景況調査

第104号-2019年11月
「景気後退」への備えを
~「業況判断DI」全指標、4期連続の下落~

<会員の声>

DI値推移一覧表(PDF:1.06MB)

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景況調査報告(2019年11月)第104号(PDF:2.11MB)


【概況】

「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を差し引いた「業況判断DI」の「今月の状況」は、前回の20から15へ5ポイント下落し、4期連続で「良い」超過幅が縮小しました。業種別に見ると、流通業が4ポイント(13→9)、サービス業が8ポイント(31→23)、好調を継続してきた建設業も5ポイント(41→36)の悪化です。製造業は、前回の△8から△5へ3ポイント「悪い」超過幅の縮小が見られたものの、3期続けてマイナス圏で推移しています。

「前年同月比」は、3年ぶりのマイナスとなった前回調査の△1から△8へ7ポイント「悪化」超過幅が拡大しました。業種別でも全業種でDI値の下落が継続しています(建設業:13→9、製造業:△34→△37、流通業:△10→△16、サービス業:17→8)。さらに「次期見通しDI」も、前回の20から12へ8ポイント悪化し、全業種を通じて「良い」超過幅の縮小ないし「悪い」超過幅の拡大が見られました。特に建設業は、他業種に比して高水準ではあるものの、39から28へと11ポイントの大幅な悪化となっています。

文書回答からは、「製造業の景況は最悪としか言えない」、「半導体、工作機械が急落し、その他の計測機器、医療機器関連も軒並み減産傾向」など、「不況感」を漂わせる製造業の声が目立ってきました。これらの声を裏付けるように、「売上高DI(前年同月比)」は△32、「経常利益DI(前年同月比)」は△31と、共にリーマンショックの影響下にあった2009年11月調査以来の水準にまで落ち込みを見せています。さらに「製造業またはそれに関連する流通業の需要の落ち込みが表面化してきている。当社では、そのような理由でのキャンセルが数件発生して」(流通業)いるなど、製造業の業況悪化が他産業に影響を及ぼしつつあることを示す回答もありました。

建設業については、景況分析会議で、業況の悪化を指摘する発言と、依然好調な業況を報告する対照的な声が聞かれました。ただし、現在の好調さの要因は、投資用物件、再開発案件、特定地域の住宅など限定されたものと見られ、建設業も先行きは楽観できない状況です。

消費税率引き上げの影響を最も受ける小売業やサービス業からは、政府のキャッシュレス・ポイント還元事業の恩恵により中小小売店の落ち込みが抑制されているとの発言が聞かれました。しかし、クレジットカード会社への手数料支払いなどコスト負担増を懸念する声もありました。さらに、2%の消費税率引き上げは納税額としては25%の増税となるため、消費増税分を全額価格に転嫁できなかった中小企業にとっては大きな負担となります。景気動向次第では「消費税倒産」の懸念も出てきます。

今回調査は、業況水準DIが未だプラス圏内にあり、「不況感」が蔓延している状況にはないものの、消費増税を機に景気の悪化がさらに加速しつつあることを示すものでした。これは、情報収集、営業力強化、資金繰り確保など、中小企業経営者に「万全の備えをせよ」というシグナルと解すべきでしょう。

調査日 2019年11月18日~11月27日
対象企業 愛知中小企業家同友会
調査方法 会員専用サイト「あいどる」
回答企業 会員企業より1293社の回答を得た。業種内訳は以下
(建設業223社、製造業276社、流通業324社、サービス業470社)
平均従業員 25.4名(中央値8名)

なお、本報告は愛知中小企業家同友会・経営環境調査委員会(委員長、太田厚・(株)太田電工社社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議での検討を経てなされたものです。

 

【業況判断】
製造業が更に悪化
全業種で後退局面

今月の状況は前回の20から5ポイント後退し15となった。これは4期連続の後退局面で、景気の減速感が鮮明になってきているといえる。業種別でみると、建設業が41から36と5ポイント、流通業が13から9と4ポイント、サービス業は31から23と8ポイント落ち込んだ。製造業が特徴的でマイナス幅は縮小したが△8から△5と引き続いて水面下で推移した。

