活動報告

労務労働委員会&経営指針推進本部主催 全会員学習会(7月6日)

「経営理念」とは何か?「自己姿勢」を考える
~試練や全てを糧に「まず経営者が変わる」

籔 修弥氏
(株)ミル総本社・相談役
〈京都同友会元代表理事、現相談役〉

「自己姿勢と経営姿勢」について語る籔相談役

愛知同友会では、経営指針の入門編・作成編・道場編・実践編、そして人を生かす経営総合学習会、また労務労働委員会をはじめ共育委員会や共同求人委員会など、企業づくりの多様な学びの場が旺盛に展開されています。

この10数年の企業づくり運動推進の成果と到達点から、次のステージへの進化発展をめざして、今回は「実践や経営の本質」を広く全会員で考える学習会を開催しました。以下に、京都同友会相談役の籔修弥氏による報告の詳細を紹介します。

コロナ禍でも基本スタンスは2つ

1、変えてはいけないもの「経営理念の確立」5割、「個性が育つ環境づくり」3割、
2、変えなければならないもの「全社一丸のポストコロナ戦略と戦術」2割です。

未来社会や人々の暮らしで困っていることや求められることに役立つ自社の強みを、ニッチ分野で先駆的に集中投下する「明確なビジョン」を立て、「全社員と共通認識」にすることが存続条件です。

「自己姿勢」と「経営姿勢」の違い

当社は、私が自宅4畳半から起業し10年で社員15名になった途端、突如「労働組合」ができ、社員が次々と退職し、売上げは激減という事態に陥りました。人材育成ができず、信頼される「人間性」がなかったこと、社員や物事をわかっていなかった自分自身の本当の姿を思い知りました。

経営理念や経営指針を成文化しても、会社が伸び悩み、実践できないという課題が多くあります。それは、経営者が自分自身をわかっておらず、さも社員や経営が見えているかのように、勘違いしたまま経営を続けているからだと思います。

経営者の役割の前に、同じ「1人の人間として」共感される自身の生き方や価値観、あり方を深く考えることが実は大切なのです。

物の本末、事の終始を知る

経営者はどうしても日々の諸事や難題に追われ「木を見て森を見ず」など末梢的な世事に思考が支配されるのが常で、本来の自分自身さえ見失っていることがほとんどだと思います。

目に見えている仕事や日常は表層的な事象といえます。見えていない潜在意識、「何のために生まれ、どう生きていきたいのか」「自分の行き先はどこで、幸せとは何か」など、価値観や人生観、さらに思いや志こそが根源的で本質的な土壌です。思いや志が行動になり、習慣が性格と運命を変えていくからです。

社員や物事が見えていない

人は生きてきた環境や時代や様々な経験など、外からの影響を無意識に自分の中に取り込んでいます。

私自身を見つめ直すと、無機質なコンクリートや瓦礫の山で傷ついて荒れた固定観念により、物事を見る眼鏡が歪んでいました。社員や事実も正確に見えていませんでした。そこから根源である自分の見方・あり方を学び直していくことが出発点となったのです。多くの不純物により歪んだ価値観や行動を、本来の素直で正しい見方から学習し直して、新たな自分として本質的に生まれ変わった「自己姿勢」を確立しました。

試練は人生の好機

自分を学び直すことで、災難や苦難もすべてに意味があること、すべての事象を今後への肥しと理解すると、自分の生まれた役割や使命に気づき、熱意に変わります。生かされてきたことへの感謝、他生・自生。そうした学びの過程から、すべての一人ひとりには役割と使命があり、命の尊厳性、かけがえのなさ、他者や人々の営みを真実に見ることができるのです。

その目で経営や人生や社会を考え、新しく肚に落ちた「経営理念」で会社と社員と地域社会を強く、しなやかで豊かにしていきましょう。