- 【概況】
- 【業況判断】 製造業の悪化が顕著。サービス業を除き下落傾向
- 【売上高】・【経常利益】 製造業大きく後退。経常利益は業種で明暗わかれる
- 【取引条件】 取引条件が好転の兆し
- 【資金繰り】 製造業の「窮屈」超過幅が拡大
- 【設備過不足】 製造業で「不足」超過幅が縮小
- 【雇用】 深刻な人手不足感は継続
- 【価格変動】 仕入価格が「上昇」。販売価格、小幅ながら上がる傾向
- 【借入金利】 短・長期金利、「上昇」傾向
- 【経営上の力点など】 経営上の問題点、「民間需要の停滞」が上位に
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景況調査報告(2019年5月)第102号(PDF:1.48MB)
【概況】
「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を差し引いた「今月の状況DI」は、前回の30から22へ8ポイント下落し、2期連続で「良い」超過幅の縮小となりました。業種別でも、サービス業を除く全業種で「良い」超過幅の縮小が観察されています。とりわけ製造業は、前回の26から△1へと27ポイントもの大幅な下落を記録し、2013年2月期以来6年ぶりのマイナス値となりました。
「前年同期比DI」も前回の10から5へと「好転」超過幅が縮小しています。特に建設業は21→11へ10ポイント、製造業は△1→△18へ17ポイントの大幅な下落です。さらに「次期見通しDI」も、前回の30から25へと「良い」超過幅が縮小しました。業種別では、建設業で横ばいのほかは、流通業は5ポイント(26→21)、サービス業は1ポイント(35→34)の「良い」超過幅の縮小となったなか、特に製造業は、前回の18→1へ17ポイントと、ここでも大幅に下落しました。
各業況判断DIの数値に表れているように、今回調査で特に注目を集めたのは、製造業の落ち込みの大きさです。「文書回答」からは「振り返ってみれば、米中対立から、受注に陰りが出始めたような気がする」、「下請仕事は米中対立の影響を受けて激減状態」など、米中対立に端を発した昨年末からの景気状況の変化が、中小企業経営に影響を拡大している様子が見てとれます。
また分析会議では、昨年から変調をきたしてきた半導体製造装置やロボット、工作機械について、その落ち込みが深刻な水準にある様子も報告されました。さらに自動車部品関連についても、国内生産は当面水準が維持されると見込まれる一方、中国市場の不振など、先行き見通しは楽観できない状況にあることが指摘されています。
この反映として、製造業の次期見通し「売上高DI」(△8→△18)は、二桁の大幅な下落を見込むなど、景気状況の一層の悪化と長期化に身構える経営者マインドが窺われます。
今回調査では、建設業でも業況判断DI「今月の状況」の2期連続下落が見られましたが、「物流業者の大型倉庫や、大型開発関係の案件が多い」、「ハイテンションボルトの供給不足が続いている」など、現状は順調に推移しているようです。しかし、2020年のオリンピック・パラリンピック関連の入札終了にともない、全国規模の大手企業が名古屋地域に参入し始めたことで単価の下落が生じつつあるなど、安穏とはしていられない状況です。
他方、今回の分析会議では、金融機関の態度変化について複数の指摘が寄せられました。今回調査では「短期借入金利DI」、「長期借入金利DI」ともに1となり、「上昇した」という回答数が「下降した」とする回答数をわずかに上回りました。金利状況がプラス値を記録したのは、「短期借入金利DI」は2009年11月期以来、「長期借入金利DI」も2010年2月期以来です。金融面でも注意して経営に臨む必要があります。
その他、今年10月には消費税率引き上げが予定されており、今後の消費動向も予断を許しません。国内外ともに懸念材料は山積しています。中小企業経営者には広い視野で情報を集め、それらを正しく読み解く努力と、そのための感性を磨くことが求められています。
