景況調査

第45号-2005年2月
足元悪化するも、見通しは好転~愛知特有の要因が大きく影響

【概況】
【業況判断】 今月の状況、前年同月比悪化。見通し改善
【売上高】【経常利益】 売上高、特にサービス業で悪化。経常利益、見通しは明るい
【在庫】 前年同月比で製造業「減少」超過に
【価格変動】【取引条件】 価格変動、「低下」超過幅拡大。取引条件、建設業で著しく悪化
【資金繰り】 製造業で窮屈感高まる
【設備過不足】【施設稼働率】 設備過不足、製造業で「不足」見通し強める。設備稼働率、2期連続で「上昇」超過幅拡大
【雇用】 不足感さらに強まる。
【経営上の力点など】 問題点で「従業員の不足」がトップに
<会員の声>
DI値推移一覧表

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景況調査報告(2005年2月)第45号(PDF:1.09MB)


【概況】

 一進一退の状況が続いています。今回の調査では「よい」と回答した企業から「悪い」と回答した企業を差し引いた業況判断DI(今月の状況)は21となり、前回調査の27から6ポイントの悪化となりました。これは「よい」と回答した企業が2%減少して「悪い」と回答した企業が4%増加したことによるもので、前回調査で見られた悲観的な予想があたったことになります。しかし、3ヵ月後の次期見通しに関しては前回の22から30となり再び強気な数値が見られます。  この一進一退の状況を反映してヒアリング調査では前回同様、数値悪化の要因だけでなく強気な見通しがもたれる要因も指摘されました。建設業は今回の調査で大きな悪化を示しましたが、マンションや工場の建設などの民需は引き続き堅調なようです。マンションに関しては、トヨタ自動車の東京本社機能が名古屋駅前に移転することから、市内における住宅需要の増大が予想され、駅前ビルが完成する2007年の初頭までこの需要が見込まれています。さらには郊外に飲食店の改装や老人介護施設などの建設も出てきており、これらの要因から強気な見通しがなされているようです。しかし、土地不足および地価の上昇の顕在化や来年度の官需も今年度以上に期待できないといった先行きに対する懸念材料も同時にあげられました。製造業では、自動車関連の企業は非常に忙しいという意見が多数出され、中にはバブル期以上に忙しいとの声もありました。それにもかかわらず、原材料価格の上昇やコストダウンの要請により、仕事量に見合うような利益は上がっておらず薄利多売の状態が続いているようです。さらに、自動車関連企業とともにこれまでの製造業における景気回復を牽引してきた半導体関係の受注が減少しつつあるという指摘もありました。製造業全体の動向はますますトヨタ自動車の動向に依存し、いっそう影響を受けやすくなります。次期見通しについて大幅に予想を改善させた流通業においても、それは自動車関連の企業に限定されており、ここでも二極分化が進んでいるものと思われます。また流通業とサービス業に関しては3月25日からはじまる万博に対する期待が予想を明るくさせているようです。  このようにヒアリング調査では強気な意見が多く出されましたが、このことは以上の要因に加えて、最近の株価が回復しつつあることも追い風になっているものと思われます。しかしながら、その要因の多くは期間が限定されていたり、トヨタ自動車の動向に大きく依存していたりと決して安定的なものではありません。しかも為替相場や米国・中国経済の動向、建設業・製造業の好調さが個人消費に結びつかないという懸念材料は依然として残っています。以上のことから、当分のあいだは現状の一進一退が続くのではないかと思われます。現在は先が見えにくい時期ですが、決して目先の利益だけにとらわれるのではなく、やはり長期的な視点を常に持ち続けることが重要となります。

[調査要項]
 1.調査時2005年2月21日~2月25日
 2.対象企業 愛知中小企業家同友会、会員企業
 3.調査方法 調査書を電子メール、FAXで発送、自計記入、インターネット専用サイト、FAXで回収
 4.回答企業 2,157社より、512社の回答をえた(回収率23.7%)(建設業80社、製造業172社、流通155社、サービス業105社)
 5.平均従業員 38.1人(中央値 13.5人)
 なお、本報告は愛知中小企業家同友会情報ネットワーク委員会(委員長、藤田彰男・赤津機械(株)社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議(座長、山口義行・立教大学経済学部教授)での検討を経てなされたものである。

