活動報告

第21回あいち経営フォーラム「分科会紹介」

3年ぶりに対面で開催

第1分科会

想いをつなぐ事業承継
~届ける未来と受け取る未来

笹原 哲哉氏 (株)双和工業所(名古屋第4青同)

事業承継の経験を語る笹原氏

事業承継は会社に関わる全ての人が関係する大きな節目です。第1分科会では笹原哲哉氏に自身の経験と、事業承継に必要なものは何かを報告いただきました。

双和工業所は笹原氏の祖父が創業し、父が継ぎ、笹原氏で3代目です。最初の代替わりでは、実務も想いも何1つ受け継ぐことができずに祖父が急逝、父が承継しました。その結果、大きな判断ミスにより経営破綻の危機に陥ってしまいました。

そんな父を助けるため、笹原氏は覚悟を決めて入社。しかし父の社員に対する言動が目に付き、毎日口論していました。父との関係に悩む中で同友会に入会。様々な会合に参加するうち、考え方が経営者になっていなかったことに気づきました。父の気持ちがわかるようになり、同友会での学びを生かし関係を改善。そして、父と一緒に経営指針を作ることで円滑な事業承継につなげました。

本分科会を通し、渡し手と受け手でしっかりと向き合い互いの価値観を共有することが大切だと気づきました。

(株)ねじのスーパー大和  木村 亮

第2分科会

10年後に事業承継できる会社づくり
~渡す側の覚悟と実践

伊藤 信夫氏 (有)伊藤技研(碧南・高浜地区)

渡す側の覚悟を問う伊藤氏

伊藤信夫氏は、創業の想いや当時の苦労、自身への厳しさと先を見据えた指針と実践について話しました。「会社に行けば親子ではなく会長と社長であること。親族承継と他人承継の違いは血のつながりがあるかないかだけだ」という言葉が印象的でした。

また事業承継の背景には関わる従業員と取引先がいることも忘れてはならず、自分の考えや価値観を押し付けずに対話をすることが大切だと思いました。また変えられるものと変えられないものがあり、夢ではない現実のビジョンを持って取り組むことが必要だと学びました。

私は後継者の立場で3年後に事業承継を考えています。この分科会の実行委員として関わる中で、渡す側も同じように悩みを抱えていることに気付きました。

時代の大きな転換期を迎えつつある今、改めて「どうなりたいのか」「どうしていきたいのか」など、渡す側としてやらなければならないことは山積みです。いかに承継できる環境をつくるか、人によってそれぞれ状況は異なりますが、まずは引き継ぎたいと思えるような会社であることが重要だと学びました。

(株)光マーク  戸田 利加

第3分科会

金融語らずして、よい会社なし
~金融機関との不離一体を考える

近藤 正人氏 (株)アートフレンド(中区中央地区)

「良い会社づくりが信用を得る」と近藤氏

近藤正人氏は今後の金融機関について、融資は定量評価で判断され、定性評価は失われていくと予想でき、金融検査マニュアルの記載項目の数字を整えることが求められるといいます。また、金融機関は持続可能な経営を最重要とし、複合サービス業となっていくと述べ、そのサービスを使いこなせないと顧客として見てくれなくなる可能性もあることを指摘。よって、金融機関が持つ多くのサービスを利用し信頼と実績を重ね、信用創造の一翼を担うことができれば、積極的に協力してくれる関係づくりにつながると述べました。

信頼・信用・人とのつながり、高い志を持って事業を成長させる。志が高い仲間と挑戦していくと、近藤氏は報告をまとめました。

グループ討論では金融機関との関わり方、金融機関を含めた自社の経営環境の変化や今後の取り組みについて話し合い、金融機関との関わり方や自社を見つめ直す分科会となりました。

(株)REBODY  社本 拓哉

第4分科会

三位一体経営の実践
~21世紀型企業を目指して

小川 康則氏 (株)北斗(一宮地区)

人間尊重と三位一体経営を語る小川氏

第4分科会では「三位一体の経営(指針・採用・共育)」をテーマに、北斗の小川康則氏に報告いただきました。

経営理念は「幸せの循環」で、常に択ばれること、地域の人のためにつくすこと、信頼に値することの3つを循環させ、地域の生活者に生活の価値を提供していくことを目標に経営をしています。

三位一体の経営とは経営者、社員、会社が成長するサイクルをつくることであり、その実践の前に人間尊重の考え方を経営者自身が持つことが重要だと小川氏は言います。

指針作成では経営者だけでなく社員を巻き込んで納得するビジョンづくりを進めることや、経営戦略・方針・計画のつながりを意識すること。採用では会社が選ばれるのが当たり前という意識を持って会社内の環境を整えてから自社のビジョンを伝えて入社してもらい、社員を育てていくと、小川氏は語りました。