[調査要項]
調査日 | 2019年5月20日~5月29日 |
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対象企業 | 愛知中小企業家同友会 |
調査方法 | 会員専用サイト「あいどる」 |
回答企業 | 会員企業より1382社の回答を得た。業種内訳は以下 (建設業228社、製造業302社、流通業362社、サービス業490社) |
平均従業員 | 20.4名(中央値8名) |
なお、本報告は愛知中小企業家同友会・経営環境調査委員会(委員長、太田厚・(株)太田電工社社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議での検討を経てなされたものです。
【業況判断】
製造業の悪化が顕著
サービス業を除き下落傾向
「今月の状況」DIは前回の30から8ポイント後退し22となった。これは2期連続の後退局面で、2017年5月期の調査並みの水準である。業種別でみると、建設業が47から38と9ポイント、流通業が25から19と6ポイント、製造業に至っては26から△1と27ポイント急激な悪化傾向を示した。製造業が水面下に落ち込んだのは2013年2月期調査以来の事である。サービス業は29から31と2ポイントほぼ横ばいで推移した。
前年同月比は、前回の10から5と5ポイント後退した。業種別でみると、建設業が21から11と10ポイント、製造業が△1から△18と水面下に17ポイントいずれも二桁の悪化傾向を示した。流通業は、5から3とほぼ横ばい、サービス業は唯一、15から17と改善傾向を示した。3ヶ月後の次期見通しは前回の30から25と5ポイント後退した。製造業が18から1と17ポイント二桁悪化し、流通業も26から21と5ポイント後退した。建設業が43から43と横ばい、サービス業が35から34と大きな変化がなかった。
【売上高】・【経常利益】
製造業大きく後退
経常利益は業種で明暗わかれる
売上高DI(前年同月比)は前回の14から12とほぼ横ばいで推移した。業種別で見ると、建設業が22から19と3ポイント後退し、製造業でも1から△18と19ポイント二桁の悪化を示した。一方、流通業では10から14と4ポイント、サービス業も22から27と5ポイント改善傾向を示した。3ヶ月後の次期見通しは、前回の13から10と3ポイント悪化した。これは3期連続の傾向である。業種別でみると、建設業は21から18と3ポイント、製造業が△8から△18と二桁の10ポイント、流通業が15から12と3ポイントそれぞれ悪化した。サービス業は21から22とほぼ横ばいだった。
経常利益DI(今月の状況)は前回調査の26から29と3ポイント改善した。業種別でみると、建設業が37から35とほぼ横ばい、製造業が22から7ポイント悪化し15となった。流通業では22から29と7ポイント、サービス業でも25から36と11ポイント改善した。
前年同月比は前回の7から6とほぼ横ばいだった。建設業では14から7と7ポイント悪化した。製造業も△2から△12と水面下の二桁10ポイント悪化傾向を示した。一方、流通業では2から5と3ポイント、サービス業も13から17と4ポイント改善した。3ヶ月後の次期見通しは前回の22から3ポイント改善し25となった。建設業が22から31と9ポイント、サービス業が29から31と3ポイント改善した。製造業は5から6、流通業が26から28といずれもほぼ横ばいで推移した。
【取引条件】 取引条件が好転の兆し
前年同月比DIは5から6と大きな変化はなく、取引条件が「不変」と回答した割合が7割を超えた。業種別でみると、製造業(0→3)が反転し取引条件が改善した。サービス業(4→7)でも取引条件が好転した。建設業(13→12)、流通業(4→2)は大きな変化がなかった。次期見通しは、前回の3から5と大きな変化がなかった。業種別でみると建設業(6→11)が取引条件が改善した。その他、製造業(△2→0)、サービス業(5→7)はほぼ横ばいで推移した。流通業(2→2)は2期連続変化がなかった。