【業況判断】
今月の状況、前年同月比悪化。見通し改善

 「今月の状況」DIは前回調査の27から6ポイント悪化して21となった。業種別では、流通業だけが21から23へと2ポイントわずかに改善したが、建設業(45→33)、製造業(33→21)ではそれぞれ12ポイント、サービス業(14→8)では6ポイント悪化した。製造業が12ポイントもの悪化となったのは、「さほど」という回答が減少して「悪い」という回答が増大したためで、依然として「よい」と回答した企業が全体の5割を超えている。前年同月比も前回調査の21から11へと10ポイント悪化した。業種別にみても、建設業(31→23)、製造業(18→7)、流通業(19→17)、サービス業(21→△1)と全業種そろって悪化している。なかでもサービス業は22ポイントもの大幅な悪化を示しており、2004年2月調査以来1年ぶりの「悪化」超過となった。次期見通しについては前回の22から30へと8ポイント見通しを改善させた。業種別にみても製造業では28から44へ、流通業では15から31へとそれぞれ16ポイントも大幅に見通しを改善させており、製造業では明るい見通しを立てた企業が回答企業の半数を超えた。しかし、サービス業は21から20と1ポイント、建設業は25から13へと12ポイント、見通しを悪化させている。

業況推移DIグラフ

業況推移DIグラフ
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【売上高】【経常利益】
売上高、特にサービス業で悪化。経常利益、見通しは明るい

 売上高DI(前年同月比)は前回調査の20から13へと7ポイント悪化した。業種別にみると、製造業(22→11)、サービス業(10→△7)が悪化させた。特にサービス業の悪化幅は17と大きく、2003年8月調査以来、6期ぶりに「悪化」超過に転じた。なお、建設業(26)と流通業(21)は変化がなかった。次期見通しについては前回の12から14へと2ポイント改善した。業種別にみると、建設業(9→13)、製造業(16→20)、流通業(8→18)が明るい見通しをしているのに対して、サービス業だけが14から0と大幅に見通しを悪化させている。  経常利益DI(今月の状況)は前回の31から23へと8ポイント悪化させた。業種別では建設業(45→21)、製造業(31→26)、流通業(34→24)が悪化させた。反対にサービス業だけが15から18へと3ポイント改善させた。前年同月比も前回の17から7へと10ポイント悪化した。業種別では建設業が24から10へと14ポイント、製造業が17から2へと15ポイント、サービス業が7から△6へと13ポイントそれぞれ大きく悪化させた。サービス業の「悪化」超過は2003年8月調査以来である。流通業だけは19から20へとわずかに改善させている。次期見通しについては、前回の20から27へと7ポイント改善した。業種別でみても建設業(10→16)、製造業(23→27)、流通業(28→33)、サービス業(10→23)と4業種そろって楽観的な予想をしている。

売上高推移DIグラフ

売上高推移DIグラフ
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経常利益推移DIグラフ

経常利益推移DIグラフ
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【在庫】
前年同月比で製造業「減少」超過に

 在庫感DI(今月の状況)は前回調査の11から4ポイント「過剰」超過幅が拡大して15となった。業種別に見ても製造業(10→12)、流通業(11→20)とともに「過剰」超過幅を拡大させている。前年同月比は前回の12から2となり、10ポイント「増加」超過幅が縮小した。業種別にみると、製造業が9から△9となり、2003年8月調査以来の「減少」超過へと転じた。その一方で、流通業は14から18と「増加」超過幅が拡大した。次期見通しについては前回の5からわずかに「過剰」超過幅が拡大して6になった。業種別では製造業が5から△1となり「不足」すると見通した企業数が「過剰」と見通した企業数を超えた。対して流通業は4から18へと大きく「過剰」見通しの超過幅が拡大した。

