活動報告

【連載 第4回】我が社と労使関係~「労使見解」50年に寄せて

社員は「家族」ではなく対等な人間でありパートナー

磯村 裕子氏  サン樹脂(株)

磯村 裕子氏
磯村 裕子氏

私が入社した1996年の弊社は、薄暗い蛍光灯の白い光の下に加工機が並び、煙草を咥えた壮年男性の職人が作業する、典型的な町工場でした。暗くて殺伐とした雰囲気に、「『会社』って、こういうものだっけ?」と疑問に思ったのを覚えています。

でも、そこに縁あって入社したのだから、仕事をする場としての「会社」をせめて居心地の良い場にしたいと考えました。お手本は「家」。掃除がされていて、気にかけて世話をしてくれる家族のような人がいる、そんな場所くらいにはしようと考え、私は社員を家族と思って接しようとしていました。

一方、同時に入社した2代目の夫は「会社なら利益を出さなければ」と突き進み、採用、設備投資、新規受注に挑んでいました。ところが、なかなか人が定着せず、「何かおかしい」と思っていた頃に出会ったのが、同友会でした。2006年に入会した夫は学びを共有してくれたので、一緒に「会社とは何か」を考えてきました。

2009年には社員と共に就業規則の見直しプロジェクトを立ち上げました。「見直しの前に、まずこれの読み合わせが必要だ」と言われ出合ったのが『人を生かす経営(労使見解)』でした。

読んで驚きました。経営者は、社員を自分と同じ1人の人間として認め、労使が共に力を出し合って会社を良くし、同じやり方で社会を良くしていくために力を発揮できるようになろうと書いてあると理解しました。社員は「パートナー」でした。大好きな両親でも、出来の悪い息子・娘でもなく、目に見える「契約」と目に見えない「信頼」で結ばれるパートナーにならなければならない人でした。そして、経営者と社員が共に生きる場が「会社」でした。

契約を守る、信頼されるために、まずは嘘をつかないようにしてきました。ようやく最近、嘘はつかないと信用されてきたと感じます。生きる場としての会社づくりは、毎年の経営指針策定を通じて着実に良くなっていると信じています。

これからも社員と共に、より良い会社づくりを進めていきます。