社員の豊かな生活を守る
外部環境変化による賃上げの実行
愛知同友会では、定点観測として3月に「賃金・労働動向アンケート」を行い、463社が回答しました。
新型コロナウイルス感染拡大から2年が経過し、2月に勃発したロシアのウクライナ侵攻による中小企業経営への影響など、先行き不透明感は増すばかりです。
その中で「賃上げする」と回答した企業は昨年より3.6ポイント増加し68%となったものの、コロナ前の水準(69.4%)にはやや届いていません。(グラフ1参照)
一方で、仕入れ価格の上昇が賃上げを躊躇させています。その結果は、賃上げの原資が「あまりない」と回答した企業が昨年から5.9ポイント増加したことからもうかがえます。(グラフ3参照)
また、賃上げはしないと回答した企業にその理由を聞くと、「仕入れ価格上昇」と回答した割合が昨年から27.3ポイント増の41.3%と大幅に増加し、業種別では建設業と製造業でこれを選ぶ割合が高い結果となりました。今後、流通・商業やサービス業への波及が懸念されます。
経営者からは「十分な報酬を出すにはどれだけ効率化や省人化を図ればよいか模索中」(製造業)という企業努力が出される一方、「お客様に価値を認めていただけるレベルの仕事をしない限り賃金を上げる余力は生まれないという現実を、社員に理解してもらう必要がある」(製造業)という声もあり、労使が一体となって賃上げできるよう取り組む必要性が高まってきているといえます。
法改正の対応は待ったなし
働き方改革関連の法律が、少しずつ中小企業にも適用され始めています。
有給休暇の取得率は昨年に引き続き「80%以上」と回答した企業が2割を超え、中小企業の労働環境整備が進んでいることが垣間見えます。また時間外労働についても、「0~9時間」と回答する企業が45.7%と5割に近づいており、生産性を上げる取り組みの成果が表れているのではないかと推測できます。
今年4月からは「パワーハラスメント防止措置」と「育児・介護休業法」の改正が中小企業にも適用され、前者の認知度(「知っている」「やや知っている」の合計)は48.3%と約半数だったのに対し、後者の認知度(同)は38.6%と4割を切る結果となりました。(グラフ4、5参照)また後者で「準備した」と回答した企業も14.7%と低水準であることから、企業への周知をしていく必要性が浮き彫りになりました。
法改正に対応した企業からは様々な取り組みが聞かれる一方で、「質問内容に答えただけでも、認識の甘さ・不十分さが分かった」(建設業)、「設問の後半部分について全くわからないので不安になった」(サービス業)といった声も寄せられました。また「法律改正が中小企業の現状に合っていない」(製造業)といった声もあり、世の中の流れと中小企業の実態をしっかりと把握し、声を上げていくことも求められます。
●期 間:3月10日~3月22日
●回答数:463社
(建設85社、製造129社、流通・商業94社、サービス155社)