活動報告

第23回あいち経営フォーラム特集

昨年11月11日にウインクあいちにて第23回あいち経営フォーラムが開催されました。本稿では鋤柄修氏による基調報告の概要を紹介し、各分科会紹介、当日の様子を写真で伝えるフォーラムハイライトを掲載します。

【基調報告】人を生かす経営で企業変革し、豊かな企業・地域づくりを

~経営者の責任 学んで実践し続けてこそ

鋤柄 修氏
(株)エステム名誉会長(南地区)
愛知同友会顧問、中同協顧問(前会長)

鋤柄 修氏

はじめに

私は1995~2005年まで愛知同友会代表理事を、その後、中同協幹事長を5年、会長を10年、相談役を4年務めさせていただきました。その間、全国で毎月2、3件の報告をしていました。それだけ多くの報告機会を頂いた中で1番目に嬉しかったのは、私の話を聞いて、同友会に入りました、と言われること。2番目は、心を入れ替えて会社経営に専念し、会社がこれだけ変わりました、と報告を受けることでした。

さて、この1年ぐらいで皆さんの会社はどれほど変わったでしょうか。『労使見解』には、「経営者である以上、いかに環境がきびしくとも、時代の変化に対応して、経営を維持し発展させる責任」があると書いてあります。「維持し継続」ではありません。会社の変化にもさまざまありますが、会社を発展させる方向で変えていくことが経営者の責任であり、会社が発展したと言える方が、同友会で学んだことを実践した人です。

学びの実践者かどうかは会社を見れば分かる

「知っているつもりの同友会」「やっているつもりの同友会」になっていないか、と私はよく提起しています。毎月の例会に参加し、同友会用語を覚え、「人を生かす経営をやっています」と自認する方。私は報告を聞くだけでは信用できませんので、他県の会員であっても必ず企業訪問をさせていただきました。よく事務局員にも言うのですが、「会員が口で言うことは信用するな。企業訪問して、社員の口から聞いて、初めて会員の話を信用しろ」と。企業訪問をして、社員の発言を通して同友会の学びを実践しているかどうかが分かるのです。

同友会では、人前で話す機会を多く頂けます。報告する際は、自分の会社でやったことを赤裸々に話すことが大切です。その報告を聞いていろいろな批評が出てきますが、人様が評価してくれて初めて成果といえるのです。

全体会会場で報告に耳を傾ける

創業から入社、入会まで

わが社は1970年、エステムの前身である総合施設サービスの創業から始まりました。当時は大学時代の同級生が社長を務めており、6カ月後に私が入社しました。

その後、ハローワークに求人票を出し、創業して10年で社員は40名ほど、売り上げは4億円になりました。時代の流れに乗り仕事が増え、順調に売り上げも推移していたところで突然、労働組合ができました。予期せぬことで、社員に裏切られたという想いで「頭に来た」というのが本音でした。家族的な集団から技術集団企業への脱皮を図る中で生じた矛盾が原因だったと後から気がつきました。

独学で学んでいた経営に限界を感じていたところ、1980年に愛知同友会が経営指針成文化運動をしていると新聞記事に掲載されており、自ら事務局へ電話して「新聞で見たので入会したい」と、志願兵として入会しました。

会社の目的を社員と定める

社員数40名の時に労働組合ができた出来損ないの経営者だった私が、同友会に入会して目が覚めて、1991年に社長になり、11年間社長を務めました。

1990年に社内に13の委員会を設け、社員による理念の見直しと新しいビジョンの検討を行い、社内公募によって選ばれた「エステム」に社名を変更しました。そして翌年、「水を中心とする環境文化と、安全で快適な自然環境の創造を通じて社会に貢献します」という理念を定めました。この活動の目的は、社会に歓迎され、認められる真の企業と企業像を改めて組み立てる作業を行い、会社の行き方(目的)を実現するために、会社や社員がどういう行動をとったらいいのかを考えることでした。

経営指針書を社員と作り、会社を変える

『労使見解』のまえがきには、「社員をもっとも信頼できるパートナーと考え、高い次元での団結をめざし、共に育ちあう教育(共に育つ)を重視」すると書いてあります。その実践は、経営指針書を社員と共に作るということにあります。

経営者がいかにページ数の多い立派に見える指針書を作ったところで、会社が変わらなければ意味がありません。社員を信頼できるパートナーと考えるのであれば、社員と共に経営指針書を作ってほしいということです。経営指針書の成文化と実践は、同友会で学んだ証拠にもなります。社長の頭の中にあるだけではなく、書類で残さなければいけません。

人間の可能性は無限大

わが社が属する水処理業界では、浄化槽から下水処理場、工場排水、上水道など全てに国家資格が必要とされます。この資格を取るための勉強会では先輩が後輩を指導して、合格率を上げています。この勉強会は今も続いており、先輩が後輩を教える共育ちだと思います。

