- 【概況】
- 【業況判断】 「今月の状況」全業種で後退。サービス業を除き下落
- 【売上高】・【経常利益】 製造、大きく後退。全業種で経常利益が悪化
- 【在庫感】 軒並み「過剰」超過幅が縮小
- 【取引条件】 製造の取引条件が悪化
- 【資金繰り】 製造の「窮屈」超過幅が拡大
- 【設備過不足】・【施設稼働率】 全業種で「不足」超過幅が縮小。「低下」傾向を示す施設稼働率
- 【雇用】 深刻な人手不足感が継続
- 【価格変動】 仕入価格、サービスで「上昇」。販売価格、製造で「低下」傾向
- 【借入金利】 短・長期金利、流通で「上昇」超過縮小
- 【経営上の力点など】 経営上の問題点、「民間需要の停滞」が上位に
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景況調査報告(2019年2月)第101号(PDF:1.45MB)
【概況】
「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を差し引いた「今月の状況DI」は、前回の37から30へ7ポイント下落しました。全業種で「良い」超過幅の縮小が見られ(建設業56→47、製造業35→26、流通業32→25、サービス業33→29)、特に建設業と製造業は、それぞれ前回から9ポイントの下落となりました。
「前年同期比DI」は前回の11から10へとわずかな「好転」超過幅の縮小に留まりましたが、建設業は25→21へと4ポイント、製造業では7→△1へ8ポイント下落。前回から横ばいの流通業、3ポイント改善のサービス業と対照的な動きが観察されています。
こうしたなか「次期見通しDI」は前回の33から30へと「良い」超過幅が減少。業種別でもサービス業を除いた全業種でDI値が下落していることから、昨年末からの景気状況の変化が中小企業経営に徐々に広がりつつあるのが現況といえるでしょう。
今回調査で特に目を引いたのは、製造業の落ち込みです。2018年8月末調査では、頻発した災害の影響から、前年同期比DIが6期(1年半)ぶりに“悪化が改善を上回る”マイナスのDI値となりました。しかし今回調査においては、製造業の減速を裏付ける突発的要因は見当たりません。それにも関わらず、「前年同期比DI」は再びマイナス値に落ち込んでいます。
分析会議の議論、ならびに「文書回答」からは、「昨夏以来の半導体製造装置や工作機械関連の落ち込みが顕著」、「中国市場の設備投資減少にともない、半導体製造装置およびロボット向け部品の在庫が急増している」など、米中貿易戦争に端を発する中国経済減速の影響が、いよいよ顕在化してきたことを裏付ける声が聞かれました。このような状況を反映して、製造業の前年同期比「売上高DI」(11→1)ならびに、次期見通し「売上高DI」(4→△8)は、それぞれ二桁の大幅な下落を示しています。世界経済の動向には細心の注意を払う必要があります。
建設業でもDI値の落ち込みは見られたものの、「鉄骨を中心に部材が手に入らない」など、依然として好調さを保っている状況が分析会議で報告された一方、大手不動産会社の手掛けた賃貸向け物件で明らかになった大規模な建築基準法違反問題の影響を案ずる声が聞かれるなど、全体としては好調にありながらも、局所的な不調が今後波及する懸念は拭えません。
米中の先端技術覇権をめぐる貿易戦争の影響が製造業に顕在化するなか、現状の景況は足元好調な建設業で保たれているとも見てとれます。しかし、その建設業も先行きを楽観視できる状態にはありません。中小企業経営者には、視野を広く取った情報収集と景気の先行きを注意深く読み取ることとともに、時代の変化に則したビジネスマインドを鍛える努力が今後一層求められます。
[調査要項]
調査日 | 2019年2月18日~2月27日 |
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対象企業 | 愛知中小企業家同友会 |
