景況調査

第21号-1999年2月
景気底ばい局面へ
なお先行き不透明。厳しいサバイバル競争は続く

【概況】
【業況判断】業況判断改善するも、依然厳しい
【売上高】【経常利益】売上高・経常利益ともに改善を示す
【在庫】「減少」超過幅縮小し、「過剰感」高まる
【価格変動】【取引条件】価格動向は底ばい局面に
【資金繰り】「窮屈感」増す。見通しにも厳しさ
【施設稼働率】【設備過不足】施設稼働率の「低下」超過幅拡大する
【雇用】「過剰」超過幅拡大
【経営上の力点など】引き続き「民間需要の停滞」がトップ
<会員の声>
DI値推移一覧表(PDF 133KB)

※全文のPDFファイルはこちら
景況調査報告(1999年2月)第21号(PDF:662KB)


【概況】

 今回の調査結果は、景気が下げ止まったとはいえないものの、悪化のテンポが大幅に弱まり、局面的にはほぼ「底ばい」に入りつつあることを示す結果となりました。業況が「よい」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を差し引いた業況判断DI(「今月の状況」)は前回の△56から△49へと7ポイントの改善を示し、前回に引き続き2期連続でマイナス幅が縮小しました。また、業況が前年同期と比べて「好転」したと回答した企業の割合から「悪化」したとする企業の割合を差し引いたDI値(「前年同期比」)も、前回の△62から△47へと15ポイントの大幅改善を示しました。依然として業況が「悪い」と答えた企業の割合が58%(前回63%)も占めていますから、景気が下げ止まったとは言えませんが、いよいよ「底を這う」局面に入りつつあると判断することはできそうです。

 今回の調査結果の大きな特徴は、建設業の業況改善が全体の業況改善に大きく寄与していることです。建設業の業況判断DI(「今月の状況」)は、前回の△62から△35へ、27ポイントも改善しています。これは、官公需の拡大や優遇税制の拡充措置など、政府の諸施策の効果が現れてきた結果とみることができるでしょう。「景況分析会議」でのヒアリング調査では、住宅の建て替えや賃貸マンションの建設など民需にも新たな動きが出てきているとする報告も聞かれました。また、個人消費についても、前年比マイナスが続いていたファミリーレストランの売り上げが、年明け後1月、2月にはプラスに転じており、若干の変化が見られつつあるのではとする指摘もありました。

 しかし、他方、製造業での業況改善はあまり見られませんし、流通業では小幅悪化を示しています。また、前回調査では特別信用保証制度の効果によって大幅な改善を示した資金繰りに、再び窮屈感が広がりつつあります。さらに、流通業で在庫過剰感が大幅に高まっていますし、建設業でも、中央・地方の財政赤字が歯止めとなって、公共事業が息切れするのではと心配する声も少なくありません。大企業のリストラによる消費の落ち込みも懸念されています。先行きへの不透明感はけっして払拭されていないというのが現状です。一段の景気悪化を予想する企業は少なくなってきていますが、景気浮揚を予想する企業も少なく、当面は景気が底を這うなかで、企業間の生き残りをかけた厳しいサバイバル競争が展開されていくことになりそうです。

[調査要項]

 1.調査時  1999年2月26日~3月3日
 2.対象企業 愛知中小企業家同友会、会員企業
 3.調査方法 調査書をFAXで発送、自計記入、FAXで回収
 4.回答企業 641社より、189社の回答をえた(回収率29.5%)
       (建設業34社、製造業67社、流通・商業40社、サービス業48社)
 5.平均従業員 24.0人
 なお、本報告は愛知中小企業家同友会情報ネットワーク委員会(委員長、村上琇樹・村上電気工業㈱社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議(座長、山口義行立教大学助教授)での検討を経てなされたものである。

