景況調査

第19号-1998年8月
底打ち感ないまま、最悪水準更新続く

【概況】
【業況判断】業況判断最悪を更新
【売上高】【経常利益】売上高、経常利益ともに最悪を更新
【在庫】「増加」超過に転じ、「過剰感」強まる
【価格変動】【取引条件】価格の低下続く
【資金繰り】「窮屈感」増す。見通しにも厳しさ
【施設稼働率】【設備過不足】施設稼働率の「低下」超過幅縮小
【雇用】「過剰」超過続く
【経営上の力点など】引き続き「民間需要の停滞」がトップ
<会員の声>
DI値推移一覧表(PDF 133KB)

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景況調査報告(1998年8月)第19号(PDF:600KB)


【概況】

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 業況がさらに厳しくなっています。業況判断について「よい」と答えた企業が5%にまで落ち込む一方,「悪い」とする企業が63%にまで達しました。前者から後者を差し引いた「業況判断」DIは△58を示し、1997年2月以来7期連続の悪化、4期連続の最悪水準の更新という結果になりました。次期(11月)についても、「悪い」と予測する企業が66%もあり、依然として底打ちが確認できない状況です。

 前年同月と比べて業況が「悪化」したと答えた企業の割合は73%にまで達しており、まさに景気は真っ暗やみの中にあるといえます。個人消費の低迷が続いているだけでなく、アジア経済危機が長期化の様相を示し、さらには順調だった欧米諸国経済にも変調の兆しが見え始めています。景気の悪化やその長期化を予測させる要因は見出せても、好転を予測させる要因はほとんど見出せないのが現状です。こうした中、昨年までは比較的元気であった工作機械関連の製造業でも、いよいよ仕事不足を嘆く声が聞こえるようになりました。

 さらに重要なことは、今後金融面からの「デフレ圧力」が一層強まるのではないかと予測されることです。金融機関の不良債権処理がより厳しく実行されていくとすれば、いわゆる「貸し渋り」現象が再燃しかねません。ただでさえ資金繰りが厳しくなる年末に向けての「貸し渋り」は、中小企業に致命的な打撃となりえます。金融再生は経済再生のための不可欠なプロセスではありますが、これを実体経済への「デフレ圧力」をいかに避けながら進めるかに行政担当者の知恵が発揮されなければなりません。もたつく国会での金融問題論議に対し、こうした視点から中小企業が連帯して声を上げていくことも必要になるでしょう。中小企業のみならず、中小企業運動の真価が問われる時代だといえます。

[調査要項]

 1.調査時  1998年8月28日~9月3日
 2.対象企業 愛知中小企業家同友会、会員企業
 3.調査方法 調査書をFAXで発送、自計記入、FAXで回収
 4.回答企業 641社より、221社の回答をえた(回収率34.5%)
       (建設業39社、製造業77社、流通・商業47社、サービス業58社)
 5.平均従業員 21.6人
 なお、本報告は愛知中小企業家同友会情報ネットワーク委員会(委員長、村上琇樹・村上電気工業㈱社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議(座長、山口義行立教大学助教授)での検討を経てなされたものである。

【業況判断】
業況判断最悪を更新

 「今月の状況」DIは4期連続で調査開始以来最悪の結果を更新した。7期連続で「悪い」超過幅が拡大し、前回調査比5ポイント悪化の△58となった。これは「よい」と答えた企業が前回比3%減少したのに加え、「悪い」と答えた企業が全体で2%増加したためである。また、次期見通し(全業種)についても65%の企業が「悪い」とみており、DI値も△56まで低下した。
 業種別では、前回35ポイントの大幅な悪化を示した流通業が26ポイント(△74→△48)、建設業でも17ポイント(△65→△48)の改善を示す結果となった一方、前回43ポイントの大幅な回復を示したサービス業が51ポイント(△10→△61)の大幅な悪化、製造業も13ポイント(△52→△65)の悪化を示した。製造業は4期連続の悪化である。また、前年同月比DIについても、ほぼ同様の状況が確認できる。全業種のDI値は△66と前回比7ポイント悪化し、やはり調査開始以来最悪の結果である。流通業が26ポイントの大幅な回復を示した以外は、サービス業(△12→△51)、製造業(△59→△70)、建設業(△72→△75)がそれぞれ悪化を示した。サービス業と製造業では7割強の企業が、建設業においては83%の企業が前年同月比で「悪化」したと答えている。

業況推移DIグラフ

業況推移DIグラフ
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【売上高】【経常利益】
売上高、経常利益ともに最悪を更新

 売上高DI(前年同月比)は前回比1ポイント悪化の△38となり、2期連続で調査開始以来最悪の結果となった。業種別で見ると、前回大幅に改善したサービス業が16ポイント(△5→△21)、また製造業も1ポイント(△44→△45)の悪化を示した。一方、前回57ポイントの大幅な悪化を示した建設業が8ポイント(△35→△26)の改善を示し、流通業も9ポイント(△35→△26)改善した。次期見通しでは、50%を超える企業が売上高の「減少」を見通しており、依然として先行きに対する不安感をぬぐえない状態が続いている。
 経常利益DI(前年同月比)も13ポイントの大幅な悪化を示し、4期連続で調査開始以来最悪の結果となった。流通業で6ポイント(△34→△28)の改善がみられたものの、サービス業が35ポイント(△5→△40)と大幅に悪化したのをはじめ、製造業(△39→△53)建設業(△46→△58)ともに悪化した。次期見通しにおいては、流通業とサービス業で黒字を見通す企業が赤字を見通す企業を上回ったものの、全業種でみれば△9と、先行きに対して厳しい見通しを立てている企業が多い。