前年同月比は、前回の△1から△8と7ポイント後退し、更に業況判断の後退を印象づけた。業種別でみると、建設業が13から9と4ポイント、製造業が△34から△37と3ポイント悪化傾向を示した。これは2009年11月期以来の水準である。流通業が△10から△16と6ポイント、サービス業が17から8と全業種で悪化傾向を示した。

3ヶ月後の次期見通しは、前回の20から12と8ポイント後退し5期連続の悪化傾向を示した。業種別でも、建設業が39から28と11ポイントの2桁、製造業が△6から△9と3ポイント、流通業が16から7と9ポイント、サービス業が28から21と7ポイント後退し、全業種に渡って先行き見通しが悪くなると予測している。

業況推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

 

【売上高】・【経常利益】
深刻な製造業の売上高
全業種で経常利益が悪化

売上高DI(前年同月比)は前回の7から2と5ポイント後退傾向を示した。これで4期連続の落ち込みである。業種別で見ると、建設業が19から13と6ポイント、サービス業が24から17と7ポイント悪化を示した。特に製造業は△23から△32と9ポイント更に水面下に落ち込んだ。これは2009年11月期に近い水準である。流通業は0から2と大きな変化がなかった。3ヶ月後の次期見通しは、前回の4から△3と7ポイント悪化した。これは5期連続の傾向である。業種別でみると、建設業が19から4と15ポイントと2桁悪化した。製造業が△26から△33と7ポイントとマイナス幅を拡大させた。流通業では5から△1と6ポイント下がり水面下へ、サービス業が13から9と4ポイントそれぞれ悪化した。

売上高推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

経常利益DI(今月の状況)は前回調査の27から22と5ポイント悪化傾向を示した。業種別でみると、建設業が44から8ポイント悪化して36に、製造業が10から4と6ポイント悪化した。これは2013年5月期の水準である。流通業でも25から19と6ポイント同じ傾向である。サービス業では30から29と大きな変化がないものの、全業種で悪化傾向を示した。

前年同月比は前回の5から△3と水面下に悪化した。建設業がは25から14と前回の改善傾向から反転して11ポイント悪化した。製造業でも△26から△31と5ポイント、流通業も1から△9と10ポイント水面下に落ち込んだ。サービス業も15から10と5ポイント落ち込んだ。3ヶ月後の次期見通しは前回の24から17と7ポイント落ち込んだ。建設業が36から28と8ポイント、製造業が6から△2と水面下へ、流通業が26から16と2桁、サービス業が27から24と3ポイントそれぞれ悪化した。

経常利益推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

【在庫感】 「過剰」超過幅が縮小傾向

今月の状況は、前回調査の16から15とほぼ横ばいだった。業種別でみると、製造業(16→18)は「過剰」超過幅が小幅ながら拡大した。流通業(17→11)では「過剰」超過幅が6ポイント縮小した。前年同月比は前回の14から「過剰」超過幅が縮小し8となった。業種別でみると、製造業(12→10)はほぼ横ばいで「過剰」超過幅が縮小した。流通業(15→6)でも「過剰」超過幅が9ポイント縮小した。次期見通しは11から10とほぼ横ばいで推移した。業種別では、製造業(13→12)がほぼ横ばいで、流通業(9→9)は変化がなかった。

【取引条件】 取引条件は横ばい

前年同月比は5から5と変化はなく、取引条件が「不変」と回答した割合は7割を超えた。業種別でみると、建設業(10→9)、流通業(2→0)は大きな変化がないものの取引条件が悪化、サービス業(8→10)も大きな変化はないが改善傾向を示した。製造業(△1→△1)は変化がなかったが、水面下で推移した。次期見通しも、前回の3から3と変化がなかった。業種別でみると建設業(6→6)、流通業(0→0)、サービス業(6→6)と変化がなかった。製造業(△2→0)は水面下から脱出し改善傾向を示した。