調査方法 | 会員専用サイト「あいどる」 |
回答企業 | 会員企業より1309社の回答を得た。業種内訳は以下 (建設業224社、製造業283社、流通業336社、サービス業466社) |
平均従業員 | 21.6名(中央値8名) |
なお、本報告は愛知中小企業家同友会・経営環境調査委員会(委員長、太田厚・(株)太田電工社社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議での検討を経てなされたものです。
【業況判断】
「今月の状況」全業種で後退
サービス業を除き下落
「今月の状況」DIは前回の37から7ポイント後退し30となった。業種別でみると、建設業が56から47と9ポイント、前回調査で大きく改善した製造業は35から26と9ポイント悪化に転じた。流通業は32から25と7ポイント、サービス業も33から29と4ポイントと全業種で後退傾向を示した。
前年同月比は、前回の11から10とほぼ横ばいで推移した。業種別でみると、建設業が25から21と4ポイント、製造業が7から△1と水面下に8ポイント悪化した。一方、流通業は、5から5と横ばい、サービス業は唯一、12から15と改善傾向を示した。3ヶ月後の次期見通しは前回の33から30と3ポイント後退した。建設業が47から43と4ポイント、製造業が27から18と9ポイント、流通業が32から26と6ポイント、いずれも後退した。サービス業だけは31から35と4ポイント改善した。
【売上高】・【経常利益】
製造、大きく後退
全業種で経常利益が悪化
売上高DI(前年同月比)は前回の15から14とほぼ横ばいで推移した。業種別で見ると、製造業が11から1と10ポイント、流通業でも13から10と3ポイント落ち込みを見せた。サービス業だけは17から22と5ポイント改善傾向を示した。建設業は22から22と変化が見られなかった。3ヶ月後の次期見通しは、前回の16から13と3ポイント悪化した。業種別でみると、建設業は29から21と8ポイント、製造業が4から△8と二桁の12ポイント、流通業が21から15と6ポイントそれぞれ悪化した。サービス業だけは12から21と改善傾向を示した。
経常利益DI(今月の状況)は前回調査の29から26と3ポイント悪化した。業種別でみると、建設業が45から37と8ポイント悪化し、製造業が25から3ポイント悪化し22となった。流通業でも26から22と4ポイント悪化した。サービス業では26から25とほぼ横ばいで推移した。
前年同月比も同じように前回の10から7と3ポイント悪化した。建設業では22から14と8ポイント悪化した。製造業が5から△2と水面下になり7ポイントの悪化傾向を示した。流通業も8から2と6ポイント悪化した。サービス業のみ9から13と4ポイント改善した。3ヶ月後の次期見通しは前回の24からほぼ横ばいの22となった。建設業が33から22、製造業でも19から5といずれも二桁の悪化傾向を示し、先行きのマイナス要因を予測した。一方、サービス業では21から29と改善を示した。流通業は27から26とほぼ横ばいで推移した。
【在庫感】 軒並み「過剰」超過幅が縮小
今月の状況DIは、前回調査の9から7とほぼ横ばいだった。業種別でみると、製造業(12→9)は「過剰」超過幅が3ポイント縮小した。流通業(7→5)でも「過剰」超過幅が2ポイント縮小した。前年同月比は前回の5から4と大きな変化はないものの「過剰」超過幅が縮小した。業種別でみると、製造業(5→6)はほぼ横ばいで「過剰」超過幅が拡大し、流通業(5→2)では「過剰」超過幅が縮小した。次期見通しは6から4とほぼ横ばいで推移した。業種別では、製造業(9→6)は「過剰」超過幅が3ポイント縮小したが、流通業(3→3)は変化がなかった。
【取引条件】 製造の取引条件が悪化