【価格変動】【取引条件】
価格変動、「低下」超過幅拡大。取引条件、建設業で著しく悪化

 価格変動DI(前年同月比)は前回の△9から1ポイント「低下」超過幅が拡大して△10となった。業種別では製造業(△11→△19)、流通業(0→△1)が「低下」超過幅を拡大させた一方で、建設業(△6→△4)、サービス業(△22→△14)は「低下」超過幅を縮小させた。3ヶ月先の次期見通しでも前回調査の△4から△7へと3ポイント「低下」超過幅が拡大している。業種別でみると、流通業は1から3へと2ポイント「上昇」すると見通す企業が増大したが、建設業では4から0となり、また製造業(△10→△14)、サービス業(△8→△13)では「低下」見通しの超過幅が拡大した。  取引条件DI(前年同月比)は前回の△5から△8へと3ポイント「悪化」超過幅が拡大した。前回調査で「好転」超過となった建設業も、今回の調査では一転して3から△18へと21ポイントもの大幅な悪化を示し、再び「悪化」超過へと転じた。製造業も△2から△7へと「悪化」超過幅が拡大した。他方、流通業(△9→△4)、サービス業(△9→△8)は「悪化」超過幅を縮小させた。次期見通しは前回調査から変化なく△7であった。業種別でみると、「悪化」見通しの超過幅を縮小させたのは流通業(△8→△2)だけで、建設業(△3→△12)、製造業(△6→△8)、サービス業(△8→△11)はそれぞれ「悪化」見通しの超過幅を拡大させた。

【資金繰り】
製造業で窮屈感高まる

 資金繰りDI(今月の状況)は前回の△17から△16となり、2期連続「窮屈」超過幅が縮小している。業種別では、建設業(△17→△16)、流通業(△14→△7)、サービス業(△30→△17)が「窮屈」超過幅を縮小させたのに対し、製造業は△11から△24へと大きく「窮屈」超過幅を拡大させた。次期見通しでも△22から△17となり5ポイント「窮屈」な見通しが縮小している。業種別では、建設業(△33→△27)、流通業(△16→△9)、サービス業(△33→△15)と窮屈感が弱まる見通しを立てており、特にサービス業の見通しが大きく改善されている。しかし、ここでも製造業だけが△17から△20なっており、「窮屈」見通しの超過幅を拡大させている。

【設備過不足】【施設稼働率】
設備過不足、製造業で「不足」見通し強める。設備稼働率、2期連続で「上昇」超過幅拡大

 設備過不足DI (今月の状況)は前回の△18から△19へとわずかに「不足」超過幅を拡大させた。業種別では建設業(△17→△24)、製造業(△17→△18)がそれぞれ「不足」超過幅を拡大させたが、流通業(△22→△21)とサービス業(△13→△12)はわずか1ポイントだけ「不足」超過幅を縮小させた。次期見通しでは、前回の△16から△19へと3ポイント「不足」の見通し超過幅が拡大した。業種別にみると、建設業(△10→△14)、製造業(△11→△20)では「不足」の見通し超過幅を拡大させたが、サービス業では△18から△13へと5ポイント「不足」見通しの超過幅を縮小させた。流通業は△22で前回と同じであった。  施設稼働率DI(前年同月比)は前回の11から19へと8ポイント「上昇」超過幅が拡大した。業種別でみても、製造業(11→20)、流通業(11→18)ともに「上昇」超過幅が拡大している。次期見通しにおいても、前回の1から14へと13ポイントも大幅に「上昇」見通しの超過幅が拡大しており、明るい見通しを立てている。業種別でみても製造業(0→14)、流通業(4→15)とともに大幅に「上昇」見通しの超過幅が拡大した。