【資金繰り】 製造の「窮屈」超過幅が拡大

今月の状況は、前回の△20から△22と厳しい状況が続いている。業種別でみると、建設業(△16→△19)、流通業(△19→△27)が「窮屈」超過幅を拡大させた。一方、製造業(△25→△23)は、ほぼ横ばいながら「窮屈」超過幅を縮小させた。サービス業(△20→△19)は大きな変化がなかった。次期見通しは前回の△21から3ポイント悪化し△24となった。業種別では、流通業(△20→△26)、サービス業(△18→△21)が「窮屈」超過幅を拡大させた。建設業(△18→△19)が大きな変化がなく、製造業(△28→△28)が資金繰りが「窮屈」な数値のまま横ばいだった。

【設備過不足】・【施設稼働率】
製造業が設備「過剰」超過に
低下する製造業の稼働率

設備過不足DI(今月の状況)は、△12から△10とやや「不足」超過幅が緩和した。業種別でみると、製造業(△6→4)が2013年8月調査以来の「過剰」超過となり、サービス業(△16→△14)がやや「不足」超過幅が緩和した。一方、建設業(△10→△19)が「不足」超過幅が拡大し、流通業(△10→△10)が変化がなかった。

次期見通しでも前回△11から△9とやや「不足」超過幅が緩和した。業種別では、製造業(△6→4)が「過剰」超過となり、サービス業(△14→△12)がやや「不足」超過幅が緩和した。建設業(△10→△17)が「不足」超過幅が拡大し、流通業(△9→△10)はほぼ横ばいだった。

施設稼働率DI(前年同月比)は、前回調査の△13から△14と小幅ながら水面下で「低下」超過幅が拡大した。業種別でみると、製造業(△22→△23)が大きな変化が見られないものの、高い水準で「低下」超過幅の拡大が見られた。流通業(△3→△5)でも同じ傾向が見られた。次期見通しは、前回調査の△11から△13と「低下」超過幅が拡大した。業種別にみると、製造業(△21→△19)は「低下」超過幅が縮小した。流通業(0→△6)では逆に「低下」超過幅を拡大させた。

【雇用動向】 深刻な人手不足、やや緩和

今月の状況は、△41から△35と6ポイント持ち直し、深刻な人手不足感を継続しながら緩和の兆しが見られた。業種別でみると、建設業(△61→△57)では悪化傾向から反転するも依然として6割以上の回答者が不足感を示した。製造業(△24→△17)は2013年8月調査以来の水準まで緩和した。流通業(△37→△33)も「不足」超過幅を緩和させ、サービス業(△43→△36)も同じ傾向が見られた。

次期見通しも、△39から△34と「不足」超過幅を縮小させた。業種別にみると、建設業(△59→△55)が「不足」超過幅が縮小し、流通業(△37→△33)・サービス業(△40→△35)でも同じ傾向が見られた。製造業(△25→△15)でも2桁「不足」超過幅を縮小させた。

【価格変動】
今月の仕入価格「上昇」傾向
販売価格、小幅ながら上がる

仕入価格変動DI(今月の状況)は前回の33から36と「上昇」超過幅が3ポイント拡大した。業種別でみると、流通業(34→40)・サービス業(25→30)が「上昇」超過幅が拡大した。製造業(37→33)ではやや「上昇」超過幅が縮小した。建設業(45→46)は大きな変化がなかった。

前年同月比では40から横ばいで推移した。業種別でみると、製造業(52→43)が9ポイント「上昇」超過幅が縮小した。一方、サービス業(27→32)では5ポイント「上昇」超過幅が拡大した。その他、建設業(54→52)・流通業(40→39)が小幅ながら「上昇」超過幅が縮小した。

次期見通しは、前回の32から28と「上昇」超過幅が縮小した。業種別でみると、建設業(39→35)・流通業(35→31)が4ポイント「上昇」超過幅を縮小させた。製造業(30→28)・サービス業(26→24)は大きな変化がなかった。

販売価格変動DI(今月の状況)は、前回の15から19と4ポイント「上昇」超過幅が拡大した。業種別でみると、流通業(15→19)が4ポイント、サービス業(15→22)が7ポイント「上昇」超過幅が拡大した。製造業(7→9)では小幅ながら同じ傾向で、建設業(26→25)は大きな変化がなかった。

