憲章精神に基づく経営環境づくり
~賃金問題は労使の共通課題となった!
渡辺 俊三氏 名城大学名誉教授
城所 真男氏 重機商工(株)
生産性向上を妨げるもの
第3回「労使見解」を深める学習会はオンラインで行われ、賃金をテーマとして労使の共通課題に向き合う経営姿勢を学び合いました。
2017年、安倍内閣により発表された「働き方改革実行計画」以後、企業の生産性向上が本格的に語られ始めました。こうしたなか、最近は最低賃金を引き上げれば、中小企業の生産性は向上する、生産性の向上ができない企業は淘汰され、強い企業のみが生き残るという政策見解が耳目を集めています。
名城大学名誉教授の渡辺俊三氏は、最低賃金制度はそもそも、中小企業再編・淘汰のための生産性向上の手段ではなく、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができる保障の制度であることを指摘しました。
ただし、最低賃金引き上げは避けられない眼前の課題であり、企業独自の取り組みは必須です。同時に、中小企業の生産性向上を妨げている大企業中心の経済社会のあり方を議論していくことが必要です。その際、同友会がまとめた「中小企業憲章草案」「労使見解」「日本経済ビジョン」等の基本に立ち返る習慣を大切にしてほしいと述べられました。
人間らしい暮らしの実現を
次に、企業独自の取り組み事例を重機商工の城所真男氏が報告しました。
城所氏は労働組合が行った最低生計費調査から提示された最低賃金額1500円を自社の賃金体系に当てはめ、必要となる売上げと付加価値を基に経営計画を策定。また、経営指針を中小企業憲章草案や日本経済ビジョンと紐づけ、会社の方向性を示している実践を報告しました。
城所氏は、社員がマスコミ等で報道されるベースアップや賞与等の金額にギャップを感じた時、その根拠を説明できることが大切だと考えています。
グループ討論では、最低賃金の基となる「人間らしい暮らしの実現」についてそれぞれの考え方を交流し、暮らしを守る必要条件のみでなく、そこにプラスアルファをした十分条件を整える視点の重要性などが確認されました。