活動報告

第48回青年経営者全国交流会-志高く集いし仲間と未来に挑む(9月17日・18日)

【第14分科会】業種を超え、地域を超え、連携で一歩前へ
~飲食業関連研究会:自助・互助・共助・公助

9月17日・18日 オンライン開催

パネリスト
坂野 豊和氏 (株)まるは
古田 健一氏 (株)rakuen
加藤 寛之氏 (株)イートクリエイト

コーディネーター
加藤 三基男氏  サン食品(株)

左から、コーディネーターの加藤(三)氏、パネリストの坂野氏、古田氏、加藤(寛)氏

愛知で設営する予定だった第48回青年経営者全国交流会(中同協主催)が9月17日・18日にオンラインにて行われ、45同友会および中同協から約1500名、うち愛知同友会からは246名が参加しました。ここでは愛知同友会が担当した2つの分科会を、2回に分けて掲載します。今号では第14分科会のパネル討論、次号で第9分科会の概要を紹介します。

コロナ禍による影響

すぐに経営を直撃

【坂野】常滑市に本社と本店を構え、まるは食堂と旅館・温泉業を営んでいます。まるは食堂は、名古屋エリアに4店舗、中部国際空港セントレアに2店舗、南知多町に2店舗を展開しています。昨年11月にはグループ会社を設立し高級旅館を開業、太陽光発電事業も行っています。

4月の売上げは、昨年対比で多くの店舗が大幅に悪化しました。

【古田】飲食店1店舗、大学の学食、キッチンカー、イベント企画、飲食店の立ち上げコンサルタントなど、飲食関連業務1本でやってきました。

コロナ禍により大学は休校、再開後も学食は12月まで閉鎖が決まり、キッチンカーで参加予定のイベントはすべて中止。コンサルタント業も動きません。今は飲食店のみでの売上げです。

【加藤(寛)】愛知県内に飲食店を3店舗、岐阜県に1店舗、法人向けのステーキ弁当店1店舗、高齢者向けの配食店1店舗を経営しています。

4月と5月の売上げは落ち込み、休業が続いたことで、社内は次第に暗い雰囲気になっていきました。今後の希望をどう示せばよいのか悩んでいた時に飲食業関連研究会が発足、参加を決めました。

1本の電話から研究会が発足

【古田】4月に愛知県独自の緊急事態宣言が発令されてから、売上げは一気に落ち込みました。

経営に行き詰まり、大先輩の加藤三基男さんに電話で現状を伝えました。すると翌日、副代表理事の吉田幸隆さんからお電話をいただき、あっという間に飲食業関連研究会が立ち上がり、相談をした私が一番驚きました。

【坂野】加藤三基男さんから研究会の代表就任のお話をいただき、ありがたい気持ち半分、引き受けている場合じゃないという気持ちが半分でした。ただ、飲食店に関わりのない製造業の加藤(三)さんが「仲間を1人も減らしたくない、1社も潰したくない」と語るのを聞き、自分の会社しか眼中になかった己を恥じ、代表を拝命しました。

その後、飲食業の会員の多くが想像以上に苦しんでいると知り、コロナ禍を一緒に生き残ろうと強く思うようになりました。

研究会会長を引き受けた心中を語る坂野氏(右)

売り場をなくした会員企業のために

【坂野】飲食業の会員から「商品を提供したくても場所がない」という声が上がってきました。偶然に私が東京で見かけた、車に乗ったまま買い物をする「CARマルシェ」を提案すると、その2週間後に会員飲食業のお弁当を販売するCARマルシェの開催が実現しました。その後3週間にわたり、土日に県内各所で開催し続けました。そのスピードと一体感には、感謝しかありません。

【加藤(寛)】当時、緊急事態宣言が発令され、自粛ムードは真っ只中、店を開いても売上げは最低額を更新するばかり。弁当も売れず、在庫を抱えており、CARマルシェへの出店を決めました。

売れるかどうかはわかりませんが、待っているだけでは何も変わりません。ふさぎこんでいた店長も、100個を超えるステーキ弁当を仕込み、来場者からの「ありがとう」のことばに、元気をもらい前向きになりました。