【雇用】
不足感さらに強まる

 雇用動向DI(今月の状況)は△32から△36と4ポイント「不足」超過幅が拡大した。これで3期連続の「不足」超過幅拡大である。業種別では製造業(△27→△38)、流通業(△36→△38)サービス業(△27→△33)では「不足」超過幅が拡大したが、建設業では△40から△35と5ポイント「不足」超過幅が縮小した。次期見通しでは前回の△26から△29へと3ポイント「不足」超過幅が拡大した。業種別では製造業(△21→△27)、流通業(△30→△31)、サービス業(△21→△30)が「不足」超過幅を拡大させたのに対して、建設業は△32から△26へと6ポイント「不足」超過幅を縮小させた。

【経営上の力点など】
問題点で「従業員の不足」がトップに

 経営上の問題点では「従業員の不足」が28%で第1位になっている。次いで「民間需要の停滞」(27%)、「販売先からの値下要請」(25%)、新規参入者の増加(21%)が続いた。業種別で特徴的なのは製造業で第1位に「仕入単価の上昇」(35%)を挙げていることである。文書回答では、「マーケットの縮小」や「社会保険料のアップ」などが挙げられた。  経営上の力点では第1位に「付加価値の増大」(57%)が挙げられており、「新規受注(顧客)の確保」(54%)、「社員教育」(34%)が次いで挙げられている。業種別で特徴的なのは、第4位に建設業で「人材確保」(29%)、サービス業では「情報力強化」(28%)を挙げていることである。文書回答では「リサイクルの推進」、「仕入先の安定」などが挙げられている。

<会員の声(業種別)>

(1)サービス業
【業況判断】「今月の状況」DIは14→8で6ポイント悪化、「前年同月比」も21→△1となり、22ポイントの大幅な悪化を示しており、2004年2月調査以来1年ぶりの「悪化」超過となっています。
【売上高】「前年同月比」DIで10→△7と大きく悪化、2003年8月調査以来6期ぶりに「悪化」超過に転じています。また「次期見通し」でも、他の業種が明るい見通しをしているのに対し、14から0と大幅に見通しを悪化させています。
【経常利益】「今月の状況」DIが15から18へと3ポイント改善していますが、「前年同月比」では7から△6へと13ポイント大きく悪化させ、サービス業の「悪化」超過は2003年8月調査以来となっています。

1.飲食店
・1.仕入先の値上げ要請(ビールの値上げ・牛肉関係の値上、豚、鳥も値上がり)2.業況は良いとはおもえない。売上増は新店オープンによる増加。3.セントレア・万博・名駅前・他にて飲食店の増大で、人材確保が難しくなってきている。新年度、名古屋地区では店の展開は難しい。(A社)
2.介護保険事業
・この先の高齢化社会を見据えての介護事業は利益が上がると思い、新規民間大企業及び医療法人・社会福祉法人等々乱立のため、民間各施設は空きが多い状態です。但し、医療法人は病院直結施設のため満タンとなり施設を増設(社会福祉法人もしかり)、介護保険財政の悪化や保険給付の減額等々で収益の減少、小規模施設等は先行き不安材料ばかりです。(B社)
3.計量証明事業
・需要は多いのだが、価格低下や経費増大に伴い利益確保は出来ない状況。景況が好転の気ざしとの政府の報道は受け入れられない。(C社)
4.建築設計
・依然として、リートバブル(投資ビル事業)が続いているようです。土地費の値上がりと売り土地不足感がある。いい土地があれば、またいい土地を持っている人にとっては、建設の好時期である。それは、建設費がまだ値上がり基調にないことと、金融機関からの融資がかなり楽になっている(金利を含めて)。この調子はまだ1年は続く勢いです。建設業全般でいえば、まだまだ満足いく状況でないにしても、賃貸マンション、ビル投資は活況を呈しているので、この分野に係わっている企業は状況がよい。(D社)
5.旅行業
・愛知万博は在名の中小旅行社にとってはメリットが少なく苦慮。海外に力を入れたい。(E社)

