活動報告

東尾張支部例会「アフターコロナ、世界情勢からみる日本の経済情勢」(1月20日)

コロナ禍を経ての展望を探る

真田 幸光氏  愛知淑徳大学教授

真田幸光教授

社会を良くするために

愛知淑徳大学ビジネス学部教授の真田幸光氏を報告者にお迎えし、東尾張支部例会を参加者が全体で100名を超える中、開催しました。

真田教授は、新型コロナウイルス(以下、コロナ)によって価値観が変化していること、金融経済と実体経済が乖離する中で貧富の差がさらに拡大していることを指摘し、「社会を良くするために行動してほしい」と同友会に向けてのエールを頂きました。

2021年の展望

コロナの感染拡大によって世界経済は大きな影響を受けています。ウイルスの性質を考えると死亡率は低下する反面、感染力は強まることが予想されます。したがって、感染者数の増加に伴い死亡者数は今後も増加すると考えられるため、2021年は昨年以上に油断できない年となることが指摘されました。

コロナによる変化の中で真田教授がキーワードとして挙げたのが、「価値観の変化」と「消費行動の変化」です。ウェブ会議の際に目立つワイシャツを社内で考案したことで経営改善につなげた事例や、店舗の空き状況を確認できるソフトを活用し災害時の避難状況把握に役立ったという事例から、世の中の変化について社員と共にイメージすることで、企業のビジョンと将来を展望することの重要性が示されました。また、大変な状況であってもニーズがどのように変化するのか、経営環境が変化する中で自社はどうしたらよいのかを考え、ビジネスチャンスを見出す必要があります。

金融経済と実体経済

OECD(経済協力開発機構)による2021年の経済成長率見通しでは、コロナが早期に収束したとしても日本の経済成長率は2.3%に留まると予測されています。その理由として、消費財に対する需要が低いこと、インフラの整備率が高い(インフラへの投資先が限定的である)こと、少子高齢化が挙げられました。つまり日本には経済力はあるが内需が限られており、コロナの収束が遅れれば外需に頼ることも困難であると見なされているのです。

実体経済の状況は悪化しているのに対し株価は上昇を続けており、経済状況とのずれが拡大しています。これはお金の供給量は増加しているのに、実体経済が痛んでいる影響でモノ・サービスの量が減少しているため、余ったお金が金融経済に流入していることが原因です。また金融経済も悪化すればすべての経済が悪化するため、投資先として不動産や国債などが選ばれていることも一因となっています。そして資産を持っている人は投資によって利益を得られますが、資産を持たざる人(コロナによる影響が大きい)は恩恵を受けられないため、格差はさらに拡大していることが指摘されました。

注視すべき米中の動向

米国では大統領選挙の結果、トランプ氏からバイデン氏へリーダーが交代しました。これによって、国際協調・人権問題・環境問題が新政権のキーワードとなりますが、バイデン氏の背景に注目する必要があると真田教授はいいます。米国はパリ協定に復帰することが予想されますが、環境問題はビジネスの対象になるため国際ルールづくりに力を入れてくると考えられます。これはバイデン氏の背景に金融機関の存在があるためです。またアンフェアを嫌う米国民の性質を考慮すると、中国との対話が早急に進むことは難しいのではないかとも話しました。

米国がコロナ対応に力を注がざるをえない中で、中国の国際進出はさらに進むと予想されます。ロシアやインドなど中国に対抗しうる国はそれぞれ問題を抱えており、中国への牽制ができないからです。そのような状況でデジタル人民元の普及を進め、金融機関を経由せずとも決済ができる体制を目指しています。人民元を基軸とした電子マネーを拡大することで、現在の基軸通貨であるドルに対抗しようとしているからです。

これまでは欧米主導でのビジネスルールが主となっていましたが、中国の影響力が強まれば、世界は2つのルールによる影響を受けます。米国の回復が遅れるほど中国の影響力は強まるため、今後の動向や取引先の状況を注視する必要があるといいます。

同友会の皆さんへ

最後に、「自分が強いと思える人は、優しくなってもらいたい」「自分が弱いと思う人は、自力でやってみてほしい」と、社会を良くするためにやるべきことに取り組む大切さが強調されました。そして、「同友会は異業種であっても同友会理念という価値観を共有できるので、多くの知恵と会員同士の協力で難局を乗り切ってほしい」と報告を締めくくりました。

新年最初の例会として、今後を展望するために何をするべきかを考える学習の機会となりました。