売上高推移DIグラフ

売上高推移DIグラフ
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経常利益推移DIグラフ

経常利益推移DIグラフ
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【在庫】
「増加」超過に転じ、「過剰感」強まる

 前回△6と「減少」超過となった在庫DI(前年同月比)は、今回4と再び「増加」超過に転じた。これは在庫が「減少」したと答えた企業が前回に比べ5%減少する一方で、「増加」したとする企業が6%増加したためである。業種別では製造業(△2→6)流通業(△11→2)ともに「増加」超過に転じている。また「在庫過剰感」を示すDIも前回の15から今回は21と再び強まりつつある。次期見通しでも16と、先行き在庫過剰を見通す企業が不足を見通す企業を上回っている。

【価格変動】【取引条件】
価格の低下続く

 前年同月比でみた価格変動DIは6期連続で「低下」超過幅が拡大し、全業種で6ポイント悪化の△57となった。業種別では流通業が△53と横ばいであったが、それ以外の3業種は押し並べて悪化を示した。とりわけ前回大きく改善したサービス業が△18→△47と大幅に悪化したのが目立つ。需要低迷下での競争激化が価格低下を引き起こすという傾向が依然として続いていることを示唆するものである。また、取引条件DI(前年同月比)も△27→△32と5ポイントの悪化を示した。次期見通しでも先行き価格低下・取引条件悪化を見通す企業が多い。

【資金繰り】
「窮屈感」増す。見通しにも厳しさ

 資金繰りDIは△34→△42と8ポイント悪化し、3期連続の悪化となった。今回調査では、調査開始以来はじめて5割を超える企業が資金繰りは「窮屈」と答えた。業種別でみると、「窮屈」と回答した企業が7割に達した建設業が△41→△60と19ポイント悪化した。また、サービス業は△8→△40と32ポイントの大幅な悪化を示し、製造業も△28→△42と悪化した。一方流通業は△51→△33と18ポイント改善した。また「次期見通し」においても57%の企業が先行き資金繰りが窮屈になると見通している。

【施設稼働率】【設備過不足】
施設稼働率の「低下」超過幅縮小

 施設稼働率DI(前年同月比)は△31→△27と4ポイント「低下」超過幅が縮小した。業種別では、製造業が△43→△36と「低下」超過幅が縮小する一方で、流通業では△11→△12と「低下」超過幅が拡大した。次期見通しにおいては△22と、先行き稼動率が「低下」すると見通す企業が「上昇」すると見通す企業を大幅に上回った。設備過不足DIは8→1と「過剰」超過幅が縮小した。業種別では製造業で25→12と「過剰」超過幅が縮小し、サービス業では△4→△20と「不足」超過幅が拡大した。一方、建設業では△6→△4と「不足」超過幅が縮小し、流通業は「不足」超過に転じた。

【雇用】
「過剰」超過続く

 全業種でみた雇用動向は12→11と、1ポイント「過剰」超過幅が縮小した。建設業・製造業・流通業ではそれぞれ「過剰」超過幅が縮小したが、唯一「不足」超過であったサービス業が△19→7と「過剰」超過に転じた。また、次期見通しにおいても雇用が「過剰」になると答えた企業が、「不足」を見通す企業を上回っており、依然として雇用過剰感がぬぐえない状況にある。

【経営上の力点など】
引き続き「民間需要の停滞」がトップ

 「経営上の問題点」の項目では,引き続き「民間需要の停滞」が第1位であった。業種別では建設業が2ポイント低下したものの依然として8割近い企業が問題点としてあげているのが目立つ。第2位は前回に引き続き「販売先の値下げ要請」であった。「経営上の力点」については、「新規受注(顧客)の確保」「付加価値の増大」が高い比重を占めている。

<会員の声>

(食品小売)  食品業界ではパイに限界がある。お互いが競争相手で、シェアを食い合っており、最近とくに企業間格差が拡大している。東海三県でのスーパーの出店すごく、この一年から二年で六十店舗、三年では百店以上が出店する。それもすべて大型店である。ただ消費が回復したからの出店ではなく、「大店法」との関係でなの駆け込みである。今後大型店の過当競争がこの東海地域で展開されるだろう。
(省力化機械設計製作)  工作機械関係はマザックが27%ダウンしたように、今年の三月まで利益が上がっていたが、四月から急激にダウンした。当社でも福祉産業の機械製作に転換していきたい。
(組立用省力化設備)  トヨタでは99年秋から翌年にかけて7つのモデルチェンジがあるが、来年4月までのモデルチェンジはRV車1台限りで端境期にあたる。受注のネタが無くなってきている。