現在では事業の1つとして社外に向けた講座も開催しており、そこでは参加費を頂いています。これはエイベックス(株)さんの取り組みにヒントを得たものです。

講座には上場企業の社員から応募があり、そのご縁で若手の営業が大きい仕事を取ってきました。私も営業マンをやっていましたので、ある程度の大きい仕事を取ったと胸を張っていたこともありますが、あっという間に追い抜かれ、若い社員の力強さを感じるとともに、定期採用をしてきたことの重要性を改めて実感しています。

みるみるうちに成長していく若者の姿を見るたびに、やはり人間の可能性は無限だと感じます。

翼を鍛える

わが社では、頑張って資格を多く取得した社員は「翼を鍛えている」と表現しています。その中で、「翼を鍛えて飛んでいけ(他社へ行け)」ということも言っています。

先輩社員からは「ようやく一人前になったところで飛んでいかれては困る」という声も聞こえてきますが、これも社会貢献の一種だと考えています。わが社で働くことだけが社会貢献ではありません。身に着けた力を社会に役立てるには他社でも構わないのです。

そして、飛んでいく社員は大企業に行くことが多く、その社員からエステムに仕事の発注が来るのです。翼を鍛えて飛んでいけと言えるのも、わが社が定期採用をし続け、人数が増えてきたからです。人数が少なければ、余裕もなく、いかに社員に辞めないでもらうかに必死になっていたかもしれません。

各分科会会場にて中継配信を視聴

ビジョンの重要性

愛知同友会で代表理事を務めている時、会内で議論を重ね「99ビジョン」を発表、旗印として「Ⅰ:自立型の企業をめざす」、「 Ⅱ:地域社会と共に歩む中小企業」を掲げました。わが社でも21世紀型企業づくりを進め、10年ビジョンを作成しました。

当時、「100億円企業にする」と10年ビジョンで掲げました。しかし、ちょうどその頃バブルが崩壊し、世の中の流れが変わってしまいました。

そこで「100億円」企業から「100年」企業へと変え、現在55年が経ちました。また、難しいと思っていた100億円ですが、他社へ行った社員から大型物件の発注がありました。現在、エステムグループは5社ありますが、9月に決算を迎え、2025年は86億円の売り上げとなり、売り上げも利益も過去最高の結果でした。

4代目の現社長も新型コロナの時には売り上げが伸び悩みましたが、現在に至るまで成長を続けており、100億円も夢ではないなと思えるところまで来ています。たとえ掲げた年数で達成できなくても、掲げることに意味はあるのだと、そこにビジョンの重要性を感じます。

同友会は組織的経営を学ぶ場

ビジョンを考える上で、自社の規模をどれほどにしたいのかを考えなければなりません。もし自分1人でいいと思ったら、同友会で活動する時間は無駄です。1人でおやりなさい。同友会に入ったならば、組織でやるということを学ばなければいけません。

入会時は1人でも良いのです。ただ、入会して3年経って、1人も採用「できない」のは、経営者の能力が表れていると思います。私はそのような会社には行きたくはありません。

この話を全国で報告させていただき、改めて機会を頂いて3年後に行くと、「社員を3人雇いました」と言ってくれる方もいます。こういう方が「経営者」であり、「同友会会員」だと思います。

社員教育の目的は総合的な能力の習得

ある時、中小企業の欠点に営業力のなさが挙げられ、「営業部長の出来が悪く、売り上げが上がらない」とぼやいていた会員がいました。同友会の討論で社員の愚痴を言うものですから、私は怒りました。それは社員教育をしていない証拠であり、経営者の責任を放棄していることと同義です。

社員教育とは、お茶を出したり、あいさつしたりすることではありません。それらは社会人としての入り口であって、社員教育の本当の目的は総合的な能力を身に着けることです。格好つけた、見栄えだけの社員教育をやっていても意味がありません。これが「知っているつもり・やっているつもり」の同友会の典型だと思います。

最後に ― 経営者の責任

皆さんは経営指針書を担保にして、金融機関から融資が受けられますか。私は経営指針書を担保にして、個人保証は外してもらうように舵を切りました。今は個人保証がいらない会社も増えてきたと思います。金融機関に納得してもらえる内容の経営指針書を作り、実践して、個人保証はやらないと決断して、やり切りました。

最後に、会社経営をしている以上、黒字で決算して、納税をしましょう。黒字経営で納税しなければ、地域に貢献しているとは言えないと考えています。たまには赤字もあるかもしれませんが、企業は黒字を基本でやらなくてはいけません。

私は創業以来55年、ずっと会社に関わっていますが、1回も赤字を出したことはありません。55年全て黒字です。気持ちを強く持ち、そして人生を懸けてやる。これが中小企業経営の醍醐味ではありませんか。その経営者の本気が伝わることで、社員は応えてくれます。労使が力を合わせ、会社を良くして、地域のために存在感がある会社づくりを、皆さん一緒にしていきましょう。

「第23回あいち経営フォーラム」ハイライト