査などの情報と会員が持つ様々な経験やアイデアを持ち寄れば、この苦境は乗り越えられると思います。また、苦労して乗り越えることで、会社はさらに強く成長していくのではないでしょうか。

新型コロナは我が社の在り方を考える良い機会となりました。事業に真摯に向き合って、変化の激しい時代を乗り越えていきたいと思います。

ポストコロナに向けて

武田 充弘  名古屋第三支部長
タケダ歯車工業(株)代表取締役

武田 充弘氏

苦境での模索が形に

不況の時、自社では成功より失敗の方が多かった気がします。ただ、経営環境の厳しい中、苦しみ模索したことが数年後に形になりました。

工作機械の部品加工は景気の変動をまともに受けるため、リーマンショック時は売上げが2割しかない状況が数カ月続きました。それでも、高齢の熟練工からの技能の伝承という課題があったので、リストラせずに乗り切りました。さらに、売上げが激減する中、思い切って同友会の共同求人で新卒社員を2名採用したのです。

また、先代からの古参社員との確執もあり、改革の必要性も感じていたので、コンサルタントを入れました。彼らにヒアリングしてもらったところ、「社長は俺たちの言うことに聞く耳を持たない。もう何も言うつもりはない」と社員が言っていると伝え聞いた内容は、今でも忘れられません。同友会では「社員との信頼関係こそ重要」と掲げているのに、真逆のことをやってきたのだと気づかされたのです。しかし、これがきっかけになり、全体ミーティングが始まり、社員と話し合う機会が多くなりました。

経営指針があったから

あるとき、営業戦略をテーマとする地区例会でグループ発表する機会を頂いたため、それに向けて無我夢中で営業してみたところ、隣接異業種であるロボット部品の受注にこぎつけました。この仕事の実務に当たったのが、前述の新卒採用した社員です。

2つ目の事業の柱へ育ったこの仕事が、2012年に経営革新計画に承認され、15年には、ものづくり補助金による設備投資に繋がります。こういう考え方ができたのも、経営指針のお陰です。

東日本大震災後の景気の2番底で、運転資金に苦労した経験から、来年以降、必ず金融の引き締めがあるので、次年度の資金繰りに対応できる準備が必要と考えます。

よって、ポストコロナに向けて、経営戦略の見直しを考えていかねばなりません。企業規模・業種・年齢に関係なく討論しながら学ぶのが同友会です。自ら気づき、本質を理解し、実践してこそ、本物になると思います。