前年同月比は前回の20からやや「上昇」超過幅が拡大し22だった。業種別でみると、建設業(31→34)・サービス業(19→25)が「上昇」超過幅が拡大した。流通業(21→22)はほぼ横ばいで推移し、製造業(10→10)は変化が見られなかった。次期見通しは、15から13とやや「上昇」超過幅が縮小した。業種別でみると、製造業(7→△1)が「低下」超過幅が拡大し水面下になった。その他、流通業(19→15)が「上昇」超過幅が縮小し、建設業(21→22)・サービス業(15→16)はほぼ横ばいで推移した。

【借入金利】
短期金利「低下」傾向
長期金利は横ばい

短期借入金利DIは前回調査の1から△1と再び水面下に落ち込んだ。業種別でみると、建設業(4→△2)が「上昇」超過幅を縮小させた。その他、製造業(2→△1)・サービス業(△1→△2)が小幅ながら水面下で移行した。流通業(0→2)は「上昇」超過幅を拡大させた。

長期借入金利DIは前回の0から横ばいだった。業種別でみると、建設業(2→0)・サービス業(1→0)が小幅ながら「上昇」超過幅を縮小させた。流通業(△5→△1)も4ポイント「上昇」超過幅を縮小させた。製造業(2→2)は変化がなかった。

【経営上の力点など】
上位の課題は継続
雇用動向に変化あり

全業種でみた経営上の問題点はこれまで同様、「従業員の不足」(38%)、「人件費の増加」(34%)、「民間需要の停滞」(26%)が上位の問題点だった。「従業員の不足」は、それを訴える割合が減る変化があった。「人件費の増加」は、最低賃金の引上げや同一労働同一賃金とあいまり、全社的昇給の必要に迫られると想定される。また社員の高齢化による人件費の増大への対応も引き続き急務といえる。

業種別でみて特徴があったのは、建設業で「下請け業者の確保難」(46%)、製造業で「民間需要の停滞」(40%)、流通業で「取引先の減少」(21%)、サービス業で「新規参入者の増加」(24%)だった。文書回答では「下請け業者が外国人研修生を雇用しつつある(建設業)」「時短・有給休暇・休日増を、法制で規制するのはどうかと思う(製造業)」「IT投資が中小企業にも広がってきている(流通業)」「構造不況に陥っていると確認している(サービス業)」という情報が寄せられた。

全業種における経営上の力点は、第1位「付加価値の増大」(58%)、第2位「新規受注(顧客)の確保」(49%)、第3位「人材確保」(33%)でこれまでのトレンドに変化がなかった。


<会員の声(業種別)>

(1)建設業

●前回の8月景況調査の結果と比較して「今月の状況」を見ると、業況判断DIは41→36と5ポイント下落、仕入価格変動DIは45→46と上昇傾向が高止まり、資金繰りDIは△16→△19と3ポイント下落、と若干景況が悪化しました。製造業の不況による影響が徐々に見え始め、業態によって仕事量に差が出ています。人手不足は変わらず続いており、働き方改革への対応が企業への大きな負担となっています。投資向けの不動産は増えていますが、人口減少によって入居者の奪い合いが予想されますので、今後の動向に注意が必要です。(事務局 佐藤)

1.総合工事、リフォーム、大工、室内装飾

  • 建築改修工事をメインに営業活動しているが、大型の物件が少ない。新築物件が少なくなってきた。先行きの見通しも怪しい。客先も慎重になってきた。小型建築改修案件は多い。しかし、人が少ないので案件をこなすのに苦労する。また、雇用を増やしたいが技量のある人はなかなか来てくれない。雇用先、雇用方法など変化させなければ雇用の確保は難しい。新規事業を考えなくてはならない。最近世間ではリフォームが浸透してきているが、その分、対応業者も多く競争力を付けなければいけない。まずは小型案件をこなし信用力を増すこと、しかしそれだけでは会社を回していけない現実もあり、面白い新規事業を考えたい。建築業界以外でも良いと考えている。
  • 大手ハウスメーカーによる宣伝力、組織力、効率化により中小工務店は顧客を奪われたままであり、差別化を図る必要がある。設計士と工務店と一体化を目指し差別化を具体的にしなければならない。顧客確保と顧客の自然素材や伝統工法の良さを意識づけコストのかからない家作りから、材料等に拘った家作りの良さを発信していきたい。
  • 消費増税の影響で駆け込み需要が多く、今後の見通しも良さそう。しかし、ショールームへの来場者数が昨年比で8割なので、春からの着工件数が厳しくなるのではないか。

