中小企業運動が社会をつくる
~同友会運動の歴史
浅井 勇詞氏 アサイウッドマテリア(株)

第25期同友会役員研修大学・第2講座では浅井勇詞氏が政策を中心に同友会運動の歴史について報告しました。その概要を紹介します。
不利な政策に抗う創立時からの運動
戦後復興の過程で、政府は限られた資金や資材を大企業に集中的に投下することで供給力を回復させようとしました。その結果、中小企業は後回しにされ、近代的な大企業と前近代的な中小零細企業とが共存する、経済の二重構造が生まれました。このような中小企業にとって不利な政策に抗うべく、戦後の中小企業運動が起こりました。その運動の1つとして、「中小企業団体組織法」に反対したのが中小企業家同友会を創立したメンバーでした。
ですので、同友会の成り立ちから見ても、中小企業にとって不利な政策が出た時には明確に反対する姿勢を持っています。例えば、1987年に中小企業への負担が大きい大型間接税を「売上税」の名称で導入する動きに対して、反対運動に取り組み法案を廃案に導きました。
1990年代初頭にバブル経済が弾け、急激に悪化する経営環境の下、中小企業が生き残るために何をすべきかと議論を重ねた結果、93年に「21世紀型中小企業づくり」が提起されました。ここでは、(1)国民と地域からの信頼や期待に高い水準で応えられる企業づくり、(2)社員の創意や自主性が十分に発揮できる社風の確立が、急激な環境変化に対応するために、なんとしても追求しなければならない経営課題とされています。経済構造の急激な変化は、今も起こっている経営課題であり、改めて「21世紀型企業づくり」の経営実践が求められています。
自ら学び提案する運動へ
バブル崩壊後、金融機関はBIS規制を達成するため、中小企業向け融資の貸し渋りや貸し剥がしを行いました。懸命に業績を立て直そうとしている中小企業にとって、この状況は看過できないということで、金融アセスメント法制定運動が始まります。まず会内での学習会を開催して同法について勉強し、愛知同友会でも金融アセスメント法制定運動に取り組んでいくことになります。
このアセス運動は中小企業憲章制定運動に引き継がれます。これも学習会から始まり、全国の同友会から代表が出て議論の末に起草されたのが、中同協の「中小企業憲章草案」です。その結果、2010年に中小企業憲章が閣議決定されました。ただ、残念ながら国会決議には至っていません。私たちはずっと、国会決議を要望しています。
次に、愛知県にも「中小企業振興基本条例」制定の要望を出しました。当初、愛知県は大企業がしっかりしていて経済も安定しているので、行政側は条例制定には積極的ではありませんでした。しかし、08年のリーマンショックで大企業も大きなダメージを受けたことで、中小企業抜きに地域の安定はないと県行政も認識を改め、12年に同条例が制定されました。県内の市町村でも条例を作る動きが進み、県内の半数の自治体で条例が制定されています。
運動の継続と発展を
日本の法人数の99.7%が中小企業で、雇用の7割、付加価値の半分を中小企業が生み出しています。一方で中小企業と大企業の経済の二重構造は、現在も継続している社会問題です。中小企業で働く7割の国民の生活を良くするために、この格差を是正できるよう運動を継続する必要があります。
中小企業に対する期待は自治体からも高まっています。行政との対話を通じて、彼らの困りごとを中小企業の連帯の力で解決することも必要です。地域の発展と、我々の会社がある自治体の市民の生活向上のために、行政や大企業・地域の金融機関・学校とも連携しながら、同友会運動に取り組んでいきましょう。