最後に、21世紀型企業づくりの要点は、自社で人を生かす組織経営を実践して付加価値を上げていくことだとまとめられました。

(株)パリッシュホームサービス  大江 晃正

第5分科会

波風が立った時が「人を生かす」意味を問い直す時
~障害者雇用が我が社にもたらしたもの

浅井 順一氏 (株)浅井製作所(岡崎地区)

人を生かす意味を問う浅井氏

報告者の浅井順一氏は、敷かれたレールの上ではなく、自ら切り拓く人生を歩みたいと会社を継ぎますが、社員たちは受け身で誇りがなく、全社一丸の組織を目指し同友会に入会しました。

初めての障害者雇用は同友会入会前で、お客様扱いをして失敗。同友会入会後に、人手不足から再び障害者を雇用し、適材適所を模索します。ある時、社内で組織を揺るがす事件が起き、社員が相次ぎ退社。経営理念が大きくぶれ始め、悩む浅井氏の目に留まったのは、障害のある社員たちの生き生きと働く姿でした。この時、「一人ひとりに必ず可能性があり、それを生かすのが経営者だ」と経営の原点に立ち返ることができたといいます。

報告から、能力や得意な面を発揮することでやりがいが生まれ、会社が成長することを再確認でき、討論では各社の多様性をいかす取り組みに学び、ぜひ自社で実践しようと思いました。

(株)にじ  神谷 亜希子

第6分科会

脱炭素&超少子高齢化社会に女性の力を生かす経営
~「しなやかに」「強かに」一歩前に

石塚 智子氏 (有)ソフィア企画(一宮西地区)

社風・組織変革を語る石塚氏

2030年に向かって、これから確実に訪れる深刻な人手不足には、とりわけ女性の活躍が重要になると言われています。また脱炭素におけるエネルギー転換は社会構造も変えます。このような大きな変化の中、報告者の石塚智子氏はどのような取り組みをしているのかを聞きました。

石塚氏は、突然迎えた父親との死別から会社を引き継ぎます。すぐに会社の現状把握と問題に目を向け、100%下請けから脱却し自立型企業を目指すことや、男性社会でつくられた労働環境や風土を変革すべく、女性でも働きやすいテレワークやチーム体制、DX化などの仕組みづくりを行い、生産性の向上、働きやすい社風に取り組んでいきました。

育児中を含めた女性の活躍を推進することで社内の意識改革がはかられ、短時間労働やチームで働くことのメリットを最大限活かす風土・組織づくりに成功します。また理念採用による人材育成も、共に働く社員の連帯感につながっているようでした。

(有)ジェイビーマーキュリー  足立 誕生

第7分科会

幸せを実現する働き方へ
~成り行き任せから、社員と共に未来を見据えた魅力ある働く環境づくり

鳥越 豊氏 (株)鳥越樹脂工業(一宮地区)

働く環境づくりを報告する鳥越氏

第7分科会では労働環境の整備をテーマとし、鳥越豊氏に報告いただきました。

情勢の変化で事業の変革を迫られる中、鳥越氏は社員と共有できる明確な事業の目的を完成、その成文化を行います。これによって社員との関わりに変化が生まれました。鳥越氏は全社員を対象に、毎朝1名1時間の個人面談を数カ月にわたって行い、一人ひとりとしっかり関わり想いに耳を傾け、全ての社員の豊かさと可能性と人間性を引き出すことに努めました。

人の幸せは10人10色です。経営指針を確立し、社員それぞれが主役として活躍できるステージを社員と共に創り出す取り組み、また経営者自らが魅力ある人格者を目指し、挑み続ける姿勢を報告いただきました。

誰のための働く環境づくりなのか、常に目を配り話を聞き、社員と共に考え、働き方を変えていく。労働環境は会社が社員に与えるものではなく、社員と共につくり上げていくものだと学びました。

(有)牧ヶ野業務店  牧ヶ野 卓也

第8分科会

新市場創造は1日にしてならず
~本業の研鑚が持続的成長につながる

磯田 拓也氏  シバセ工業(株)(岡山同友会)

ストローを手に語る磯田氏

磯田拓也氏は、大手モーターメーカーを退職し、妻の親戚である先代からストローの製造・販売会社であるシバセ工業を受け継ぎ3代目社長となりました。しかし、ストロー業界は既に衰退産業の上、大手菓子メーカー1社依存の下請け状態であることに危機感を覚え、早急に経営改革に乗り出します。