(2)建設業
●前回調査の次期見通しの予測どおり、「今月の状況」判断DIは前回調査の45から33と12ポイント悪化しました。前年同月比も31から23ヘ8ポイント悪化しており、次期見通しについても他の業種と違い建設業は、25から13へと12ポイント悪化させています。ただその次期見通しも、売上高では悪化していますが、経常利益は若干改善を予想しています。当面の仕事はあるものの、経営上の問題点として一番(35%)に上げられている人手の不足、さらには万博後の公共工事の行方などが先行きに対する不安材料となり厳しい見方になっているのではないでしょうか。

1.総合建設
・空港開港、万博開催等建設工事が完了してしまい、建設業者が余って来ると思うので、これから一層受注競争がはげしくなり、コスト面で心配。(A社)
・仕事量は増えても、熟練技術者(資格保有者)と作業員の不足により協力会社に応援を依頼するため利益薄の結果となり、経常利益が上がらない。中型ゼネコン、工務店関係が仕事量を増やしてきていると思う。人件費単価も大型ゼネコンに比べ良いと思う。(B社)
・官公需は万博・空港が終わって、後はほとんど何も無い。普段なら出てくるハコモノも先送り。少し出ても低い数字での取り合い。来年度予算は今年以上に厳しくなりそう。民需は住宅が堅調。当社も借り入れでやっている。以前は10億円の仕事を3社のJVでやっていたが今では5億円の仕事を1社でやっている。JVが少なくなり大型物件は大手が持っていく。地元企業が取れる規模が小さくなっている。万博会場へ行ってみたが走っているトラックのナンバーは他県ばかりだった。(C社)
2.設備工事業
・受注先がトヨタ自動車及び同関連グループ企業を主体としており当面安定した受注確保が期待出来るが、昨年より若手従業員(30才以下)の求人活動を行っているが厳しい状況である。(D社)
・物件はあるが競合のため、厳しい価格を要求される。又仕入先も原材料の相場を理由に協力が難しい事と値上げ要請が来ている。(E社)
・国際空港、万博等、愛知の特需が一段落し4月以降の見通しが掴みにくい。 鋼材、材料等の値上げが相次いでいるが受注金額は減少の一途を歩んでいる。 景気の悪い時期でも売上が伸びている会社もあるので再度私共のお客様は誰なのか?何を売りたいのか再考したいと思う。(F社)
3.電気工事
・万博、空港の開設にあたり仕事量の増加はかなりのものがある。人の確保にそうとう苦労してきている。年度末後も軟調ではあるが仕事量は増える見込み。(G社)
・建設業は3月は必ず落ち込む。名古屋市内はかなりクレーンが建っているのが目立っている。名駅付近に高層ビルが3棟建つと聞いている。飲食店のリニューアルや老健施設の仕事も出てきており、住宅(都心はマンション)も含めて仕事はしばらくあると思われるが、儲かるかどうかは別問題。(H社)
4.内外装工事
・トヨタ関連企業の好況に支えられ売上高は増加しているが、材料仕入れ単価の先行きの見通しがたたず受注契約金額の判断に苦慮している。(I社)
・業界全体では単価は安値安定だが仕事量は多いと思う。業界の中で受注の多い業者と暇な業者が2極化している。強い会社は専門業種に特化していて機動力があり、お客様に提案が出来る会社のようだ。仕事は突発的な受注で短納期の場合が多く、長期的な見通しは立ちにくい状況。(J社)