前年同月比DIは4から5と大きな変化はないものの取引条件が好転した。業種別でみると、製造業(4→0)が反転し取引条件が悪化した。流通業(△2→4)は取引条件が好転した。建設業(13→13)、サービス業(4→4)は変化がなかった。次期見通しは、前回の3から2期連続で変化がなかった。業種別でみると製造業(1→△2)が取引条件が悪化した。サービス業(3→5)はほぼ横ばいで推移した。建設業(6→6)・流通業(2→2)は変化がなかった。
【資金繰り】 製造の「窮屈」超過幅が拡大
今月の状況DIは、前回の△19から△18と厳しい状況が続いている。業種別でみると、建設業(△11→△13)・製造業(△15→△19)が「窮屈」超過幅を拡大させた。一方、流通業(△21→△15)・サービス業(△25→△23)が「窮屈」超過幅を縮小させた。次期見通しは前回の△17からやや悪化し△18となった。業種別では、建設業(△12→△13)・製造業(△16→△25)が「窮屈」超過幅を拡大させた。一方、流通業(△16→△13)は、「窮屈」超過幅が縮小し、サービス業(△21→△19)でも同じ傾向が見られた。
【設備過不足】・【施設稼働率】
全業種で「不足」超過幅が縮小
「低下」傾向を示す施設稼働率
設備過不足DI(今月の状況)は△17から△15とほぼ横ばいで推移した。業種別でみると、建設業(△23→△19)で「不足」超過幅が縮小し、サービス業(△15→△12)でも同じ傾向が見られた。製造業(△20→△19)・流通業(△14→△13)は大きな変化が見られなかった。
次期見通しでも前回△16から△15とほぼ横ばいで推移した。建設業(△25→△18)が「不足」超過幅が縮小した。製造業(△18→△17)・サービス業(△14→△15)ではほぼ横ばいで推移した。流通業(△10→△10)では変化がなかった。
施設稼働率DI(前年同月比)は前回調査の8から4と「上昇」超過幅が縮小した。業種別でみると、製造業(13→6)でも「上昇」超過幅の縮小が見られた。流通業(2→2)は変化がなかった。次期見通しは前回調査の6から△2と大きく「上昇」超過幅が縮小した。水面下になったのは、2017年5月期ぶりである。業種別にみると、製造業(8→△2)は「上昇」超過幅が二桁縮小した。流通業(4→△3)でも水面下になり「上昇」超過幅を縮小させた。
【雇用】 深刻な人手不足感が継続
今月の状況DIは△47から△46とほぼ横ばいで推移し、深刻な人手不足感を示した。業種別でみると、建設業(△69→△62)では最悪期は脱したものの不足感は高止まりした。その他の業種も依然として人手不足が続き、流通業(△45→△47)とサービス業(△40→△43)は更に「不足」超過幅が拡大した。製造業(△41→△38)はやや「不足」超過幅が縮小した。
次期見通しは△44から△42と大きな変化がなかったが、依然として深刻な数値を示した。業種別にみると、建設業(△66→△57)は最も深刻な数値を脱し、製造業(△39→△32)でも「不足」超過幅が縮小した。一方、流通業(△41→△46)は「不足」見通しの超過幅が拡大し、深刻な状態が深まった。サービス業(△38→△38)は変化がなかった。
【価格変動】
仕入価格、サービスで「上昇」
販売価格、製造で「低下」傾向
仕入価格変動DI(今月の状況)は前回の37から35と小幅ながら「上昇」超過幅が縮小した。業種別でみると、建設業(56→46)は10ポイント「上昇」超過幅の縮小が見られた。製造業(58→56)も小幅ながら2ポイント「上昇」超過幅が縮小した。一方、サービス業(19→21)は3ポイント「上昇」超過幅が拡大した。流通業(30→30)は変化がなかった。
前年同月比では37から変化がなかったものの、10期連続の拡大傾向が継続となった。業種別でみると、建設業(56→52)が4ポイント、製造業(60→58)が小幅ながら2ポイント「上昇」超過幅の縮小を示した。サービス業(17→20)は3ポイント「上昇」超過幅が拡大した。流通業(31→32)は大きな変化がなかった。