【資金繰り】 製造業の「窮屈」超過幅が拡大
今月の状況DIは、前回の△18から△18と変化がなく厳しい状況が続いている。業種別でみると、建設業(△13→△19)・流通業(△15→△18)が「窮屈」超過幅を拡大させた。一方、製造業(△19→△14)・サービス業(△23→△20)が「窮屈」超過幅を縮小させた。次期見通しは前回の△18からやや改善し△16となった。業種別では、建設業(△13→△21)が「窮屈」超過幅を拡大させた。その他、製造業(△25→△16)は「窮屈」超過幅が縮小し、サービス業(△19→△17)でも僅かながら同じ傾向が見られた。流通業(△13→△14)は大きな変化がなかった。
【設備過不足】 製造業で「不足」超過幅が縮小
設備過不足DI(今月の状況)は△15から△15と変化がなかった。業種別でみると、建設業(△19→△21)で「不足」超過幅が拡大し、サービス業(△12→△18)でも同じ傾向が見られた。製造業(△19→△9)では「不足」超過幅が縮小し、流通業(△13→△13)は変化がなかった。
次期見通しでも前回△15から△15と変化がなかった。業種別では変化があり、建設業(△18→△22)が「不足」超過幅が拡大したのを始め、流通業(△10→△13)・サービス業(△15→△18)でも同じ傾向が見られた。一方、製造業(△17→△8)では「不足」超過幅が縮小した。これは2016年8月期調査の11期ぶりの水準である。
【雇用】 深刻な人手不足感は継続
今月の状況DIは△46から△43と3ポイント持ち直したものの、深刻な人手不足感を継続した。業種別でみると、建設業(△62→△58)では最悪期は脱したものの、依然として6割以上の回答者が不足感を示した。その他の業種は、製造業(△38→△24)が二桁の14ポイント「不足」超過幅を縮小させ、建設業(△62→△58)・流通業(△47→△43)でも「不足」超過幅を緩和させた。サービス業(△43→△47)では更に4ポイント「不足」超過幅が拡大した。
次期見通しは△42から△41と大きな変化がなかったが、依然として深刻な数値を示した。業種別にみると、建設業(△57→△61)は「不足」超過幅が拡大し、サービス業(△38→△47)でも9ポイント同じ傾向が見られた。一方、製造業(△32→△21)が11ポイント、流通業(△46→△40)が6ポイント「不足」超過幅を縮小させた。
【価格変動】
仕入価格が「上昇」
販売価格、小幅ながら上がる傾向
仕入価格変動DI(今月の状況)は前回の35から41と「上昇」超過幅が拡大した。業種別でみると、建設業(46→55)は9ポイント「上昇」超過幅の拡大が見られた。流通業(30→41)では11ポイント、サービス業(21→28)でも「上昇」超過幅が拡大した。製造業(56→51)は高水準ながら「上昇」超過幅が縮小した。
前年同月比では37から9ポイント「上昇」超過幅が拡大し46となり11期連続の拡大傾向が継続した。業種別でみると、建設業(52→62)が10ポイント、流通業(32→43)が11ポイントといずれも二桁の「上昇」超過幅の拡大を示した。製造業(58→63)も5ポイント、サービス業(20→29)も9ポイント「上昇」超過幅が拡大し、全業種で同じ傾向が見られた。
次期見通しも前回の28から33と5ポイント「上昇」超過幅が拡大した。業種別でみると、建設業(37→46)が9ポイント、流通業(28→36)が8ポイント、サービス業(19→24)も5ポイント「上昇」超過幅を拡大させた。製造業(37→35)はほぼ横ばいで推移した。
販売価格変動DI(今月の状況)は前回の15から18とやや「上昇」超過幅が拡大した。業種別でみると、建設業(26→29)、製造業(7→10)、流通業(15→22)と「上昇」超過幅が拡大した。サービス業(14→13)では大きな変化がなかった。