(3)製造業
●製造業の各DI値は、見出しの数値をそのまま鮮明に示し、「今月の状況」と「前年同月比」は高い位置から悪化、「次期見通し」では好転を示しています。特徴的な点として、在庫が前年比でマイナス(9→△9)に転じ、製造業だけが資金繰りで悪化数値(今月の状況△11→△24)となっています。
業界による業況の違いも明らかに出ています。自動車関連では「バブル期以上の仕事量」との声も多く、その内容では海外向けが大きく伸びています。そして、東南アジア方面の一部生産調整とデジタル半導体関連がやや落ちていることが、業況判断の一時的悪化に傾いたようです。一方、消費財関連(食品を除く)や木材・印刷などでは、依然として厳しい状況が見うけられます。
経営上の問題点としては、1位が「仕入単価の上昇」34.9%、2位「販売先からの値下要請」33.7%、3位「仕入先からの値上要請」25%です。全体で「従業員の不足」が1位に上げられているのと同様に、製造業においても「人手不足」「外注先が見つからない」「中国人労働が急激に増加」などの声が多数聞かれている上での上記数値であり、仕入れ・売り両面からの価格圧力による利益圧迫の厳しさがうかがわれます(「前年同月比経常利益」17→2と15ポイント悪化)。また、経営上の力点に「付加価値の増大」が1位であるのは全体と同じですが、特に「財務体質の強化」23.3%の比重が高いことも指摘しておきます。
しかしながら、どの業種業界においても環境要因にかかわらず「良い」と回答している企業があることも明確です。広く市場や現場の声をキャッチし、社員も含めた全社的な経営指針の実践で、業界においてキラリと光る企業になることが新たな仕事を呼び込む基本となっているようです。(事務局・加藤)

1.金属・設備関連
・設備関係は仕事量がオーバーフロー状態。2007年までトヨタの設備投資が続くので、それまでは仕事がある。材料の購入が困難。工具・歯具類も納期がかかるようになり、機械については1年納期もある。バブル崩壊後の機械メーカー倒産や事業吸収縮小などが影響している。(A社)
・外注の確保が困難。外注先単価が上がり利益が出なくなった。仕事量が増えれば利益が上がるのが普通だが、逆のねじれ現象が始まってきた。買い手市場から売り手市場に変化し始めた。(B社)
・海外研修労働者が急増。メンテナンス作業の周囲では中国語が飛び交い、外国にいるような気持ちになる。自給750円で3年間雇用できる。派遣雇用も増加。人材採用がかなり困難になった。(C社)
2.輸送機械部品関連
・バブル期以上の仕事量で、利益はバブル期の1/10。負荷130%で休日と残業でこなしている。受注量が落ちたら採算は厳しくなる。いよいよ中国に工場を出さざるを得ない。日本でも手一杯で、技術者などの人材をどう手当てすべきかに頭が痛い。(D社)
・過去最高、4年前比200%の仕事量。取引先分散の成果で、利益率も向上し経常利益20%。(E社)
3.電気、精密機械部品
・制御盤部門が忙しい。デジタル関連向けが8→6割に落ちたが、機械金属関連向けが2割以上に伸びている。輸出関連需要が大きい。東南アジアの生産調整が始まり、この先は伸び止まり。(F社)
・半導体業界の受注が減少ぎみだが、OA機器関連の開発案件が増加して全体では微増。今回の半導体の低迷は今年後半、もしくは来年からはまた増加に転じると予測している。(G社)
4.食品関連
・鳥インフルエンザ問題以降、異常な相場高で先行きの予想が付かない状況。 仕入原料高を、量販店が吸収せずに、価格のしわ寄せは弱い業者に大きな負担となっている。配送業者に無理が効かなくなり、配送経費が増加している。(H社)
5.繊維関連
・中国からの仕入増大。原料の値上げ要請があり、中国製品だから安いということはなくなりつつある。縫製部門がコスト高となり、生産継続が岐路に。全て外注に持っていくか判断が迫られる。(I社)
6.印刷関連
・9月までの好調と打って変わり、10月以降は売上が急降下。景気の足踏みがマスコミで話題になったのと歩調を合わせている。消費の長期低迷が原因か?(J社)
・見積、再見積と厳しい状況。まだまだ不況は続くと予想されるので、生き残りを現在模索中。(K社)

