活動報告

第48回青年経営者全国交流会-志高く集いし仲間と未来に挑む(9月17日~18日 オンライン開催)

【第9分科会】Change The Mind
~先見性を持った真の経営者へ

平澤 本気氏 (株)A.モンライン

自社の一室で報告を行う平澤氏

9月17日・18日にオンラインで行われた第48回青年経営者全国交流会(中同協主催・約1500名参加)で愛知同友会が担当した分科会について、2号にわたり掲載しています。今号では第9分科会、A.モンラインの平澤本気氏の報告を紹介します。

社員とお客様を守りたい

私は大学3年生だった2008年に、両親が営んでいた運送会社に入社しました。しかし、その年に6名もの社員が協力業者に引き抜かれ、家族3人だけになってしまいました。両親に悲しい思いをさせたくないと思い、いなくなった6人分の仕事をこなすため、夜通し働くなど必死でした。そんな無茶な働き方を社員にも要求してしまい、せっかく入社しても辞めてしまう状態が続きました。

ある日、社員が高速道路で事故を起こし、父親に相談すると、「お前が入れた社員だから勝手にやれ」と突き放されました。この出来事で父親への不信感が芽生え、嫌悪感が募っていきました。その頃、社員を引き抜いた業者と裁判をすることになり、それを機に、自身と社員、お客様を守るために独立を決意し、12年に創業しました。

創業と同時に同友会に入会

経営理念があれば良い会社になれる

経営について何も知らないまま勢いだけで独立を決めたため、勉強できる会を探していたところ同友会と出会いました。入会すると、先輩から「経営理念は大切だから必ず作らないとだめだよ」と言われて参加した会合では、生い立ちを振り返りながら自分自身の想いや覚悟を見つめ直しました。そして経営姿勢を確立し、経営理念を成文化しました。

さっそく経営理念を社員に発表し、毎日唱和してもらいましたが、3カ月後に数名の社員が辞めてしまいます。当時は気に入らないことが起これば不機嫌さをあらわにしていた私が、いきなり「一緒に良い会社にしていこう」と言い出したところで社員には全く伝わらず、ただの自己満足だったことに気づかされました。自社のステージも理解せず、「経営理念を作って発表すれば良い会社になれる」と勘違いをしていたのです。

先輩からの厳しい一言で

15年には、地元の運送会社にM&Aの話を持ちかけられ、「かっこいい」という理由だけで了承します。しかし、社員が退職した時期とも重なっており、弱気になった私は初めて悩みを社員(後の専務取締役)に相談しました。

すると、「私は甘い覚悟でこの会社に入ったわけではないです。どこまでもついていきます」と言ってくれました。それを聞き、絶対にこの社員を幸せにしたいという決意とともに、M&Aへのチャレンジを決めました。周りからは「M&Aなんてすごいね」と言われて少し浮かれていましたが、実際はM&Aの相手会社の社員から「本当にやる気があるのか」と厳しい言葉が投げかけられていました。

そんな時、同友会の先輩から「経営者をやめろ」という厳しい一言をもらいます。なぜなら、当時の私は売上げや経費を把握していなかったからです。経営者としての甘さを痛感し、それから1年近く先輩と毎日連絡を取り合い、経営者の仕事の基礎を叩き込んでもらいました。

毎月の売上げと経費を把握し、ガソリンの仕入れ先を変えたり保険を切り替えたりしていくうちに、年600万円以上の経費を削減することができました。経営者の意思決定だけで利益が変わることをまざまざと体感し、これが経営者の仕事だと気づき、少しずつプレイヤーからの脱却を図っていきました。

経営者の仕事に気づいたプレイヤー脱却期

良い経営者になる覚悟

経費を見ていくうちに、重大な問題にも気づきました。当時、会社の経理はすべて母親に任せていましたが、別会社である親の会社に現金が流れていたのです。両親と何度も話し合いの場を持ちましたが、通帳を返してもらえませんでした。

途方に暮れていると、先輩会員から「親との個人的な問題は、社員からしたら関係のないこと。経営者としてしっかり判断しないといけない」と言われました。この言葉に決意が固まり、すぐさま銀行口座を凍結させました。しかし、凍結前にお金が抜かれており、自分の手元に通帳が届いた時にはほとんど残っていませんでした。この経験から、「良い経営者」になる覚悟を強く持ちました。

17年には、例会でビジョンを絵にして可視化することを学びました。さっそく社員の夢を聞き、自分の夢と合わせて絵を完成させ、発表しました。ビジョンを作成してから社員と面談していると、「社長は大手になりたいのですか? そんな社長だけの夢にはついていけません」と言われてしまったのです。

ビジョンを発表した時は、「社員数百名、売上げ10億円にしたい」という数字の部分しか伝えず、その目的までは伝えていませんでした。

自社の2030ビジョンを視覚化

みんなで経営指針を作る良さ

15年から17年は1人で経営指針を作成し、机の中にしまっていました。転機になったのは、同友会で地区の副会長を務めたことです。それまでの「経営指針が大切だよ」と言われる立場から言う立場に変わったことで、自身の実践が問われると感じ、社員との経営指針作りに取りかかりました。

改めて振り返れば、1人で経営指針を作っていた時は、会社の成長は自分の采配次第であり、本当に少しずつしか成長できていませんでした。社員と一緒に作るようになり、指針通りに会社が良くなってくると、社員もその意義を実感します。今では自主的にルールを作り、ドライバーを指導し、会議を行うなど、着実に会社が変わってきました。

指針の本格的な実践が始まった成長期

未来への挑戦

17年に作成したビジョンは、期限を決めておらず、具体的にいつ、何をやるのかが不明確でした。しかし昨年、30年までに達成するという期限を設けたことで、いつまでに何をしなければならないのかが明確になりました。

24年には、他の業種と同様に残業を減らしていきたいと考えています。そのためには、運送業だけでは実現が難しく、19年から始めた板金塗装や車両整備の内製化、冷凍部門・コンテナ部門、倉庫業の強化の他、21年11月からは中古トラックの販売、リース部門を立ち上げていく予定です。様々なことに挑戦し、利益のしっかり出せる仕組みを構築していこうと考えています。

そのような企業になるためにも、人材育成に力を入れています。売上高5~10億円にするためには、それに見合う力量が求められます。しっかりと学んでそのステージに上がるために、外部研修に多くの予算を計上して取り組んでいます。

外部の方も招いて行った経営指針発表会

社員が輝くためのサポーターとして

変革と挑戦のサイクルは、(1)情報収集、体感、(2)戦略・戦術立案、(3)行動、実践です。私は「5億円の会社を目指す」と考えた時に、業界内で5億円規模の会社を訪問し、今後どのようなことをしなければならないのか、どんな問題が起こってくるのかを社員と一緒に情報収集しました。社員と一緒に行くことで、目指す未来の姿を共有し、そこに近づくための戦略と戦術を考えるのです。そして行動、実践では、期限を明確にすることで、毎日のするべきことが自ずと決まります。これら3つを実践することで、経営者の先見力が磨かれていきます。

変革と挑戦のサイクル表

私が考える真の経営者とは、社員が輝くためのサポーターです。創業当時は自分が輝くために社員がいると思っていましたが、今は、社員が輝いてお客様や地域の方から信頼してもらえることが最大の喜びです。そんな環境をこれからもつくっていきたいと思っています。

今後も皆様と同友会で一緒に学び、日本と地域の皆さんを元気にしていきます。

【文責:事務局 服部】