前年同月比も前回17から20とやや「上昇」超過幅が拡大し、上昇傾向は4期連続だった。業種別でみると、建設業(28→31)、製造業(11→14)、流通業(20→23)、サービス業(12→15)はいずれも「上昇」超過幅が3ポイント拡大した。次期見通しは前回の13からほほ横ばいで推移し15となった。業種別でみると、建設業(18→22)と流通業(14→19)が「上昇」超過幅が拡大した。製造業(6→5)はほぼ横ばいで推移した。サービス業(15→15)は変化が見られなかった。
【借入金利】 短・長期金利、「上昇」傾向
短期借入金利DIは前回調査の0から1と大きな変化がなかったが、「上昇」が上回り水面上に浮上した。これは2009年11月期調査以来のことである。業種別でみると、流通業(△3→1)が水面上にあがり「上昇」超過幅が拡大した。製造業(2→3)、サービス業(0→1)がほぼ横ばいで推移した。建設業(2→0)もほぼ横ばいだが「上昇」超過幅が縮小した。
長期借入金利DIも前回の0から1と大きな変化がなかったが、水面上に浮上した。これは2010年2月期調査以来のことである。業種別でみると、製造業(0→2)、流通業(△3→1)が小幅ながら「上昇」超過幅が拡大した。建設業(1→0)はほぼ横ばい、サービス業(2→2)では変化がなかった。
【経営上の力点など】
経営上の問題点、「民間需要の停滞」が上位に
全業種でみた経営上の問題点は前回同様、「従業員の不足」(46%)、「人件費の増加」(33%)、「民間需要の停滞」(22%)が上位の問題点で、「民間需要の停滞」の比率が上がった。需要の低下による経営への影響が顕在化してきたと予測される。人手不足は長期トレンドであり、魅力ある企業づくりは喫緊の課題といえる。また社員の高齢化による人件費の増大への対応も引き続き急務といえる。
業種別でみて特徴があったのは、建設業で「下請業者の確保難」(45%)、製造業で「民間需要の停滞」(31%)、流通業で「人件費の増加」(29%)、サービス業で「新規参入者の増加」(28%)だった。文書回答では「適正価格の基準を直さない限り景気回復は無い(建設業)」「製造業全体で仕事量が急激に減少(製造業)」「自動車関係は、消費税の駆け込み需要により高い生産水準(流通業)」「転職する事が当たり前な感覚が蔓延(サービス業)」という情報が寄せられた。
全業種における経営上の力点は、第1位「付加価値の増大」(57%)、第2位「新規受注(顧客)の確保」(49%)、第3位「人材確保」(39%)で前回から変化がなかった。
<会員の声(業種別)>
(1)建設業
●前回の2月景況調査の結果と比較して「今月の状況」を見ると、業況判断DIは47→38と大幅に9ポイント減少、仕入価格変動DIは46→55と大幅に9ポイント上昇(高騰)、資金繰りDIは△13→△19と6ポイント減少(窮屈)、という後退局面にあります。材料不足だけでなく、働き方改革による人件費の高騰が中小企業の経営を厳しくしています。需要も落ち着きはじめ、今後は仕事の取り合いになるとの懸念も寄せられました。また、金融期間の審査が厳しくなっており、これからの動向に注意する必要があります。
(事務局 佐藤)
1.総合工事、リフォーム、大工、室内装飾
- 建設業大手が減収・減益となったことを聞いた。自社に影響が出るまでには時間がかかると思われるが、不安な状況。今年度初頭の受注が低調になっている。
- 消費税増税前の駆け込み需要はさほどないが、店舗等の需要が増加している。また、古い住宅の付加価値を上げるための工事が増加してきている。繁忙期に左右されない様にするための新規事業や、将来需要の停滞を見越した戦略が急務になる。
2.基礎、鉄筋、土木、コンクリート、解体
- 鉄筋工事業として年明けから現在のところ、受注済み案件の着工待ちで、右肩下がりで稼働率が下がっている。働き方改革の意思とは関係なく、業界内では困難・不可能と思っていた土日連休を連続で続けている状況。GWも6日間の連休を確保することができ、夏の繁忙期に休みが取れない苦しみとのバランスをとることができた。工期を守る現場対応・元請対応からすれば、やはり現場での施工に関しては依然働き方改革の大きなテコ入れが必要な状況が続くと思われるので、年間休日日数を確保するにはまだまだ困難がある。