創業家の会社ではなく社員のための会社にすると決めた磯田氏は、親会社の仕事がいつなくなるかもわからない不安と焦りの中、永続企業になるためには自主独立しなければならないと10年間もがき苦しみ、その過程で岡山同友会へ入会。経営指針成文化研修会にて計画を見える化し、本業のストローに如何に付加価値をつけるか悩んだ末、顧客のニーズを拾い集め、「飲料用」に加え「工業用」ストローにも着手。また、社内の人財教育にも力を入れていた一環で、若手スタッフ中心に販促活動をしながら、今では3本目の柱「医療用」ストローも手掛けています。

ピンチを逆手にとって、コツコツと新しいことにチャレンジしてきた磯田氏の報告を聞き、会社のために経営者自らが実践することの重要性に改めて気付きました。

(株)リフトニーズ  水野 由紀夫

第9分科会

「地元に価値を提供する」とは?
~社会性を考え企業づくりの質を高めよう

出原 直朗氏  日研工業(株)(千種地区)

新規性に挑戦する出原氏

第9分科会では10年後、地域にどんな価値を提供するのか、あてにされ愛される会社とはどんな会社なのかを問い、日研工業の出原直朗氏にこれまでの取り組みやプロセスを報告いただきました。

2008年のリーマンショックを機に事業の流れが激変。過去の延長に未来があると信じていた出原氏に危機が迫ります。出原氏はフォーラムを機に参加した金融委員会で「地域密着型金融」を知り、金融機関は地域の取引先であることに気づきます。これがターニングポイントとなり、出原氏は「5%の新規性」を念頭に、2011年第2創業を行い、会社の立て直しに成功しました。

ここで出原氏は中小企業憲章の基本理念を読み返すことで俯瞰的に地域の目線から自社を観察したこと、また「こどもおしごと体験」への参加で、働く社員の家族に着眼できたことが第2のターニングポイントとなります。地域の雇用に目を向け、保育園を自ら開園。様々な苦労を経て、現在は地元で飲食店も経営するなど、地元で多角的に事業を展開しています。

5%の新規性を継続してチャレンジすることで、地元にあてにされ、愛される企業となった実践報告から学ぶ分科会でした。

(株)イシダ工芸  石田 真由

第10分科会

DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、何か
~ただの“デジタル化”ではないのである

青野 徹氏 (株)ハンズコーポレーション(西第2地区)

経営戦略を語る青野氏

青野徹氏はコロナ禍で追い込まれた自社を冷静に見つめ、SWOT分析・自社のビジネス相関図よりDX(デジタル・トランスフォーメーション)の目的を打ち出して、4つの柱で大きく会社を変えていきました。そして、その経験を基にスクール事業へと展開しています。

IoT・データ収集の無人化・データに裏打ちされた製品品質・ボトルネックの見える化の課題は、先ず自分の決意にありと気づかされました。翻って、ありたい姿を、社員を巻き込んで表明していない自分を認識しました。

グループ討論では、先を見据えて着々と進めている人、やらないといけないが年配者に気を遣い踏み出せない人と討論しながら、自分の頭の中がすっきりと整理されてゆくのがわかりました。それは、方針から学習そして合意形成、中期計画への反映と進んでいく姿でした。

DXは手段であり、取り組むことで自社の先をもっと見通せる、実践行動していないところに先は見えてこないと当分科会で強く感じ、DXへの第一歩を中期計画に打ち出すことを決意しました。

(株)野田スクリーン  堀尾 貞夫

第11分科会

「環境経営」が未来を切り拓く
~視座を高め、今こそ経営者の意識をシフト

平沼 辰雄氏 (株)リバイブ(海部・津島地区)

同友会理念の深い考えを語る平沼氏

いま世界中で叫ばれている気候危機やエネルギー問題は、単に経済的な話に留まるものではなく、「私たち人間を含む地球上の全生命の存続の課題である」と認識しなければなりません。しかし、この認識はあまり広がっておらず、地球環境は悪化の一途を辿っています。その広がらない要因の1つとして、私たちの経営意識が「コスト重視」の考え方だからだと平沼辰雄氏は語ります。

同友会理念の「自主・民主・連帯の精神」において、「自主」には「個人の尊厳性を尊重する」、「民主」には「生命の尊厳性を尊重する」、「連帯」には「人間の社会性を尊重する」という考えが根底にあり、すべての中小企業がこの同友会理念の根底にある深い考えをもとに企業経営に臨むことが肝要であると分かりました。

新たなビジネスチャンスは、これまで私たちが「見てこなかった部分」にあります。それには、私たち中小企業家が「見ること」「知ること」を強く意識し、地域社会や行政との関わりを深くすることが肝要であると学びました。

間野製作所  間野 忍

「第21回あいち経営フォーラム」ハイライト

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