活動報告

人を生かす経営推進部門&労務労働委員会【第3回オープン委員会】9月9日

経営姿勢と社員の働く環境整備
~「経営指針」と「就業規則」の総合実践

大竹 裕治氏  (株)オアシス

56名がオンライン(Zoom)にて参加

人を生かす経営推進部門では、人に関する委員会(※)の課題を会員企業が経営指針に位置づけ、各社で実践することを目標に、学習会を開催しています。

9月は労務労働委員会のオープン委員会に56名が参加。経営姿勢と社員の働く環境整備をテーマに、報告者の大竹裕治氏より「経営指針」と「就業規則」の総合実践を学びました。

(※労務労働、共同求人、共育、障害者自立応援、協働共生)

経営理念に込めた想い

当社は1997年にOAシステムサポートという社名で起業しました。創業時から考えていたことでしたが、13期目に頭文字をとった「オアシス」に社名変更しました。2019年に事業承継し、現在は代表取締役会長です。

経営理念は「情報と心のオアシス」です。「情報」というのはわが社の事業領域を指し、社員に対してはITに関連して身に付けるべき技術を意味しています。「心」というのは、わが社で働く社員の人間力を意味しています。技術と人間力の両方を高めていくことで、快適な労働環境を整えた職場がお客さんにも浸透し、増えていくことを望んでいます。

就業規則もない会社に身内を就職させたいか?

2007年の増強例会にてエステムの鋤柄修氏による報告で「家業から企業へ」というフレーズを聞き、「これだ」と思い、同友会に入会しました。当時は社員6名だったので、これから経営指針書や計画を持って経営をしていきたいという想いがありました。

そんな中で、まず手を付けたのが就業規則の作成でした。なぜ就業規則の方が先だったのかというと、先輩会員から「就業規則もないような会社に、君は自分の子供、もしくは親戚を就職させたいか」と問われたからでした。経営指針の作成はもちろん大切ですが、その前に経営者としての覚悟を決めて経営しているかが問われています。

私は、会社と同等に社員を守る就業規則が自社には必要だという結論に至りました。「社員数が10名に満たない会社は就業規則を作る必要はないよ」という会員もいましたが、すぐに10名を超えることも予測し、目指す企業像に近づくための一歩を踏み出しました。

1人では全てを理解することができなかったので、専門家である会員仲間の社労士に頼み、一緒に作成をしていきました。入会前に、創業当初から苦楽を共にしてきた右腕を病気で亡くしていたので、そういった意味でも安心して働ける職場をつくりたいと強く思った経緯があります。

「経営指針」と「就業規則」の総合実践を語る大竹氏

労働環境にも目を向け、後回しにしないこと

この社労士とは10数年の付き合いで、顧問契約を結んでいます。当時は、税理士とは顧問契約を結んでいましたが、社労士と結ぶことには少しためらいがありました。ただ、自分が不得意で知らない分野だったからこそ、世の中の動きに遅れをとらないように、3カ月に1度会社に来てもらうようにしました。1回あたり2時間かけて、時には労務上の問題も相談しながら、就業規則を最新の状態にバージョンアップしています。

入会2年目に就業規則を作成し、3年目に経営指針発表会をしています。これと同時期にリーマンショックを経験し、それまで順調だった会社が途端に赤字経営になってしまいましたが、リーマンショックもコロナ禍も乗り越えて今があります。同友会で学んできたことは、会社を継続する上で必要不可欠だったと改めて感じます。

2014年から正社員と共に企業変革支援プログラムに取り組む

企業変革支援プログラム・ステップ1の活用と、「労使見解」の実践

会員経営者にとってのバイブルとも呼ばれる「中小企業における労使関係の見解(労使見解)」ですが、最初に読んだ時は、「良いことが書いてあるけど、心にズシンと来るものはなかった」というのが本音です。10数年、同友会に所属している今だからこそ、1つひとつの言葉を心に留めることができています。

一方で、実践すればするほど、満足にできていない自分がもどかしく、自分自身の求める「人を生かす経営」のレベルも上がっているように感じます。「労使見解」を読んでいるだけでは具体的に社内に取り入れることができなかったので、「企業変革支援プログラム・ステップ1」に取り組むことにしました。

これは毎年9月に正社員と共に行っており、取り組み始めた2014年の時の平均点は5点満点中の1.6点でした。昨年の結果が平均2.4点でしたので、少しずつでも着実に成長していることが分かります。

現状を感覚で答えるだけではありますが、どの辺りが弱く、どの辺りが会社として充実してきているかが一目瞭然です。この結果も経営指針書の中に盛り込みながら、社員たちが今の会社をどのように評価しているかの参考にしています。

社員と目線を合わせて考えるわが社の10年後

本日のもう1つのテーマでもある働く環境整備については、「働く環境づくりの手引き」(2019年・中同協刊行)の「わが社の働く環境の10年ビジョン検討シート」への記入を、パートも含めた全社員を対象に5月に行っています。これは、他の人のシートも閲覧可能にしています。

このシートでは、最初に「10年後の私と家族の年齢構成」から聞く設問になっています。その次に、「10年後の私と家族の姿(家庭の風景)」「10年後、私はこんな働き方をしたい」、そしてようやく「私が願う10年後の会社の姿」という問いかけになっています。

このシートを知ったきっかけは、「経営指針実践編講座」でした。それ以前からも当社独自のビジョンアンケートを行っていましたが、社員にいくら会社の将来のことを聞いても具体的な姿を言ってくれませんでした。実は、当時のアンケートでは、いきなり1つ目の設問で「会社の将来をどうしたいか」と聞いていたのです。このシートを知って、聞く順番を間違えていたことに気づけました。まずは、生活者としての自分はどうありたいか、という答えやすい設問から聞くことで、会社で働く10年後の姿が「自分事」になってきます。

経営者は、「どんな会社にしたいか、どんな事業領域で仕事をしていきたいか」という話題を常に意識しています。一方で、社員と一緒に将来の会社の姿を考えていく時には、社員と目線を合わせていかなければいけないと反省しました。

同友会は人としてのあり方を学ぶ場

会社で起こる全ての事柄が「人を生かす経営」の中に

毎年、経営指針の作成と実践、そして見直しを行っています。一旦休止していた経営指針発表会も、この8年間は継続しています。雇用に関しても、6年前から共同求人委員会に参加しながら新卒採用を行っています。毎年継続して採用できているのも、経営指針書に採用方針を謳っているからです。

ただ、共育に関しては難しいと感じており、バランスよく社員と「共に育つ」ことを意識できているかというと、まだまだ温度差があります。みんなが同じように育っているとは言い切れません。なので、三位一体経営を目指してやっていますが、現状は「道半ば」です。

最後に、私が同友会で何を学んできたかというと、それは手法やテクニックではありませんでした。人としてのあり方を学んできたと感じています。会社で起こる全ての事柄が「人を生かす経営」の中にあって、これを実現することが経営者に課せられた課題だと感じています。

同友会の理念を実現することは、自社の経営理念を実現することと同じです。また、「3つの目的」も入会当初は「自社を良い会社にしたい」という一心で学ぼうとしていました。そのためには、「良い経営者にならなければいけない」と気づきます。そして自社だけが良くなればよいのではなく、働く社員、取引先など、「自社に関わる全ての人が良くならないといけない」と、身をもって感じられるようになります。

ここに辿り着くまでに、同友会で多くの仲間に、自分の足りない部分や知らなかったことを気づかせてもらいました。過去の私がそうであったように、本日の報告や討論を通じて、少しでも多くの皆さんが気づきを得られることを願います。

【文責:事務局 下脇】