- 建設業界はこの時期閑散期なので、この時期をどのように乗り切れるかが重要。人材も不足している中で、どのように立ち回るのか、業務の効率化を図りたい。
- 4月末ごろから見積案件が更に多くなってきたが、実際に受注までは至っていない。業界的に忙しいのか暇なのか不明確な部分がある。目先の仕事欲しさに単価を下げて受注する同業者もいるので、もっと未来を見据えた交渉を実行してほしい。
3.左官、外構、屋根外壁
- 外構工事業では、材料の仕入れ値が確実に上がっている。大きなハウスメーカー等は地方の一工事店の値上げ要請を取り上げないので、利益が圧迫された状態。
4.給排水管工事、電気工事、設備工事
- 電気工事業では外注(職人)の人件費が少しずつ下がってきたが、高齢者が多いため、この低迷を機に廃業する人が多く人手不足(確保)は先が見えない。オリンピック後に大きな公共事業も無いため、5年先の事業計画が作成できない。アベノミクスだけでは景気が良くならない事を実感している。日本国民の適正価格の基準を見直さない限り景気回復は無い。
- 10月消費増税によって駆け込み需要があるため、全体には好転しているが反動減を不安視している。働き方改革にて時短、人件費の増加と経営に対する難題の対処に苦慮している。
- 学校空調化工事の影響が大きい。特に空調設備業者(冷媒配管工事業者)の単価が異様に上昇している。それに追い打ちをかけて学校空調で使われる天吊り形エアコンの在庫が無く、今注文しても秋にしか入荷できない状況。他の機種のエアコンも品薄感が強く、これからがシーズンなのに注文があっても物が無くて仕事が出来ない懸念がある。
- 通信規格が5Gになる関係で、プレ運用をするために基地局の設備工事の仕事が増えている。携帯キャリアは5G通信でファーウェイを使用しないことを決めているが、どこの装置を導入するかが決まらないまま計画が進んでいる。オリンピック関係で東京に人を取られているので人手不足が続いている。県外企業がオリンピック後を見据えて名古屋に仕事を取りに来ているので、価格交渉が厳しくなる見込み。
5.建築設計・不動産
- 業界としてはまだ好調だが、鉄骨に使用するハイテンションボルトの不足が続いている。大手が注文を出しているため、取引価格も高騰している。また、分譲マンションは需要が落ち始めており、賃貸用のマンションの需要が残っているという状況。
- 名古屋は好調だが、東京は物流倉庫以外の注文がとまり、大阪も頭打ちとなっている。仕事はこなしきれない量だが、受注が増えている訳ではなく高止まりしている。
- 不動産業です。分譲ではなく一棟ものの受注はあるが、物件を押さえておきたいという理由によるもの。また住宅ローンが通りにくくなっているので、家の建築数が減っている。
(2)製造業
●業況判断DIでは、前年同月比が△1→△18と、前回調査から引き続き全業種の中で製造業のみがマイナス値を示し、次期見通しも18→1と、前回調査からさらに大きな下げ幅となりました。売上高でも前年同月比が1→△18と、他業種が回復傾向の中で大きくマイナス値を示し、次期見通しでも△8→△18と、これも全業種で製造業のみが大きくマイナス値となりました。米中の関税問題が発生し、仕入れ先の混み具合が軽減されてきたことや夏以降の見通しが立たないなど、各社の受注にも影響が出始めています。また、働き方改革が中小企業にも法適用されたことによる人材確保や育成、人件費の上昇に加えて、技術の継承も喫緊の課題となっていて、仕入れ単価や輸送費の高騰を販売価格に上乗せできず、企業の収益が悪化し始めている声が多く聞かれました。
(事務局 松井)
1.金属加工・樹脂加工
- 自動車新規部品の案件がほぼ皆無となってきたが、営業努力で非自動車部品の新規立ち上がりが多い。