【古田】飲食店は商品開発にも集客にも悪戦苦闘しています。しかし、どんなに良いものを作っても、良いサービスを提供しても、お客様に入っていただけなければ始まりません。

研究会では、10月から始まる国の「Go To Eatキャンペーン事業」を活用し、「そうだ! 同友会会員のお店に行こう!」の取り組みが始まりました。非常にありがたく思っています。

この取り組みは、登録する店側のコロナ対策が万全であることが前提で、飲食業の今後の足掛かりになると期待しています。

アフターコロナに向けて

今を生き抜く

【古田】飲食店以外の大学の学食やキッチンカー等は、「箱」を構えなくてもできる今後の可能性を秘めた戦略でした。しかし、予期せぬコロナ禍によって、すべてが止まってしまいました。

右腕だった店長とは毎日のように話し合いましたが、残念ながら退職することになりました。店長に先行きの不安を持たせたことは、コロナ禍だからではなく、私の責任だと思っています。そこでもう一度、独立当初の初心に返り、私1人で会社を運営しています。

アフターコロナに向けてどうするか。一言で言い表せば「冬眠」することにしました。また今を生き抜くために、各種補助金の獲得、家賃交渉、徹底した経費の節減を行ってきました。この選択が正しいかどうかはわかりません。しかし、現状を耐えられなければ、その先はありません。

ビジョンの前倒し、計画の見直し

【加藤(寛)】売上げの7割を占めていた外食部門が大打撃を受けました。その対策を手術に例えれば、(1)止血策→不採算かつ復活の見込みの低い店舗の精算、(2)輸血策→助成金をフル活用し資金を確保、(3)打開策→デリバリー市場展開のビジョンを2年前倒すことと外食出店計画の見直しなどです。

しかし、ビジョンを前倒しすることや計画の見直しは、厨房を担当するキッチンリーダーにとって納得できるものではありませんでした。彼は、おいしい食事を目の前でお客様に提供し、「ありがとう」と言ってもらえる働き方を誇りとしていたのです。

店舗を撤退する、方針や計画を転換する、社員に働き方を変えてもらう。こうした選択が正しいのかどうか、たいへん悩みました。大きな変化を伴うからです。しかし、経営者がぶれてはいけないと覚悟を決め、「乗り越えた先の景色を目指そう」と伝え続け、最後には社員の共感を得ることができました。

社員と向き合った日々を語る古田氏(左)と加藤(寛)氏

スピーディな指針の見直し

【坂野】7月から47期に入りました。売上げは100%には戻りません。悪ければ5割、基準は7~8割、良くても8~9割と3つの方向性を考え、7~8割で指針を作成しました。

方針は「自助、互助、共助、公助」を柱とし、決算の目標には、「黒字化」「雇用を守る」に加え、「1店舗も1グループも潰さない」と掲げました。

2025年ビジョンの1年目である今期は、「まるはドライブイン豊丘店」を開業します。「共助」の取り組みとして、店の半分には地元の苦しんでいる企業に入ってもらいます。研究会での気づきを指針に反映させました。

【文責:事務局 岩附】

【座長まとめ 】 同友会のインフラは人にあり

吉田 幸隆氏  エバー(株)

吉田 幸隆氏

「対策会議」「CARマルシェ」「そうだ! 同友会会員のお店に行こう!」など、阿吽の呼吸でスピード感を持ってできたのは、飲食業関連研究会メンバーの心が通じ合っていたからです。

同友会の最大のインフラは、会員です。そして、それを生かすも生かさぬも私たち次第です。コロナ禍において求められるのは、会員同士が信頼し、信頼される関係を築くことにあります。

先が見えない中、何かできるはずだ、何かしなければならない。そうした思いでそれぞれが自社の存続をかけ、エネルギーをぶつけ合い、対策会議を続けてきました。これが一番大切な「自助」の精神です。

そして、どの業種も1社だけでは成り立ちません。永続企業となるためにも、競争の中にも共存する。これが「互助」「共助」の精神です。

また、緊急融資など行政の公的支援を積極的に活用する「公助」を念頭に置くことも必要です。

アフターコロナでは、以前と同じ風景、条件は戻ってきません。それを踏まえてビジョン、方針、戦略を見直すことは、経営者の責任です。共にこの難局を乗り越えていきましょう。