活動報告

2021年度 夏の賞与アンケート

「増加」傾向に向かうもコロナ前の水準には戻らず

〈グラフ1〉夏賞与の支給×業種

支給意思は回復基調に

愛知同友会では2016年より賞与調査を再開し、中小企業の動向の経年変化を分析しています。今回の調査で夏賞与を「支給する(支給した)」と回答した企業は、前回から4.3ポイント増加して75.7%となりました(グラフ1参照)。

業種別で見ると、建設業が昨年比2.5ポイント増の75.8%、製造業が同8.1ポイント増の84.4%、流通・商業が同8.3ポイント増の74.8%、サービス業は昨年から横ばいで68.9%という結果になりました。昨年は新型コロナが猛威を振るい、全業種で「支給する(支給した)」と回答する企業が減少したことからすれば、今年は回復基調にあるといえます。

一方で、一昨年(2019年)と比較すると、「支給する(支給した)」と回答した企業は全体で2.2ポイント減(77.9%→75.7%)、建設業は3.0ポイント減(78.8%→75.8%)、製造業では3.8ポイント減(88.2%→84.4%)、流通・商業は3.1ポイント減(77.9%→74.8%)、サービス業では1.1ポイント減(70%→68.9%)と、全業種で2019年値を下回る結果となりました。総じて、中小企業の業況はコロナ前の水準に戻っていないと推察されます。

建設業を除いて支給額が増加

支給額を見ると、建設業が昨年比16,209円減少したのに対し、製造業では同13,058円増、流通・商業が同38,541円増、サービス業では同16,307円増となり、全体で同14,404円の増加となりました。全体的に支給額が増加したことが分かります(グラフ2参照)。

〈グラフ2〉夏賞与支給額の変化

またコロナ前(2019年夏)と比べると、建設業は18,570円減、製造業は同480円増、流通・商業は同17,201円増、サービス業は同10,072円増、全体では同3,473円増となりました。この統計は支給額を記入した企業のみの平均支給額となるため、数値的には上振れが予想されますが、中小企業の経営の現場では、「コロナ前の水準まで支給しよう」という意思が見える結果といえます。

〈グラフ3〉昨年夏の金額と比較×業種

これは「昨年夏の金額と比較」と業種でクロス分析した結果からも、関連性が見えてきます(グラフ3参照)。「昨年並み」が全体的にボリュームゾーンではありますが、製造業では「昨年並み」が38.4%(昨年比6.0ポイント増)、「増加した」が39.1%(同11.2ポイント増)と「増加した」がやや上回りました。流通・商業、サービス業でも「増加した」割合がともに増加する結果となり、全体では「昨年並み」が46.3%(同2.6ポイント増)、「増加した」が35.3%(同17.2ポイント増)でした。

一方で、建設業は「増加した」よりも「減少した」と答える企業がやや多いこと、製造業で「減少した」と回答した企業の割合が流通・商業やサービス業と比べると高い割合になっていることは、注視する必要があります。

頑張る社員へ少しでも報いたい

記述回答では、「苦しい」(建設業)、「きつい」(製造業)、「リーマンショック以上の赤字なのに、出さなければいけない現状はつらい」(製造業)という悲痛な声が聞こえてきました。また、「賞与がもらえるのを当たり前にしたくないが、そうなりつつあるのが困る」(サービス業)と、賞与の意味をしっかりと理解してほしいという経営者の声もあります。

一方で、コロナ禍で注目を浴びたエッセンシャルワーカーを抱える企業の経営者からは、「ワクチン接種も進み、先の見通しも見えてきたので、エッセンシャルワーカーとして頑張ってくれている社員へ少しでも金額を上げた支払いを行いたい」(流通・商業)といった、社員への労いの気持ちも書かれていました。

コロナ禍という厳しい状況のなかで働く社員へ、「業績が悪化しても、生活給として月給の1カ月分支払ってあげたい」(製造業)というように、少しでも支給したい、社員のモチベーションの向上につなげたいという経営者が多数いました。

ワクチン接種が始まっても、先行き不透明感は増すばかりです。木材などの原材料の不足、仕入れ価格の高騰、最低賃金の上昇も利益をじわりじわりと圧迫しています。社員に長く働いてもらうため、また成長を促して「働きたいと思える企業」を目指して、経営者の努力は続いていきます。

【平均賞与支給額】
全体 326,061円(前年比 14,404円)
建設業 310,770円(前年比 ▲16,209円)
製造業 311,928円(前年比 13,058円)
流通・商業 352,051円(前年比 38,541円)
サービス業 332,463円(前年比 16,307円)

グラフ4参照

〈グラフ4〉夏賞与の支給額×業種
【調査要項】
調査日 6月17日~27日
回答企業 723社(建設116社、製造188社、流通・商業156社、サービス263社)
平均正社員数 20名