次期見通しも前回の29から28と大きな変化がなかった。業種別でみると、建設業(41→37)が4ポイント「上昇」超過幅が縮小し、製造業(41→37)でも「上昇」超過幅が縮小した。流通業(24→28)は4ポイント「上昇」超過幅が拡大し、サービス業(17→19)はほぼ横ばいで推移した。
販売価格変動DI(今月の状況)は前回の14から大きな変化がなく15だった。業種別でみると、建設業(22→26)とサービス業(8→14)では「上昇」超過幅が拡大した。製造業(14→7)は「上昇」超過幅が縮小した。流通業(16→15)は大きな変化がなかった。
前年同月比は前回16から大きな変化がなく17だったが、上昇傾向は3期連続だった。業種別でみると、建設業(26→28)、流通業(17→20)はいずれも「上昇」超過幅が拡大した。一方、製造業(15→11)は「上昇」超過幅が縮小した。サービス業(11→12)はほぼ横ばいで推移した。次期見通しは前回の10から13と「上昇」超過幅が拡大した。業種別でみると、製造業(4→6)・流通業(12→14)は小幅ながら「上昇」超過幅が拡大し、サービス業(6→15)は9ポイント「上昇」超過幅が拡大した。建設業(18→18)は変化が見られなかった。
【借入金利】
短・長期金利、流通で「上昇」超過縮小
短期借入金利DIは前回調査の△1から0と大きな変化がなかった。業種別でみると、製造業(0→2)、サービス業(△4→0)が「上昇」超過幅が拡大した。流通業(△2→△3)はほぼ横ばいで推移した。建設業(2→2)は変化がなかった。
長期借入金利DIも前回の△1から0と大きな変化がなかった。業種別でみると、サービス業(△3→2)の「上昇」超過幅が拡大した。建設業(0→1)でも小幅ながら「上昇」超過幅が拡大した。一方、流通業(0→△3)は「上昇」超過幅が縮小した。製造業(0→0)では変化がなかった。
【経営上の力点など】
経営上の問題点、「民間需要の停滞」が上位に
全業種でみた経営上の問題点は、「従業員の不足」(45%)、「人件費の増加」(32%)は前回同様、「民間需要の停滞」(19%)が上位の問題点としてあがってきた。需要の低下に伴う様々な経営への影響が顕在化してきたと予測される。人手不足は長期トレンドであり、魅力ある企業づくりは喫緊の課題といえる。また社員の高齢化による人件費の増大への対応も引き続き急務といえる。
業種別でみて特徴があったのは、建設業で「下請業者の確保難」(42%)、製造業で「熟練技術者の確保難」(29%)、流通業で「民間需要の停滞」(25%)、サービス業で「新規参入者の増加」(27%)だった。文書回答では「消費税の駆け込み需要がありとても忙しい(建設業)」「運賃はじめ原材料の値上げ、協力工場への委託工賃の上昇(製造業)」「残業規制や有休消化の為に繁忙期の仕事を断らざるを得ない(流通業)」という情報が寄せられた。
全業種における経営上の力点は、第1位「付加価値の増大」(56%)、第2位「新規受注(顧客)の確保」(50%)、第3位「人材確保」(41%)で前回から変化がなかった。
<会員の声(業種別)>
(1)建設業
●建設業の主要DI値は高水準ながら全て下落を示しました。季節要因の錯綜はあるもの消費税駆け込み需要も含め足元表面は最高調の忙しさの中に内在化する多様な懸念材料が表出しました。大手・零細、都心・地方と格差を拡大させ、空家や賃貸動向や大手不正問題の影響、また今は堅調な工場・倉庫建設ですが製造業DI値は落ち込み始めたこと。コスト増に対し仕事単価は上がらず人材不足と請負構造から働き方改革への対応に非常に苦慮している中小零細建設業界の悩みの深さが寄せられました。(加藤)
1.総合工事、リフォーム、大工、室内装飾
- 業界全体では景気良いが大手と零細および都市と地方の格差が大きくなっている。職人や材料確保が困難なケースが多くなっている。その為、工程管理が難しくなっている。
- 消費税駆け込みの影響が少しあるのかと感じる忙しさ。前回のような反動冷え込みが来ないか不安。
- 仕事量は多いが仕事単価がなかなか変わらない。現場物件数の集中による深刻な人手不足、利益不足。