- 半導体関連以外の分野で忙しい状況が続いているが、仕入れ先の材料メーカーや金型メーカーの混み具合が軽減されてきていることから、全体的に景気が悪くなりつつある状況が感じられる。
- 大手企業の一人勝ちで格差が拡大している。値上げ交渉もしづらく最低賃金等人件費の上昇分を下請け価格に反映できない為、毎年実質の値下げを強いられている状態。自社で吸収する努力も限界にきている。
- 人手不足が著しいため近い将来の生産能力を維持できなく成るため圧倒的な黒字事業も継続が危ぶまれる。今後、技術の継承ができなければ、日本産業界の損失は計り知れない。
- 先が見通せない、低収益もしくは利益が出ない中で同業他社の廃業が相次いでいる。設備投資も悩む。
- モデルチェンジにより後継品の受注ができておらず、数量の減少が大きい。また、新規受注も少ない。
- いよいよEV化の流れが本格化。2025年を目途にエンジン回りは右肩下がりとの話がある。
- 2019年度の計画は順調にありますが、来年度以降の計画は中断もしくは白紙になったものが多い。
- 大手自動車メーカーは自動運転のソフト面で動いており、搬送機等の設備関係が動いていないらしい。
2.機械部品・機械製造
- 下請け仕事は米中の貿易摩擦の影響を受けて激減状態だが、自社製品の受注状況は好調であり景気状況などはまだら模様と思える。
- 注残がまだあり引き合い状況もそれほど悪くない。ただし、米中の貿易戦争は少なからず顧客に影響あるため不確定な要素が多い。顧客は手掛けている仕事内容によって仕事量の差がますます大きくなっていると感じる。
- 人件費の上昇率が高く生産効率が同じように上がらないので、利益の減少に大きく影響する
- 100年に一度の大変革といわれる自動車業界において、この地域の自動車依存度がいまだに高く、次なる事業の柱を構築するための人材、設備、資金をつぎ込むだけの経営判断ができずにいる。自動車関連大手でも、既に景気後退が数字で見て取れており、既にピークアウトが近づいているように感じている。
- 設備投資実行が最終段階にきている感じがする。悪くなるのか良いままなのかわからない空気感がある
- 3月以降、一部の周囲の状況がリーマンショックに似た傾向がみられる。
- 景況感の後退感がいよいよ数値に表れてきたように感じる。米中の問題がどこまでこじれるかによってはリーマンショックぐらいのインパクトがあるかも知れない。
3.印刷・包装関連
- 長年続いてきた過剰な価格競争が、ここへ来て少し落ち着いた感がある。競合他社が人手不足で苦戦していると推察。ただ、今後景気が冷え込めば、今度はこちらの経営状況が悪化する恐れもある。
- GW明けは、紙の動きが全体的によくないと感じる。
- 働き方改革だけが先行しており、業務内容になにも改善がされていない。働き手と仕事量のバランスなどが難しい状況。
- 業界的にはまだら模様。良い顧客が多い企業は忙しく、そうでないところは仕事が少ない。
- 廃業や倒産で同業他社が少なくなり、一極集中になっている。逆に考えると危険な状態で、お願いするところが見つからない状況。
4.食品・繊維製品・雑貨・身の回り品製造業
- 10連休の影響なのか、5月から大型の受注はもちろん見積の依頼がなく、細かなお仕事のみの状態。
- 仕入れ価格、運賃の上昇が続き利益を圧縮している。販売価格に転嫁していきたいが小売全体は低調。
- 中国の景気減速で、鉄板の金額は落ち着きそうだが、船賃や運賃は依然として高くなっている。
- 3人以下の少数のところほど厳しい様子。辞めるところ、数年で辞めそうなところも出てきている。
- 経営者自身の高齢化で廃業する会社が増えつつある。事業継承の困難さを痛感している。
- 昨年度の大手の決算を見ると、自然災害の多発や原材料費の上昇により減益が目立つ。仕入れコスト削減や調達先の見直しの動きが活発になってきている。
(3)流通業