2.基礎、鉄筋、土木、コンクリート、解体

  • 愛知県内の職人の絶対数の不足が出てきているのが現状。今年は特に上半期と下半期の仕事量のバランスが大きいと感じる。
  • スクラップ単価が下がったことに伴い、鋼材仕入単価が下がった。他社の土木関係の仕事が増えている関係で、応援単価が異常に値上げしている状況で、応援作業員の獲得に難儀している。下請け業者(現場施工業者)が外国人研修生を雇用しつつある。受注状況は、土木・建築共に順調。RC造・S造・戸建住宅基礎・外構工事は満遍なく受注している。特に戸建住宅木造基礎施工数は増える一方で、見積数の3分の1は断らざるを得ない状況で、戸建住宅の施工ラッシュはまだまだ続く感がある。

3.左官、外構、屋根外壁

  • 日本は、この30年で建設業をダメにしてしまった。建設業の現場の作業はITやAI、ロボット化が最もしにくいモノのひとつであり、業界(特に地方の中小零細業者)や業界人材を育成しなかったツケはこれから支払うことになる。仕事はいくらでもあるが、できないのである。

4.給排水管工事、電気工事、設備工事

  • 働き方改革の波が来ており、休みや給与の条件が厳しくなっている。今後は残れる会社が減っていくのではないか。電気工事は調子が良く、再来年には大型物件や栄の再開発も決まっている。大阪ではIR(統合型リゾート)や万博、九州も仕事が好調であるため、東京から名古屋を飛び越して人が集中している状況。
  • 通信関係では5Gについて中部電力が方針を出し始めた状況で、世界に比べれば進捗が遅い。中国では通信基地の設置が進んでいるので、このままだと日本は価格競争に勝てないのではないか。

5.建築設計・不動産

  • 業界としては全体的に落ちている。住宅の着工件数も減っているが、そこまで落ちた感じはしない。東京、名古屋、大阪で住宅は伸びているが、内訳を見てみると高層マンションを中心に増えている。大阪の業者の話を聞いていると名古屋での投資を増やしたい様子。需要があるのではなく、資金が余っている企業が投資先としているようなので危険だと感じている。
  • 人手不足の影響で条件の良いところに社員を引き抜かれてしまうケースがあり、その影響で経営が悪化してしまう。経営環境の変化が大きくなってきていると感じる。
  • 不動産業は暇で、ハウスメーカーも仕事が取れない状況。土地の仕入れ制限によって、土地が売れないと仕入れができなくなってしまった。役所も人手不足で依頼した測量の仕事などが遅れている。銀行の融資も厳しくなっていて、投資やクリニックは審査が通らない。
(2)製造業

●業況判断DIでは、今月の状況が△8→△5と3ポイント「悪い」超過幅の減少が見られましたが、前年同月比が△34→△37、次期見通しは△6→△9とマイナス値を推移する結果となりました。売上高でも前年同月比が△23→△32、次期見通しが△26→△33と、3期連続で売上高の「減少」が増えています。従業員規模別で見ると、5人以下の企業では今月の状況が△23→△22、20人以下が△11→△7、21人以上が△1→3、101人以上が9→3と、小規模企業の景況感の悪化が顕著に見られました。前回調査から続く半導体関連や工作機械の大幅な落ち込みに加えて、中国や東南アジア向けの仕事の減少、消費増税による内需の減退が、製造業の景況悪化に大きな影を落としています。自動車関連産業の構造変化もあるなかで、今後も予断を許さない状況が続くと思われます。(事務局 松井)

