活動報告

第23回あいち経営フォーラム 分科会紹介

第1分科会

労使見解の精神から人間尊重経営を実践する

~50年の歴史から自社のこれからと、令和時代における経営者としての在り方を考える

太郎良 浩次氏  (株)アーツネットウェーブ(名東地区)

太郎良 浩次氏

4年連続で売り上げが落ち込み、赤字の中から太郎良浩次氏が藁にもすがる思いで掴んだものは、『労使見解』でした。労使見解の実践に社運を懸け、本当の意味での全社一丸体制に向け、踏み出しました。

太郎良氏は愛知同友会の総会議案書を参考に自社の経営戦略を立て、方針を「受け身から攻めへ」とし、徹底した社員との対話を通じて共に経営指針を作成しました。また、これまでの成り行き任せの業務体質を改めます。『労使見解』の学びを基に、「目標を示し社員に任せる」などを具体的に進め、PDCAを回していったことで業績は回復し、過去最高の売り上げとなりました。

報告後半では、最低賃金1500円の話題にも触れられました。今後はより高い付加価値や他社との差別化が求められ、社会的な賃上げ水準や物価動向を考えると、全ての会社に毎年過去最高の業績が求められる時代ではないかと説きました。

経営を維持・発展させるには、全社一丸体制の構築が不可欠であり、社員を最高のパートナーとして位置付ける労使見解の実践こそが最良の方法だと理解しました。

「すべてが逆風に感じられるときは、飛行機が追い風ではなく向かい風を受けて離陸することを思い出せ」という言葉を最後に報告は締められました。決して成功話ではなく、未だ実践中の報告にとても感銘を受けました。

第2分科会

永続輝業へ向けての「三位一体」経営

~指針・採用・共育、そして定着へ向けて経営者としての一歩

服部 太志氏  (株)創円(港地区)

服部 太志氏
服部 太志氏

入社時より先代と向き合い、経営者としての覚悟を固め、同友会に入会後は実践の道のりを歩んできた服部太志氏。まず経営指針を作成し、指針発表会を継続。初発表時に退職者が出ましたが、社員は経営者の姿勢を見ており、自らは社員と全く関係を築けていなかったと反省し、指針自体を含め、現場の声やトラブルを吸い上げる仕組みを社員と共に作り始めました。

採用は、会内の指摘を素直に受け止め、言い訳せず取り組むことを決意。地域雇用に目を向け、職場体験の受け入れや地域防災協力企業の認定取得、地元学校への魅力発信などを実践。結果、10年前から社員が27名増加、パートからの正社員希望や親族同士で入社する社員も増え、若返りが図られています。

共育は、「安心して長く働きたいと思える会社か」「リーダーになりたいと思える会社か」を主眼に置き、面談や就業規則、各種制度の見直し、委員会活動等を充実。社員からのフィードバックも素直に受け止め、今では幹部を自ら希望する社員も現れました。基調報告でも言及された「人の可能性」を引き出すために、社員1人1人の長所に焦点を当て、働きがいが感じられるようにすること。その働きがいをやりがい・働きやすさに分解し、更に具体化し、その実現を図っています。

会社だけでなく社会の役に立つ人材が増えることが「永続輝業」へつながり、またそうした企業が地域に増えることが地域力の向上につながること。その実践に向けて経営者として「やるぞ!」との決起で、締め括りました。

第3分科会

地域と企業の発展は不離一体

~中小企業憲章草案の精神に立ち返り、自社の存在意義を見直す

加藤 洪太郎氏  名古屋第1法律事務所(瀬戸地区)

加藤 洪太郎氏
加藤 洪太郎氏

加藤洪太郎氏は中小企業憲章草案の前文を引用し、その根幹にあるのが「国民一人ひとりを大切にする豊かな国づくり」という目的であると強調し、具体的には経済的な自由(賃金)と時間的な自由(労働時間)を獲得することだと定義。賃金と労働時間の国際比較データを示した中で、日本が他の先進国に比べて賃金が低く、労働時間が長い状況にあることを指摘しました。またEUの「欧州小企業憲章」についても述べ、欧州では中小企業が「欧州経済の背骨」として位置づけられ、企業の目的が「高い生活水準」を得るためのものであることを示しました。

これらを踏まえ、中小企業憲章の精神を実現するための具体的な目標として、「賃金水準1.76倍、労働時間1割減」を掲げました。この高い目標を達成するためには、個々の企業努力による「社内の変革」と、同友会などが連帯して政策提言などを行う「経営環境の変革」の両方が必要であると述べました。