2.基礎、鉄筋、土木、コンクリート、解体
- 昨年末までの慌ただしさが年明けすぐに落ち着き始めた。例年通りと言えばそれまでだが、繁忙期と閑散期の格差は今後の課題だ。3月から徐々に新規工事が始まり、安定的に受注できている。
- 鋼材費が高騰中、昨年比1万円UP/tで高止まり。春以降更に多少の値上げが懸念される。見積り時からの鋼材費タイムラグ差額が目立つ。施工単価は例年通りの状況。木造基礎・その他諸々の細かな案件が年明けから集中して小忙しい状況が続いている。大物案件・マンション関係は、3~4月以降で着工見込みがあるが、例年通り夏は勿論、夏前後の人手不足が懸念される。
- 解体工事業界は消費税の駆け込みが始まり、どこの廃棄物処理場も処理能力を超える搬入量で直接間接的に処分費用が増加し利益率が悪化。7、8月頃からの反動がどうなるか不安。
3.左官、外構、屋根外壁
- 消費税の駆け込み需要で非常に忙しいが契約金額は上がらない。人材不足で経費は増加して利益に繋がらない。増税後の需要に不安を感じる。
- 消費税の駆け込みか非常に多忙である。それ以後の景気動向が気に掛かる。
- 消費増税の駆け込み需要激増を予測したが今回はそれほどでもない。仕事量はほぼ適正だが今後の景気動向に注意し対応していきたい。
4.給排水管工事、電気工事、設備工事
- 前年比で仕事量が増えている。消費税駆け込み需要の兆しだろう。人材不足。
- 消費税駆け込み需要が見込まれ今期の売上や利益の見通しは良いが来期が心配。
- 労基の改正による時間制約の中、クオリティーを下げず顧客満足度を維持または上昇する対策が急務。社員の意識改革と労働のモチベーションの保ち方など、社員の心身のための労基改正ではあるが、生活維持の賃金体制とギャップが大きくなるため、経営側も労働者側も悩んでいると思う。社員教育が課題。
- 働き方改革による対応をとることが業界的に非常に厳しい。働き方改革は当業界では非常に悩みの種。社員も休みを取りたくないのに休まなくてはいけない状況。
5.不動産
- 名駅付近など事業用不動産の価格はかなり上昇しバブル感あり。住宅用地も駅近や学校付近など便利な地域は即売するがそうでないところはかなり苦戦している。年明けから来客数減少。
- 1000万以下のローコスト系は低所得者層や外国人などフラット35で良く売れているが、それ以外は展示場来客数も昨年比減。周辺地域部は冷え込んでいる。高級マンションを個人が法人設立し区分所有する案件が増加。金融庁や金融機関は賃貸系をかなり引き締め、西三河地域以外は全部落ちてきている。
- 市街化調整区域の農地価格低下は深刻な状況。所有者不明な空家の増加に対し行政調査費用が嵩み2020年相続登記の義務化へと法改正されるようだ。
- 取引先倒産の煽りを受けた。大企業や同業者の参入増加、モラルや倫理観のない業者が非常に増えた。
6.建築設計
- 建設単価は過去最高な勢いだが、それでもやり手がない状況。土地価格も下がる気配なく高値継続。一方で住宅販売戸数や賃貸マンション入居率は良くない状況が出始め不動産会社もかなり慎重になってきた。新規計画がなかなかまとまらなくなってきており今がピークの感。今後は慎重に世界の経済情勢を見守りながらの舵取りになりそうだ。
- 全体としてはMAX、土地も健在で過去最高の絶好調、鉄骨系を中心に資材半年待ちなど大変な状況。一方で賃貸住宅の1月着工数が大幅減、レオパレスや大東建託など不正問題顕在化の影響が懸念される。企業や工場や倉庫の投資が堅調。住宅も名古屋は良く、大阪や京都も結構良い。
- 消費税駆け込みの影響か、設計の協力業者も業務が一杯で遅延。施工業者もどこも着工が遅くなる。
(2)製造業
●業況判断DIでは、前年同月比が7→△1と、全業種の中で製造業のみがマイナス値を示し、次期見通しも27→18と、全業種中最も大きな下げ幅となりました。売上高でも前年同月比が11→1と、他業種が微減または回復傾向の中で大きく低下、次期見通しでは4→△8と、これも全業種で製造業のみがマイナス値となりました。従来から経営課題として回答率の高かった、従業員の不足・人件費の増加・熟練技術者の確保難、に加え、文書回答からは働き方改革への対応が企業の負担感を増している他、仕入れ単価の上昇と販売価格の低下が企業の収益を悪化させていることがうかがわれます。(井上一)