1.金属加工・樹脂加工

  • 半導体製造装置の需要減少は相変わらず。業界的には底打ち感があるが、まだ部品メーカーまでは至っていない。来年の業況はメモリー投資がどれだけあるかで決まる。自動車業界は大変革期だけあって今までの投資案件はほとんどない。顧客も新しい需要を探している最中で研究開発には予算をかけるが、現状の流動品はどれだけ投資を控えて生産を上げるかで勝負している感じがする。
  • 受注量の減少により、厳しい状況が続きそうだ。自動車の構造変革により新規受注も苦戦している。
  • 比較的受注量は多いが、各社はマダラ模様。同業他社であり同規模以下の廃業が相次いでいる。
  • 値下げ要請と受注減のダブルパンチで、来年は更に悪化するのでは。廃業、もしくは検討する同業他社も出てきている。

2.機械部品・機械製造

  • 常に来月の受注状況が読めない。受注が安定しないので常に危機感を抱いている。
  • 目先は思った程は悪くないが、これから色々なことがボディーブローのように効きだすのではないか。
  • 米中貿易摩擦の影響が色濃く、軒並み景気の悪化を懸念する声がよく聞かれる。来年度の景気は多少持ち直すという話もあるが、根拠に乏しく鵜呑みにできない。工作機械メーカーは売上が前年比で40~50%減となっている企業もあるが「昨年、一昨年ができすぎただけ、皆さんには財布のひもを必要以上に締めないようにしてほしい」と悲観的にみてはおらず、自社の直近の設備投資の計画についてどうするか否か悩ましい。
  • 景況感としてはかなり悪い。半導体、工作機械が急落し、その他の計測機器、医療機器関連も中国、東南アジア向けが多く、軒並み減産傾向にある。建築関連の落ち込みと合わせ、年末から来年の景気動向の悪化が懸念される。消費の低迷が製造業に不況感を招いている

3.木材・木製品製造業(家具を除く)

  • 消費増税にともなく駆け込み需要も特になかった。
  • 業界だけでなく人材不足を感じる。受注も得意分野以外(誰でもできる事。人工的な仕事)が増えている。売上増にはなるが利益率は低下する。

4.印刷・包装関連

  • 大手メーカーの開発が停滞し、製造業全体に停滞感がある。
  • 働き方改革に伴う経費増、投資に対する負担感が大きくなってきた。
  • 昨年後半から紙の需要の低下、製紙メーカーの災害や機械の故障・修理等を理由に生産調整が入り、市場に紙が不足する事態が発生。仕事が止まるまでに至っていないが、値上げを飲まざるを得ない状況。仕事量の回復が見込めない今、原材料等の値上げ分を転嫁していかなくてはいけないが、他社との競争を考えるとなかなか難しい。
  • 新規の問い合わせがあっても受注に繋がらない。利益を減らし、価格を下げて受注するか悩む。

5.食品・繊維製品・雑貨・身の回り品製造業

  • 消費増税、米中貿易摩擦による景気減速を肌で感じる。中国の現地工場では労働者不足が深刻化、資材原料も調達に時間がかかり、価格も上昇気味。一方、国内では消費税増税の影響なのか買い控え現象。一部ではポイント還元セールなどを行うものの喚起に繋がらない。インバウンドの変化はないが物品購入がここにきて減少傾向。

6.その他製造業

  • 陶磁器業界は厳しい状況にあります。
  • 同業他社が減少していくであろう時に、瓦メーカーは「相見積書だから」と言って、安い方で発注をします。廃業前提ならお値打ちにできるが、社員を育てながらだとそうもいかず歯がゆいばかりです。瓦業界の支払いが手形主流なのは、何とかならないでしょうか?
(3)流通業

●前回の8月期調査の結果と比較して「今月の状況」を見ると、業況判断DIは13→9と4ポイント減少(悪い)、仕入価格変動DIは34→40と大幅に6ポイント増加(上昇)、資金繰りDIは△19→△27と8ポイント減少(窮屈)と、前回の調査よりも一層悪い結果になりました。同様に「前年同月比」を見ても、業況判断DIが△10→△16と6ポイント減少(悪化)しました。業況判断DIがリーマンショック時の下降の仕方と酷似しているため、細心な注意が必要です。(事務局 墨)

