活動報告

金融委員会「コロナ融資の出口戦略」12月8日

由里 宗之氏  大阪市立大学客員教授

昨年8月末に行われた「金融・資金繰りの実態把握調査」では、緊急支援融資により時間的猶予を得たものの、飲食・宿泊・イベントなど直撃を受けた業種に対しては十分な支援に至っていない状況が明らかとなりました。その結果について、大阪市立大学客員教授の由里宗之氏に解説と最新金融情勢や動向などをお話しいただきました。

問題の先送り小出し小手先政策は限界

今回の調査結果については、飲食・宿泊など営業キャッシュフローの落ち込み幅が大きい業種ほど融資も十分ではなく短期資金不足の割合が大きい等、その実情は日銀も把握しています。

コロナショックの急を要する事態に、実質無利子・無担保の「融資」という形態で何とか当面の手当てはつけましたが、元本返済猶予期限の概ね3年後に「膨大な債務返済の道筋」をどうつけるのか。これは金融庁や信用保証協会幹部や支援機関など、中央クラスで白熱した議論が行われていました。

直撃業種ほど十分な支援を得られていない

債務返済への道筋

例えば、「支払可能な毎月の返済額設定」を考えて何らかの条件付で30年等の超長期返済を容認する特別メニューの新設や法律改正があります。次には、債権買取機構など公的機関を設置し資本性資金に振り替え、事業再生プロの協力を得ながら事業変革や再構築を促す長い道のりでのハンズオン支援策などです。

最も優れた案は、同友会が提唱している「永久劣後ローン」でしょう。しかし「資本性でありながら口も手も出さない」ということを実現するには民法改正等のハードルもあるのではないかと思われます。最後には、既にある新型コロナ対策資本性劣後ローンにおいても、本業黒字の出世払い等、いつ返済を始めるのか、金利をどうするのか、一括返済期限が近づいた時の対応など、個社事業の実情に応じたきめ細かな約定書を交わすなどの対応が求められることが想定されます。

不都合な事態を想定しながら

感染症流行下の買い控えが流行鎮静後に反動需要として見込まれる自動車産業等とは異なり、いま打撃を受けているサービス産業では需要急増は見込まれません。失業率の増加など雇用の問題も深刻さを増し、個人消費の回復も厳しくなると思われます。もともと収益性が低い業態であり、支払いの猶予期間中に返済原資を稼ぐことは並大抵ではなく、ほとんど不可能と想定されます。

このまま3年後に不良債権化すれば償却負担が生じ、地域金融機関の経営を直撃する可能性も高いといえます。

「災害」として資本支援を

コロナ禍は、全産業ではなくピンポイントで直撃を受けた業種を区分し、「災害扱い」にすべきだと考えます。感染症の流行により経済活動を意図的に止めたことにより売上げが消失し、資本を棄損したというのが実態だからです。非常に小出しの支援策では如何ともしがたく、法律など諸課題の調整を超える高度な政治的判断と強いリーダーシップが求められます。

中小企業プレイヤーの数を減らして生産性を上げる成長戦略を描く等は、あまりに現実を知らない空論に過ぎません。コロナで業績アップしている企業や、ほとんど影響のない企業、間接的影響が大きいなど、斑模様というよりピンポイント爆撃の様相です。自社が良いからというのではなく良い企業がリードして底上げを図る連帯の力が必要といえます。

信用補完制度の仕組み(北海道信用保証協会HPより抜粋)

運命共同体として協議を

急場のコロナ対応(無利子・無担保融資)で保証協会「信用補完制度」は大きな爆弾を抱えた状態にありますが、それは中小企業、信用保証協会、日本政策金融公庫、地域金融機関、国、地方公共団体、地方議員などが、ある意味で運命共同体的に解決策を協議し得る同じ土俵があるということでもあります。

永久劣後ローンとか超長期の返済スキームなど、中央幹部クラスと膝をつき合わせた協議を根気よく継続していく必要があります。

同時に、中小企業は追加融資や選別に耐え得る企業努力と経営者のあり様、数字に強くなることはもちろんのこと、事業性を自ら説明し金融機関との関係性を深め、リレーションシップを構築していく必要があることは言うまでもありません。

新政権では「地銀再編」の発言もなされたため、地銀への強面姿勢はあるものの、信用金庫・信用組合など地域金融機関には異なる位置づけをして「温和で時間をかけた解決策を図ろう」という金融庁の姿勢が広報されています。最前線の情報収集をしながら全国の仲間の連帯もつくり、難局を乗り越えていくべきだと思います。