1.金属加工・樹脂加工
- 国内需要及び国内生産の減少の流れとEV化の流れは変わっていない。今年は、消費税増税による駆け込み需要に対する増産計画で助かっているが、先行きは米中関係と日米関係で先行きは見えない。
- 建築用のボルトは慢性的に不足しており、メーカーが受注停止している。
- 零細企業の減少に伴い、そこから行き場の無くなった単価の低い仕事が市場に出、その仕事をそのままの単価で下請けにさせようとする元受けがいる。その仕事をしていたところが廃業に追い込まれているということを考えれば、その単価ではお願いできないと思う。元受けもメーカーに単価交渉をできるようにお願いしたい。
- 支払いの現金化が一部進んでいるようだが、二次、三次は手形決済が半数。120日が大半。
- 下請けに金型を押し付けている状況は未だ変わらない。保管管理費用は下請け持ち。
- 高齢化の退職者(機械商社による修理技術者)やメーカー者による機械メンテ知識不足のでの今後の対応による機械生産性の不安。
- 昨年春ごろから原料や副資材の値上げになり価格への反映を飲んでいただけにくい状況。
- 大手企業の国内受注が激減している中で小ロット受注でも下請けで価格競争が激化。
- 見積もり案件も昨年と比較しても減少傾向を感じる
2.機械部品・機械製造
- 働き方改革が負担となってきている。
- オリンピックで息切れかという人もいたが、大阪万博が決まったので、そこまでは、好況が続きそう。
- 車の電子化が急速なので、携帯電話の落ち込みはほとんど影響ない。
- 仕入価格が高騰しているのにもかかわらず、納品金額の値下げ要求がある。
- 同業者の後継者不在の影響で当方に回ってくる仕事もある。チャンスという言い方もできるが、業界全体にとって良いことかどうかは疑問がある。
- 昨年10月から売り上げが、計画を15%ほど下がっている。中国向けの部品が減少した。いつまで続くかは不明の状態。
- 相変わらず、仕事の波が激しい。無い時は全くなく、ある時はキャパオーバーで、失注してしまうのが現状である。
3.印刷・包装関連
- チラシによく使うオフ輪用コート紙が不足していて仕事を断った業者もいるみたい。紙の不足を背景に、上質紙は10%以上の値上げがあった。段ボールについては米中貿易摩擦の関係からか、国内の古紙が中国に大量に輸出されており、国内の供給量が極端に減ったため強硬に値上げを通告し、交渉に余地がないほどに値上がった。販売価格に転嫁できれば良いが。
- 業界の状況はどこも同じになっているのかなと思う。その中で有利に立つには、自社の強みと、独自の製品が必要になってくると思う。
4.食品・繊維製品・雑貨・身の回り品製造業
- 小売店舗では来店客の減少と一人当たりの買い物点数、単価が減少。付加価値を持った新製品を提案するものの現実はお値打ち品に集中する傾向。中には新製品の値段をいきなり下げ、過剰在庫状態を早々に回避しようとする小売もある。
- 運賃はじめ原材料の値上げ、協力工場への委託工賃の上昇が大きくなっている。
- 相続税対策を目的とした賃貸住宅の建築が鈍化してきているなかで、戸建て住宅建築も年度末の盛り上がりは見られずに推移しており、全体の引き合いは弱い。
- オフィス家具需要は、3月に向けてないことは無いと思われるが、運べるかどうかと、在庫があるかどうかが問題である。車の手配は危機的状況である。先の見通しが立ちにくい。
(3)流通業