【業況判断】
業況判断改善するも、依然厳しい

 「今月の状況」DIは前回調査比7ポイント改善し△49となり、2期連続の改善となった。業種別では建設業で△62→△35と27ポイント、サービス業でも△60→△44と16ポイントとそれぞれ大幅な改善を示した。一方、流通業では前回の△58から1ポイントの悪化し△59となった。製造業は前回と変わらず、△51であった。また、前年同期比(全業種)でも△62→△47と15ポイントの大幅な改善を示した。建設業・サービス業の大幅な改善が2期連続のDI値の改善に繋がったわけであるが、依然として6割近い企業が「悪い」と答えている状況を考え合わせれば、今回の調査結果は業況の好転を示しているというよりも、悪化の加速に歯止めがかかり、「底ばい」局面に入りつつあることを示すものといえよう。次期見通しにおいても、51%の企業が「悪い」と見通しており、先行きに対する見方は依然深刻である。

業況推移DIグラフ

業況推移DIグラフ
(クリックすると大きく表示します)

【売上高】【経常利益】
売上高・経常利益ともに改善を示す

 売上高DI(前年同月比)は△44→△37と7ポイントの改善を示し、97年11月調査以来5期連続で続いてきた売上高DIの悪化に歯止めがかかった。業種別では、建設業で△39→△21と18ポイント、サービス業では△40→△13と27ポイントの大幅な改善が見られたほか、製造業でも△53→△52と1ポイント改善した。一方流通業では△36→△53と17ポイントの大幅な悪化がみられた。しかし、次期見通しにおいて売上高が減少すると見ている企業が半分近くを占めることからも分かるように、一方的に改善が続くと楽観視できる状況にはなく、依然として厳しい状況が続いている。
 経常利益DI(前年同月比)は△40→△35と5ポイントの改善を示し、2期連続で「悪化」超過幅が縮小した。業種別でみると、サービス業で△33→△17と16ポイントの大幅な改善が見られたほか、建設業では△34→△21と13ポイント、製造業でも△47→△45と2ポイントの改善が見られた。一方流通業は△41→△53と12ポイントの大幅な悪化を示した。しかし、次期見通しDIは△14と「赤字」見通しが「黒字」見通しを大幅に上回っており、先行きに対する懸念は根強い。

売上高推移DIグラフ

売上高推移DIグラフ
(クリックすると大きく表示します)

経常利益推移DIグラフ

経常利益推移DIグラフ
(クリックすると大きく表示します)

【在庫】
「減少」超過幅縮小し、「過剰感」高まる

 前回調査で「減少」超過に転じた在庫感DI(前年同月比)は、今回△3とその「減少」超過幅が8ポイント縮小した。これは、在庫が「減少」したと答えた企業が前回に比べ3%減少した一方で、「増加」したとする企業が5%増加したためである。業種別では流通業で△22→△3と大幅に「減少」超過幅が縮小し、製造業では△9→7と「増加」超過に転じた。また、「在庫過剰感」を示すDIも21と、前回比3ポイント「過剰感」が高まった。次期見通しにおいても9と、先行き在庫過剰を見通す企業が不足を見通す企業を上回っている。

【価格変動】【取引条件】
価格動向は底ばい局面に

 価格変動DI(前年同月比)は1ポイント改善の△63となり、7期連続で続いていた「低下」超過幅の拡大に歯止めがかかった。業種別では流通業(△72→△58)、建設業(△72→△64)、サービス業(△57→△54)でそれぞれ改善がみられた。しかし製造業では△61→△70と逆に「低下」超過幅が拡大した。全業種でみた取引条件DI(前年同月比)は△35→△29と6ポイント改善した。次期見通しDIは、価格変動(△50)、取引条件(△24)ともに悪化を見通す企業が多数を占めている。