●前回の2月景況調査の結果と比較して「今月の状況」を見ると、業況判断DIは25→19と大幅に6ポイント減少、仕入価格変動DIは30→41と大幅に11ポイント上昇(高騰)、資金繰りDIは△15→△18と3ポイント減少(窮屈)、という悪い結果がでました。製造業の業況判断DIの今月の状況が2月と比較して26→△1と大幅に27ポイント減少し、2013年2月期以降で初めて製造業の業況判断DIがマイナス圏に入りました。その影響を受ける流通業もかなり厳しい状態が予見され、資材費高騰や物流コスト高騰などによる利益圧迫が業界全体で続くとみられます。
(事務局 墨)
1.機械器具(自動車、事務機器、電設資材等)
- 半導体製造装置およびロボット向けの部品の在庫が急増している。これは長納期(約1年)の部品が、中国市場の設備投資が減ったことに伴い、出荷が減ったが、納入は引き続き行われていることによる。このまま中国でロボットなどの需要が縮小すると、流通在庫が溜まり、日本での生産がストップする可能性がある。そうなった場合、在庫が膨れ上がり、非常に大きな負担となる可能性がある。中国市場の動向が非常に不安。一方、自動車業界は中国の減税、10月の消費税増税前の駆け込み需要対策で高水準の生産が続いているため活況を呈している。ただ、ここも中国のフォルクスワーゲンの販売次第で、日本の部品メーカーへ影響が出る可能性がある。
- 情報が取りやすくなったことで便利になったが価格競争にも巻き込まれる機会が増えた。
- 相変わらず人手不足による多忙感は払拭できない。社内管理等の効率化、省力化を図りたくともそのための時間捻出が難しい。顧客の動きは、自動車部品メーカー関係は昨年来から堅調に推移しているものの、海外生産移転により国内調達が減少することを示唆されており、売上ダウンを危惧している。
2.建築資材
- 昨年の台風の影響で大阪港が滞船して入荷が読めない状態。
- 販管費(物流コスト)の増加が著しい。
3.繊維、衣服、雑貨
- 冬でみれば暖冬の影響も多少あった。食品の値上げも影響しそうな気配がある。
- ガソリンスタンドです。暖冬の影響もありますが、全油種とも需要が停滞してメーカー出荷量が前年より少ない。大手などは販売数量確保のため、粗利を下げて量販志向に戻りつつある。
4.飲食料品
- かなり厳しい状況。受注量の落ち込みが激しい。市内・市外と共に週末に少しだけ受注が増えるだけで、平日は客入りが悪く出足も遅い時間が多い。業界全体でいえば、廃業・縮小する会社が多い。
- 事業承継にあまりにも楽観的な鰻業界です。主原料の養殖鰻の生産が減っても「何とかなるだろう」と楽観視している事業主が多い。鰻業界1万軒ほどの会社やお店の中で脱うなぎ、脱業態を描いている会社やお店は1,000軒程度ある。
5.運輸、情報通信
- 段ボール業界や化成品業界は値上げが常態化している。原材料の上昇も理由のひとつにあるが、最近は物流費の高騰を理由としてあげるところが多くなっている。なかなか顧客への説明が難しい。
- 物流業界です。好調だった半導体製造装置メーカーも先行き不透明。食品メーカーが物流費高等を主な理由に値上げを相次いで発表したが、小売業界へ浸透するかを見極める必要がある。
- ドライバーが不足している。高齢化対策で、業界未経験者の採用と免許取得補助、職場環境と育成の充実化を目指している。その分採用費や育成費、余剰人件費が増大。
- 人材不足からくる車両不足感が依然として強く、協力店への依頼が困難。また価格が高騰しているために収益を圧迫。社員の待遇面改善を進めているため、人件費以外のコストも増加している。
- 有給消化の義務化等働き方改革に対し、皺寄せが徐々に下請けに回ってきている形になりつつある。
6.保険、不動産
- 保険業界は金融庁や国税庁による税改正により、今後、突然仕事がなくなる可能性がある。
- 名駅付近など事業用不動産の価格は噂で聞く金額でもかなり上がっていて、バブルを感じる。一方で住宅用の土地は、便利な地域は早く売れる一方で、そうでないところはかなり苦戦。