●前回の11月景況調査の結果と比較して「今月の状況」を見ると、業況判断DIは32→25と7ポイント減少、仕入価格変動DIは30→30と横ばい、販売価格変動DIは16→15と1ポイント減少、経常利益DIは26→22と4ポイント減少、資金繰りDIは△21→△15と6ポイント増加、雇用動向DIは△45→△47と2ポイント減少、在庫感DIは7→5と2ポイント減少という結果になり、厳しい状態が続いています。経営上の問題点においては、1位「従業員の不足(43%)」、2位「人件費の増大(29%)」、3位「民間需要の停滞(25%)」となりました。また、経営上の力点においては、1位「付加価値の増大(59%)」、2位「新規受注(顧客)の確保(47%)」、3位「人材確保(38%)」の回答となりました。消費増税の影響を危惧する声も多く出されるなか、情勢変化に対応して企業の付加価値をいかにして上げていくかの回答が多く出されました。
(事務局 墨)
1.機械器具(自動車、事務機器、電設資材等)
- 半導体製造装置およびロボット向けの部品の在庫が急増している。これは長納期(約1年)の部品が、中国市場の設備投資が減ったことに伴い、出荷が減ったが、納入は引き続き行われていることによる。このまま中国でロボットなどの需要が縮小すると、流通在庫が溜まり、日本での生産がストップする可能性がある。そうなった場合、在庫が膨れ上がり、非常に大きな負担となる可能性がある。中国市場の動向が非常に不安。一方、自動車業界は中国の減税、10月の消費税増税前の駆け込み需要対策で高水準の生産が続いているため活況を呈している。ただ、長納期品の需要減少に伴い、発注済み商品の入荷により在庫量が増えてしまっている。資金繰りに影響するので大変困っている。
- 動車、建設機、農機、運搬機等の部品は、材質の軽量化やEV化、AI化されて徒手100年の歴史がある部品づくりでは通用しない。
2.建築資材
- 販管費(物流コスト)の増加が著しい。
- 昨年の台風の影響で大阪港が滞船して入荷が読めない。
3.繊維、衣服、雑貨
- ガソリンスタンド業界は、暖冬の影響もあるが全油種とも需要が停滞してメーカー出荷量が前年より少ない。大手などは販売数量確保のため粗利を下げ量販志向に戻りつつある。
4.飲食料品
- 鰻業界は事業承継にあまりにも楽観的。主原料の養殖鰻の生産が減っても「何とかなるだろう」と楽観視している事業主が多い。
- かなり厳しい状況。受注量の落ち込みが激しい。市内・市外と共に週末に少しだけ受注が増えるだけで、平日は客入りが悪く出足も遅い時間が多いとのこと。業界全体で廃業・縮小する会社が多い。
- 同業他社の廃業。また、IT化の遅れが目立つ。
5.運輸、情報通信
- 好調だった半導体製造装置メーカーも先行き不透明。食品メーカーが物流費高等を主な理由に値上げを相次いで発表したが、小売業界へ浸透するかを見極める必要がある。
- 有給消化の義務化等の働き方改革に対し、皺寄せが徐々に下請けに回ってきている。
- 段ボール業界や化成品業界は値上げが常態化している。もちろん原材料の上昇も理由だが、最近は物流費の高騰を理由としてあげるところが多くなっている。
- 業界全体を通し、仕事はあっても、単価は下がったままの状態。残業、休日出勤なども含め、売り上げの確保や納期を守る工夫をしている企業が多いと感じる。採用もままならない
6.保険、不動産
- 保険業界は金融庁や国税庁による税改正により、今後、突然仕事がなくなる可能性がある。
- 名駅付近など事業用不動産の価格は噂で聞く金額でもかなり上がっていて、バブルを感じます。一方で住宅用の土地は、便利な地域は早く売れる一方、そうでないところはかなり苦戦している。年明けから来客数はかなり減っている。
- 顧客自体が融資を受けることが厳しくなっており、販路が狭まってきている。
- 市街化調整区域の農地価格の低下は深刻な状況。空き家対策に関して、所有者不明案件が増加している。2020年までに相続登記の義務化が改正されるようだが、既に現在、所有者不明案件を行政はどう対応していくかが不明。
(4)サービス業