本分科会を通じて、憲章が目指す「中小企業が高く評価される社会」の実現に向けて、企業が憲章の精神を体現する「企業づくり」と、同友会全体として運動を再構築する「同友会づくり」の2つが不可欠であることを改めて実感することとなりました。

第4分科会

企業変革における見えない生産性とは

~すべての人が幸せを感じられる共生社会へ

橋本 昌博氏  (株)国分農園(稲沢地区)

橋本 昌博氏
橋本 昌博氏

第4分科会では国分農園の橋本昌博氏が、障害のある社員・Iさんの雇用と成長の実践について報告しました。

ある日、特別支援学校から「就職を希望する生徒がいる」と電話を受け、「どうやって断ろうか」と迷ったという橋本氏。ふと同友会の仲間の顔が浮かび、「今まで何のために同友会をやってきたのか」と自問し、受け入れを決意します。採用を社内に伝えると、「誰が面倒を見るのですか」と、心配していた通りの反応。事前に相談しなかったのは、「反対されるのがわかっている」という思いから。橋本氏は「自分が面倒を見るので手伝ってほしい」と伝え、雇用が始まりました。

入社後に、古参社員からのパワハラが発覚した際には、謝罪と支援体制の見直しを行い、誠実な姿勢で信頼を築きました。現場では、指示があいまいで、健常者でも伝わりにくいことを痛感。作業を細分化し、「何を・どこへ・いつまでに・どうやって」を明確に整理し、誰もが理解できるようイラスト入りのマニュアルを整備しました。その行動が後輩社員の教育にも役立ち、業務の標準化と安心感が広がっていきます。Iさんは持ち前の明るさで職場に溶け込み、社員からも「明るくて雰囲気が良くなる」「この会社で働けて嬉しい」との声が寄せられているそうですす。

討論では、障害者雇用は特別な取り組みではなく、人間尊重経営の原点そのものだという意見が交わされました。小島正寛座長からは、「橋本さんの報告は、人を生かす経営を理屈ではなく実践で示している。信頼と安心の積み重ねが働きやすい環境をつくり、見えない生産性からやがて目に見える生産性の向上にもつながっていく」とまとめられました。

第5分科会

得意技を持つ「地域未来創造企業」とは

~独自戦略を持った中小企業

加藤 三基男氏  サン食品(株)(瑞穂地区)

加藤 三基男氏
加藤 三基男氏

1991年にサン食品に入社した加藤三基男氏は、当初「こんにゃくを世界に広げたい」という思いがあったといいます。当時は「1円でも安く作って、できるだけ遠隔地へ売る」という拡大路線で、毎日大量のこんにゃくを製造していました。

しかし、入社以来30年でこんにゃく市場は5割以上も減少し、産業構造が変化しているそうです。おでんでの消費がコンビニエンスストアに移り、安価な海外製品が流通する中、かつて強みだった「低コストでの大量生産」は、高コストに変わっていました。増収増益でしたが、毎年採算性を悪化させていることに気づき、社員からも不安の声が上がりました。

この危機感から2017年頃に経営指針を策定し、「世界一儲かるこんにゃく関連企業」とビジョンを掲げました。実現するには、社員全員が誇りを実感でき、新しいことに挑戦することが大事で、それには利益を出すことだと考えたからです。

同社は現在、富裕層をターゲットに「健康で美味しくて、他にないもの」を目指す計画を打ち出し、付加価値の高い製品を生み、売り上げも大きく増加する見込みです。30年前に挫折した海外展開の夢にも再挑戦し、食肉の健康リスクという時代の変化も追い風となって、こんにゃくが肉に変わるプロテインという大きなチャンスを生み出しているそうです。

今は生成AIを必死で活用しており、海外から1週間で47社ものアプローチを頂いたこともあるといいます。加藤氏は「社長の役割とは、変化を恐れず、過去の成功体験は捨てるべき」だと強調し、「健康的で環境負荷が少ないこんにゃくで、食料需給の逼迫と健康問題の解決をテーマに挑戦を続けたい」と決意表明しました。

第6分科会

個人経営から組織経営へ

~ありたい姿を描き、実現するために

丸山 和秀氏  丸山会計事務所(中区中央地区)

丸山 和秀氏
丸山 和秀氏

第6分科会では、「個人経営から組織経営へ~ありたい姿を描き、実現するために」をテーマに、丸山会計事務所代表の丸山和秀氏より報告が行われました。冒頭、基調報告を行った鋤柄修氏から、個人で抱え込み続ける経営の限界や、経営者自身の在り方を問う鋭い問題提起がなされ、それを受ける形で丸山氏の報告が始まりました。