【資金繰り】
「窮屈感」増す。見通しにも厳しさ

資金繰りDIは△28→△32と4ポイント悪化した。これは「窮屈」と回答する企業が1%増加する一方で、「余裕」と答えた企業が3%減少したためである。業種別では、製造業で△22→△34と12ポイントの大幅な悪化が見られ、建設業でも△33→△35と「窮屈」超過幅が拡大した。一方、サービス業(△27→△23)と流通業(△35→△34)ではそれぞれ改善がみられた。次期見通しにおいても5割を超える企業が先行き資金繰りが「窮屈」になると見通している。こうした調査結果は、緊急対策的なものではない本格的な資金繰り対策が実施されないかぎり、資金繰りに対する懸念は払拭できないことを示しているものと考えられる。

【施設稼働率】【設備過不足】
施設稼働率の「低下」超過幅拡大する

 施設稼働率DI(前年同月比)は△18→△23と5ポイント「低下」超過幅が拡大した。業種別でみると、5割弱の企業が「低下」と答えた製造業で△25→△31と「低下」超過幅が6ポイント拡大し、流通業では△4→△9と5ポイント拡大した。次期見通しにおいても△22と、「低下」と予想する企業が「上昇」とする企業を大幅に上回っている。 設備過剰感も高まっている。「今月の状況」DIは1→8と7ポイント「過剰」超過幅が拡大した。業種別では製造業の「過剰」超過幅が19と他業種に比べ高いのが目立つ。次期見通しにおいても先行き設備が「過剰」するとみる企業が「不足」すると見る企業を10ポイント上回った。

【雇用】
「過剰」超過幅拡大

 全業種でみた雇用動向は5→11と、6ポイント「過剰」超過幅が拡大した。建設業で△5→14と「過剰」超過に転じたほか、製造業では16→25と「過剰」超過幅が拡大し、サービス業では△16→△3と「不足」超過幅が縮小した。流通業は13→0と「過剰」超過が解消した。次期見通しにおいても先行き雇用が「過剰」になると答えた企業が、「不足」すると見る企業を上回っており、「過剰」超過に転じた98年5月期調査以降続いている雇用過剰の状況が今後も続くものと考えられる。

【経営上の力点など】
引き続き「民間需要の停滞」がトップ

 「経営上の問題点」の項目では、前回に引き続き「民間需要の停滞」が第1位であった。業種別では、製造業が前回比で11ポイント、建設業が10ポイント増加した。建設業では76%の企業が問題点として民需の停滞を挙げているのが目立つ。
 「経営上の力点」では、「新規受注(顧客)の確保」「付加価値の増大」が高い比重を占めている。

<会員の声>

(製造業-搬送設備)  供給過剰で価格低下。注文があっても利益なし。下手をすると赤字受注となる。優勝劣敗の調整を早くすること。そしてなんとか「勝」の方に残りたい。

(製造業-自動車部品製造)  自動車産業の国内空洞化で自動車バネ部品を製造している当社では売上げ減少の歯止めが利かない現況です。他分野でのバネ部品受注も思うようにはいかないのが現実です。部品だけでなく、商品開発する努力が必要と思っています

(製造業-機械製造)  これだけ悪い状態が続いてくると「この売上に応じた経費」を考えざるをえなくなっている。具体的には予備の駐車場を返したり、スポーツ紙を取るのをやめたり、金額的なことよりも、従業員も含め、会社の状況をわかってもらうためにもやり始めて、バブル期に増えた経費(人件費も含め)を見直しています。

(流通業)  商業貨物を運んでいるので業種の悪化というよりは全体の物量の少なさがお互いの足の引張りあいとなり、運送費の低下を招いている。今までの政策では大きな変化を期待できないのとマスコミが不況をあおりすぎているきらいがある。

(不動産業)  不動産業、建築業界を良くするために新設された住宅ローン控除制度の効果は抜群に大きいと思いますので、政策的に我々の業界は良くなる見通しです。時限立法ですから来年末までです。

(建設業)  昨年は財務体質強化改善を課題として、中小公庫より融資を受けることができ、全面的に民間の銀行に頼らなければならない体質から脱皮できたように思います。同業界はまさに下克上の様相を呈しており、寝首をかかれそうです。