●今月の業況判断DIは33→29、経常利益DIは26→25と、高い値であった前回11月調査より微減したものの、大きな変化は見られませんでした。3業種毎に見ても、業況判断DIは、専門サービス業36→32、対個人サービス業23→18、対事業所サービス業45→35。経常利益DIは、専門27→32、対個人19→14、対事業所35→28と、一部専門サービス業が上がっているものの、目立った変化とまではいかず、業種にかかわらず落ち込み始めています。
経営課題は「人手不足」が43%、「人件費の増加」が32%。経営上の力点は「付加価値の増大」の56%、「新規受注(顧客)の確保」の52%を筆頭に、「人材確保」が37%、「社員教育」が28%と、それぞれ内容・数字共に変わりなく、これからも大きな変化は見込めません。
また、下記の通り、1月より用紙の卸価格が約2割上がったことへのコメントも目立ちました。事実、経営課題として「仕入先からの値上要請」を挙げる回答が、前回の0→2%、対事業所サービス業に限ると5%と、他項目と比べるとまだまだ数字自体は低いものの、単体では大きく上がっています。
用紙にとどまらず、原材料・資材・人件費・物流コストの上昇を理由に、多くの食品が値上げを既に発表されており、他品目への拡大、ひいてはそれを扱うサービス業全体への波及も十分に予期されます。過去の経営をただ継続するだけでは、現状維持も難しい局面に入っています。(事務局 橋田)
1.福祉(介護)
- 採用難と求人へ応募される方の高齢化。
- 半日型デイサービスの報酬額が10%減。この先の見通しとして、依然引き締めが続いていくため、介護報酬に頼らない経営が必要となる。
- 福祉にも様々なサービスがあり、供給過多になっているため、特化したものがないとダメ。淘汰されていく過程だと思う。
- 国の施策に業界の動向が左右されることが多い。施策の方向性は理解できるが変更の振れ幅が大きく、現状を理解しているのか疑問に感じる。
- 人材教育に力をかけている会社が生き残っている。外部に頼るのではなく、社内で社員教育までを取り組める体制を整えていきたい。
2.産廃・環境
- 補助金が採択されたことにより、未だ振り込まれてはいないが、昨年末に機械を4台購入した。現在その機械の調整中で、5月の連休明けには本格稼働となる。それに伴い人材及び仕事の確保が必要で、現在慌ただしくしている状況。自社の強みを見据え、10年先を見越した経営を継続する。
3.自動車整備・販売
- 整備業界では、車検の需要が昨年よりも多く、どこも忙しそうな印象を受ける。ただ、何か対策をして、売上が上がっているわけではない。今後も試行錯誤が必要となる。
4.広告・印刷
- 印刷仕入れ資材における用紙価格が、2019年初めより20%ほどの値上がり。仕入れ総額としては、10%ほどの値上がり。紙媒体の需要の落ち込み傾向に拍車がかかるとの見通しでいる。
- 昨年来、段ボールケースなどの包装資材や物流費、諸材料の値上がりにより、コストの上昇が続いている。このような背景の中、今年の1月1日出荷分より国内各製紙メーカーが一斉に値上げを断行し、紙代が20%アップと暴騰した。今回の値上げは一時的なものではなく、今後も続く見通し。
- 広告業界は、依然Webのみが伸びている。印刷媒体、新聞媒体、雑誌媒体すべてが落ちている。
- 薄利でも「働き方改革」を意識しなければ、離職につながる。そのため、残業を減らし、休日出勤をさせない、有給休暇も積極的にとらせている。しかし生産性はなかなか上がらない。財務体質の改善や取引先の開拓に努力はしているが追いつかない。
5.専門サービス
- 建設単価は過去最高になりそうな勢いだが、それでもやり手がない状況。土地代も、下がる気配がなく高値状態が継続している。しかし、住宅の販売戸数や賃貸マンションの入居状況は良くない。不動産会社もかなり慎重になり始めていて、新規の計画がなかなかまとまらなくなってきている。今がピークの感が強い。
- 消費税増税前の駆け込み需要の影響からか、設計の協力業者も業務がいっぱいの状況で、遅れが出ている。施工業者も同様の状況で、どこも着工が遅くなる傾向にある。