活動報告

協働共生委員会「わが社のSDGs(持続可能な開発目標)」(4月12日)

真の人間尊重経営を目指す

荒川 亨氏  (株)石川製作所

4月の協働共生委員会はオンラインで行われ、石川製作所の荒川亨氏に「わが社のSDGs(持続可能な開発目標)~真の人間尊重経営を目指す」と題して報告いただきました。その概要をご紹介します。

石川製作所 SDGs宣言

同友会の学びをきっかけに

自動車の特殊線ばね製造を行う当社がSDGsに取り組むことになった元々のきっかけは、同友会での学びです。同友会で経営指針の作成に取り組んでいくうちに、科学的に数字の動きをつかむ重要性を理解し、毎年の同友会の総会議案で出される「情勢と展望」から社会や経済の動きを読み、指針に生かしています。

2018年の情勢と展望に「SDGs」や「EV化」の文言が登場したのが、取り掛かるきっかけの1つでした。

自動車産業の大変革期

自動車産業が100年に一度ともいわれるような大変革期に入ってきたことも、大きな要因です。これからは自動車1本ではなく新しい事業を始める決心をし、自動車を引き続き主柱にしつつ、新規事業の計画を立て、新工場建設などを行っています。

SDGsに照らして

なかなか実践できてこなかったのが経営理念です。理念には同友会での経営指針づくりで学んだ「社会性」「人間性」「科学性」を盛り込んでいます。このうち「社会性」は「より高い品質」で表彰を受けるなど、ある程度は達成できています。

しかし、「人間性」「科学性」については、ほとんど掛け声だけになっていました。文言だけは格好良くても、実践が伴っていませんでした。それが、SDGsによってもう一度、全体を整理して書くことができたのです。

SDGsには17の目標と169のターゲットが書かれています。これらの内容と、自社がやっていること、やれることを列挙して、何に取り組んでいくべきかを整理しました。

そして、メインバンクの支店長が来た時に「当行はSDGsに取り組む企業を支援します」と言われ、費用対効果が大きいと考え、SDGsと当社の関連を整理したものと当社の経営理念を渡したところ、「SDGs宣言」にまとめてくれました。

達成に向けた取り組み

(1)事業継続と環境への配慮(社会性)

BCP(事業継続計画)は業界のチェックが入る項目ですので、既に実施中です。事業継続強化計画については、EV部品事業と息子への事業承継について盛り込んでいます。

コンプライアンス体制の構築については、ISO14001に準じた環境保全活動の実施です。主には電力消費の元でもある残業を削減する取り組みで、機械にセンサーを付けるなどして夜間に無人で稼働できるようにしました。その結果、2021年はこれまで残業ゼロ、電気代もかなり削減できて、その分CO削減につながっています。

(2)人づくり(人間性)

OJTの見直しと研修体制整備については、部署ごとに取得すべきスキルと社員名をマトリクスにして視覚化し、OJTとOff-JTを組み合わせて行う取り組みで、まだ始めたばかりです。

人事評価制度の導入はまだですが、息子にも入ってもらって作ろうとしています。

生産性向上に向けた意見収集ができる仕組みの構築については、セルフ・キャリアドックを取り入れました。各社員の仕事面・生活面におけるやっていること・やりたいこと・悩みなどを社員各自が棚卸し、主体的にやりたいことや、やりがいを掘り起こすように仕掛ける方法で、社内にキャリア相談室を設置して取り組み始めています。

なお、当社における「キャリア」は「みんなが幸せな生活ができるように一人ひとり学ぶこと」と定義づけています。ハラスメントについても、ハラスメント相談室を設置して対応を始めています。

(3)EV向け部品製造と品質保証(科学性)

自動車関連業界は「CASE」と呼ばれる大きな変革期で、欧米や中国を中心に動きがさらに加速しています。それに対応するためにも新たにISO9001:2015を取得し、それに準じた品質向上を図っていきます。

そして試作機の導入や新工場の建設など積極的な設備投資を行うとともに、当社なりの整形製造に関する新技術を確立していきます。

これらはすべて人につながりますし、EV向け部品で行うことは地球環境改善の活動、COを排出した分だけ削減し、プラスマイナスゼロにするカーボンニュートラルの取り組みでもあります。

(4)労働環境整備とダイバーシティ経営

当社には25名の社員がいます。うち15名が女性、10名が男性と、女性の比率が高い会社です。

これまで私にはずっと「女性は機械工には向かない」という偏見がありました。しかし息子の「そんなことはない。試してみなければ分からない」という助言を受け、昨年初めて機械工として女性を採用してみたところ、良い仕事をしてくれるのです。お陰で偏見が解消されました。

賃金体系も男女関係なく、スキルアップに応じて段階的に昇給する体系です。ダイバーシティ経営、多様な人材の雇用にも挑戦しています。

当社は精勤手当を出していますが、1回でも遅刻があると手当が付きません。特に子育て中の女性の場合、子どもの病気や学校行事などで遅刻せざるを得ない場合があって、何とか手当を付けられないかという相談がありました。そこで検討した結果、有給休暇を一時間単位で取れるようにしました。

これなら1日8時間の有休を一時間ずつ8回取ることもできます。子どものことだけでなく、介護や病気など、男女関係なく様々な事情で出社が少し遅くなる場合はあり、それに対応できる制度だと思います。このような制度の見直しも、多様な人材が働ける環境整備、ダイバーシティ経営の一環だと考えています。

宣言が重要

SDGsには17の目標がありますが、これらをすべて網羅しなくてもよく、自社での取り組みがSDGsのどの目標に当たるのか、宣言によって明文化することが重要といえます。

頭の中で考えているだけでは忘れてしまい、実践につながりません。しかし明文化して見えるところに掲示してあれば、「やらなければ」と意識できます。また、SDGsのマークを仕事の服に付けてあれば、人に「それは何ですか」と聞かれます。

そうなれば確実に取り組まざるを得なくなり、会社は前に進んでいきます。このような理由で、私はSDGs宣言には絶対に取り組んだ方が良いと思います。

【文責 事務局・政廣】