丸山氏は、鋤柄氏の指摘する「痛いところ」を巧みに整理しながら、自身が個人創業から初めて採用に踏み出し、組織経営へと移行してきた過程を語りました。売り上げや効率を優先するのではなく、「社員とどう向き合うのか」「何のために事業を続けるのか」「お客様に喜んでいただくには」という問いに向き合い続けてきた実体験は、多くの参加者の共感を呼びました。特に「まずやる、あとでなおす」という信条は、完璧を求めて動けなくなる経営者への強いメッセージとして印象に残っています。

本分科会には一人親方や組織を持たない参加者も多く、丸山氏の報告を通じて「採用する勇気を持てた」「ビジョンを実現するには決断が必要だ」といった声が討論の中で相次ぎました。また、「自分は不幸だと思っていたが、実は社員に助けられて今の自分があると気づいた」という発表もあり、参加者それぞれが自らの経営を見つめ直す場となりました。

丸山氏自身も現在進行形で組織運営の課題に悩みながら経営を続けている姿が包み隠さず示され、その等身大の姿に多くの参加者が勇気をもらった分科会となりました。

組織経営とは完成形を目指すものではなく、人と向き合い続ける覚悟そのものであることを、改めて共有する機会となりました。

第7分科会

永続する企業になるために

~私たちが次代につなぐべきものとは

服部 勝之氏  (有)服部庭園(稲沢地区)

服部 勝之氏
服部 勝之氏

第7分科会では「企業の永続性」をテーマに、創業116年の服部庭園の4代目社長である服部勝之氏が事業承継と地域貢献の実践を報告しました。企業の存続は雇用や地域経済の安定、技術・理念の継承に直結し、特に造園業のような地域密着型業種では、後継者の存在が信頼の基盤となります。

日本では起業から10年で約70%が廃業し、社長の平均年齢は61歳と高齢化が進む中、企業の永続には(1)理念の明確化、(2)安定した経営基盤、(3)人材育成、(4)変化への柔軟性、(5)地域との信頼関係が不可欠とされました。

服部庭園では「安らぎと幸せの創造」「緑と人と地域を元気にする事業」という理念を軸に社是・社訓を整備し、社員教育に注力。待遇改善にも取り組み、造園業界の低水準給与を一般企業並みに引き上げる方針を示しています。服部氏は学校講師としての活動を活かした採用や資格取得支援も行い、個の力を企業力と捉える姿勢を貫いています。

変化への対応では、人工芝や屋上緑化などの新規事業を展開し、愛知県のリサイクル資材評価制度「あいくる材」認定取得も目指しています。地域連携では、稲沢市で中小企業振興基本条例の制定を主導し、地場産業の再生に尽力しています。

事業承継には最低5年の教育と引き継ぎが必要とされ、理念や価値観、仕事の流儀の継承が企業の本質を守る鍵となります。服部庭園では服部氏が2人の息子へ5代目承継を進めており、技術伝達はマニュアルや動画で可視化しています。

企業の永続は「樹を育てること」に例えられ、理念を根に、人材を幹に、事業を枝葉として伸ばし、地域に根差す大木のような存在を目指す。服部庭園の取り組みは、次代へつなぐ価値ある実践として注目されています。

第8分科会

地域経済と自社の発展を考える

~地域にあってよかったと思われる企業へ

杉浦 敏夫氏  スギ製菓(株)(碧南・高浜地区)

杉浦 敏夫氏
杉浦 敏夫氏

第8分科会は2022ビジョンの1つ「自立企業のアップデート~自社と地域が共に発展できる独自戦略を確立する」の中にある、独自戦略についての学びを深め、実践の一助とすることを目的に設営されました。

報告者のスギ製菓代表取締役、杉浦敏夫氏は同社の根底(経営理念)にある「楽しさの創造~楽しく働ける社員と、全国の家庭に、美味しさと楽しさを提供し続ける会社を目指す」を社員と共有し、浸透させていくための1つとして、地域の人たちも幸せを感じられる会社にしたいという想いを込めています。

地域から「あの会社があってよかった」と思ってもらえる存在になることが理念の根っこであり、経営の目的そのものだといいます。この理念を具現化するために、清掃活動や地域のイベントに参加するだけでなく、社員教育も目的とした社内イベントに地域の方々を巻き込み、社員・地域との対話から学び、「共に育つ」を実践しています。