- 市街化調整区域の農地価格の低下は深刻な状況。空家対策に関しては所有者不明案件が増加。
- 不動産業ですが、消費税増税に伴い、即価格への転嫁が難しいため、取引先からの値下げ要請が懸念。
(4)サービス業
●今月の業況判断DIは29→31、経常利益DIは25→36でした。経常利益DIについては、2016年11月以来30を超え、黒字回答の企業が多いものの、それが景況感にはあまり繋がっていないことが伺えます。
サービス3業種の内訳では、偏りが顕著に見て取れました。業況判断DIは、専門サービス業32→43、対個人サービス業19→22、対事業所サービス業34→25。経常利益DIは、専門32→48、対個人14→27、対事業所28→26と、専門サービス業が大きく数字を引き上げ、対事業所は前回以上の苦境を指し示しています。
文書回答では、10月の消費税増税や米中の貿易戦争の影響を悲観視するものや、左記情勢や「働き方改革」への意識の高まりを受けて、士業への仕事が増加しているとのコメントが特徴的でした。決して堅調な景況回復ではなく、業種も期間も「一時的な」ものと、留意する必要があります。
経営課題は「従業員の不足」が43→49%、「人件費の増加」が32→34%と、高値を継続して記録していたここ1年の中でも共に最大で、経営上の力点として「人材確保」が37%と、こちらも前回に引き続き最大値です。「付加価値の増大」を力点に挙げる方は57%と、こちらも前回同様の高い数値ですが、一定の社員数・組織がないと、実現は困難です。
「新規受注」が、前回の52→49%と微減しましたが、「人手が足りず、店を閉めざるをえない」とのコメントの通り、仕事が十分にあるというより、仕事を受けたくても受けられない、社内体制構築の難しさが、理由と思われます。
(事務局 橋田)
1.飲食
- 人手不足による店舗休業が発生しており、固定費の負担が非常に大きくなっている。また、10月からの消費税増税対策をどうしていくかが、外食産業にとってキーワードになるのではと感じている。
- 飲食業界では、流行っている店と閑散としている店の差が、ドンドン出てくると感じる。差別化やターゲットの絞り込みを徹底したい。
2.福祉(介護)
- 福祉業界の管理者育成が非常に取り上げられるが、経営者の育成が非常に大事なんだと思う。 また、国は高齢者に対して自立を求めているが、まだまだ地方の意識としては自立型支援よりも、やらせないための支援の傾向が強い。 時代を先取って自立型施設を作ると同時に、高齢者の自立型支援の優位性を感じてもらう必要がある。
- 介護保険制度の報酬単価の引き下げにより、経営環境は悪化。今後も、報酬削減及び社会福祉法人に隔たった政策では、経営が厳しい。
3.産廃・環境
- 仕入れる品物の減少や、メーカーへの販売価格の低下。また、中国への輸出ストップに関連して、雑品の販売が出来なくなってきている。というより、逆有償化が進んでいる。
4.広告・印刷
- 印刷物は、チラシなどの媒体は特に減っており、小ロットや企画提案からのもののみ。Webは動いているが、価格が下がり、納期が延びたり保留になるケースも多く、不安定。進行管理者の知識・経験不足が、原因に挙げられる。良い人材が大手に転職してしまうという、人材不足の影響も少なくない。
5.専門サービス
- 投資用の案件が依然として多く、堅調に推移している。土地は上げ止まり感はあり、今後は物件によっては下降も考えられる。建設費は高騰していたが、ようやく頭を打った感がある。消費税増税前の駆け込み案件は既に終わっているため、今後はじりじり下がっていきながらも、大きな低下はないと思われる。
- 顧客の新規開拓に関しては全く問題ないが、自社の受け皿が整っていないために実行に移せない状況。採用と教育に力を入れ、求職者に選ばれる企業を目指して行動している。これからは間違いなく、求職者に選ばれる企業が伸びていく。
- 「働き方改革」について企業への影響が本格化し、社会保険労務士へのニーズが高まっているように感じる。