環境変化をとらえ、未来へつなぐ企業づくり
~激変する情勢の中での中小企業経営
中村 智彦氏 神戸国際大学経済学部教授
認知バイアスの罠
名古屋第3支部合同例会は神戸国際大学経済学部の中村智彦教授を講師にお招きし、開催しました。
日本の経済環境が大きく変化している背景を理解し、正しく情勢を判断することが重要と、中村教授は話します。例えば2022年の出生者数は年間80万人を切る見通しで、それにより日本の人口は毎年70万人減少と、政令市が毎年なくなるほど人口減少は顕著です。これは国内市場の縮小や労働人口の減少を意味し、女性や外国人が活躍できる企業しか生き残っていけないことを意味しています。
またIT化をはじめ、日本のガラパゴス化の事例を説明した上で、そうした厳しい現状から目を背け、非合理的な判断を下す「認知バイアスの罠」にかかっていないか省みることが重要であると言及。どのような情報でも手に入る時代だからこそ真偽の判断が必須であり、自社の業界外へ飛び出し、信頼できる相手と関係を構築しておくことが重要といいます。「シギント、ヒューミント、オシント」との用語を用い、経営者の資質を問われました。
世界から取り残されつつある日本
2022年上半期は世界の自動車販売台数のうち、電気自動車(EV)は13%超。順調に拡大しており、中国・欧州では既に20%超。対して日本は未だ2%に留まり、これでは危機感を持ち難いと指摘します。
海外は国を挙げEV投資に励んでおり、市民権を得たSDGsとの謳い文句の裏で、国境炭素税制度により日本は海外へ輸出できなくなる可能性があること。中小企業もカーボンニュートラルへの投資と準備をしなければ、仕事自体ができなくなるとの国際潮流が示されました。
批判を受け止め一刻も早く「挑戦」を
そうした中で日本政府は対応が遅く、また「中小企業は生産性が低い」として淘汰の動きを強めていると、旅館産業を例に説明。それに対し、何が問題で批判を受けているのかを正確に捉え、甘んじて受け止め、DXの正しい理解と実践をはじめ、新たなことへの一刻も早い取り組み、「挑戦」が求められると、締めくくられました。
その後、新事業や課題解決の一助として、愛知県プロフェッショナル人材戦略拠点より、組織や事業内容を紹介。実際に活用し、新事業を立ち上げた実践例を丸八化成の金田将典氏より報告いただきました。最後に、次年度の各地区会長より決意が述べられ、閉会となりました。
前田バルブ工業(株) 前田 崇統