地域との関わり方は、業種や所在地によって大きく変わります。しかし事業として社屋を構えている以上、手の届く範囲にいる方々との関わりは必要不可欠で、自社に合った独自戦略が大切です。

杉浦氏の実践報告から、独自戦略に必要なのは、自社の理念または強み(存在意義)を基に、地域の方々とどう関われるかを考え、コツコツ行動していくことだと学ばせていただきました。そして「地域にあってよかったと思われる企業」になるために何ができるかを、社員だけでなく、同友会の仲間と知恵を出し合いながら行動に移していくこと。それができるのが、私たち中小企業の底力だと感じた分科会になりました。

第9分科会

地域と企業の新たな関係性に気づく

~地域未来創造企業をどう目指すか

織田 元樹氏  (特非)ボラみみより情報局(昭和地区)

織田 元樹氏
織田 元樹氏

地域課題を自社の課題と捉え、地域未来創造企業を目指すことをテーマとした第9分科会では、社会課題が複雑化する中で中小企業が果たすべき役割の重要性が強調されました。

特定非営利活動法人ボラみみより情報局ではボランティア活動を促進する情報誌「ボラみみ」の発行から活動を始め、市民活動や企業の社会貢献支援へと事業を拡大してきました。現在は雑誌の発行に加え、マッチングサイト「みみライン」や大学との協働イベント、行政職員向け研修などを通じ、社会活動のプラットフォームづくりを進めています。また、AIを活用して地域の社会課題を可視化し、支援組織のネットワーク強化にも取り組んでいます。

同団体代表の織田元樹氏は、社会問題の背景には相対的貧困、引きこもり、少子化・未婚化、高齢化、外国籍児童の日本語教育不足など、多様で深刻な課題が存在すると話します。特に団塊ジュニア世代が高齢化し、地域社会を支える人口が大幅に減少する「2040年問題」が懸念されているとのことです。こうした状況では行政だけでの対応は難しく、企業やNPO、地域団体など多様な主体が連携することが不可欠です。

企業の社会貢献は、今後より一層求められます。ボランティアは「無償の補助」ではなく、社会問題の解決を担う主体であり、制度化によって専門職として成り立つ分野も増えています。地域貢献が企業経営に新たな価値をもたらしています。

社会課題は行政・政治家・企業・NPOのいずれか1つだけで解決できるものではなく、地域の多様な主体が協力し、知恵を出し合いながら取り組むことが必要で、それによって明るい未来がつくられるとまとめられました。

第10分科会

自社と社会の共通価値づくり

~自社の存在意義に確信を持てていますか

鈴木 康司氏  (株)クリーン商事(碧南・高浜地区)

鈴木 康司氏
鈴木 康司氏

クリーン商事は創業1963年、ダスキン全国一号店として地域密着で事業を展開してきました。今ではダスキンに加え、保育園、美容院・エステ、おそうじ、リフォーム、ミールキットといった生活全般を支える事業領域へと拡大しています。これらの事業は「仕事や家事でがんばる人の応援・協力・サポート企業を目指す」という同社の提供価値を起点にしたものであり、地域の人たちの生活課題を総合的に解決する方向で発展してきました。

代表取締役の鈴木康司氏は、経営理念とビジョンの重要性を中心に報告。「ビジョンが描けない企業は未来が変わらない」「経営指針は必要と感じながら、作らないのは存在意義への確信不足」と指摘し、まず「自社は何屋か」「誰のどんな問題を解決するのか」を明確にすることの重要性を提起しました。

価値とは「人(社会)が求める数と大きさ」であり、社会のニーズとウォンツ、自社の強み、自社の可能性・価値創造を重ね合わせることで、自社と社会の共通価値が生まれると整理されました。数々の実践事例を交え、経営においてビジョンを描くことでゴールが定まり、現実とのギャップが経営課題であることが説明されました。

2035ビジョンの実現に向けて始めた保育園や美容院などの複合施設には、地域の潜在ニーズに応える姿勢と、社員の働きがい向上という2つの目的があります。地域と社員を巻き込みながら信用・信頼を構築してきた結果、60周年感謝祭には1500名が来場したとのことです。

「よい会社=人が集まる会社」です。その基盤は理念・ビジョン・方針の明確化と、ゴールに向かって今できることをコツコツと積み上げる経営者自身の実践にあること、自社の存在意義を定義し、社会との共通価値を生み続けることが、持続的成長につながるとのまとめとなりました。