1.機械器具(自動車、事務機器、電設資材等)

  • ロボット向け減速機が今年初めまで納期が10カ月から1年という長い納期だったが、中国向けのロボット需要が大きく落ちたことにより在庫が積み上がり、資金繰りが大きく圧迫。半導体製造装置向けの減速機は5G関連で動きもあるが、ごく一部にとどまっている。先行きに関しては当面現状が続くと言われており、過剰在庫の解消も来年1年はかかる予想。今までは自動車は底堅く動いていたので凌いでこれたが、自動車にも陰りが見えてきた為、自動車が停滞したらリーマンショックと同じ状況になる。
  • トヨタの新規立ち上げ車種の出図が遅れている影響で納期がタイトに。納期がタイトではあるが型費はLCC(ローコストキャリア=中国メーカー)が日本の4割程度で調達できることを理由に2割程度削減され、見積交渉がタフになってきている。
  • 国内の大型案件の減少、地方での受発注の減少(東京・大阪への人員集中)。
  • 勤怠情報のデータ化、キャッシュレス決済への投資、ECサイトでの注文を基幹システムと連結するなどIT系の投資が増えている。利益が出ているうちに投資していかないとおいて行かれてしまう。
  • 昨年11月ごろより始まった米中貿易摩擦の影響の先が見えない。業界では来年の春ごろから景気が上向くとの楽観論もあるが根拠がない。大手仕入先メーカーの担当者はリーマンショック以上の不況感との見解も示している。またトヨタ自動車1次サプライヤーも来年度も引き続き設備投資を控えるとの決定している。大手製造業の統廃合も進んでおり予断を許さない状況。

2.建築資材

  • 軽減税率に該当する物があり、税率併用が繁雑になっている。
  • 大企業と仕入れ先の合併があり、同じメーカーのそれぞれの窓口に口座をひらける形となり、仕入れできないものがある。問屋制度がこわれ、直販の力が強く、販売価格の相場の低価格が進んでいる。

3.繊維、衣服、雑貨

  • 消費増税の影響は想像していたより少ないが、天候の影響が大きい。
  • 徐々にではあるが、同業者の廃業が始まった。また商品値上げが止まらない現状。

4.飲食料品

  • 日米欧の自動車業界が大規模なリストラを行っており、その余波が日本にもやってくることが懸念。
  • 売上を上げても、最低賃金の上昇や消費増税による税負担や消費の冷え込みなどで利益が出ない。

5.運輸、情報通信

  • 自動車メーカー、自動車部品メーカーの再編、合併などが騒がれている今日この頃で、少しずつお客様から不況の音が聞こえ始めている。
  • この地域(愛知県)は、トヨタ自動車をはじめとする製造業が地域経済を牽引してきおり、その影響が多大。その中で、ここ数カ月で製造業又はそれに関連する流通業の需要の落ち込みが表面化している。
  • 値上げに踏み切っている。働き方改革に前向きな企業ほど、こちらの時間短縮や業務改善に前向き。
  • ソフトウェアの開発も製品開発の波に合わせて変動するが、最近になり一巡した感もあり、少し低調になりつつある。

6.保険、不動産

  • 不動産を売りたい人が減っている。一方、買いたい人も減っているので価格は、やや下がっている程度で納まっている。建売住宅が全く売れていない為、建売住宅用地の仕入れも控えられている。これも不動産価格下落の一因となり得る。またハウスメーカーは来客が減っている。消費税増税後、贈与税の非課税枠拡大によって富裕層が動くと言われてたが、あまり動いているという話は聞かない。投資用不動産は低調。特に賃貸用住宅は、金融機関の締め付けもあり引き合いが目に見えて減っている。人気エリアは引き続き需要があるようだが、もともと供給が少ないので、成約したという話はあまり聞きません。不動産業界では、民法改正もあり賃貸、販売、どちらも情報収集など対応に忙しい状態。
(4)サービス業