(4)情報・流通業
●「業況判断」DI(以下全てDI値)『今月の状況』は、小幅改善21→23です。「資金繰り」に多少の改善△14→△7はあるものの「今月の状況」と「前年同月比」ともに特に大きな変動はありません。『次期見通し』の「業況判断」15→31と大幅改善を予想しています。内容は、「売上高」8→18、「経常利益」28→33、「在庫感」4→18、「資金繰り」△16→△9、「設備稼働率」4→15、等です。『前年同月比』では、「取引条件」「施設稼働率」に改善が見られるものの大きな変動はありません。『経営上の問題点』では「従業員の不足」が03年5月から2年近く上昇線を描き続けています。しかし、一年間上昇を続けてきた「熟練技術者の確保難」が下降12→6に転じました。『経営上の力点』では、「得意分野の絞込み」「情報力強化」が伸びを見せ、「新規受注の確保」「研究開発」が後退しました。がむしゃらな仕事の開拓ではなく、自社を見直し、顧客の必要とするものを洗い出し戦略的な営業展開にシフトしている様子が見られます。卸売業では、業界を問わず、町の小さな業者さんが消えていくとの声が聞かれました。(事務局・服部)

1.機械・部品・機器・サービス関連
・機械部品にも材料の値上げによる影響が出ている。仕入先からは値上げと取引条件の見直しをセットで持ち出され、どちらも選択しなければならない。営業戦力の補充が出来ない。(A社)
・自動車関連はまだまだ設備増強、生産力アップにやっき。ついていかなければおいていかれる危機感。我々流通は商品の安定供給を言われるが、値下げの圧力は強い。(B社)
・鉄鋼・石油系製品に加えハイス工具関連のメーカー・問屋からの値上げ要請が特に目立つ。(A社)
・外食産業向けの厨房機器の販売とサービスは、中部国際空港、万博、etcの需要で1月~3月迄は売上増が見込めるがその後が不透明!(C社)
2.保険関連
・保険料率自由化等による値下げもほぼ落ち着き、補償内容の重視に変わりつつある。(D社)
・銀行窓販解禁による危機感、個人情報保護法施行の為の整備等、大変。(E社)
3.小売関連
・ここ最近商店街が、完全土日型の商店街になりつつあるので、平日の売上確保!(F社)
・大企業での(更に本年も)統合、合併、業務提携が活発化。中小企業への打撃は増すばかりと予測。企業努力も限界を超えようとしてくるか。(G社)
・昨年の米の暴騰から農家が直売、かなり影響ある。 その時の価格暴騰で米離れが一層進行。(H社)
4.運輸関連
・自動車の強気の生産計画に伴い流通の分野も再編計画の見直しが外注各社にされており何時我々の分野にも飛び火するのではと心配。(I社)
・Nox法などの対策のため車両の入替等は物流関係者には負担が大きい。 セントレア開港により知多半島の交通量が増え渋滞も多くなった。 別納カード制度変更のためETC車載器取付も負担でした。 しかもETCゲートの完備が遅れているのもどうかと思う。(J社)
・昨年来の燃料単価上昇に伴い、燃料数量は変化ないが、それ以外の売上(ex洗車、オイル等)減。アルバイト不足(社員も)で求人できない。費用ばかりかかる。(K社)
5.ソフト関連
・通販・インターネット等の普及で、当社の取扱商品も一般的な物は、そちらを利用する顧客が増えている。又官公庁も値段だけで購入(提案を無視)傾向が一段と強く成ってきた。 (L社)
・需要はあり、今後も増加する傾向にあるが、環境としては厳しくなる。技術者の確保が難しくなっており、さらに困難になると思われる。(M社)
6.食品関連
・末端小売業界は軒並み既存店で低迷、特に食品が悪い。(N社)
・飲食店(外食産業)の売上が平均5~10%落ちており、売掛金の入金が遅れてきている。(サイト長期化)仕入先の卸しからは支払サイトが短縮。フローが悪くなってきている。(O社)
7.その他
・中小企業にまで、大企業並の減損会計が必要なのでしょうか?金融機関の中小企業に対する評価基準を明確にしてほしい。(P社)