●今月の業況判断DIは31→23、経常利益DIは30→29、製造業DIの大きな下落から遅れて、このサービス業DIも落ち込みを見せました。今月は、製造業を除く全業種のDIが、前回に比べて落ちており、製造業DIも、回復したとはいえ依然マイナスのまま。製造業から端を発した不況が、いよいよ本格化し始めたことを明示する結果となりました。

3業種毎に分けると、業況判断DIが、専門サービス業37→36、対個人サービス業23→10、対事業所サービス業31→19。経常利益DIが、専門39→43、対個人22→20、対事業所28→19、との結果です。士業に代表される専門サービス業と、対個人・対事業所サービス業で結果は二極化されており、数字以上にサービス業の業況は厳しい状態です。

順調に見える専門サービス業も、「働き方改革」やこの不況への対応として、一時的に企業からの依頼が増えているだけと、冷静に捉えるコメントもあり、また下記回答の通り、法改正により一気に需要・供給のバランスが崩れることも想定され、決して盤石なものではありません。

経営課題としては、「人件費の増加」が39%と、前回に続き最大値を記録したほか、「民間需要の停滞」が21%と、これまでに比べ大きくアップ。こちらは、対個人サービス業から、とりわけ多く回答されており、不況による消費の冷え込みが、徐々に現れつつあるといえます。

次期(3ヶ月先)見通しDIは21と、3期連続の悪化かつ、少なくともここ5年で最低値を記録。キャッシュレス・ポイント還元事業により、消費税増税の影響は抑えられているようにも見えますが、決済端末の導入費用やカード手数料は間違い無く負担ですし、いざキャッシュレスが定着した場合、上記事業終了後に一気に負担が増すおそれもあります。金融機関の対応・金利が緩やかに厳しくなっているとはいえ、現場・会議上では「貸出先をまだまだ探している」との声もあり、今のうちに先を見据えた資金確保も必要かもしれません。(事務局 橋田)

1.福祉(介護)

  • 人材育成と管理者育成だけでなく、人手不足は今後も続くことを見越して、それを軽減するシステムを導入できる、行政からの助成の方向性も見出していくことが、重要になっていくと考えられる。
  • 介護保険制度の法改正に大きく左右されるため、主軸であるレンタル部門への締め付けが特に厳しい状況。業界としても統廃合が散見される。今後、介護保険制度外の事業展開を取り入れることを視野に入れていかないと、非常に厳しい。

2.産廃・環境

  • 最低賃金上昇による諸経費の増加分を行政に申請するも、委託費は不変のまま。
  • 金属リサイクルと産廃処理を行っているが、取引先が閑寂で自ずと当社も同様の状況。また、今まで売れていたスクラップが反対に産廃扱いになり、処理費を頂かないと受け取れない状況になっている。

3.広告・印刷

  • 広告業全体では、IT関連は伸びているが、印刷媒体は低迷し続けている。小規模な印刷加工会社が廃業していく。
  • デザイン制作の業界は、働き方改革と売り手市場により、社員からの要求が高まっている。ネット関連の売上は横ばいだが、印刷物の売上減は加速している。昨年に比べ売上が少し上がったものの、景気が一服した製造業などの次の手として、広告費への予算投下が要因として感じられる。

4.理美容

  • 10月以降、2ヶ月連続で前年同月を下回る見込み。増税前の駆け込み需要の反動と捉えているが、12月も予断を許さず、顧客の動向に注視したい。
  • 異なる業態への参入を視野に入れるサロンも散見される。小さな美容室は、付加価値を高めるというより、新たなサービスを開拓しないと大変だと思う。

5.人材請負

  • 派遣業界は、大企業と同じく来年4月(中小企業は再来年の4月)から同一労働同一賃金の規制が、開始される。派遣社員の待遇について、「労使協定方式」を採用した場合、既存の派遣先に時給200円以上の値上げ交渉をする必要があるが、その交渉のハードルが大変高く、心配している。

6.専門サービス

  • 法改正により、一人の国家資格者で行政書士法人の成立が可能となる場合、民間資本による参入が予想され、業界全体が大きく変容すると想定される。